平凡な女子高生だったはずなのに〜転生して冷血公爵と政略結婚しました〜

起床、そして睡眠

「⋯⋯あれ？」

　微睡みから引き起こされる感覚で目が覚める。視界には白い天井が広がっていて、そこで初めて自分が生きていた事に気がついた。

ああ、死ななくてよかった。

「リオ様！お目覚めになりましたか！」

声の主を見てギョッとした。顔を動かして声の主の方を見ると、そこには病院の先生⋯⋯ではなく白い髭を蓄えた外国人のお爺さんがいた。着ている服も白衣ではなく、白いワイシャツに黒いベストを着ている。目尻には皺がいくつもあって、鷲鼻が特徴的な優しげなお爺さんだ。

「お散歩の途中で倒れられたのですよ。お加減はいかがでしょうか」

一体、どういう事なんだろう。

ここはどこなのだろうか。周囲を見渡したところ、なんだか日本らしくない部屋という感想を抱いた。広い室内に高い天井。置いてある家具も明らかに値が張りそうな物ばかりである。それに、私が今寝ているベッドも自然と体が沈んでしまうくらいにふかふかだ。

まるで、外国の映画や童話にでてくるお姫様の部屋みたいだ。しかし、心配げに私を見守るこのお爺さんは、私の母国語である日本語を流暢に話している。という事はここはきっと、日本のはず。
私の知らない所でこんな豪華な病院が出来たのかとも思ったが、こんな病院があってたまるかという考えが先行した。

そんな自問自答を脳内で繰り返していると、お爺さんは不安げにこちらを覗き込んできた。

「リオ様⋯⋯？」


まさか誘拐された？この状況で？
私の怪我の具合からしてそれも無理があるだろう。じゃあここはどこで、一体この人は誰なんだろう。なんでこの人は私の名前を知っているのだろうか。それに、私はこれからどうなるのだろうか。
頭の中へ次々と浮かび上がってくる疑問。

⋯⋯ああ、駄目だ。なにもわからない。

「もう少しだけ寝かせてください⋯⋯」

私は現実か夢かもわからないこの状況から逃れるかの如く、再び微睡みに落ちていったのであった。