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第19話
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南西方向に向かった俺たちだったが、このままでは野宿になってしまうという結論に至り、獣化したギンコに乗せてもらって移動中だ。
俺も獣モードになれれば、一緒に草原を駆け回ったりできるだろうが、残念なことにそんな機能は備わっていない。
あくまでも人間がベースであることに変わりはない。
限りなく人族との国境であり、なおかつ浄化されたデロッサの森からほど近い場所には、ぽつんと一軒家が建っていた。
「これは家ですね」
「せやな」
「おんぼろやねぇ」
見るからに朽ちていて、お化けでも出てきそうな雰囲気の家屋。
建て付けの悪い扉を開いて片足を踏み出すと、綺麗に床が抜けた。
「ここは住めへんな。にしても立派な家やな」
お屋敷レベルではないが、前世でこのサイズの持ち家なら勝ち組認定されるのは間違いない。
「きっと国境を守っていた一族のものでしょう。もう何年も前から放置されていますね」
クスィーちゃんは木に触れることで歴史を見ることができる、エルフらしい能力を持っている。
一軒家の中にも周囲にも誰もいないことは俺とギンコの嗅覚で確認済みだ。
「木の腐った臭い。臭い」
服の袖で鼻を覆ったギンコ。やっぱり本家は俺よりも嗅覚が鋭いようだ。
「この家を拠点にするか」
「本気ですの!?」
「魔王から遠くて、人間の国に近い。そしてデロッサの森があるから誰も近づかない。最高の土地やろ」
「でも、こんなボロ屋が愛の巣なんて」
「私もいますからね」
「せめてベッドは新品がいいです」
「私もいますからね」
必死に存在感アピールをするためにbotと化したクスィーちゃんが可愛い。
「ちょっと待って。二人は近くに水がないか見てきてや」
俺は二人から離れ、地べたに座った。
やることは一つ。これはギンコとクスィーちゃんに見せるわけにはいかない男同士の会話だ。
「ステータスオープンさん、腹割って話そうや」
当然のようにステータスオープンさんからの返答はない。
ただのステータスが自律型だと思っているわけではない。だが、この前のクエスチョンマーク有り無し事件以降、俺の意見がステータスに反映されたのも事実だ。
「きみ、俺のレベルを教えてくれへんやん? でも、俺は結構な経験値を稼いでるはずやから、成長してるはずなんよ。そこで提案なんやけど」
俺は地面に指で落書きしながら告げる。
「過去に触れ合った種族になれる機能を追加してくれへん? そしたら、もっと生活が楽になると思うんよ」
やはりステータスオープンさんからの返事はない。
それでも要求は続けてみよう。
「今は白虎族と猫又族のスキルが使いたい。彼らの力があれば、あのボロ屋をリフォームできるし、上手い飯も作れる。あの二人に不自由させたくないんや」
ここまでは俺の希望を語ったから、次はステータスオープンさんの希望を聞いてみよう。
「もしもきみが図鑑みたいな存在なら、俺はもっと多くの種族と触れ合って、固有データの取得に手を貸すで」
声が聞こえたわけではないが、なんとなく手応えを感じた。
「きみ、魔法好きやろ? 特に秘術とか大好物ちゃうん? 分かるで、男のロマンやもん。ダークエルフ族の"スターダスト・ダークネス・アロー"を習得した時は鳥肌もんやったやろ。次は九尾族の"ドミネーション99"を使ってみようや。他にもこの世界にはドラゴンとか、サキュバスとかもおるんやろ? 想像するだけで涎が出るなぁ」
ステータスオープンさんが身震いしているのを感じる。
もう一息だ。
「あとは勇者か。きみも俺と一緒に追放されたようなもんやからな。人族の力にも興味があるやろ? もしも……もしもやで? 俺が聖魔法と闇魔法の両方を使えてみ? ゾクゾクせんか?」
にやりと微笑むと、ステータスオープンさんが歓喜に震え、絶叫したような気がした。
気がしているだけで別に何か反応があるわけではないから、端から見れば今の俺は相当イタい奴だ。
「一緒にデロッサの森を穢そうや。真っ白のキャンパスを埋めるの好きやろ?」
最後の誘い文句を言い合えると、体中の魔力が変化し、さっきまで生えていた9本の尻尾は1本の白銀の尻尾になった。
「おぉ! やっぱり話の分かる奴やな! 心の友よ、頼りにしてるで!」
るんるん気分で戻ると、ちょうどギンコとクスィーちゃんも水辺の探索から戻ってきた。
「どうやった?」
「少し離れますが、川が流れていました」
「ラッキーやったな。ほな、やるか」
「……旦那様、そのお姿は?」
ギンコの懐疑的な目が向けられる。
「これ? 今の俺は白虎族やねん。これでリフォームできるで」
「なんで!? さっきまで九尾族だったのに!」
ぐおぉぉぉ、と身を捩りながら絶望するギンコの隣では、クシィーちゃんが「りふぉーむ?」と小首を傾げていた。
「二人が成長しているように、俺も日々進化してるんや」
「つまり、近くに他種族がいなくても体質が変化する、と。…………はっ!?」
何かに気づいたクスィーちゃんが涙目になって、縋るように見つめてくる。
「私はもういらない子ですか?」
「なんでやねん。必要に決まってるやん!」
「はわぁ! トーヤ!!」
