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抱き締めても良いですか?
13.もりもり食べてもらいましょう
しおりを挟む二度目のヒートを迎えた。予定より数日早い。体が焼けるように熱かった。
真澄の部屋から病院に着くまでの間、抑制剤を飲んでいたのに震えが止まらなくて。ベッドに寝かされても、苦しくて仕方が無かった。
Ωの女性医師が、もう少し強い抑制剤を投与してくれた。そうすると少し落ち着いた。こもる熱は相変わらずだけれど、意識が朦朧とすることはなくなった。
*真澄と繋がりたい……抱かれたい……!
「うっせーな……誰の声だよ……」
収まっていた波が再び来る。前をしごいてやりながら、後ろも弄ってやる。こんな姿、有紀には見せられない。無心に熱を発散させていく。
何度目の波をやり過ごしただろう。スマホのアラームを頼りに抑制剤を飲む。これを飲むと数時間だけ落ち着くことができる。その間に体を綺麗にしたり、軽く食べたりしている。
番を持たない世のΩ達は皆、こんな生活を送っているのだろうか。
番が居ればこんな生活から解放されるのか。
「ぅっ……」
そろそろ抑制剤が効いてくる頃だ。ぐちゃぐちゃになっているベッドのシーツを換えたい。簡単に換えられるように四隅を結ぶだけで良いようになっている。
すうっと息が楽になるのを感じた。体の熱が少し引いていく。数時間だけの自由時間の内に片付けてしまおう。
シーツを換え、簡単に体も洗った。どうせ服を着ることはできないので、そのままベッドに戻る。何か口に入れておきたいと、ドアの下にある小窓を見つめた。差し入れられたお盆の上にはサンドイッチと水が置かれている。
フラフラと取りに行く。Ωの看護師とはいえ、この姿は見られたくはない。サンドイッチと水を手に取ると急いで口に入れた。
歯を磨きたいが、口の中が敏感になっている。水で濯ぐだけで我慢した。換えたシーツを小窓の側に置いた俺は、お盆の上に置かれているタオルと枕カバーに気がついた。
換えのタオルだろうか。何で枕カバーまであるのだろう。
タオルは病院が使っている物とは違い柄が入っている。手にしてみると、ふわりと良い匂いがした。枕カバーからはもっと良い匂いがしている。
「……んだ、この匂い……」
無意識に顔を埋めてしまう。フラフラとベッドに戻ると、タオルと枕カバーから香る匂いを吸い込んだ。どうしてだろう、この匂いを嗅いでいると落ち着く。懐かしい匂いだ。
「気持ち……いい……」
タオルと枕カバーに顔を埋めたまま、再び訪れた熱の波に飲み込まれていった。
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