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6.眩い舞踏会の夜に

人が来たら……! でも…… ★

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「俺にとっては――いや、誰にとっても、君が姫であるか庶子であるかなど、些細なことだ。いいか……クリスティーナ。君は、この国の希望なのだ」

「え……?」

 目を瞬いたクリスティーナに、レスターは、噛んで含めるようにして言葉を続けた。

「君は、この国が正常だった頃から残る……たった一人残された王家の娘だ。財政を傾かせたが、故サイラス王は誠実な方だった。この国の者たちはみな、彼の心根をよく知り、慕っていた。彼の遺した君を幸せにすることこそが、このクレフティス王国に目を覆うような横暴と悪政が渦巻いた時間を癒す、たった一つの方法なのだ。君のために――君を喜ばせるためにこそ、この国の諸侯たちは、互いにそれなりの含むものを持ちながらも、ひとつとなってクレフティス王国の再建に臨むことができる」
 
 レスターが、クリスティーナの瞳を覗き込んだ。
 いつもは鋭く強いその瞳は、今、クリスティーナの中にあるどこか遠くの地を見るようにして、細められていた。

「……俺が初めにこの国を正常に戻すために動いたのは、この国の諸侯たち数名から我がエルザス王国に支援の要請を受けたからだった。だが、当時、彼らは強引な圧政を敷いているギデオンを恐れ、表立って動こうとはしていなかった。彼らや、他の様子見をしていた諸侯たちが本気で動き出したのは、君が無事に生きていることがわかり――そして、救いの手が一歩及ばず、ギデオンに捕らえられてしまったと知れた時からだった……」

 その時、レスターの瞳が、苦々しい後悔に染められた。
 彼は、とても苦しそうな表情をして、クリスティーナに囁いた。


「……すまなかった。あの時、君をギデオンから救い出すことができなかったのは……俺の失態だ」

「そんな……。あなたに謝っていただくことなど、何一つありません。わたしは、あなたに感謝しかしていませんもの」


 気がつけばクリスティーナは、すぐにもそう答えていた。
 どうして彼が自分に謝るのか、本当にわからなかったのだ。

 これ以上ないほどに、たかが庶子の身分であるクリスティーナのために彼は力を尽くしてくれたのだ。
 感謝こそすれ、責めるような感情などをクリスティーナが抱くはずがない。

 すると、そんなクリスティーナに、レスターは苦く笑い、無言で首を振った。
 その仕草に、彼が自分の言葉を信じていないのだと思って、クリスティーナは必死になって言った。

「ほ、本当です、レスター様! あなたにこんなによくしていただいて、いくら感謝しても、し足りない思いです」

 クリスティーナの言葉に、レスターは目を上げた。
 真剣な瞳をしているクリスティーナをじっと見返して、彼が訊く。

「……本心から、そう思っているのか? 君の持ち前の優しさで、俺を気遣っているわけではなく?」

 こくこくと一生懸命にクリスティーナが頷くと、レスターは小首を傾げた。

「では……。これからは、身分などにこだわらずに生きていくと約束してくれるか?」

「お約束いたします。お父様が、わたしのことを少しでも考えていてくださっていたことがわかったんですもの。それだけで充分です」


 すんなりと答えたクリスティーナに、レスターはふっと笑った。
 彼の薄い唇がすっと弧を描いていくのが間近で見えて、クリスティーナは目を瞬いた。
 先刻彼の浮かべた悲しいような笑みとは、……異なる表情に思えたのだ。

 ――クリスティーナのその直感は、当たっていた。
 レスターは、不敵な笑みを浮かべたまま、クリスティーナの腰を抱いてさらに近くまで引き寄せた。


「……なら、庶子であるために俺の妻に相応しくないから結婚できないなどという言い訳は、もう使うことができないな?」


 間近で瞳を覗き込まれながらそう問われ、クリスティーナは目を瞬いた。

「え……?」

 レスターは意地悪くにやりと笑い、クリスティーナに囁いた。

「君には少しばかり、軽率なところがあるようだな。まあ、そこも可愛らしいところだが。……いいな? クリスティーナ。君が庶子であることなどは、俺にも、そして君自身にももう関係ない。君は今、身分などにこだわらずに生きると自分の唇で言ったのだからな。君は何の心置きもなく俺と結婚し、俺の妻となるのだ」

「……っ」

 ようやく自分が何を約束してしまったかに気づき、クリスティーナは自分の唇を押さえた。大慌てで、クリスティーナは言った。

「わたし、そんなつもりじゃっ……。駄目です。あなたには、もっとずっと素敵な人が……」

生憎あいにくだが、その点に関して、君と俺の間には大きく見解けんかい相違そういがあるようだ。君の目から見ると違うようだが、俺の目を通すと、君より魅力的な女性などこの世界に存在しない」

