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番外編
2.First☆lessoN
しおりを挟む*素喜君の主張*
「兄ちゃんだけずるい」
目の前に胡坐をかいて座っている兄・大介に訴えた。
先ほど帰郷した兄を捕まえ、妹達は部屋の外に出てもらい、兄と二人だけで話している。俺はどうしても、納得がいかない。
「んだよ、いきなり」
腕を組んだ兄に、詰め寄った。
「俺、もう十九歳だし」
「エッチはまだ駄目だぞ。約束したはずだ」
「……分かってる。でも! 兄ちゃんだけなんて、やっぱりずるい!」
俺の主張に、兄の顔が仄かに赤くなる。視線を逸らし、唇を引き結ぶとそっぽを向いている。
俺と修治さんを散々反対したのに、立川純と恋人になった挙句、関係まで持っている。兄は隠していたけれど、純からしっかり聞いた。
俺だって、もっと修治さんと触れ合いたいのに、二十歳を超えていないという理由で止められている。修治さんも兄と約束したからと頑なに我慢している。
ずるい。
やっぱりずるい。
「……俺だって……もっと修治さんとあったかくなりたい……」
唇を噛み締めた。俯く俺に、兄が困ったように頭を掻いている。
「あのな、素喜……」
「せめて大人のキスしたい!」
顔を上げて訴えた。引きつった兄の顔に詰め寄っていく。
「エッチが駄目なら、大人のキスまで許してよ、兄ちゃん!」
「だ……駄目だ駄目だ! あれは……や、やべーし……! おま、お前には早い!」
「……したことあるんだ」
「……ぅ!」
「兄ちゃんだけずるいよ! 俺だって修治さん……大好きなのに!」
兄に飛び掛かる。ひっくり返った兄が珍しくもがいた。
俺が知らないことを、兄は知っている。
俺と修治さんは二年以上も付き合っているのに。
まだ甘いキスしかさせてくれないのに。
「………………ずるいよ」
兄の服を握り締めて訴えた。噛み締めた唇は、フルフル震えていた。
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