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抱き締めても良いですか?~エピソード0~
03-8
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どれほどイッただろう。体中が痺れている気がする。
まだ、愛歩のヒートは収まらなかった。ベッドの中はぐちゃぐちゃになっている。覆い被さっている愛歩の目は恍惚としていて、額からは汗が流れている。
僕はもう、動けなかった。愛歩に触れてもらって、何度もイッて。大きな手が体を這っていくのを感じながら、愛歩の熱を受け止めている。
「ん……ますみさ……」
朦朧とした愛歩がゆっくりと起き上がっていく。立ち上がっていた僕のモノを撫でた愛歩は、濡れている彼の後ろを当ててくる。腰を揺すり、僕を刺激した。まるでそこに入れたいと言うかのように。
「ま、愛歩君!?」
「も……我慢できねぇ……!!」
腰を浮かせている。濡れて敏感になっているそこへ、僕のモノを入れようとしている。
力を振り絞って愛歩の腕を握った。精一杯の力で愛歩を抱き寄せた。
僕のモノは、愛歩の大事な場所を汚さなかった。
「真澄さん……入れたい……!」
「駄目、駄目だよ、愛歩君!」
「苦しい……! 頭が割れそう……! 入れて欲しい……!」
起き上がろうとするのを全身で止めた。両腕と両足で愛歩に抱きついた。
「君が正気じゃない時に、君が後悔することはしたくない!」
「後ろが……熱くてたまらねぇ……!」
「お願い、頑張って、愛歩君……!」
フルフル、腕が震えた。体力の限界だ。ずっと愛歩に触れられているとはいえ、何度もイッた体に力が入らない。
それでも、朦朧とした意識で、Ωの本能だけで入れたいと思っている愛歩を抱くことはできない。
目が覚めた時、きっと後悔する。
僕のことを嫌うかもしれない。
絶対に、嫌だ。
愛歩を傷つけたくない。
「大好きなんだ……君が大好き!」
「真澄さん……!」
「だからお願い、頑張って」
薬で引き起こされたヒートに負けないでほしい。震えている背中を何度も撫でた。
僕にしがみついた愛歩は、長い指で後ろを刺激している。泣き崩れる愛歩を胸に抱き留めた僕は、腫れている前を刺激してあげた。
「大好き、愛歩君が好きだよ」
「……ん! ぅん……!」
「心から君が大好きなんだ」
汗が流れている項にキスをした。ビクッと体を揺らした愛歩は、前と、後ろと、イッている。荒い息をついた愛歩は、力尽きたように僕に全体重を掛けてきた。
「愛歩君?」
僕の薄い胸板に顔を埋めた愛歩の呼吸が少しずつ落ち着いてきた。気絶するように眠っている。ヒートが、ようやく終わったようだ。
「良かった……!」
疲れてはいたけれど、苦しそうにしていた顔は緩んでいる。泣き崩れていた目元は真っ赤だった。
こんなにも、ヒートは苦しいのか。
薬の影響で引き起こされたヒートは数時間で終わった。抑制剤が効かないので、この数時間だけでもこんなにもやつれてしまう。
本当のヒートの時は抑制剤を使うとはいえ、数日、苦しむことになる。愛歩は独りで耐えていたのか。
「早く、解放してあげたい。自由にしてあげたいよ」
茜や慎二も、ずっと苦しんできたのだろう。番が見つからなければずっとヒートを抱えることになる。
浩介の、母のように。
彼女もずっと、苦しんでいた。いつもは元気だったけれど、ヒートの時だけは苦しそうで。終わった後は、やつれ果てていた。
それでも笑顔を絶やさない人だった。僕のことも息子のように可愛がってくれた優しい人。母さんの親友だった彼女は、番を見つけることができなかった。
どうしてヒートなんてあるのだろう。
頬に残っていた涙を拭ってあげた。疲れたように眠る愛歩を抱き締めた。αのフェロモンが愛歩を回復させてくれたら良いのに。僕が助けられているように、愛歩を助けたかった。
「君が僕を番にって思ってくれると良いな」
サラサラしている愛歩の髪を撫でた。
僕の胸で眠る愛歩が、愛しくてたまらなかった。
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