SweeT&BitteR ~甘く甘く 時に苦く 僕らは恋をする~

樹々

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番外編

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***



 たくさん笑った僕と純は、山本家を離れて帰っている。すっかり暗くなった外は、車のヘッドライトが行き交っている。

 純の運転する車の中で、僕達は少ししんみりしていた。

「あいつがお前達のこと、すんごい反対してた理由が、なんとなく分かったな」

「うん。お父さんの言葉を守りたかったんだね」

「大介にとって初めての弟で、お父さんが自分を可愛がってくれるのなら、自分は素喜君をって、ずっと大事にしてたんだろうな~」

 だから一番、鍛えていたのだろう。素喜君は不良に絡まれたくらいでは倒れない。むしろ叩きのめしてしまう。

 大事に守っていた弟が、彼女ではなく彼氏を作ってきた。かなりの衝撃だっただろう。

「僕、頑張らないとね! 大介に任せたって、肩を叩いてもらえるように」

「あはは! もう、あいつは修治をとっくに認めてるよ! たぶん、最初っからな」

 ハンドルを切った純は、ニッと笑っている。

「後でラブコールしておこうかな」

「そうしなよ。携帯はどうするの?」

「俺の給料から出して持たせるつもり。あいつは嫌がるだろうけどさ」

 僕と純は、今年大学を卒業した。四月からは新社会人になる。

 僕と、そして今年二十歳になる素喜君は、四月から玩具屋の正社員になることが決まっている。店長さんにはとてもお世話になっているので、二人で頑張ろう、と気合い充分だ。

 ちなみに素喜君の誕生日から、僕達は一緒に住むことになっている。そのために、前もって山本家のアパート近くに引っ越していた僕だった。いつでも会いに行けるように。また、寂しがる下の子達にも、遊びに来てもらえるように。

 純も地元の会社に就職が決まっている。なるべく節約して、大介に会いに行く回数を増やしたいと教えてくれた。

 話しているうちに、すぐに僕のアパートに着いてしまった。歩いていける距離にあるアパートだから。来客用の駐車場に車を停めた純は、ニヤリと笑いながら僕の方を向いた。

「で、ホワイトデーはどうだった?」

「……やっぱり、純が教えたんだね」

「どうしてもドキドキさせたいって言うから。あの子は今、大人になりたくて仕方がないんだろうな~」

 純が笑いながらシートを倒している。僕も真似してシートを倒すと、低い車の天井を見上げた。

「ねえ、純。大介とはどんな感じ?」

「……それ、聞く? のろけるぞ?」

「あはは! 良いよ、のろけても」

 天井を見たまま笑った。純も両腕を頭の下で組むと笑っている。

「すんげー可愛い。あいつは俺のことエロくさいって言うけど、俺からすればあいつの方がエロくさいね。あんな最強男のくせに、俺がちょっと深いキスしたり、体弄るとプルプル震えちゃうし……! 必死になって俺にしがみ付いてくるんだ」

「大介がね~」

「そう、大介がね。正直、受ける側からすれば、ちょい大変だ。お前も素喜君を抱く時は、その辺気を付けろよ?」

「うん。近くなったら色々と教えて」

「まっかせなさ~い」

 トンッと自分の胸を叩いて見せる純に笑いながら、コロリと転がって彼の方を向いた。気付いた純が顔をこちらに向けてくれる。

「……何か言いたそうだな」

「……うん」

「…………もしかして、もう……我慢できなかった……とか?」

 ホワイトチョコレートのことを素喜君に教えた純としては、心配になったようだ。それは大丈夫だと、目を伏せて首を横へ振った。

「エッチは……我慢したよ。でも……」

「でも?」

 純も僕の方へ体ごと向いた。身長の高い男二人が、狭い車の中で身を潜めるように顔を突き合わせる。小声で話す僕に、彼も耳を傾けた。

「……触っちゃった……」

「……息子さん?」

「うん……」

「……で、どうだった?」

 純が冷静に聞くので、僕もなんとか冷静に応えられた。

「…………たまらなかった」

「分かるよ。俺も、あいつの体に触れると興奮しちゃうし」

「二人で、触り合ってみた。つくづく、僕はこの子を抱きたいんだって、思い知らされたよ。良い人の顔が崩れちゃったよ」

 欲望丸だしの顔を、素喜君に見られてしまった。

 誕生日まで我慢すると、あれだけ誓っていたのに。手で触れられただけで、理性が吹き飛びそうになってしまった。

 もっと、もっと違う場所にも触れたい。

 抱き合いたい。

 体が叫んでしまって。

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