うんうん、良い笑顔や。
クスィーちゃんがおらんとどの木が健康で、どの木が腐ってるか分からんからリフォームが滞るもんな。
俺も獣モードになれれば、一緒に草原を駆け回ったりできるだろうが、残念なことにそんな機能は備わっていない。
あくまでも人間がベースであることに変わりはない。
限りなく人族との国境であり、なおかつ浄化されたデロッサの森からほど近い場所には、ぽつんと一軒家が建っていた。
「これは家ですね」
「せやな」
「おんぼろやねぇ」
見るからに朽ちていて、お化けでも出てきそうな雰囲気の家屋。
建て付けの悪い扉を開いて片足を踏み出すと、綺麗に床が抜けた。
「ここは住めへんな。にしても立派な家やな」
お屋敷レベルではないが、前世でこのサイズの持ち家なら勝ち組認定されるのは間違いない。
「きっと国境を守っていた一族のものでしょう。もう何年も前から放置されていますね」
クスィーちゃんは木に触れることで歴史を見ることができる、エルフらしい能力を持っている。
一軒家の中にも周囲にも誰もいないことは俺とギンコの嗅覚で確認済みだ。
「木の腐った臭い。臭い」
服の袖で鼻を覆ったギンコ。やっぱり本家は俺よりも嗅覚が鋭いようだ。
「この家を拠点にするか」
「本気ですの!?」
「魔王から遠くて、人間の国に近い。そしてデロッサの森があるから誰も近づかない。最高の土地やろ」
「でも、こんなボロ屋が愛の巣なんて」
「私もいますからね」
「せめてベッドは新品がいいです」
「私もいますからね」
必死に存在感アピールをするためにbotと化したクスィーちゃんが可愛い。
「ちょっと待って。二人は近くに水がないか見てきてや」
俺は二人から離れ、地べたに座った。
やることは一つ。これはギンコとクスィーちゃんに見せるわけにはいかない男同士の会話だ。
「ステータスオープンさん、腹割って話そうや」
当然のようにステータスオープンさんからの返答はない。
ただのステータスが自律型だと思っているわけではない。だが、この前のクエスチョンマーク有り無し事件以降、俺の意見がステータスに反映されたのも事実だ。
「きみ、俺のレベルを教えてくれへんやん? でも、俺は結構な経験値を稼いでるはずやから、成長してるはずなんよ。そこで提案なんやけど」
俺は地面に指で落書きしながら告げる。
「過去に触れ合った種族になれる機能を追加してくれへん? そしたら、もっと生活が楽になると思うんよ」
やはりステータスオープンさんからの返事はない。
それでも要求は続けてみよう。
「今は白虎族と猫又族のスキルが使いたい。彼らの力があれば、あのボロ屋をリフォームできるし、上手い飯も作れる。あの二人に不自由させたくないんや」
ここまでは俺の希望を語ったから、次はステータスオープンさんの希望を聞いてみよう。
「もしもきみが図鑑みたいな存在なら、俺はもっと多くの種族と触れ合って、固有データの取得に手を貸すで」
声が聞こえたわけではないが、なんとなく手応えを感じた。
「きみ、魔法好きやろ? 特に秘術とか大好物ちゃうん? 分かるで、男のロマンやもん。ダークエルフ族の"スターダスト・ダークネス・アロー"を習得した時は鳥肌もんやったやろ。次は九尾族の"ドミネーション99"を使ってみようや。他にもこの世界にはドラゴンとか、サキュバスとかもおるんやろ? 想像するだけで涎が出るなぁ」
ステータスオープンさんが身震いしているのを感じる。
もう一息だ。
「あとは勇者か。きみも俺と一緒に追放されたようなもんやからな。人族の力にも興味があるやろ? もしも……もしもやで? 俺が聖魔法と闇魔法の両方を使えてみ? ゾクゾクせんか?」
にやりと微笑むと、ステータスオープンさんが歓喜に震え、絶叫したような気がした。
気がしているだけで別に何か反応があるわけではないから、端から見れば今の俺は相当イタい奴だ。
「一緒にデロッサの森を穢そうや。真っ白のキャンパスを埋めるの好きやろ?」
最後の誘い文句を言い合えると、体中の魔力が変化し、さっきまで生えていた9本の尻尾は1本の白銀の尻尾になった。
「おぉ! やっぱり話の分かる奴やな! 心の友よ、頼りにしてるで!」
るんるん気分で戻ると、ちょうどギンコとクスィーちゃんも水辺の探索から戻ってきた。
「どうやった?」
「少し離れますが、川が流れていました」
「ラッキーやったな。ほな、やるか」
「……旦那様、そのお姿は?」
ギンコの懐疑的な目が向けられる。
「これ? 今の俺は白虎族やねん。これでリフォームできるで」
「なんで!? さっきまで九尾族だったのに!」
ぐおぉぉぉ、と身を捩りながら絶望するギンコの隣では、クシィーちゃんが「りふぉーむ?」と小首を傾げていた。
「二人が成長しているように、俺も日々進化してるんや」
「つまり、近くに他種族がいなくても体質が変化する、と。…………はっ!?」
何かに気づいたクスィーちゃんが涙目になって、縋るように見つめてくる。
「私はもういらない子ですか?」
「なんでやねん。必要に決まってるやん!」
「はわぁ! トーヤ!!」
うんうん、良い笑顔や。
クスィーちゃんがおらんとどの木が健康で、どの木が腐ってるか分からんからリフォームが滞るもんな。
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