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抱き締めても良いですか?
37.大好き
しおりを挟む高級ホテルの最上階、スイートルームに足を踏み入れると、大きな窓から夜景が飛び込んできた。思わず走ってしまう。
「すっげー!」
俺の背よりも高い大きな窓は開放感がある。外から中は見えなかったけれど、室内からはこんなにも見渡せるのか。
「綺麗ですね、真澄さん!」
隣に居ると思って振り向いたけれど、真澄は居なかった。部屋の中に設置されているテーブルの側で固まっている。
「真澄さん?」
「こ、怖くない?」
足が竦んでいる。大きな窓から広がる夜景に近づけないでいる。
観覧車も怖がっていた。高い所に行ったことがない真澄には、この高さは未知のもの。
「ん!」
両腕を広げた。握り拳を作った真澄が、意を決したように走ってくる。俺の胸に飛び込んで来たのを受け止めた。
「俺が居るから」
「……うん」
全力で抱きつく真澄を全力で受け止める。震えが止まるまで待つと、背後から抱き締めなおして夜景を見せてやった。
「綺麗でしょう?」
「うん」
「ほら、観覧車も見える」
「本当だ! あんなに高かったんだね」
背後から抱き締める俺の手をギュッと握っている。離さないで、と言われているようで、細い肩に顎を乗せた。
「高さに慣れたら、ジェットコースターも経験しましょう」
「……今日、乗ったよ?」
「あれは子供用。まあ、あの高さも怖がってたんで、ゆっくり慣らしていきましょう」
まずは一日、動いても大丈夫なくらい体を丈夫にしていく方が先だ。白い頬にキスをすると抱き上げる。横抱きにした俺に潤んだ瞳が見上げてくる。
大きなベッドにそっと降ろした。俺も一緒に寝転んでしまう。真澄が甘えるように頬を寄せてくる。
「愛歩君……」
「変態兄さんの期待を裏切って悪いけど、今日、真澄さんと初エッチはしませんから」
「……え!?」
豪華な部屋、大きなダブルベッド。瑛太の魂胆は見え見えだ。真澄の初めてを豪華に着飾りたいのだろうが。
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「だ、大丈夫だよ! 少し休めば……」
「真澄さん」
胸に抱き込んだ。真澄の首筋は良い匂いがする。細い腰を撫で、肉付きが良くなったお尻を揉んだ。
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「俺も、真澄さんがめっちゃ気持ち良くなるよう、シュミレーションしておくんで」
頬にキスをした。綺麗なおでこにも。良い匂いのする首筋にも。
キスをしながら着ていた上着を脱がせていく。シャツのボタンも外していく。
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「いや、本番は真澄さんの体力持たないと思うんで我慢します」
「う、うん?」
「でも、ふっくら具合は確かめたいじゃないですか?」
シャツを脱がせると、出会った頃より肉付きが良くなった体が現れる。ヒートの最中、見ていたはずなのにあまり覚えていなかったから。
「あ、結構、育ってますね」
「ぼ、僕だけずるいよ。愛歩君も……見せて」
「じゃ、脱がせて下さい」
覆い被さっていく。真澄が俺のトレーナーに手を掛けた。引っ張り上げてくる。脱ぐのを手伝うと、俺の裸を見て真っ赤になっている。
「てか、ヒートの時、めっちゃ見てますよね?」
「あ、あの時は必死だったもん。愛歩君が苦しそうで、それどころじゃなくて……」
直視できないのか、チラチラと視線が飛んでくる。吹き出しながら抱き締めた。真澄の体温は俺より少し高い。ズボンに手を掛けると一気に脱がせていく。
「苦しくなったり、きつくなったら言って下さい」
「うん」
「変態兄さんが言ってたから。この前のヒートの時は真澄さんには影響しないフェロモンだったけど、普通はαを誘うフェロモンが出るのがΩだから」
「僕もそこは釘を刺されたよ」
俺の胸にそっと手を当ててくる。筋肉を確かめるように撫でた真澄は、背中に腕を回してくる。
「まだ僕は、愛歩君の強烈なフェロモンには耐えられないだろう、って」
「俺もそう、思います」
「でも……それでも、僕は君に触れて欲しい」
細い体が抱きついてくる。俺の項の匂いを嗅ぐように鼻先を押し当ててくる。
「大好きだから」
「……やばい、真澄さん、めっちゃ良い匂いしてる」
「だって……愛歩君から良い匂いがしてるから」
お互いに項の匂いを嗅ぎ合った。触れた胸はまだ薄い。小さな突起を転がすように触る俺に擽ったそうにしている。
下に手を這わせた。緩く立ち上がってくる。真澄の手も、俺のモノに触れている。
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