「そんな……」

「何、案ずることはない。多少の価値観の違いは、どんな夫婦にも必ずあるものだ。ともにすごしていくうちに、少しずつ擦り合わせていけばいい。――もっとも、この件に関して、俺に意見を変えるつもりは少しもないが」

 笑いながら断定的に告げると、レスターは、顔を真っ赤にして戸惑っているクリスティーナの唇を激しく奪った。


「ん、んんぅっ……」


 一気に口の中を舌で蹂躙され、クリスティーナは喉の奥で声を上げた。
 くちゅくちゅと唾液を絡め合う音を立ててクリスティーナの唇を吸ったあとで、レスターは唇を離した。そして、肩をすくめて言う。


「今夜は、ずいぶんとまわりくどいことを言わされた。俺が君と結婚したいと言っているんだ。まわりが何と言おうと、関係あるか。俺の妻は、君以外にあり得ない」


「あ、そん、な、んんん!」


 言葉を返そうと思ったのだが、また激しく落とされたキスに、続きを阻まれる。
 それどころか、屋外だというのに――レスターの手はまっすぐにクリスティーナのコルセットの中へと侵入してきた。


「やっ……、駄目です。こんなところで……、ひ、人が来たら……っ」


「舞踏会の最中も、野獣のような男どもの視線の中に君を置くことを我慢し続けたのだ。このくらいの褒美は貰わないとな。……ほら、クリスティーナ。上を見ろ。俺たちがいつも愛し合う寝室が見えるぞ。いつもの部屋を見上げながらするというのも、たまにはいいだろう」


「ふあっ、あっ……。……あん、や、駄目ぇ……」


 真っ赤になりながら首を振るクリスティーナだったが、レスターの手は止まらなかった。
 ドレスをたくし上げられ、白い尻が、浮かび上がるように夜の闇の中に現れる。
 あっという間にとろとろと濡れ出したそこを、レスターの指が激しく愛撫する。

「あ、あぁっ、ひ、いぃっ、やぁんっ、あ、あぁ……っ」

 誰もいない夜の庭園に、クリスティーナの上げる嬌声に混じり、ぐちゅぐちゅとぬめる淫らな音が響く。

「あ、あぁ……っ。……そん、なに、したらぁっ……」

「人に見られたくないなら、我慢していないで今すぐ果ててしまえばいい。そうしたら、挿れてやるから」

「あ、あんっ、そんなっ……。あんっ、ひゃ、あぁ、い、あぁぁっ……!」

 内部を刺激するレスターの指が速まると、クリスティーナは呆気なく絶頂してしまった。
 荒い吐息を整える暇もないまま、間髪入れずにレスターの熱く滾った逸物がクリスティーナの陰部に押しつけられる。
 ぞくぞくと、背筋が官能の期待に粟立った。

「ひんっ、あ……。……あぁぁ、あんっ……」

 嫌なはずなのに、恥ずかしいはずなのに、……もうレスターが欲しくてたまらなかった。
 自分でも気づかないうちに、クリスティーナは尻を突き出して、レスターの男根を最奥まで導き入れていた。

「はぅ、あぁん……!」

 レスターの陰茎が奥まで届いた途端、クリスティーナはもうまた果てそうになっていた。
 あまりの快楽に、腰がすぐにもがくがくと震え始める。
 ぶるぶる震える豊かな乳房を揺さぶるように揉みしだきながら激しく腰を打ちつけて、レスターがクリスティーナの耳を甘く噛んだ。


「俺のは気持ちいいか? クリスティーナ。君のこのいやらしい場所からだけでなく、君の唇から聞きたいな。さあ、言えよ、クリスティーナ。ここが、いいのか?」


 ガツガツと奥深くを抉るように貫かれ、クリスティーナは甘く切なく嬌声を上げた。


「あ、あぁんっ、そ、そんな、あ、あ……!」


「ほら、言え!」


 その声と一緒に、また奥を貫かれて絶頂し――観念したクリスティーナは、素直に何度も頷いていた。


「ふぁっ、あ、あぁ……っ。……い、いいです……。……き、気持ちいいの、あん、いぃっ……!」

「俺もだ。このまま、君の一番深いところで出すぞ……!」

「は、はい、お願い、します……! レスター様ぁっ……!」


 快感を貪るように、クリスティーナは必死にレスターに合わせて腰を動かした。
 膣内をきゅうきゅう締めながら、クリスティーナは、一番深いところで、心から愛する男の精を受け取ったのだった。



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