SweeT&BitteR ~甘く甘く 時に苦く 僕らは恋をする~

樹々

文字の大きさ
上 下
72 / 123
初恋トルネード

5-3

しおりを挟む


***


「……お、落ち着け!! 話せば分かる……!」

「大介……!」

「お……うわっ!?」

 ボヨンと跳ねた自分の体。大きなダブルベッドの上に転がった。

 すぐに純が乗ってくる。危機迫る顔でキスしようとしている。

「待て待て待て!! いきなりラブホってありなのか!?」

「だって……キスしたい!」

「意味分かんねぇよ!」

 彼の顔をわし掴み、なんとか止めた。

 車で連れて来られ、ここは何処なのかと訊ねても教えてくれなくて。人気のないロビーを突っ切るように歩いた彼に手を取られたまま廊下を進んで、あれよあれよと言う間に部屋に連れ込まれた。

 ここがラブホテルだと分かったのは、少ない俺の知識を総動員した結果だ。普通のホテルならロビーで受け付けるはずが、ここはお金を払うだけで鍵が出てきた。普通のホテルではないだろう。

 全体重を掛けてきた純に押さえ込まれた俺も負けてはいられない。しがみ付かれながらも、脱がそうとしている彼の手を取って封じた。

「落ち着け! な!?」

「……大介……!」

「逃げねぇから!」

「…………大介……」

 歯を食い縛っている純を見上げ、そっと胸に導いた。大人しくなった彼が素直に体を預けてくる。ホッとしながら、柔らかい黒髪を撫でた。

 重たい男の体だ。

 それなのに、こんなに惹かれている。

 あんなに素喜と修治を反対した俺が。



 純という存在を求めている。



 グッと奥歯を噛み締めると反転し、彼を見下ろした。

「……スーツ、皺になるよ」

「そうだな……」

「大介……」

「純……」

 緊張しながら唇を重ねた。純が上着を脱がせてくれる。ベッドの下に落としながら、軽いキスを繰り返した。不器用に重ねる俺に合わせるように、純も軽いキスを返してくる。

 ネクタイが解かれた。シュルリと外され、枕もとに置かれている。ワイシャツのボタンを一つ一つ外していった彼は、広げた俺の上半身を見てしみじみ呟いた。

「男だね」

「……お前だって」

「素喜君くらい可愛ければって、すんごい悩んだよ。風邪引いてさ、意識朦朧としてて。目開けたらお前が居て。すんごいビックリして、すんごい落ち込んだ」

「何で落ち込むんだよ」

 ワイシャツがベッドの下に落とされた。今度はベルトを握られている。カチャカチャ言わせながら外した彼は、そこで手を止めた。

「……望み無いって、思ってた。ダチの関係まで潰したくないのに、何でお前の所行っちゃってんだーって。素直になりすぎでしょ? イケメン探偵団なんて番組に出るから、住所調べちゃってたし……まさか無意識に行ってるなんてね」

「確かにな。あの状態で良く来たぜ……」

 高熱のまま、どうやって来たかも覚えていないと言う。

 それだけ俺に会いたかったということだ、と親方や蓮司に言われて、ちょっと照れてしまったのは秘密だ。

「俺、どう見ても男じゃん? 素喜君はさ、可愛い部分があるんだよ。修治の気持ちも分かるくらい、あ、可愛いな~って思えるけど」

 自分でシャツのボタンを外した純は、胸元を広げて見せた。

「俺、それなりにムキムキしてるっしょ。テニスやってるから腕もカチカチだし。せめてこう、艶めかしい肌でもしてれば良いんだけど……」

「……あんま、広げんな」

「だよね」

 自分で自分の胸を撫でて、感触を確かめている純。

 そんな彼を見つめながら、頭の中がガンガン、鳴っていた。

 先輩達の指導を思い出す。



1.キスして


2.胸に触って


3.あそこを触って


4.いざ、合体!!



「……って分かんねぇし!!」

「な、何だよ! ビックリするじゃん!」

 怒鳴った俺を見上げた純がビクッと体を竦めると、ハラリとシャツが捲れて広がった。

 健康的に焼けた両腕とは違い、胸元辺りは少し白い。テニスウェアの部分だけが浮き彫りになって白いままだ。

 何度か見ているはずなのに、ドキドキ、ドキドキ、異常な興奮が俺を支配していく。

「あのさ。とりあずぶっちゅ~して良い? ずっと溜まってたっていうか、妄想するのも限界で」

「……俺も……だ」

「じゃ、遠慮なく……って、大介……? あれ……」

 純のシャツを剥ぎとり、ズボンも剥ぎ取り、下着姿に剥いた。やはり太股から上は白いのに、下は焼けている。

 呆然となった純が横たわっている。のしっと覆い被さりながら、胸の中心にキスをした。

「…………や、優しくしてね」

 硬直したように強張った彼の体に寄り添いながら、硬い太股に触れてみた。撫でながら、顔を上げる。

「……つか、どうすんのか知らねぇんだけど」

「え……ってことは、お互い、初体験だったりする?」

「お前も?」

「う~ん、ちょい怖いかな」

 俺の手を取り、自分の頬に当てている。顔を寄せれば、惹かれるようにキスをしていた。

「……止めとくか?」

「……それもやだ」

「でも……」

「せっかく、俺のために帰って来たんでしょ? すんごい胸キュンだった」

 首にしがみ付いた純は、俺の耳に囁いた。

「すんごい好き」

「……たぶん、俺もだ」

「たぶんは駄目」

「……惚れてる」

「うん」

 耳に噛み付かれ、むず痒い。彼の手が俺の体を下っていくと、ズボンを引き下ろし始めた。

「やってみっか」

「うん」

 体を起こしてズボンと下着を脱ぎ捨てた。純もまた、最後の下着を放り投げている。

 男二人ベッドの上で。

 格闘技さながらに抱き締め合う。

 弾んだベッドの上で、純の体を強く抱き締めた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ハルとアキ

花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』 双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。 しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!? 「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。 だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。 〝俺〟を愛してーー どうか気づいて。お願い、気づかないで」 ---------------------------------------- 【目次】 ・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉 ・各キャラクターの今後について ・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉 ・リクエスト編 ・番外編 ・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉 ・番外編 ---------------------------------------- *表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) * ※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。 ※心理描写を大切に書いてます。 ※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...