97 / 123
番外編
3-10
しおりを挟む***
純が穏やかに眠りにつく頃。
……見られた。
……見られた……!!
兄ちゃんに見られただけでも恥ずかしかったのに……!!
ダブルベッドの端っこで、俺はまん丸になっていた。
反対側の端っこでは、修治さんがまん丸になっている。
どうしても体が反応して、修治さんがお風呂に入っている間に終わらせようとしたけれど。思いの外早く上がってきた彼に、決定的なシーンを見られてしまった。
呆れられていないだろうか。
はしたないと思われていないだろうか。
不安ばかりが胸を騒がせる。お風呂場まで運んでもらったけれど、内心、どう思ったのだろう。
急いで体を洗って、あれを解放して。部屋に戻れば怒られた。ズボンを履きなさい、と。
でも置いていたズボンは洗濯中で、無かったから。このままで許して欲しかったけれど。
いきなり家を飛び出した修治さんが走りに出て、一時間後のこと。やつれた彼が帰ってきた。
その後もう一度お風呂に入り、俺と一緒にベッドへ入った。あまりに気まずくて、何も話せない。暗くした室内で、お休みなさいのキスもできなかった。
やっぱり、呆れられたのだろうか。
ギュッとシーツを握った。眠ることなんかできなくて。
修治さんに嫌われたくない。謝った方が良いのだろうか。
ますます丸くなっていた俺は、そっと伸ばされた腕に引き寄せられていた。
「落ちちゃうよ……」
ベッドの中央へ連れて行かれる。後ろから抱き締められ、じわっと体が温まる。修治さんの体温を感じて、大きな手にしがみ付いた。
「ご、ごめんね……あんな姿……見せて!」
「僕の方こそ。我慢するって決意固めてても、可愛い素喜君に反応しちゃってる」
「……俺……だって……」
修治さんの事を思うと、体が疼いてしまった。
いつもドキドキしてしまう。
「ね、素喜君」
「……何?」
「君の誕生日まで、お泊まり無しにしたいって言ったら……駄目かな」
俺の髪に囁かれた言葉。思わず手を握り締めてしまう。
「俺……俺……何か……した!? ごめん……!」
「そうじゃなくて……やっぱり、そうなるよね。違うんだよ、素喜君。お願いだよ、泣かないで……」
じわっと滲んだ涙が目元に溢れてしまう。ギュッと目を瞑ると零れ落ちていった。
後ろから抱き締めてもらっても、寂しくてたまらない。ほとんど毎日のようにお泊まりしていたのに、俺が気に障る何かをしたから止めたくなったのだろう。
俺が、俺が何か……!
「泣かないで……! ね? 正直に言うから」
仰向けにしてもらった俺は、男なのにぐずぐず泣いてしまった。こんな姿、兄に見られたらきっと怒られる。
思うのに、涙は止まらなかった。何でこんなにいっぱいいっぱいなのだろう。もっと、修治さんの事が分かれば良いのに。
止まらない涙に、修治さんの大きな手が触れた。
「ここ……触って」
俺の手を取った修治さん。上から覆い被さっていた彼の下に、俺の手が触れた。
そこは、とても熱くて。
涙が止まってしまうほど、驚いた。
「分かる……? 何をしても引かないんだ……お風呂でちゃんと処理したけど、君に触れると戻っちゃう」
「…………!!」
「だから、誕生日まで、お泊まりは止めよう。誕生日を過ぎたら、ずっと一緒に居よう」
ズボンの上からでも分かってしまう。ジャージだからか、そこは高くなっていた。
男の修治さんが、目の前に居る。
俺を見つめる目は、優しさと、熱っぽさが入り混じっている。
「僕、そこで寝るから。素喜君はゆっくりお休み。明日、送っていくね」
にこりと、精一杯笑った修治さん。目元がどんどん、赤くなっている。
キュッと唇を引き結ぶと、離れようとした体を思い切り抱き締めた。倒れてくる重みを受け止める。
「素喜君?」
すぐに離れようとした彼の熱いそこに、手を当てた。ズボンの上からわし掴む。
「ちょ……! だ、駄目……!」
焦った彼の唇に、自分からキスをした。教えてもらった大人のキスを仕掛けてみる。
「ん……だめ……! 離れて……! 約束が……!」
「え……エッチじゃねぇ!」
怒鳴った俺を見下ろした修治さんを、真っ直ぐに見つめ返した。
「兄ちゃんが駄目って言ったのは……え、エッチだから……!」
「……これも……エッチになるよ」
「最後までは……しねぇし! て、て、て、手伝う……だけだし!」
思い切ってズボンの中に手を入れた。腫れていたそこに手を当てる。下着が邪魔だと、布団の中で引っ張り降ろした。
出てきた熱い、修治さんのモノを握り締める。
「…………ぁっ!」
「…………!!」
修治さんの顔が俺の肩に埋まった。切なそうな声に顔が真っ赤になる。
握ったは良いけれど、どうしたら良いのか分からなくて、頭の中がグルグルした。少し動かせば、修治さんの吐息が俺の耳に入ってくる。
「ん……駄目……素喜君……!」
「…………!」
「熱いよ……」
ゆっくりと、修治さんの顔が上がった。俺の顔に触れるほど、近くにある。
豆電球の明かりが、少しだけ照らし出した。
ユラユラ、ユラユラ、黒い瞳が揺れている。
眼鏡を掛けていない、修治さんの瞳が、雄になった。
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ハルとアキ
花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』
双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。
しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!?
「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。
だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。
〝俺〟を愛してーー
どうか気づいて。お願い、気づかないで」
----------------------------------------
【目次】
・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉
・各キャラクターの今後について
・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉
・リクエスト編
・番外編
・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉
・番外編
----------------------------------------
*表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) *
※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。
※心理描写を大切に書いてます。
※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。



初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる