抱き締めても良いですか?

樹々

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抱き締めても良いですか?

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 頼んでいたルームサービスの料理が届くと真澄を抱き上げた。椅子まで運んであげる。
 テーブルにはサンドイッチと肉料理が並んでいる。分厚い焼きたてのステーキが良い音をたてている。
「一枚挟みますね」
「頑張る。いっぱい食べて、肉付き良くするから」
「そうそう、その意気ですよ」
 真澄用のサンドイッチに切り分けたステーキを一枚挟んでやる。それに噛みついている。俺もステーキを頬張った。
「やばっ! うまっ!」
 桃ノ木家の料理も美味かったけれど、こんなに柔らかい肉は初めてだった。口いっぱいに詰め込んでしまう。
「マジやばいっすね!」
 頬を腫らして食べる俺に吹き出している。
「付いてるよ」
 ステーキのタレが口の端に付いていたのだろう、真澄が指で拭ってくれた。自分の指に付いたタレを口に運んでいる。
「真澄さんももっと食って下さいね」
「……あれ、ドキドキしない?」
「ドキドキ?」
「……頑張る」
 何か真剣な顔をしている真澄はサンドイッチを頬張った。不思議に思いながらも、残りのステーキを口に詰め込んでしまう。
 美味かった。真澄もなんとかサンドイッチを食べ終えている。
「あ、真澄さんも付いてますよ」
 サンドイッチに噛みついた時にタレが零れたのだろう。口の端に付いていたタレを指で拭った。もったいないので俺の口に入れてしまう。見ていた真澄の顔が真っ赤になっていく。
「……もう! 何でそんなにエッチなの!」
「エッチ?」
「愛歩君、格好良いんだからね! 気をつけて!」
「……何ですか、それ」
 よく分からないけれど真澄がそっぽを向いてしまった。その頬にもタレが付いている。指で拭うと怒られるので、キスをして舐め取った。これならどうだ。
「……愛歩君の超エッチ!」
「何でグレードアップしてるんですか」
「……トイレ行ってくる」
 真っ赤な顔のまま立ち上がった真澄は、すぐにへたれるように座り込んでしまう。息切れを起こしたように蹲ってしまったので慌てて抱き起こした。
「充電切れですね。歯磨いてすぐに寝ましょう……って」
 ぐったりしている真澄の下が腫れている。何故だ。
「……も、愛歩君がエッチだから……!」
 もぞもぞしているけれど、疲れがピークにきたのか自分で処理できないでいる。息を乱している真澄を抱え上げるとベッドへ連れて行った。
「なに、俺の何がそんなにエッチなんですか?」
 着せていたバスローブを捲りながら腫れている場所に触れた。俺からのフェロモンが出ないよう気をつけながら抱き締める。胸に顔を埋めた真澄が真っ赤になっていく。
「指に付いたタレを舐めてる姿、すっごくエッチ!」
「言われたことないけど……」
「セクシーって言うか……! 格好良くて……! ぁっ!」
 俺の手の中で弾けている。もう、体力の限界が来たのだろう、ぐったりしてしまった。タオルで綺麗にしてあげるとバスローブをきちんと着せてやる。
「もしかして、この間も立ったんですか?」
「……愛歩君がエッチなんだもん」
 チョコレートを食べている時、急にエッチと言われて驚いたけれど。指を舐めた姿がそれほどツボに入っているとは思わなかった。
「気をつけます。毎回、真澄さんが勃起してたら体もたないですから」
「……時々は、してね?」
「どっちなんですか」
 吹き出してしまった。全身で抱き締めてやる。
「補給したら歯、磨いて寝ましょう」
「うん……」
「まだ寝ちゃ駄目ですよ?」
「もう、子供扱いしないで」
「だって、うとうとしてるから」
 睡魔と闘い始めた真澄の背中をポンポン叩いて寝かせないようにした。少し体力を回復させたらすぐに歯磨きをさせないと。
「愛歩君って、時々お母さんみたい……」
「Ωですから」
「あったかい……」
 すり寄られ、俺も抱き返す。
 頼ってくれるこの人を守りたい。
「大好き、愛歩君」
「俺も。真澄さんが好きです」
 出会った頃より肌艶が良くなったおでこにキスをした。顔を上げた真澄の、紅い唇にもキスをした。
 重なった唇は、嬉しそうに笑っていた。





抱き締めても良いですか?

第一部

おわり

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