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抱き締めても良いですか?~エピソード0~
エピソード01
しおりを挟む風呂から上がると、先にくつろいでいた番の琴南慎二が、テレビの前に置いているソファーに座ってビールを飲んでいた。その隣に座ると笑いながら振り返っている。
「な、このお笑いコンビってさ、前に見た映画に出てた人だよな」
「そう言えば、見覚えがありますね」
「だよな? さっきからどっかで見たんだよな~って考えててやっと出てきた」
コントをしているお笑い芸人に笑っている。酒に強い慎二は缶ビール一本くらいならすぐに飲み干してしまう。
「まだ飲みますか?」
「浩介も飲むなら飲む」
「私は飲みません」
「……ちぇ」
苦笑しながら空になった缶ビールをテーブルに置いた。まだ濡れていた髪を拭いてやる。
「きちんと乾かさないと風邪をひきますよ」
「平気だって」
間近で笑っている顔が眩しい。彼もまた私の髪を拭いてくれる。
「浩介も濡れてるし」
「私は良いんです」
「お前はそうやっていっつも自分を棚上げするよな。悪い癖だぞ」
「あなたもですよ」
「そうだっけ?」
掻き回すように私の髪を拭いている。ボサボサにあった髪に笑った慎二は、今度は手で綺麗に整えてくれた。
「お前の髪、サラサラで良いな。俺はちょっと癖があるからさ」
目の前に、息がかかりそうな距離に、慎二がいる。見つめてしまう私に気付くと顔を赤くした。
「なあ、お前さ、そうやってまじまじ見るのやめろって」
「……嫌、でしょうか」
「嫌とかじゃなくて……恥ずかしいだろうが」
隣に座り直している。先ほどより距離が近づいた。腕が触れ合っている。
それだけで、体が熱くなってしまう。
我慢しなければと思うのに。
知らず彼の手を握ってしまう。
「ずっと、距離を保たなければと思っていました」
「……ぅっ」
「こうして、あなたに触れても良いのだと、側に居ても良いのだと思うと……すみません」
手を、放した。
抑えが効かず、毎日のように求めてしまっている。警察官として働いている慎二の体力を思うと、今日はゆっくり寝かせてやりたい。
側に居られるだけで幸せなのだから。せめてキスをと、了解を得ようとした私の頬を慎二が掴んだ。唇が重なっている。
「ああもう! そんな顔されたらたまんねぇだろうが!」
膝に飛び乗ってくる。耳たぶに甘噛みされて身が竦んでしまう。息と共に言葉が吹き込まれる。
「我慢するな」
しがみつく慎二を抱え上げ、ベッドへ降ろした。着ていたジャージを脱がせていく。
「毎晩、抱いてしまって申し訳ありません……!」
「ははっ! 今まで何だったんだろうな!」
私が着ていたパジャマを脱がせてくれる。互いに裸になると、相手の体を愛撫した。私の体を這っていく慎二の手は、すでに反応していたモノを握っている。
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「……気付いて?」
「ああ。俺って何なんだろうなって。番になったのに、求められないって虚しくてさ」
グッと握ってくる。緩急をつけて握られ、顔に血が昇っていく。慎二の肩に顔を埋めてしまう。
「その頃に比べれば、毎晩求められた方が良いっていうか。お前が俺に夢中になってるの、良いなって……ぁっ!」
慎二の項を舐めると身を竦めている。今度は私が彼に触れた。反応していたモノを揉んでやると息を乱していく。後ろに触れると、もう濡れていた。痛くないよう、丁寧に広げていく。
「だいじょうぶ……だって! 毎日、してんだ……!」
「いいえ。痛い思いをさせたくありませんから」
広げ、充分に濡れていることを確かめた。両足を抱え上げると力を抜いてくれる。ゆっくりと入っていくと、もどかしそうに仰け反っている。
「ぁっつ!」
綺麗な筋肉がついている胸板から汗が噴き出している。覆い被さると中を行き来した。すぐに慎二の手が私の首にしがみついてくる。私を見つめ、笑ってくれる。
「上達……ぅん、したよな」
「ここ、好きですか?」
「気持ちいい……!」
奥を突くと顔が上気していく。快楽に素直に感じてくれる慎二を見ていると、私も抑えが効かなくなる。何度も奥を突いてしまう。慎二から感じるフェロモンは、いつしか匂いを変え、甘く誘ってくるようになった。
「なあ、ぅん……! 覚えてる……か?」
私の項を撫でた慎二は、耳に息と言葉を吹き込んでくる。
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