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抱き締めても良いですか?
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今日は定時で上がれた。浩介が作ってくれた夕飯を食べ、風呂にも入り、二人ソファーでくつろいでいた。
俺はビールを飲んでいるけれど、浩介はお茶を飲んでいる。飲みかけの缶ビールをスッと口元へ持っていった。
「ん」
「飲みません」
「一口」
「できません」
押し戻されてしまう。残念、思いながら一気に飲み干した。ゴクゴク音を立てて飲む俺を見つめた浩介は、次を取ってこようとしている。
「今日はもういいよ」
浩介を座らせ、その硬い膝に寝転んだ。本当に筋肉の塊でできている。太腿に頭を乗せた俺を見下ろした浩介は、戸惑うように見つめてくる。
「どうしたい?」
「……撫でても?」
「お前が撫でたいなら、撫でたら良いさ」
ソファーからはみ出した足をだらりと下げている俺の顔に、大きな手が触れた。頬をゆっくり撫でてくる。
「あなたはお酒に強いですね」
「まあ、しょっちゅう飲んでるからな。呼び出しがあるかもしれない時は控えるけど」
「……泣かせたくないんです」
目元を親指が掠めていく。その手を取ると笑った。
「あの日は俺が悪いだろ? 無理矢理飲ませたんだから」
「それでも、私が下手だから、あなたの様子をきちんと見ていなかったから……」
「あのなー浩介。何でも最初から出来る奴なんていないだろう? 俺だってお前が初めてで、どうしたら上手くいくかなんてわかんないけど」
大きな手を自分の胸に持っていく。
「お互いさ、気持ちが良いとこ探してさ。あったまったら良いんじゃない?」
「……あなたはどこが良いですか?」
手が、ティシャツの襟元から滑り込んでくる。直に触れられる。
「そうだな。今のとこ、お前が夢中になって俺に吸い付いてくるのが良いな」
「……吸いつく?」
「してる時だけは俺を誰にも渡さないって、羽交い締めにしながらやるのも良いな」
「……羽交い締め?」
「まあ、お前しか知らないから、比べようもないけどな」
杉野に聞いてみようかと思ったけど、相手は女性だから。男同士とは違うだろう。それに、聞いたかぎりでは、杉野の彼女は小さい。小柄だと聞いている。長身の杉野と小柄な彼女はかなり身長差があるらしい。子犬みたいに周りをウロチョロしているのが、いつの間にか可愛いと思うようになったとでれていた。
瑛太と茜は、どうだろう。同じ男Ωの茜は、俺から見ても美人だ。俺とは真逆にいる人だ。か弱くて、守ってやりたくなる。どんな風にやっているのか、聞いてみたいがさすがに聞けない。
「ま、俺達は俺達で良いんじゃない?」
「……私はそんなに吸い付いていますか?」
「最近はな」
「痛くはないですか? 苦しいですか?」
心配そうに見下ろされる。その顔を掴むと引き寄せた。軽くキスしてやる。
「痛かったちゃんと言うから。俺も、もう遠慮しないから」
「……はい」
「お前の心配性、かなりだな」
笑っている俺を抱え上げてくる。抱き上げられた体はベッドへ連れて行かれた。唇を重ねながら脱がせてくる。浩介のパジャマに手を掛けるとボタンを外していった。
「言い忘れる所でした」
「……ん? 何?」
はだけた肩に甘噛みしていると、下を脱がせながら耳に唇を寄せてくる。
「クリスマス会をしたいと、桃ノ木様がおっしゃっています」
「ぅん……耳元でしゃべんな。感じるだろ」
「……耳、好きですか?」
「ゾクゾクする」
少し震えた俺に、また耳に話し掛けてくる。
「二十五日、仕事は何時からですか?」
「若い奴と変わってやったから、夜勤だよ。夕方五時出勤」
「桃ノ木様と寺島様も夜勤ですので、お昼からなんですが」
「待て……! もう、そこでしゃべんな……! お前の声、響くから……!」
鼻先が項に触れているのでくすぐったくてたまらない。腰を抱き寄せられながら、耳たぶにキスをされた。甘噛みまでされてしまう。
「……もう、こんなに濡れています」
「嬉しいか?」
「はい」
おでこに吸い付いた浩介は、指で広げてくる。足を広げると、浩介が入ってきた。いつの間に立たせていたのか、奥まで押し入ってくる。力一杯抱き込まれると、奥をこねられた。腹筋も二の腕も、バッキバキの浩介に抱き込まれると、身動きできなくなる。何度も奥をこねられ、彼の首に抱きついた。
「前……触ってくれ!」
大きな手が握ってくれる。仰け反る俺の首筋に唇が触れる。跡が残らないよう、柔らかく啄まれ、たまらない。
「ぁ……ぁっ! 浩介……!」
「きつかったら言って下さい」
「たまんねぇ……!」
顔を引き寄せると唇を奪った。求める俺に応えてくれる。キスをしていると、頭の芯がぼやけてくる。何も考えられなくなる。
体を重ねるごとに、浩介を深く感じるようになった。抱き込まれる体が、男として生きてきた俺をまるごと包み込んでくれるような錯覚が起きる。
Ωで、良かったと思えるほどに。
この男の腕の中は安心した。
「俺……!」
「好きです」
弱い耳に囁かれた。浩介を締め付けながらイッてしまう。浩介も俺の中でイッた。震えてしまう俺を宥めるように大きな手が背中を撫でている。
「お前……エロくなってきたな」
「……えろく、とは?」
「分かんなくて良い。嫌な方じゃないから安心しろ」
むしろ、歓迎というか。抜かれた刺激にまた震えてしまう俺を見つめた浩介は、事後処理をテキパキこなしていく。俺の体を拭き、中を拭い、脱がせたパジャマ代わりのティシャツとジャージを着せてくる。
「眠って下さい。疲れているようですので」
「お前も疲れてるだろう?」
「いえ、片付けを済ませてきますので」
「待てって。俺を一人寝かせる気か? くっつかせろよ」
「しかし……」
「明日、ちょっと早起きして片付ければ良いって。俺も起きるし」
浩介を捕まえた。裸の彼の体を拭いてやる。自分でやると言って抵抗するので、唇を塞いでやった。そのまま拭き上げていく。パジャマ派の彼に着せた。
「よし、寝るぞ」
「……はい」
仰向けになっている浩介を抱き枕にしてやる。しがみつく俺に困惑している。
「あの……?」
「寒いからさ」
「大丈夫ですか?」
俺の肩が埋まるまで布団を引き上げている。自分の肩は出ているくせに、俺を優先してくれる。
「こうしてくっついて寝るの、憧れてたんだよ」
「そう、なんですか?」
「でも俺は男だろ? お前がこういうの、嫌だったらどうしようとか、考えてて。女みたいなことしてんじゃねぇ、とか思われたら最悪だなって」
「思いません。あなたがしたいことなら、何でも」
甘やかしの天才か。布団をもう少し引き上げると、浩介の肩にも掛けてやった。遠慮がちな腕が、俺の腰に回る。
「お前がしたいことも、して良いから」
「……はい」
お互いに、向かい合うようにして眠った。腰に回った重たい浩介の腕は、いつしか俺を引き寄せていた。
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