SweeT&BitteR ~甘く甘く 時に苦く 僕らは恋をする~

樹々

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番外編

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~*~



「素喜君、ほっぺたにクリーム付いてるよ」

「……ぁっ!」

 口ではなく、頬にケーキを付けてしまった素喜は、慌てたようにティッシュで頬を拭っている。呆然としてしまった修治もまた、口の端にクリームを付けている。

「……大胆だね、純は」

「あはは! 父さんが理解してくれたのが嬉しくてさ。ついつい、襲っちゃった」

「お父さんは下にずっと?」

「そう。親方が引き受けてくれたし、下の階で寝たから。……まあ、気付いてたかもしれないけどね」

 思い出しながらクスクス笑った。

 一戦交えた後、俺達はしばらく部屋に居た。大介の汗が俺にも移っていたので、下の階が寝静まってから、風呂に入った。

 でっかい背中を擦ってやった。俺の背中も擦ってくれた。

 シャワーだけ浴びた後、部屋に戻る時に、トイレから出てきた父さんに会った。三男とかなり飲んだのか、顔が赤味を帯びていた。

 すぐに大介が緊張して、背筋を伸ばすものだから。俺は本気で噴き出した。大介も緊張するのかと思うと笑えた。

 そんな俺を見た父さんも少し笑いながら、大介の背中をポンッと一つ押した。父さんなりの、愛情表現だった。

 部屋に戻った俺達は、改めて布団を敷いた。ようやく緊張の取れた大介が、しみじみと言ったものだ。


『お前の親父さん、男だな』


 と。

 大介の中で、父さんの存在は大きくなったようだった。反対されると思い込んでいたらしい。彼は弟素喜と修治の関係を強く反対した時期があったから。

 俺の父さんを尊敬した大介は、布団に入ってから腰を抱いてきた。

「俺は驚いたよ」

「何が?」

 その時の事を思い出し、顔が崩れて仕方がない。興味津々の二人に見つめられながら、ケーキをツンツンつついた。

「あの大介が……自分から二戦目を申し込んできたんだ……!」

「……え~っと……またしたの?」

 修治の問いに頷きながら、グサッとケーキにフォークを差した。

「……あの夜は燃えた……!!」

 そう、二戦目は凄かった。

 さすがの俺も、後は大人しく寝ていようと思っていたのに。

 大介が服を脱がせてくるから。

 転がしてくるから。

 あんな、エロくさい顔で真剣に言うから……!

「…………恥ずかしい!!」

 フォークを放り投げ、手で顔を覆った。素喜が驚いたように修治にしがみ付いている。修治も素喜を抱き締めると目を見開いた。

「な、何があったの……?」

 勇気を出した修治に聞かれ、俺はもう、崩れ落ちた顔を修復することもできずに笑ってしまう。

「…………内緒」

「ここまで来てそれはないよ、純! 言いたくて来たんだろう?」

「駄目! お前が大介に惚れたらまずい!」

「…………!!」

 俺の言葉に素喜が焦る。修治の耳を両手で塞いでいる。顔を真っ赤にした彼は、俺に何も言うなとフルフル首を横へ振っている。

 言いたい。

 でも知られたくない。

 そんなジレンマと闘いながら、体と心に刻み込まれた大介という存在に、胸が熱くなっている。

「……もう、何のために来たんだか」

 素喜の手を握り締め、耳から離させると引き寄せた。後ろから抱き付く形になった素喜に笑っている。

「僕が大介を好きになるって? ないない。僕の心は素喜君一筋なんだから!」

「…………!」

「大好きだよ、素喜君。大好き。とっても大好き」

 頬を擦り寄せ合う甘いカップルを見つめながら、崩れてしまったケーキを口に運んだ。

 甘い。甘ったるくて幸せだ。


『純。俺は決めた』


 半分ほど減ったコーヒーに、大介の顔が映って見える。


『お前の親父さんに恥じねぇくらい、大事にする』


 じっと、コーヒーを見つめた。ユラユラ、揺れる中で大介の顔がハッキリと映る。


『…………愛してる……すげー好きだ』


 耳に吹き込まれた言葉。

 体中に駆け巡る、電流にも似た甘い痺れ。

「…………たまらん!!!」

 叫んだ俺に、キスをしようとしていた二人が仰け反った。

 俺は残りのコーヒーを一気に飲み干した。

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