抱き締めても良いですか?

樹々

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抱き締めても良いですか?

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「もう少し、吸い出してほしい」
「……はい」
 小さく頷いた茜は、繋がったまま腰を振っている。自分で自分の良いところを突いて、私の唇を奪うようにキスしてくる。茜の小さな喘ぎ声を聞きながら瞼を閉じた。だらりと力を抜いた私を慰めるように茜が動いている。
 緩急をつけて腰を振った茜は私の項に噛みついている。搾り取るように力を入れられると彼の中に怒気と一緒に吐き出した。
「……ありがとう、茜さん」
「少しは気が紛れましたか?」
「うん。愛されてるね、私は」
 茜の腰を持ち上げ自身を抜いた。放ったモノが溢れてくる。気にせず膝に抱いた。大人しく私の腕の中に居てくれる。
「私は医者向きじゃないんだろうね。どんな患者でも助けたいなんて言えないよ」
「瑛太さんの腕は、患者さんにとって必要です」
「……そう、なのかもしれないけど。正直なところ、あいつのあそこは治したくなかったな」
 あれが、Ω達を傷つけてきたのだから。潰したままにしておきたかった。
「自分の腕が憎いよ」
「沢村さん、本気で碕山を……?」
「琴南さんが止めてなかったら、ね。浩介君の地雷を踏んだんだろう。側に琴南さんがいてくれて良かった」
 もし、浩介が碕山を手に掛けていたとしたら。思うとぞっとする。浩介の腕力なら簡単にやれてしまうだろう。
 止められるとしたら私か慎二くらいだ。浩介の暴走を止めてくれた慎二に心から感謝する。
「二人に、ラブラブプレゼントしないとね」
「ラブラブプレゼント?」
「嫉妬大作戦で迷惑かけたし、浩介君を止めてくれたし。真澄と愛歩君に贈るプレゼントと同じものを用意しようと思う」
 そして、私の怒気を吸い取ってくれた茜のサラサラした髪を撫でた。
「茜さんとは久しぶりに旅行に行きたいな。一泊して、のんびりして、子作りしよう!」
「……のんびりは賛成ですけど、子作りは必要ありませんよ?」
 私の肩に顔を埋めている。そこへ囁かれた。
「もう、居ますから」
「…………えっ!!?」
 声が裏返ってしまう。茜の顔を覗き込むと、白い肌を赤くしていた。
「……二ヶ月です」
「え!! ええっ!? 早く言ってよ!! え、今の大丈夫かな!? 激しくしちゃったじゃない!!」
 怒りに任せて抱いてしまった。慌てる私に笑っている。
「順調ですから。まだ油断はできないけど、あれくらい平気です」
「本当に、ここに、私の子が? ああ、駄目だ! 体が冷えたら大変!」
 脱がせたままだ。体を拭いてやると急いで服を着せた。向かいのソファーに座らせ手を握った。
「代理の先生を探さないと」
「大丈夫ですよ」
「ダメダメ! 茜さん、体が弱いんだから。安静にしないと」
「大袈裟ですよ」
「だって、私達の子だよ?」
 ずっと、茜との間に子供が欲しかった。このお腹の中に子が居るのかと思うと顔がニヤけてしまう。
「……良かった。瑛太さんの目が戻ってる」
「子供に怒り顔は見せられないよ」
「安定期に入ったら言おうって思ってて。良かった、こんなに喜んでもらえて」
「喜ぶさ! 出産は私も立ち会うからね。安心して任せてほしい」
「はい」
 笑っている茜にキスをした。そのまま抱き締めてしまう。
 旅行は子が生まれてから三人で行こう。茜の体に負担が掛からないよう、暫くは抱き合えないけれど、子のためだ。無事に生まれてくるまで守らなければ。
「男の子かな、女の子かな」
「どっちが良いですか?」
「茜さんに似た女の子も良いし、私に似た男の子も捨てがたい」
「瑛太さんに似た女の子も可愛いですよ、きっと」
「ダメダメ。女の子なら絶対、茜さんに似ないと!」
 かなり可愛い子になるはずだ。ああ、でも、成長したら心配でたまらなくなるのだろうか。彼氏ができたら尻を叩いてしまうかもしれない。
「男の子でも女の子でも、歓迎するよ。ああ、嬉しいな~!」
 茜のお腹をさすってしまう。擽ったそうに笑った茜は、私を抱き締めてくれた。
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