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第一幕
奇ノ三十二『求める心』
しおりを挟む北条一希は、でかい体で真面目で。
大きな手で器用に料理もこなす。
洗濯物も綺麗に干すし、掃除や片付けも上手い。
俺や七海が手伝うと、綺麗に整える方法を教えてくれた。
紫藤と清次郎に続く兄ができたと、七海は喜んでいる。七海の言霊の力が発動しても、全く動じない強い精神力は尊敬した。
紫藤と清次郎が居ない不安感も、いつの間にか消えていて。大きな一希との生活が結構、楽しい。堅苦しい男かと思ったけれど、話すと砕けた人だった。
そんな強い男一希が来て三日目の夜が来た。明日の夕方に、紫藤と清次郎が戻ってくるから、一希と寝るのは今日が最後になる。
二階の和室で、一希が真ん中になって眠った二日間。午後11時になると弟の克二が一希の体に入り、見張ってくれていた。
俺と七海に異常が無いように。特に俺の悪鬼の影響が出てしまわないように。
夜通し一人で起きているのは暇だと、一希の体で携帯ゲームをしていた。本人は寝ているのに、体は動いているというのは何だか変だった。
今日も三人で眠る。すっかり慣れた俺達は、唯一風呂上がりにだけパジャマ姿になる一希に、内心おかしかった。日中はワイシャツとスーツのズボンできめている一希は、寝る時もきっちりパジャマを着ている。
ティシャツの方が楽ではないかと聞けば、夜は眠る姿にならないと落ち着かない、と応えられた。どこまでも真面目な人だった。
青いパジャマを着た一希が時計を確認し、俺達を布団に押し込んでくる。わしっと掴むように頭を撫でられた。
「さ、寝てくれ。そろそろ弟が来るからな」
「うぃ~っす」
「お休みなさい」
「ああ、お休み」
隣りに転がる俺達の頭をもう一度掻き回した一希は、自分も大きな体を横たえた。除湿にしているとはいえ、ちょっとむし暑い。
お腹にだけタオルケットを羽織った俺達は、オレンジ色に変わった室内で眠る。
暫くすると、眠ったはずの一希の体が起き上がった。大きな手で携帯ゲーム機を手にしている。イヤホンを耳に入れると、ロールプレイングを始めている。ディスプレイから漏れる明かりが部屋を照らした。
「あのさ、前から聞きたかったんだけど」
「【あ、まだ起きてたの? 駄目だよ、子供は早く寝なくちゃ」】
「すぐ寝るよ。気になってることがあるんだけど」
七海はもう、ぐっすり眠っているようだ。俯せになってゲームをしている克二の方を向いた俺に、手を止めた彼が振り返る。
「【何?】」
「体はどうしてんだ? 11時から6時ってことは、7時間も放置してんだろう?」
「【そうなるね】」
「腐ったりしねぇのか?」
「【あはは! 僕、死んでる訳じゃないから。むしろ、兄さんの方が大変だろうし】」
克二は兄である一希の腕をさすっている。穏やかになった目元はにこりと笑った。
「【二十四時間、起きてることになるからね。体に負担が掛かってきてる】」
「……マジで?」
「【うん。だから僕も、なるべく体を横たえたままにしてるんだ】」
時々、体を入れ替えて負担を軽くしていると説明された。
精神である魂は眠っても、体は起きている状態になっている。そのため休めないまま三日間を過ごしてきたらしい。
きつい素振りは一切見せなかった一希。克二の話では、もうずいぶん疲れているらしい。
「もっと手伝えば良かったぜ」
「【兄さんに懐いてくれてありがとう。良い人だろう?】」
「ああ。頼りになる。最初は怖かったけどさ」
「【鋭い目と体格でかなり損してるよ。弟の僕から見れば、良いお婿さんになると思うんだけどな~。なかなか可愛い女性が嫁いでくれないんだ】」
「蘭兄が好きなんじゃ、嫁なんてもらわねぇんじゃねぇか?」
分かりやすいほど顔や態度に出てしまう一希だ。紫藤のことでからかえば、面白いほど反応してくれた。
