83 / 84
第3章
第18話 愛を囁き合った
しおりを挟む「胴ーッ!! 」
「面ーッ!籠手!! 」
ピリピリとした空気が広がる。これは本当に稽古か?凄まじい。まさにその一言に尽きる。三吉は見慣れたはずの稽古風景が道場を変わるとこうも違うのかと、ある意味関心していた。
「凄いだろう。何せ、総司と歳の立ち合いだからなあ。 」
うむうむと隣で近藤が頷く。確かに凄い。自分とは格がまるで違う。
「お。見かけぬ顔だな。新入りか? 」
急に声をかけられたので、まじまじとその顔を見つめてしまう。
「な、なんだ?何か顔にでも付いているのか? 」
ぼーっと見つめたままでいるとその男は徐々に焦り出した。
「ハッ...!い、いえ。急に声をかけられたので驚きまして。失礼致しました。 」
見た所この男は此処の馴染みのようなので、三吉はしっかりと詫びる。粗相があってはいけない。
「永倉君、彼は先代の友人の息子さんの三吉君という。はるばる伊予から此方まで剣を学びに来たのだ。よろしく頼む。 」
「え...。もう此処で稽古をするのは決まったことなのですか____。 」
「そうかそうか!なら少し私と手合わせ致そうではないか。 」
わくわくと楽しそうな顔を作りながら、永倉は準備を始める。
「えと、永倉様。私、剣の心得はあまりないので先ずは稽古の様子を見させて頂きたいと思っていたのですが。 」
三吉は先程の二人の試合を思い出し、身震いした。なんとしてでも、永倉との手合わせを避けねばなるまい。永倉があの二人のような強さを持っていることは容易に想像できるからだ。
「心配するな。三吉。極力手加減致そう。 」
そう言い放つと永倉は防具を着け始めた。
「おお。三吉君のお手並み拝見といこうじゃないか。 」
近藤もにこにこと笑みを浮かべて、乗り気である。
「土方さん、一度手を止めて見てみましょう。何やら面白そうですよ。伊予から来たということですと、原田さんと同じだ。 」
「なんだか、見るからにひょろひょろとして弱そうだがな。まぁ、茶漬け程度にはならねえことはねえか。 」
汗を拭きながら、土方沖田の両名も集まってくる。三吉はとうとう後に引けなくなっていた。
「永倉様。ご勘弁を。 」
三吉は咄嗟に土下座の体勢を取った。それを見ていた全員が目を見開き驚いていると、三吉は堰を切ったように言葉を零した。
「実は私、伊予に居た頃に剣術道場に通っていましたところ、師範に道場を追い出されたのです。”お前の様な甘ったれた人間は要らぬ“と。確かに私はその様な人間なのです。ですから、永倉君と手合わせなぞ出来るような器など持ち合わせては___。 」
「なら、此処で、天然理心流で鍛えりゃ良いじゃねえか。その甘ったれとやらを叩き直しゃあ、お前も胸を張って国許にも帰れるし、一端の剣士として道場の師範も見返せるってもんだ。...永倉やれ。 」
土方は三吉の言葉を遮り、捲し立てるように話す。その言葉につ、と三吉は顔を見上げた。
「私の身の上は全て筒抜けなのですね...。 」
「承知。 」
その言葉を皮切りに、永倉は物凄い気迫を纏った。
三吉が次に目を覚ましたのはそれから三日後の夕刻であったそうな...。
「面ーッ!籠手!! 」
ピリピリとした空気が広がる。これは本当に稽古か?凄まじい。まさにその一言に尽きる。三吉は見慣れたはずの稽古風景が道場を変わるとこうも違うのかと、ある意味関心していた。
「凄いだろう。何せ、総司と歳の立ち合いだからなあ。 」
うむうむと隣で近藤が頷く。確かに凄い。自分とは格がまるで違う。
「お。見かけぬ顔だな。新入りか? 」
急に声をかけられたので、まじまじとその顔を見つめてしまう。
「な、なんだ?何か顔にでも付いているのか? 」
ぼーっと見つめたままでいるとその男は徐々に焦り出した。
