SweeT&BitteR ~甘く甘く 時に苦く 僕らは恋をする~

樹々

文字の大きさ
上 下
89 / 123
番外編

3-2

しおりを挟む

「………………ごめん、大介」

「いつものことだ。気にすんな」

「冗談だったんだけどな~」

 溜息をついた純の肩を抱いた。そのまま二階にある俺の自室の方へ促した。

「気にすんなって。気にしてっともたねぇぞ」

 階段を上がり、襖を開けると中に入れた。暗い室内に電気を点ける。明かりに照らされた純は、苦笑しながら胡座をかいて座った。

「面白家族だね」

「ああ。騒がしいな」

「でも、なんかあったかい」

「そうだな」

 俺も座った。久しぶりに純とこうして向かい合う。

 男だな。どう見てもやっぱり男だ。肩幅もあるし、骨格もしっかりしている。なよった男ではない。

 それなのに。



 ……何でこいつはエロくさいんだよ……!



 内心、焦っている。エッチ目的でやってきたと、まあ、冗談だった訳だけれども、聞いてしまってから体が少し熱くなっていた。

 俺は変態なんだ。純はそんな気はないのだから。

 会えただけで良いと思わなければ。

「う~ん、まさかの展開にビックリだ。手土産まで持ってきたのに、渡す暇も無かったよ」

 純が持っていた紙袋からカサカサ箱を取り出している。地元では有名なお菓子の詰め合わせだった。

「ちなみに、これホワイトデーね」

 そう言って、丸い小さな箱を出している。自分でリボンを解いた純は、白いチョコレートを取り出した。一つずつ包装されたホワイトチョコレートを開けている。

 そして俺の口に一つを押し込んでくる。

「ちょ、待てって。俺、甘いの苦手で……」

「…………大介」

 口から出そうとしたホワイトチョコレート。それをまるで阻止するかのように純の唇が重なった。そのまま押し倒された俺は、呆然と見上げてしまう。



 ……お、おい。


 これは……何だ……?


 ……お……おお!?


 ちょ……マジか!?


 ありえねぇ……!!



 俺の脳内が大混乱を起こしている。まるで誤作動を起こした機械が緊急停止したみたいだ。体が動かない。

「……ん……もう一個……食べる?」

 口内で溶けたホワイトチョコレート。純の唇にも移っている。

 それはつまり、彼が俺の口内で色々とした訳で。訳が分からず受け止めてしまった俺は、もう、体中の力を抜かれていた。

 新しいホワイトチョコレートは、純の口に入っていく。それを凝視してしまう。

「甘いね~」

 ふふ、と笑った純は、また重ねてくる。俺の顔に覆い被さるように体重を掛けてきた。硬直している俺の頬を撫で、角度を変えては唇を合わせてくる。

 溶けたホワイトチョコレートが流れ込み、甘い匂いに目眩がした。飲み込むと、それはあまりに甘くて、甘すぎて。

 体が震えてしまう。知らず腕が上がっていた。純の背中を抱き締めてしまう。

「……ぁ……はぁ……ん……大介」

 唇に囁かれ、理性が吹っ飛びそうだ。

「……純!」

 抱き締めたまま反転した。俺からキスをしてみる。溶けてしまったチョコレートはもう無いのに、どうしてこんなに甘いのだろう?

 絡めた舌は俺を痺れさせてばかりいる。

 純の息も上がっては、俺の耳を擽った。

「ん……大介……」

 無意識だろうか、俺の頭を撫でている。顔を起こし、少し長い純の髪を掻き上げてやった。

 イケメンと、世間では呼ばれている純。綺麗な顔立ちをしているのに、飾らない男。

「もう一つ、食べる?」

 エロくさい誘いに、乗ってやった。三つ目を掴んだ俺は、包装紙を破ってチョコレートを手にすると、純の唇に置いた。

 見つめ合いながら、唇を合わせた。

 お互いの唇の温かさで少しずつ溶けていく。俺の頭を撫でていた純は、もっと来いと言うかのように体を引き寄せてきた。

 密着すると体がどうしても興奮してしまう。男の性か。

 絡んだ足も、触れ合わせた甘い唇も。

 握り締められた手にも。

 血液が沸騰した。もう、このまま純を抱いてしまいたい。



 ずっと、押し込めてきたから。



 純に会いたいと。



 会って、話して、こうやって触れ合いたいと。



「……良いか?」

「聞かなくても分かるでしょ? すんごい誘ってるじゃん」

「だよな」

「あ、でも……ぁ……」

 里帰りした時にしか会えなかったから。まさかホワイトデーごときで来てくれるなんて思わなかった。彼だって就職準備で忙しいだろうに。

 いくら意地っ張りな俺でも、今日はたまらなく嬉しいと思える。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ハルとアキ

花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』 双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。 しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!? 「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。 だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。 〝俺〟を愛してーー どうか気づいて。お願い、気づかないで」 ---------------------------------------- 【目次】 ・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉 ・各キャラクターの今後について ・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉 ・リクエスト編 ・番外編 ・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉 ・番外編 ---------------------------------------- *表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) * ※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。 ※心理描写を大切に書いてます。 ※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

処理中です...