純情な彼が、紫藤を想ったまま他の女を好きになることなんてできないだろう。そう指摘した俺に笑っている。
「【確かに。あ、あんまりおしゃべりしてると兄さんが起きちゃうから。さ、お休み】」
「だな。お休み」
タオルケットをひっかけ直すと瞼を閉じた。隣りでは静かにゲーム機のボタンを押す音がしている。
閉じた瞼が時折、仄かに光るのを感じながら眠った。
静かな夜だった。
***
ふわふわと揺れていた。朧気に映る映像をぼんやり見ているような、不思議な夢だ。
視界は定まらず、ここは何処だろうと思っていたら大きな犬が出てきた。大きな白い犬は、尻尾を勢い良く振っている。
良いな、俺も飼いたいな。
可愛い犬を撫で回した。懐いてくれた犬と一緒に、ふわふわした世界で遊んだ。
犬は元気だった。俺が投げる棒を拾っては、楽しそうに戻ってくる。もう一度投げてくれと、尻尾を振って催促している。
もっと遠くに投げてやろう。振りかぶって投げた棒を追って、犬が走っていく。
その毛に覆われたモコモコした背中を見ていた俺の視界が、突然、暗くなった。
ふわふわした世界が、黒い影に染まっていく。走っていった犬の姿も影に飲まれて消えてしまった。
影は急速に広がり、俺をも飲み込んでくる。
【……ぁぁあ――……! ここじゃ……ここにおる……!】
頭の中に直接響く声が、息苦しさを感じさせた。割れそうなほど響く声に耳を押さえてしまう。
【ここじゃ……ここじゃ……! 会いたい……会わせてくれ……!!】
叫んだ影の声に、目が見開いた。
豆電球の淡い光を見上げ、ここが現実世界だとすぐに分かった。
分かったけれど声が出ない。引き絞られているかのように喉が震えるだけで声にならなかった。
「……っ……!」
胸と腹の間から影が噴き出している。全身から噴き出した汗が流れ落ちていく。
悪鬼が、外に出ようとしている。
急に何でだ!?
突然起きた変化に、ずっと感じていた封印の珠の存在を忘れた。意識が悪鬼に集中する。
悪鬼から漏れる影が一段と強くなり、頭に響く声も大きくなる。
「【兄さん! 達也君の様子がおかしい! 黒い影が見える!】」
克二が気付いてくれた。起きていた一希の体が一瞬、布団に沈んだかと思うと素早く起き上がっている。俺の体を抱き起こし、背中から抱き締められた。
「今、克二が紫藤様に知らせている! 気を確かに、心を落ち着かせなさい」
大きな手が恐れもせずに、影が噴き出す胸と腹の間に乗せられた。一希の手を避けるように影が噴き出し続ける。
「呼吸を整えて。そう、静かに。大丈夫、私が側に居る」
耳に囁かれる言葉を必死に聞いた。
落ち着いて、呼吸を整える。
喉奥に詰まってしまった呼吸を何とか繰り返す。乗せられた一希の手が、じわりと熱を持ってきた。
そうすると、封印の珠の存在を感じることができた。まるで一希が誘導してくれているかのように、存在を認識することができる。
「封印の珠を意識して。ずっと練習してきたんだ、何も心配はない。君ならできる」
「……はっ……はっ……あ……はぁ……」
「そう、その調子だ」
大きな体に包まれている安心感が、俺を落ち着かせてくれた。悪鬼の気の流れを感じ、練習していたとおりに封印の珠の中に影を封じるイメージを作っていく。
けれど噴き出す影の量は多かった。俺独りでは封じられないかもしれない。
そう思うと、整っていた呼吸が乱れてしまう。噴き出す影が揺らめいた。
「ううぅっ……!」
「達也君!」
丸まった体を抱き込まれた時、一希の携帯が鳴った。片手で携帯を握った彼は、通話を押した。
〔達也は! 達也は無事か!〕
「何とか持ち堪えています」
〔札を巻け! すぐに封じる!〕
「はい」
パジャマのポケットに入れていたのだろう、紫藤の札を取り出した一希は、片手と口を使って携帯に札を巻き付けている。俺の胸と腹の間に乗せた手は、決して外さなかった。まるで噴き出す影を抑え込もうとするかのように。
札を取り付けている間、滲んだ涙が頬を伝って落ちていった。苦しくて、怖くて、どうして良いか分からない。
「達也君! どうしたの!? 何が起きてるの!?」
携帯の着信音に、寝ていた七海が目を覚ました。一希に抱き込まれている俺が、大量の汗を掻いている理由が分からないようだ。
七海には悪鬼が見えないことを思いだし、近付こうとした彼に首を横へ振った。
「あぶ……ねぇから……離れてろ……!」
「……悪鬼なの? 悪鬼が居るの!?」
「七海君はそこに居て。さ、達也君、準備が出来た。紫藤様が封じて下さる」
俺のティシャツを捲り、札を巻かれた携帯を胸と腹の間に置いている。影が嫌うように大きく揺らめいた。追い払おうと噴き出す勢いが強くなる。
〔しかと押さえておくのだぞ。達也、すぐに封じてやるでな!〕
紫藤の声が聞こえたと思うと、強い力で体が引っ張られた。携帯の方へ、噴き出していた影が吸い込まれていく。
俺の中に居る悪鬼の力を吸い込んでいるのか、携帯を握る一希の手が震えている。俺もまた、体ごと持っていかれそうになって苦しい。
「ああ……ぐっ……くる……しっ!」
「我慢してくれ……!」
ズルズルと引きずられる影に、俺の体が半分、飲み込まれてしまったのではないかと錯覚した。息が止まってしまう。
頭の中には悪鬼の叫び声が響き、胸と腹の間では内蔵を引きずられているような感覚が続く。
まだ終わらないのか。
早く出ていってくれ。
汗に混じって、涙が頬を滑り落ちていった。
《デテコナイデ――……!!》
今まで聞いたことがないような、七海の叫び声が室内に響いた。
その瞬間、強い耳鳴りが頭を揺らす。
悪鬼が放つ黒い影が弾かれたように掻き消える。
《デテコナイデ、デテコナイデ、デテコナイデ……!!》
【……あああ――……!!】
耳鳴りに重なるように響いた悪鬼の声もまた、掻き消された。一希の手から携帯電話が弾け飛び、二人して布団に倒れ込んでしまう。頭がグラグラと揺れた。
何が起こったのか、数秒、理解できなかった。
泣いている七海が、何度も出て来ないでと繰り返している。耳鳴りが鳴り続け、代わりに悪鬼の声はしなくなった。
〔何が起きている!? どうした!!〕
転がった携帯から紫藤の声が聞こえた。一希が拾い、耳鳴りに頭を一度押さえると、大きな手で七海を抱き寄せた。広い胸に収まった七海の唇が動かなくなる。ようやく耳鳴りが止んだ。
「もう、大丈夫だ。達也君の側へ行ってあげなさい」
フルフル震えていた唇を噛み締めた七海は、布団に転がる俺のところに来てくれた。俺の手を握り締め、涙を流し続けている。
「だい……じょう……ひっく……ぶ……?」
「ああ、何とかな……」
「たつ……や……うぅ……くん……!」
ボタボタ落ちてきた涙に、思わず笑ってしまう。清次郎も七海のように泣くことがあるのだろうか、と思う余裕ができた。
体はだるかったけれど、笑うことができた。
「泣くな、ば~か」
「心配……した……!」
「大丈夫だって。ピンピンしてるからさ」
噴き出していた影は完全に消えている。息苦しさもない。悪鬼の声も、もう聞こえない。
握られている手に、力を込めた。
「泣くな」
「……うん」
「それとありがとな、七海」
「……達也君?」
握った手を軽く振った。泣いている七海の顔に、ニッと笑って見せた。
「お前の言霊のおかげで、悪鬼もビビッて戻っちまったみてーだ」
「……言霊が……効いたの?」
「ああ。蘭兄が封じてくれてたけど。たぶん、一気に押し込んだのはお前だ、七海」
「……僕が?」
信じられないと目を丸くした七海の頭に、大きな手が乗った。話は終わったのか、一希が隣りに座っている。
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「蘭兄は?」
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聞き返した俺に、一希は鋭い目をもっと鋭くさせ、とうとう瞼を閉じてしまう。
「誰なんだよ?」
