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第五章 光風の国ブリサルト

47.不穏な祝賀会2

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「えっと、話って、なに…?」

夜風が酒で温まった身体を心地良く冷やす
俺は城から見える夜の街の景色を横目に見ながら、サラの言葉をドキドキしながら待った

「はい、率直に聞きます。貴方はラシエル様の何なのですか?」

「へ?」

サラは大きな瞳で真っ直ぐに俺を捉える
俺は言葉の意味を理解するのに暫くかかった

「えっ、えと、何って……とも、だち…?仲間、かな?」

「仲間、ですか?」

「うん…」

改めてそう聞かれると、何だか違うような気がする
俺はいつも何気なくラシエルの事をそう思っていたが、ラシエルが向ける俺への感情は、友達に対するそれではない。今更だけど、俺はもしかしたらとんでもなくラシエルに対して不誠実な態度を取っていたのかもしれない

「そうですか、貴方は友達に対してあのような如何わしい事を平気でなさるのですね」

「え?……なに…?」

「公然と街中であんな風にラシエル様を誘惑して、淫らだと言っているのです」

「えっ!?」

嘘だろ!?まさかあの時サラに見られていたのか!?
俺は顔を真っ赤に染めて、そのまま押し黙る
サラはそんな俺の態度を見て、まるで穢らわしい物を見るかのように冷たく言い放った

「もうラシエル様を惑わす事はお止め下さい。……私は、貴方と違って本気で彼の事を……」

サラはそこまで言うと、ハァと溜息を吐いた

「貴方に言ってもしょうがありませんね。……はい、これを差し上げます」

「ご…ごめん……えと、これは…」

サラは懐から手のひらサイズの麻布に包まれた小包を渡す
俺はそれを受け取ってマジマジと見つめた

「それはトリケシアメです。私の治癒の力を宿しているので、毒の効果を消します」

「えっ!?そんな貴重なモノ……いいの?」

「明日は魔物に変えられたブリサルトの女王に挑みます。貴方まで治療をしている時間はないので、これで凌いで下さい」

「あっそっか…ありがとう!やっぱサラ様は優しいな!」

「……はい、効果を高める為に今も一粒食べておくと良いですよ」

「ふーん?そうなんだ……」

俺はサラに言われて、小包から一つ取り出し舐めてみる
少し甘酸っぱいような不思議な匂いが鼻から抜けた

その光景を見ていたサラは、僅かに顔が綻んだ

「リュドリカさんっ!?」

テラスの窓際から、ラシエルが叫ぶ

「ラシエル?どうした?」

「どうしたもこうしたも……いきなり居なくなるから心配しました」

ラシエルはすぐさま俺の元へ駆け寄り、息を切らしている

「え?あ~ごめん、ちょっと酔い冷ましで風に当たってた」

俺は目を逸らしてそう答えた
サラに呼ばれた、なんて言うと変に誤解を生みそうだし…ここは敢えて伏せておこう

「酔ったのですか?それならもう部屋に戻りましょう」

「ラシエル様!」

完全に蚊帳の外にいたサラが、ラシエルの名を強く呼ぶ
ラシエルは振り返り何ですかと答えた

「お話があります。少しお時間良いですか?」

「いえ、俺達はもう部屋に……」

「ラシエル!俺先に戻ってるから!積もる話もあるんだろうし、ゆっくりしてこいよ!」

リュドリカはそそくさとその場を立ち去ろうとする
ラシエルは待ってくださいと止めるが、サラがラシエルの手を引いた

「お待ち下さい。大事な話があります」

サラが真剣な顔で引き止めるので、ラシエルはリュドリカの小さくなる背中を目で追いながら、諦めてその場に立ち止まった

「……わかりました。話とは何でしょうか」

サラは完全にリュドリカの姿が見えなくなったのを確認すると、場所を移しましょうと提案した





.





パーティ会場の脇にあるレストルームに連れられてサラはソファに腰を掛けた

「ラシエル様?お座り下さい」

「……俺はすぐ戻るので。話とは何ですか?」

ラシエルは入ってきた扉に既に目を向け、落ち着かない様子だった

「せっかちな人ですね……そんなにあのリュドリカという男が気になるのですか?」

「当然です。あの人は、」

「何か脅されているのですか?それともやはり監視目的?何故あのような者と一緒にいるのか……理解し兼ねます」

「それはどういう……」

サラはテーブルに置かれたティーカップに口を付け、静かな憤りを混ぜて話す

「あの者は……」

サラの声が震える。金色の瞳が僅かに揺れた

「あの者は、カロリアを征服しようとしている魔王の側近です。最初は気付きませんでしたが……国民に洗脳の術を掛けたのはあのリュドリカという男です。間違いありません」

ラシエルは確かに驚いた顔を見せたが、特に動揺することなくサラの目を見た

「……その話は本当ですか」

「私はお父様とお母様があの者の術によって拘束されるのを見ています。父の抵抗によって私だけが逃げ切れましたが、あれは…あの人は、とても危険です…!」

「……彼はそんな人ではないです」

「ッ!…ラシエル様、貴方も洗脳を受けているのでは……ここにトリケシのアメがあります。私が改良を重ねて治癒とは別の付随効果にその者にとって一番障害となる疾患を取り除きます。これがあれば洗脳も……」

「必要ないです」

「ですが!」

「知っていました」

「……はい?」

ラシエルは落ち着いた表情のまま、静かに口を開く
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