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抱き締めても良いですか?~エピソード0~
03-9
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弱かった僕の体。
開花しなかったα性のせいで、どんどん衰弱していった体。
こんな体を、愛歩のΩ性が開花させてくれた。
そのせいで愛歩のヒートは強い。
僕のα性がまだ弱いからだ。
早く全て開花すれば良いのに。
そうすれば愛歩を苦しめずに済む。
こんな僕を。
好きだと言ってくれた。
優しい愛歩が大好きだから。
慎二や茜のように。
僕も愛歩に愛されたい。
もぞもぞと寝返りを打つと、目の前に愛歩の綺麗な顔があった。薄暗くても分かる。顔のパーツが整っていて、格好良くて、綺麗な顔だ。
そして笑うととても優しい目になる。人を真っ直ぐに見つめる愛歩の目が大好きだ。
眠っている顔に触れた。疲れたように眠る愛歩。
高校を卒業した愛歩とは、お互いに番になる約束をしている。僕は今すぐにでも番になりたいけれど、α性が完全に開花していないせいで愛歩のΩのフェロモンに耐えられないと言われている。
僕がαのフェロモンを出して、それに応えた愛歩のΩのフェロモン。ヒートのフェロモンではなかったのに、それすら僕は耐えられなかった。
茜に相談したら、少しずつ慣らしていくと良いと言われた。ヒートの時以外に、そういった雰囲気に出てくる愛歩のフェロモンを浴びているうちに、僕のα性が完全に開花するはずだと言ってくれた。
早く完全に開けば良いのに。
眠る愛歩の頬を撫でてしまう。昨日、ヒートが終わったばかりの愛歩は、すぐに僕の所に戻ってきてくれた。離れている間に僕の充電が切れていないかと心配して。
兄さんには内緒だけれど、今夜は一緒のベッドで眠っている。少しだるくなっていた体は、愛歩が戻るとすぐに元気を取り戻した。
味覚も正常なままだ。少しでも丈夫になりたくてたくさん食べている。愛歩のようには入らないけれど、美味しいご飯に日々、量が増えている。
ぐっすり眠っている愛歩の方へそっと近づくと、逞しい胸板に収まった。長い腕を腰に回してみる。そうするとすっぽり収まった。
愛歩の寝息が頭にかかっている。逞しい腰に腕を回してみた。愛歩からはいつも温かい匂いがしている。
「ぅん……?」
もぞもぞ、寝返りを打とうとした愛歩は、僕が腰に抱きついているせいか寝返りできずにいる。もどかしそうに動くので、残念に思いながら腰を解放した。ごろりと寝返りを打っている。
その広い背中に抱きついた。見える、彼の綺麗な項。無防備に僕に見せている。
いつか、僕のα性が完全に開花して、愛歩に抱いてもらって。
ヒートから解放するために、僕も彼を抱くことになる。
一度だけ、我慢してもらうつもりだった。ヒートから解放したら、愛歩を自由にしたら、抱くことは無いと思っていた。
でも。
子供を作ろうと、愛歩は言ってくれた。僕なら、良いと。
凄く嬉しかった。特別な存在だと言ってもらった気がして。
α性が開花せず、ずっとベッドから起き上がれなかった僕が、愛歩の番として選んでもらえて、子供まで望まれている。
「早く、愛歩君に触れて欲しいな」
子供はもっと先で良い。今は愛歩に愛されたくてたまらない。温かな彼の匂いを思い切り吸い込んだ。
「……眠れないんですけど」
腰に回していた手に、愛歩の手が触れた。
「誘わないで下さいよ、真澄さん」
「起こしちゃった?」
「まあ、こんなにしがみつかれると、ね」
反転した愛歩は僕を抱き込んでくれた。愛歩の首筋にキスをすると笑っている。
「どこで覚えてきたんですか」
お返しに、とおでこにキスされる。大きな手が頬を撫でてくれた。
「ヒート後の敏感な体なんで。真澄さんのαのフェロモンはやばいですね」
「……だめ?」
「うーん、だめと言うか……」
笑いながら首筋にキスしてくれる。
「もし、ヒートがくると真澄さんが危ないから」
「終わったのに?」
「俺のヒート、まだ安定してないですから。そんなに俺のこと好きってフェロモン出されると応えそうで」
鼻先が項にきている。匂いをかいだ愛歩は、僕を抱き込んで瞼を閉じている。
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