8 / 152
抱き締めても良いですか?
2-4
しおりを挟む「真澄君!?」
顔が真っ赤になっていた。高校生の方は緊急抑制剤が効いているのか、フェロモンの量は抑えられている。呼吸が乱れているが、これは仕方が無い。腫れている下が苦しそうで、同じ男Ωとしてこれから先の彼を思うと辛くなる。せめてズボンのベルトを緩め、楽にしてやった。
α用の緊急抑制剤を真澄にも打ってやると、ぼんやりと瞼を開けている。
「慎二……さん?」
「どうした? まさかフェロモンに当てられたのか?」
「分かりません……でも、下が苦しくて……!」
「……え」
「どうしよう……僕、初めてで……!」
意識はしっかりしているようだが、下が腫れている。俺が知る限り、真澄は男としての反応が無かったはずだが。
とにかく引き離さなければと抱え上げた。杉野が待機しているパトカーの後部座席に寝かせてやる。
「杉野、もう一台救急車を呼んでくれ。この子を頼む」
「はい」
「ぼっちゃん!?」
年配の男性がよろめきながら走ってきていた。手にスポーツドリンクを持っている。
「桃ノ木家の方ですか?」
「は、はい!」
「真澄君を頼みます。様子がおかしいので救急車を呼んでいます」
判断ミスだっただろうか。真澄がΩのフェロモンに反応してしまうなんて。意識の混濁はみられなかったけれど、もし、意識障害が出てしまったら取り返しがつかない。
「先輩、この子熱が出てる!」
「冷やせる物はあるか?」
「あ、これ、これは冷えていますから」
年配の男性が額にスポーツドリンクを当ててやっている。その様子が気になりながらも、高校生の方も心配だった。緊急抑制剤を打っているのに、フェロモン量があまり抑えられない。このままではまた、溢れてしまうかもしれない。
あまり強い薬は使いたくないけれど、震え始めた彼に、二本目の抑制剤を投与した。
「頑張れ。もうすぐ、救急車が来るから」
同じΩだ、大量の汗を掻いている額に手を当てた。少し、和らいだ表情になる。苦しそうな胸元のボタンを二つ開けてやると、救急車のサイレンの音が聞こえてきた。
「すみません、先にこの子を運びます。真澄君の様子は?」
「会話はできています。意識ははっきりしているようです」
杉野が確認してくれている。真澄は任せ、担架を持ってきた救急隊員を確認した。
「失礼ですが、αの方ですか?」
「はい。番はいます」
「この子、少し様子がおかしくて。俺が運びます。αの方は触れないようにお願いしたい」
「抑制剤が効かないんですか?」
「二本目を打っていますが、まだ苦しそうで」
ゆっくり抱え上げた。救急車まで運んでいく。中にΩ隊員も居たので安心した。桃ノ木病院にはΩ病棟がある。専門スタッフなので高校生を任せた。
救急車が遠ざかっていくのを見送りながら急いで真澄のもとへ戻った。確かに熱は出ているけれど、会話は正常に行えている。苦しそうな下に泣いていた。
「僕……初めてで!」
「仕方は? 俺が触るわけにもいかなし」
番を持っている俺が、別のαのモノに触る訳にはいかないし、それも元見合い相手の弟だ、彼も気まずくて仕方がないだろう。
どうにか彼自身で発散してもらわなければ、脱がせてやるしかないかと思っていると、瞼が下りていく。
「は……はぁ……ぁ」
真澄の呼吸が落ち着いていく。腫れていた下の熱が自然と引いていった。気絶するように眠ってしまっている。
「え、念力ですか?」
「いや、そんな力無いって」
「ぼっちゃん、ぼっちゃん!」
「大丈夫です、落ち着いて。熱の方をどうにかしないと」
スポーツドリンクを首に当ててやる。かなり汗をかいているのでタオルで拭いてやった。かいた汗が冷えると彼の体に触ってしまう。
薄い頬に触れた。細い体が熱を上げている。
二台目の救急車が到着した頃には、Ωのフェロモンの影響は消えていた。
0
お気に入りに追加
342
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

純情なる恋愛を興ずるには
有乃仙
BL
事故に遭い、片足に後遺症が残ってしまった主人公は、陰口に耐えられず、全寮制の男子校へと転校した。
夜、眠れずに散歩に出るが林の中で迷い、生徒に会うが、後遺症のせいで転んだ主人公は、相手の足の付け根の間に顔が埋まってしまう。
翌日、謝りに行くものの、またしても同じことが起きてしまう。
それを機に、その生徒と関わることが増えた主人公は、抱えているものを受け入れてもらったり、彼のことを知っていく。
本来は、コメディ要素のある話です。理由付けしたら余分なシリアスが入ってしまいました。主人公の性格でシリアスをカバーしているつもりです。
話は転校してからになります。
主人公攻めで、受けっぽい攻め×攻めっぽい受け予定です。


思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。


僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる