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本編
聖女の髪色
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我が国〈ピステオス〉で生活する人間の髪色は様々である。城から街を見渡すだけでも赤や青、緑など…それはそれはカラフルで、俺のいた世界との違いを痛感させられる。どうやらこの国での髪色はそれぞれの生まれ持った能力に応じて異なっているらしい。俺のいた世界ではまず、生まれつきの髪色はほとんど黒や茶だ。国を越えれば金髪で産まれてくる子どももいたけれど、この国の髪色の派手さを考えれば瑣末なことだ。
しかし、この国でも白髪の人間だけは違う。白髪の子どもが産まれた時、親は国へ必ず一報を入れなければならない。この国では白髪で産まれた子どもは”聖なる力”を宿すといわれ、産まれた瞬間から親元を離され、国を護る聖女になるために城に住みこむこととなる。
住みこみというと聞こえはいいが、実際は幽閉のようなものだ。能力が開花するまで、毎日修行と称し、惨い扱いをする。大人ですら結界を張れるようになるためには、かなりの労力と時間が必要になる。才能がなければいつまでたっても張れない者ももちろんいる。けれど「選ばれし聖女の才能が無かったので結界を張れませんでした」では許されないのだ。だから、教育係に選ばれた者は死に物狂いで教鞭を執る。それは時に虐待と言ってもいい程のことも。
俺はそれが間違っているとも間違っていないとも思えなかった。1人の犠牲で多くの人々の生活が守られるのならば、それも致し方ないと思っていたからだ。
聖女が亡くなると、新しい聖女が産まれるという。どういう仕組みかはわからないが、これまで同時に2人の聖女が誕生することはなかったらしい。
この国でこれまで聖女としての働きをしていたのが俺と同い年のアンジェという少女だった。アンジェは幼い頃から親元を離されていたにも関わらず、まっすぐで、眩しい太陽のような女の子だった。
そんな彼女が新しい聖女ーーリノをいじめるようなことがあるのだろうか?リノの言葉を聞いても俺は「はいそうですか」なんて言えるわけがなかった。なにより前世の記憶から、こういう場合は両者の意見を聞くのが1番だと思い、俺はアンジェの部屋へ向かった。
しかし、この国でも白髪の人間だけは違う。白髪の子どもが産まれた時、親は国へ必ず一報を入れなければならない。この国では白髪で産まれた子どもは”聖なる力”を宿すといわれ、産まれた瞬間から親元を離され、国を護る聖女になるために城に住みこむこととなる。
住みこみというと聞こえはいいが、実際は幽閉のようなものだ。能力が開花するまで、毎日修行と称し、惨い扱いをする。大人ですら結界を張れるようになるためには、かなりの労力と時間が必要になる。才能がなければいつまでたっても張れない者ももちろんいる。けれど「選ばれし聖女の才能が無かったので結界を張れませんでした」では許されないのだ。だから、教育係に選ばれた者は死に物狂いで教鞭を執る。それは時に虐待と言ってもいい程のことも。
俺はそれが間違っているとも間違っていないとも思えなかった。1人の犠牲で多くの人々の生活が守られるのならば、それも致し方ないと思っていたからだ。
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