「……今はまだ、言えない」
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俺みたいな、面倒な体の奴が。
見上げた俺に、一希の目が開く。鋭い目で見つめた彼は、静かに頷いた。
「そうだ。確認されている悪鬼は君を含め二体だ」
「……マジかよ」
「いずれ、紫藤様から詳しい話があるだろう。私の口から言えるのは、ここまでだ」
そう、締めくくった一希は、寝転んでいた俺を軽々と抱き上げた。
「ちょっ……何すんだよ!?」
「眠れないだろう? 紫藤様から連絡があるまで、リビングで待とう」
「そ、そうじゃなくて……!」
抱え方に問題がある。俺は男だ。
横抱きなんて、恥ずかしくて堪えられない。
「降ろせって!」
「さ、七海君もおいで」
「……はい」
泣いていた七海は、残っていた涙を袖で拭っている。俺を抱えたまま歩く一希を追ってきた。
ジタバタ両手両足を使って暴れても、一希はビクともしない。俺達の定位置に降ろすまで、横抱きのままだった。
「恥ずかしいって!」
「……うん、大丈夫だな。それだけ元気なら」
ポンッと叩かれた頭に、言葉が詰まった。
「オレンジジュースでも持ってこよう」
鋭い目を緩めて笑った一希は、キッチンに立っている。隣りに座った七海は、俺の顔を確かめるように見ている。
「もう、きつくない? 悪鬼出てきてない?」
「大丈夫だって」
心配してくれる彼のおでこを、どうってことないとつついてやった。
壁に掛かっている時計は、午前1時を指し示している。眠ってから、まだそんなに時間は経っていなかった。
どうして突然、悪鬼が出て来ようとしたのだろう。寝ている間に、封印の珠への意識が逸れてしまったのだろうか?
黙り込む俺に、七海の顔も暗くなる。二人してじっと、テーブルを見つめた。
「ほら、オレンジジュース」
キッチンから戻ってきた一希が、俺達の前にコップを置いた。なみなみと注がれたジュースを手に取ると、一気に飲み干した。
汗だくだし、湿気が多くてじめじめしているリビングだ、乾いていた喉がさっぱりとした潤いを求めていた。
いっき飲みをすると、少し落ち着いた。
「ちょっと失礼」
断りを入れた一希は、俺と七海の間に大きな体を入れ込んできた。俺も七海も、思わず横にずれてしまう。
挟まった大きな体は、逞しい両腕を伸ばしている。俺達を受け止めるように腕で引き寄せてきた。
「……あちぃって」
「私も起きて見張るから。どうか安心して欲しい」
暑いと言っても、離してはくれなかった。ますます引き寄せられる。
溜息と共に体を預けた。どうせ腕力では適わない。逞しい腕を腰に感じながら、凄い、と素直に感心した。
悪鬼を見ても、一希は一歩も引かなかった。俺を守るため、ずっと一緒に居てくれた。
それなのに俺は、何やってんだ。
一希に知られないよう、唇を噛み締めた。
ずっと封印の珠で修行をしてきたのに。悪鬼が出てこようとしても、もう自分の力で封じられると思い込んでいたのに。
こんなにあっさり、暴走させてしまうなんて。
引き取られた頃から成長していない。
俺はもっと、強くならなければ。
一人でも立ち向かえるくらい、強くならなければ。
一希のように、落ち着いて対応できるようになれば、悪鬼も怖い存在ではないだろう。封印の珠はちゃんと効いている。
問題なのは俺がまだ、その力をコントロールしきれていないことだ。紫藤の手を借りなければ完璧に封じられない今の現状を突破したい。
「……達也君、苦しいの?」
俺が黙っているからか、七海が顔を覗かせてくる。一希も一緒になって、俺の顔色を窺うように見つめている。
「……大丈夫だって」
「きつい時は言ってくれ」
「平気。つか、シャワー浴びてぇな~」
「そうだな。三人で入るか」
立ち上がった一希は、俺達を小脇に抱えた。
「だから! 男のプライドをへし折るなって!」
男二人を軽々と片腕で支える一希の腕力は、いったいどうなっているのだろう?
「さ、行くぞ!」
「ちょ、マジ降ろせって!」
暴れた俺と、固まった七海を抱えたまま、風呂場まで歩こうとした一希は、鳴った携帯にピタリと足を止めた。
この着信音は聞き覚えがある。そっと顔を見上げれば。
「すっげー顔してんな」
「隊長さんですか?」
「……出たくはないが、今回は仕方がないな」
俺達をソファーに戻し、大きな溜息をつくと力無く通話を押している。
「問題はありません。では」
〔こら、一希。私の声に欲情するからって、そんな報告はないだろう? きちんと説明して〕
さっさと切ってしまいたかったのだろう。失敗した一希は、眉間に深い皺を寄せたまま話している。
「紫藤様の連絡を待っているところです。現在、もう一方の方を処理中ですので」
〔そうみたいだね。大場……〕
「子供達が居ます。名前は控えて下さい」
隊長の言葉を切った一希は、俺達から少し離れた。時折頷く声と、何か相談している声が聞こえてくるくらいで、話の内容は分からなくなった。
七海と一緒に待っていると、今回は仕事のことだけで済んだのか、案外早く戻ってきた。
「セクハラされなかった?」
「ま、事情が事情だけにな。特別機関の観測データを整理するのに忙しいはずだ。あれでも隊長だ、遊ぶ暇はないだろう」
そう言った一希は、俺を肩に担ぎ上げてきた。いきなり高くなった視界に眉がつり上がる。
「あんた! ぜってーわざとしてんだろう!?」
「七海君も乗るかい?」
「僕は良いです」
「つか、俺を降ろせって!」
暴れても暴れても、一希の太い腕は俺を降ろさなかった。大股で歩いた足は風呂場へ向かい、七海が小走りについてくる。
脱衣所に入ってから、やっと降ろしてくれた。恥ずかしさに、一希の胸を思い切り叩いてやった。たいして効いていないのが憎たらしい。
「くそっ! あんた意外に性格わりぃぞ!」
「反応が可愛いからつい、な」
「可愛い言うな!」
もう一度胸を叩いてやった俺は、ぷっ、と吹き出した七海を振り返る。
「んだよ! 笑うなよ!」
「だ、だって……! 本当に可愛いから!」
「あ!?」
「良かった、元気になって」
笑った七海は、ティシャツを脱いでいる。一希もまた、パジャマのボタンを外し始めた。
「ほら、入るぞ」
「……言われなくても分かってるよ!」
ティシャツを勢い良く脱ぎ捨てた。短パンとトランクスをまとめて脱いでしまう。
そこで気が付いた。
「蘭兄から電話くるんじゃねぇの?」
俺と同じくすっぽんぽんになった七海も思い出したのか、一希を見ている。
脱いだパジャマを丁寧に畳んで置いていた一希は、鋭い目を緩めて笑った。
「心配ない、防水だ」
男らしく、すっぽんぽんになった一希の体は、俺と七海を絶句させた。
「……あんた、でけーな」
「そうか?」
裸に携帯を持った一希は、ガラッと浴室のドアを開けた。少し屈みながら入っていく。
その広い背中にも、俺達は言葉が無かった。筋肉しか見当たらなくて。
俺を軽々と持ち上げる体は、ムキムキのマッチョだった。
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