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7.悲しき愛の誤解
君が慰めてくれるか? ★
しおりを挟む「――楽しい話とやらはひと段落着いたか? クリスティーナ」
「!」
予想外に響いたその声に、クリスティーナはぎょっとした。それにつられて、侍女も驚いたように口をつぐむ。
気づけば、開け放たれたままだった扉に背をもたれかからせ、眉間に深く皺を刻み、腕組みをしているレスターが立っていた。
「レ……、レスター様……?」
なぜだか彼が酷く怒っているような気がして、クリスティーナは不安になった。
……いつから彼は、あそこに立っていたのだろう。
クリスティーナを訪ねに来たのなら、声をかけてくれればよかったのに。
そうすれば、こんな風に待たせることはしなかった。
クリスティーナと手を取り合ったままだった侍女は、突然現れたレスターの姿に、どう対応すべきか迷っているようだった。
レスターは、彼女に完璧な笑みを見せた。
「彼女を楽しませてくれたこと、感謝する。だが、おまえがクリスティーナに仕えるのは、もう少しあとということにした方がよさそうだな。……これから行われる式の準備は、そういったことに慣れた侍女に任せた方がいい。機を見て連絡するから、今日はもう下がれ」
笑みを浮かべているが有無を言わさないその命令に、侍女は戸惑いながらも頷いた。
「か……、かしこまりました。殿下。では、クリスティーナ様。失礼いたしますわ。あなたに本格的にお仕えできる日を、楽しみに待っております」
侍女はどこか怪訝そうな表情を浮かべていたが、クリスティーナを案じている様子はなかった。
主として侍女に接するレスターの態度はあくまで丁寧であり、その裏に苛立ちのようなものが隠れされていることに気づいたのは……、クリスティーナだけだった。
彼女が去り、寝室の扉が今度こそきっちりと閉じられる。
――レスターと二人きりになってしまうと、広いはずの寝室が途端に狭く感じられた。
こんな風にクリスティーナが感じるのは、初めて彼がこの寝室を訪れた晩以来のことだった。
少し考え、何か悪いことでも起きたのだろうかと、クリスティーナはレスターを不安なまなざしで見つめた。
「あ、あの……。今日はいったいどのようなご用件でいらしたのですか? レスター様」
おずおずと訊ねると、眉間の皺を一層深くしながら、固い口調で彼は答えた。
「何をしに来たかなどと問われるとは、心外だな。妻になる人の部屋を訪ねるのに、いつも用事が必要なのか?」
「それは……。いえ、そういうことではなくて……」
そう答えながらも、クリスティーナの胸はざわめいた。
やはり、レスターは怒っている。
それも、かなり酷く。
しかし、どうしてこんなに彼が怒っているのかがわからない。
動揺したまま、クリスティーナはレスターに言った。
「何か悪いことでもあったのかと思いまして……」
「なぜそう思う?」
そう問われ、クリスティーナは言葉に詰まった。
その理由は、彼が一番よく知っている気がする。
それなのに、彼は理由をすぐに教えてくれるつもりはないらしい。
「わたしの気のせいだったら申し訳ございません。レスター様が、怒っていらっしゃるように見えましたので……」
レスターは、ふっと鼻を鳴らして笑った。
そして、クリスティーナに訊く。
「そう見えるか?」
こくりとクリスティーナが頷くと、彼はこう続けた。
「……なら、君が慰めてくれるか?」
「え……?」
首を傾げたあとで、クリスティーナはびくりと身をすくめた。
彼の浮かべた笑みが、舞踏会の晩に見せてくれたような優しいものではなく、……嗜虐的なものに満ちていたからだ。
レスターは、不穏な予感に怯えているクリスティーナの腕を、指が肌に痕をつけるほどに強くぐっと掴んだ。
そして、乱暴な仕草で自分のもとへと引き寄せる。
「!」
驚いて目を見開いているクリスティーナの髪に指を差し入れて自分の方へ強引に顔を向けさせると、皮肉な声でレスターは囁いた。
「君は心優しいからな……。俺を怒らせたまま、放っておくなどできないだろう?」
なおも笑んでいるというのに、間近にあるレスターの瞳は燃えるような怒りに満ちていた。
わけもわからぬままに、クリスティーナは頷いた。
「は……、い……。あなたのお役に立てるなら、わたしは何でもいたします……」
その言葉に、レスターはくっと喉を鳴らして笑った。
それは、どこか自嘲するような、苦い笑いだった。
「そうか。では、君のその言葉に甘えることにしよう」
そう言うなり、レスターはいきなり、身に纏ったドレスの上からクリスティーナの胸をぎゅっと掴み上げた。
乳房を握りつぶすように強く揉まれ、クリスティーナの体はビクンと跳ねた。
「ひっ!」
敏感な場所にいつもよりも強い刺激を与えられ、痛みと同時に淫らな痺れが体を襲う。
「うぅ……。……あぁ……」
自分が痛いと思っているのか快感を覚えているのかわからず、戸惑いにクリスティーナは顔を歪ませた。
しかし、構わずにレスターは手を進めていく。
背に結ばれたドレスのリボン飾りが次々解かれていき、コルセット越しに、大きな胸が震えるようにしてその姿を現す。
繊細な刺繍がたくさん施されたコルセットの内側までにあっという間に手が侵入し、そのままじかに強引に胸を揉まれるうちに、こらえきれずにクリスティーナの唇から声が漏れ出す。
「……んっ……、……あん……っ。待って、あっ、レスター様っ……。一度、手を、離してください……」
「なぜ?」
「だ、だって、何だか、いつもと違……。あ、はぅっ」
胸の突起をぎゅっと絞るように摘まれ、クリスティーナは声を上げた。
その声は、すでに甘く濡れていた。
クリスティーナの清らかだった体は、連日甘く交わされる愛の行為により、すっかり敏感で感じやすい体へと変じていた。
反応し始めたクリスティーナの体をさらに追い詰めようというのか、吐息で耳を濡らすようにしてレスターが囁く。
「君はこのいやらしい身体を使って、俺を慰めてくれるつもりなのだろう? なら、そんな心にもないことを言わないで、俺に身を任せていればいいじゃないか」
「こ、心にもない、なんて、ことは……」
「嘘をつくな。……君の体は、俺の手で、こんなにも感じているくせに」
「あっ、やぁんっ!」
ふんわりとしたドレスのスカートをたくし上げ、クリスティーナの太腿の間にレスターの手が強引に入り込んでくる。
ぐいぐいと押しつけるようにして太腿の付け根を大きな力強い手で攻められ、クリスティーナは身をよじらせた。
いつもよりずっと乱暴な愛撫を受けているというのに、あっという間にそこが濡れ出してしまっていることを知られ、クリスティーナは真っ赤になった。
レスターは、そんなクリスティーナを嘲笑うかのようにさらに激しくクリスティーナの体をまさぐった。
「ここはこんなに濡れているし、乳首も、もう尖って固くなっているな。こんなに乱暴にされて感じるなんて……。君は本当に淫乱だな」
「や、そん、な、あぁっ……」
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