「ハッ...!い、いえ。急に声をかけられたので驚きまして。失礼致しました。 」
見た所この男は此処の馴染みのようなので、三吉はしっかりと詫びる。粗相があってはいけない。
「永倉君、彼は先代の友人の息子さんの三吉君という。はるばる伊予から此方まで剣を学びに来たのだ。よろしく頼む。 」
「え...。もう此処で稽古をするのは決まったことなのですか____。 」
「そうかそうか!なら少し私と手合わせ致そうではないか。 」
わくわくと楽しそうな顔を作りながら、永倉は準備を始める。
「えと、永倉様。私、剣の心得はあまりないので先ずは稽古の様子を見させて頂きたいと思っていたのですが。 」
三吉は先程の二人の試合を思い出し、身震いした。なんとしてでも、永倉との手合わせを避けねばなるまい。永倉があの二人のような強さを持っていることは容易に想像できるからだ。
「心配するな。三吉。極力手加減致そう。 」
そう言い放つと永倉は防具を着け始めた。
「おお。三吉君のお手並み拝見といこうじゃないか。 」
近藤もにこにこと笑みを浮かべて、乗り気である。
「土方さん、一度手を止めて見てみましょう。何やら面白そうですよ。伊予から来たということですと、原田さんと同じだ。 」
「なんだか、見るからにひょろひょろとして弱そうだがな。まぁ、茶漬け程度にはならねえことはねえか。 」
汗を拭きながら、土方沖田の両名も集まってくる。三吉はとうとう後に引けなくなっていた。
「永倉様。ご勘弁を。 」
三吉は咄嗟に土下座の体勢を取った。それを見ていた全員が目を見開き驚いていると、三吉は堰を切ったように言葉を零した。
「実は私、伊予に居た頃に剣術道場に通っていましたところ、師範に道場を追い出されたのです。”お前の様な甘ったれた人間は要らぬ“と。確かに私はその様な人間なのです。ですから、永倉君と手合わせなぞ出来るような器など持ち合わせては___。 」
「なら、此処で、天然理心流で鍛えりゃ良いじゃねえか。その甘ったれとやらを叩き直しゃあ、お前も胸を張って国許にも帰れるし、一端の剣士として道場の師範も見返せるってもんだ。...永倉やれ。 」
土方は三吉の言葉を遮り、捲し立てるように話す。その言葉につ、と三吉は顔を見上げた。
「私の身の上は全て筒抜けなのですね...。 」
「承知。 」
その言葉を皮切りに、永倉は物凄い気迫を纏った。
三吉が次に目を覚ましたのはそれから三日後の夕刻であったそうな...。
27
お気に入りに追加
155
あなたにおすすめの小説

乙女ゲームのヒロインをいじめるいじめっ子グループのリーダーに転生したので悪役を演じきってみせましょう
水竜寺葵
ファンタジー
あらすじ
病気により死亡した亜由美(あゆみ)が次に転生した世界は自分が好きな恋愛ゲームの世界で、いじめっ子グループのリーダーだった。前世の記憶が戻った時はすでに物語が始まりを迎える学園生活をしていて今更物語を変える事ができない状況に。
そのため主人公がちゃんと攻略相手達と出会えるように必死に悪役を演じているのだがなぜか主人公になつかれ物語の展開が少し変わってしまう。さらにはいじめっ子達を毛嫌いするはずの攻略相手達や主人公達と敵対する非攻略相手達にまで好かれてしまった。彼女の人生はそこから少しずつ変わっていってしまう。
亜由美心の声「主人公をいじめる悪役令嬢に付き従ういじめっ子グループのリーダーで直ぐにやられるだけのモブキャラのはずでは!?」
毎週月曜午前3時更新です。
※注意※
この物語はいじめっ子グループのリーダーとなったモブキャラ転生の主人公のお話です。序盤にはいじめのシーンが出てきます苦手な方はご注意下さい。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる