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戦争初期(1941~1942)

日米開戦三 初陣

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 全長二七七メートル、最大幅三五メートル、出力一三六〇〇〇馬力、速力三五ノット、航続力一八ノットで八〇〇〇浬、基準排水量五三〇〇〇トン、満排水量六一〇〇〇トン。
 兵装、四六サンチ三連装砲三基九門、一五・五サンチ三連装四基一二門、一二・七サンチ連装高角砲一〇基二〇門、二五ミリ三連装機銃三六基、二五ミリ単装機銃二基二門。
 搭載機、零式水偵水偵四機、零式観測機四機。
 以上が、『大和』の諸項目である。

 『大和』『プリンス・オブ・ウェールズ』両艦は、ほぼ同じタイミングで、主砲を放った。『大和』には、観測機があり、『プリンス・オブ・ウェールズ』には、レーダーがある。両者の命中率は、互角とみて、良いだろう。しかし、英海軍には『リパルス』がいる。この艦も、『大和』に向け、砲撃を開始した。
 ここで動いたのが七戦であった。最上型四隻で構成されたこの艦隊は、『リパルス』へ果敢に突撃した。砲撃力に劣る二〇サンチ砲とはいえ、巡戦の『リパルス』には有効だとなるはずであり、『大和』の装甲を考えると、一五インチ砲を持つ『リパルス』の方が『プリンス・オブ・ウェールズ』より、脅威であると七戦司令長官栗田健男少将(というより、彼の参謀長)が判断した為である。肝心の七戦の装甲はどうなのかというと、これらは重巡で有る為、どちらも大差は無い。易々と装甲は引きちぎられるであろう。だが、彼らは突進する。その先に勝利があると信じて。

 南遣艦隊に軽巡が二隻あったことは、幸運であった。彼らは、これで敵の駆逐艦が突入してくるのを、防ぐことに成功していた。
 海戦が始まると同時に、英艦隊の駆逐艦四隻は一斉に突撃してきた。戦艦への雷撃を行おうとしたのであろう。対する南遣艦隊は、軽巡二隻と、駆逐四隻でこれを迎え撃った。
 最初に発砲したのは、『鬼怒』であった。『由良』『川内』が、これに続く。前部四門の一四サンチ砲が、敵に向け、火を噴く。『鬼怒』の初弾は外れたが、『川内』のそれは、奇跡的に、命中した。被害に遭ったのは、『ヴァンパイア』である。この船は前部の砲塔に一四サンチ砲を喰らい、砲弾が誘爆。艦首がちぎれると言う自体にまで陥った。『鬼怒』も三射目には命中弾を獲得し、『エクスプレス』を廃艦に追いやった。これを行うまでに知事待った距離は、駆逐艦が撃ち合いを行うのには十分な物であった。かくして、東洋艦隊の駆逐艦はその全てが、大破乃至沈没してしまう。対する南遣艦隊の被害はというと、『吹雪』が敵弾を一発受け、小破以下の損害を負ったのみに止まった。

 『大和』は彼らよりも苦戦していた。確かにこの艦の持つ四六サンチ砲は、世界最大の威力を発揮するとh言っても、それは命中したときの話である。『大和』は第三射目に至っても、命中を得ることは叶わなかった。先に命中弾を出したのは、『プリンス・オブ・ウェールズ』であった。こちらは、第三射目に命中弾を獲得、斉射に移行した。しかし、それはバイタルパートに命中、高角砲を一基使用不可にしただけで、決定だとはならなかった。対抗する『大和』も、お返しとばかりに、砲弾を撃ち込むが、海面をわかせるだけに終わる。
 小沢中将の顔にも焦りが見え始めた、その時である。遂に『大和』が命中弾を得た。
「砲術より艦橋。次より斉射」
 砲術指揮所より、『大和』艦橋に、報告が伝えられる。そして、『大和』の九門の主砲が、火を吹いた。

「あちらも、命中弾を得たか」
 フィリップス中将は、冷静に状況を見ていた。これで、『プリンス・オブ・ウェールズ』と『大和』は、同じ土俵に立ったのであり、言わば、ここからが本番である。『プリンス・オブ・ウェールズ』の防御力は、戦艦として、十分な物である。それに、こちら側には『リパルス』もあり、砲撃力の劣勢は数の力によって補える。
 しかし、彼の頭には二つの物が抜けていた。それは、この海戦の勝敗を決定づける物となった。一つは、『大和』の主砲口径が四六サンチである事で、これは帝国海軍が躍起になって秘匿していたのであり、知らずとも仕方の無い事である。しかし、もう一つのことは、彼は頭に止めておくべきであった。
 フィリップス中将の背後から、巨大な爆発音が、聞こえた。

 『最上』にとって、『リパルス』の主砲が『大和』に向けられているのは幸運であった。重巡であるこの艦にとっては、『リパルス』の副砲である、四インチ砲は、恐るるに足らない物である。そこで、普通は自らの身を守るために、主砲を彼らに向けるのであるが、『リパルス』は『大和』に執着している様であった。或いは、そう言う命令が出ているのかもしれない。
 いずれにせよ、七戦にとっては拍子抜けすると同時に、絶好のチャンスであった。
「距離六〇(六〇〇〇メートル)にて、魚雷発射」
 栗田少将の、命令はこの状況下ではともすると敢闘精神に欠けていたが、そこを指摘する者は、だれもいない。片舷六発の魚雷を放つ船が、四隻有るのである。『リパルス』には二四本もの魚雷が向かうことになり、命中率は(夜間という事を考慮しても)十分ある、と考えられていた。
「取舵!九〇度!」
「魚雷発射始め!」
 艦長は、指定された距離まで到達すると、直ぐさま、命令を下す。
「このまま、敵艦と平行に移動する。魚雷発射を気取られんようにな」
 栗田少将の命令の真意はここにあった。近づきすぎては、無駄な弾を喰らうかもしれず、遠すぎては、魚雷の命中率が著しく落ちる。彼は、その中間を、六〇〇〇メートル、と取ったのであった。問題は、魚雷の航跡によって、これの存在自体がばれることであるが、七戦の装備している九三式魚雷は酸素を推進剤としているので、航跡は殆ど見えない。
 『最上』以下、七戦は主砲による砲撃を続行する。『リパルス』が魚雷に気付いた様子は無かった。
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