120 / 152
抱き締めても良いですか?
37-3
しおりを挟む頼んでいたルームサービスの料理が届くと真澄を抱き上げた。椅子まで運んであげる。
テーブルにはサンドイッチと肉料理が並んでいる。分厚い焼きたてのステーキが良い音をたてている。
「一枚挟みますね」
「頑張る。いっぱい食べて、肉付き良くするから」
「そうそう、その意気ですよ」
真澄用のサンドイッチに切り分けたステーキを一枚挟んでやる。それに噛みついている。俺もステーキを頬張った。
「やばっ! うまっ!」
桃ノ木家の料理も美味かったけれど、こんなに柔らかい肉は初めてだった。口いっぱいに詰め込んでしまう。
「マジやばいっすね!」
頬を腫らして食べる俺に吹き出している。
「付いてるよ」
ステーキのタレが口の端に付いていたのだろう、真澄が指で拭ってくれた。自分の指に付いたタレを口に運んでいる。
「真澄さんももっと食って下さいね」
「……あれ、ドキドキしない?」
「ドキドキ?」
「……頑張る」
何か真剣な顔をしている真澄はサンドイッチを頬張った。不思議に思いながらも、残りのステーキを口に詰め込んでしまう。
美味かった。真澄もなんとかサンドイッチを食べ終えている。
「あ、真澄さんも付いてますよ」
サンドイッチに噛みついた時にタレが零れたのだろう。口の端に付いていたタレを指で拭った。もったいないので俺の口に入れてしまう。見ていた真澄の顔が真っ赤になっていく。
「……もう! 何でそんなにエッチなの!」
「エッチ?」
「愛歩君、格好良いんだからね! 気をつけて!」
「……何ですか、それ」
よく分からないけれど真澄がそっぽを向いてしまった。その頬にもタレが付いている。指で拭うと怒られるので、キスをして舐め取った。これならどうだ。
「……愛歩君の超エッチ!」
「何でグレードアップしてるんですか」
「……トイレ行ってくる」
真っ赤な顔のまま立ち上がった真澄は、すぐにへたれるように座り込んでしまう。息切れを起こしたように蹲ってしまったので慌てて抱き起こした。
「充電切れですね。歯磨いてすぐに寝ましょう……って」
ぐったりしている真澄の下が腫れている。何故だ。
「……も、愛歩君がエッチだから……!」
もぞもぞしているけれど、疲れがピークにきたのか自分で処理できないでいる。息を乱している真澄を抱え上げるとベッドへ連れて行った。
「なに、俺の何がそんなにエッチなんですか?」
着せていたバスローブを捲りながら腫れている場所に触れた。俺からのフェロモンが出ないよう気をつけながら抱き締める。胸に顔を埋めた真澄が真っ赤になっていく。
「指に付いたタレを舐めてる姿、すっごくエッチ!」
「言われたことないけど……」
「セクシーって言うか……! 格好良くて……! ぁっ!」
俺の手の中で弾けている。もう、体力の限界が来たのだろう、ぐったりしてしまった。タオルで綺麗にしてあげるとバスローブをきちんと着せてやる。
「もしかして、この間も立ったんですか?」
「……愛歩君がエッチなんだもん」
チョコレートを食べている時、急にエッチと言われて驚いたけれど。指を舐めた姿がそれほどツボに入っているとは思わなかった。
「気をつけます。毎回、真澄さんが勃起してたら体もたないですから」
「……時々は、してね?」
「どっちなんですか」
吹き出してしまった。全身で抱き締めてやる。
「補給したら歯、磨いて寝ましょう」
「うん……」
「まだ寝ちゃ駄目ですよ?」
「もう、子供扱いしないで」
「だって、うとうとしてるから」
睡魔と闘い始めた真澄の背中をポンポン叩いて寝かせないようにした。少し体力を回復させたらすぐに歯磨きをさせないと。
「愛歩君って、時々お母さんみたい……」
「Ωですから」
「あったかい……」
すり寄られ、俺も抱き返す。
頼ってくれるこの人を守りたい。
「大好き、愛歩君」
「俺も。真澄さんが好きです」
出会った頃より肌艶が良くなったおでこにキスをした。顔を上げた真澄の、紅い唇にもキスをした。
重なった唇は、嬉しそうに笑っていた。
抱き締めても良いですか?
第一部
おわり
0
お気に入りに追加
341
あなたにおすすめの小説
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
見つめ合える程近くて触れられない程遠い
我利我利亡者
BL
織部 理 は自分がΩだということを隠して生きている。Ωらしくない見た目や乏しい本能のお陰で、今まで誰にもΩだとバレたことはない。ところが、ある日出会った椎名 頼比古という男に、何故かΩだということを見抜かれてしまった。どうやら椎名はαらしく、Ωとしての織部に誘いをかけてきて……。
攻めが最初(?)そこそこクズです。
オメガバースについて割と知識あやふやで書いてます。地母神の様に広い心を持って許してください。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
俺の番が変態で狂愛過ぎる
moca
BL
御曹司鬼畜ドSなα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!!
ほぼエロです!!気をつけてください!!
※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!!
※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️
初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀
森の中の華 (オメガバース、α✕Ω、完結)
Oj
BL
オメガバースBLです。
受けが妊娠しますので、ご注意下さい。
コンセプトは『受けを妊娠させて吐くほど悩む攻め』です。
ちょっとヤンチャなアルファ攻め✕大人しく不憫なオメガ受けです。
アルファ兄弟のどちらが攻めになるかは作中お楽しみいただけたらと思いますが、第一話でわかってしまうと思います。
ハッピーエンドですが、そこまで受けが辛い目に合い続けます。
菊島 華 (きくしま はな) 受
両親がオメガのという珍しい出生。幼い頃から森之宮家で次期当主の妻となるべく育てられる。囲われています。
森之宮 健司 (もりのみや けんじ) 兄
森之宮家時期当主。品行方正、成績優秀。生徒会長をしていて学校内での信頼も厚いです。
森之宮 裕司 (もりのみや ゆうじ) 弟
森之宮家次期当主。兄ができすぎていたり、他にも色々あって腐っています。
健司と裕司は二卵性の双子です。
オメガバースという第二の性別がある世界でのお話です。
男女の他にアルファ、ベータ、オメガと性別があり、オメガは男性でも妊娠が可能です。
アルファとオメガは数が少なく、ほとんどの人がベータです。アルファは能力が高い人間が多く、オメガは妊娠に特化していて誘惑するためのフェロモンを出すため恐れられ卑下されています。
その地方で有名な企業の子息であるアルファの兄弟と、どちらかの妻となるため育てられたオメガの少年のお話です。
この作品では第二の性別は17歳頃を目安に判定されていきます。それまでは検査しても確定されないことが多い、という設定です。
また、第二の性別は親の性別が反映されます。アルファ同士の親からはアルファが、オメガ同士の親からはオメガが生まれます。
独自解釈している設定があります。
第二部にて息子達とその恋人達です。
長男 咲也 (さくや)
次男 伊吹 (いぶき)
三男 開斗 (かいと)
咲也の恋人 朝陽 (あさひ)
伊吹の恋人 幸四郎 (こうしろう)
開斗の恋人 アイ・ミイ
本編完結しています。
今後は短編を更新する予定です。
【R18】番解消された傷物Ωの愛し方【完結】
海林檎
BL
強姦により無理やりうなじを噛まれ番にされたにもかかわらず勝手に解消されたΩは地獄の苦しみを一生味わうようになる。
誰かと番になる事はできず、フェロモンを出す事も叶わず、発情期も一人で過ごさなければならない。
唯一、番になれるのは運命の番となるαのみだが、見つけられる確率なんてゼロに近い。
それでもその夢物語を信じる者は多いだろう。
そうでなければ
「死んだ方がマシだ····」
そんな事を考えながら歩いていたら突然ある男に話しかけられ····
「これを運命って思ってもいいんじゃない?」
そんな都合のいい事があっていいのだろうかと、少年は男の言葉を素直に受け入れられないでいた。
※すみません長さ的に短編ではなく中編です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる