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抱き締めても良いですか?
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有紀が大人になってしまった。俺の知らない事を知っている。
αの彼が、Ωの雫と番になった。二人が付き合っている事は知っていたけれど、番になるとはどんな感じなのだろう。
一人帰り道を歩きながら考えてしまう。有紀は今日、学校の用事で捕まっている。待っていろと言われたけれど笑って断った。自分の身は自分で守る。
公共機関は使わないのでいつも歩いて帰っていた。たっぷり四十分は掛かる。部活はできないし、修学旅行も参加できなかった。
Ωは不公平だ。
ヒートが来たΩで、規則正しく来ているΩなら、抑制剤の服用を条件に参加できるけれど、ほとんどのΩは参加しない。差別的な視線に堪えられないからだ。エロい目でみるαも多い。
特に、男Ωに対しては偏見が酷い。男なのに後ろで濡れるんだろう、と高二の時に三年生に言われたことがある。それも皆が見ている廊下で馬鹿にされた。
無視して通り過ぎようとした尻を掴んできたから、思い切り股間を蹴り上げた。もう一度踏みつけてやろうとした俺より先に、有紀が背中を蹴り飛ばしていた。
二人で職員室に呼ばれたけれど、Ωの女子も目撃していたから謹慎にはならずに済んだ。Ω女子達は俺の味方だった。
黙々と歩いて家に向かう。おかげで足腰は鍛えられている。途中、喉が渇いて自販機に向かっていると腕を掴まれた。振り向いても、知らない高校生達だった。
「誰? 何?」
「お前、男Ωなんだって?」
「俺達が相手してやるよ?」
「黙ってついてこい」
見たことがない制服だった。血走った目をしながら俺を引っ張っていく三人。囲まれながら溜息をついた。
今後のために、排除しておこう。
大人しくついていくことにした俺は、鼻息の荒い三人に連れられて歩いた。彼等はΩを下に見ている気持ちが悪いαの部類だ。
だから俺はαが嫌いだ。
有紀みたいな良い奴も居るけれど、Ωをαの所有物として見ているαも多いからだ。ヒートを止めるためには番になるしかないけれど、αの所有物にはなりたくない。
興奮気味に連れて行かれたのは公園の一角にある公衆トイレだった。あまり清掃をしていないこのトイレはほとんど利用されない。公園の端の方にあるため、周りに遊んでいる子供も居ない。
公衆の物でありながら、死角になっている場所。
その中へ連れ込まれる前に足を止めた。周囲を確認し、最初に声を掛けてきた奴の顔面を一発殴った。Ωから反撃を受けると思わなかったのだろう。逃げようとした残り二人の背中を蹴りつけて、三人とも踏んでやった。
「何がαだ。この程度で俺に絡んで来るんじゃねーよ」
三人のαは地面に這いつくばっている。どこかの有名な私立高校の生徒らしいが知ったことではない。
俺がΩだとどこで知ったのか、堂々と襲ってくるなんて。
「相当頭が悪いなあんた達。αは何でも許されるとでも思ってんのか?」
「こ、この……!」
「お、お前みたいなでかいΩに番ができるわけないだろう!」
「可哀想だから俺達が相手を……!」
「いらねぇよ。とりあえず、警察呼ぶから。逃げんなよ?」
ここに来るまで防犯カメラを何台か確認した。このトイレの周辺にも設置されている。
αがΩを襲う事件が多発し、こんな田舎町にも防犯カメラが増えている。特にこの公園のトイレで襲われるΩが多かったため、最近、入口に防犯カメラが設置された。
それを知らないということは、連続強姦魔ではないのだろう。そもそも、この細いα三人は初めての犯行だと思う。あまりに要領が悪すぎる。
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