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第五章 全面対決編(高校生)

閑話4 実は、頑張ってたんです。

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学校内で乱闘騒ぎが起きてる。
けれど、ボク達は透馬兄達に外にいるように言われていた。
「なぁっ!オレ達も中で戦おうぜっ!ここで手をこまねいてたって、美鈴センパイを助けれねーよっ!」
「………………いてこます………」
陸と空がばっちり戦闘態勢に入って今にも学校内に突入しようとしている。
でも、ダメだ。
きっと透馬兄達は何か考えがあってボク達に外にいるように頼んだんだろうから。
かと言って、ここでじっとしてたって何の解決にもなりはしない。だったら、ボク達は今何が出来る?
戦う力は透馬兄達程ある訳じゃない。かと言って、頭脳を巡らせれる程賢い訳でもない。じゃあ、ボク達に出来るのは…?
「正しい情報を伝える事?」
「?、海?」
「行こうっ!陸、空っ!」
まずは校舎に入らずに、周りを一望出来る場所に移動だっ。
木の上が良いかなっ?それとも建物の屋上?学校の屋上より高い場所って言ったらやっぱり屋上だよね。確か学校の横にそこそこ高いビルがあった。あそこは確か外に螺旋階段があった筈。そこへゴーッ!!
ボク達は真っ直ぐ隣のビルへと向かい、三階建ての階段を駆け上る。
うん。予想通り学校の校庭全域を見降ろせるっ。
中はどうなってるか解らないけど、逃げ出してきたとか外に出て来た犯人を見張る事は出来るよねっ。
幸いボク達三人共目はいいから、多少遠くても解るし。
「…中はどうなってるんだろう」
「だな…」
「………………もどかしい……」
「全くでございます」
『うわぁっ!?』
今までいなかったのに、突然隣にいるってどう言う事っ!?金山さんっ!!
「今、我々が出来るのは、協力要請が来たら直ぐに動く事のみ…。このもどかしさたるや…っ」
まるでハンカチを咥えて泣きそうな感じですね…。
なんてことを思っていると、校舎から誰かが飛び出してきた。あれは、誰?
「…あいつっ!あの小学生っ!前に美鈴センパイを襲った奴だっ!」
「………………あっちは、星ノ茶の生徒会長……」
「虎太郎?何故、奴らを追っている…?」
三人が各々気になる事を呟いている。それと同時に僕達の携帯が一斉に鳴り響いた。
画面を見ると、透馬兄からのメールで。危なくない程度で今外に出た奴らを追う様にと書いてあった。
直ぐ様頷き合って四人で後を追い掛ける。足では不可能だからと金山さんが車(鈴先輩のお父さんの車らしい)を用意してくれて、がっつりと追跡体制に入った。
その途中、鈴先輩のお兄さん達が走ってる姿を見かけたり、樹先輩が捕まる姿を見かけ、各々で情報が必要な人に連絡する。
「……中々真っ直ぐ走りませんね」
「こっちに気付いてるって事か?」
「…可能性としては高いと思いますが。奴らは私達を敵と認識はしていないでしょうから。泳がされているが正しいかと思われます」
要するに馬鹿にされてるって事だよね?
でも、伝達係としてはそっちの方が有難いかも知れない。
「あ…」
「あ?どうかしたの?空」
助手席に座っていた僕は後ろを振り返ると、空は窓の外をじっと見ていた。
何があるって言うんだろ…?
「あ…」
その視線の先にあるものを見て、ボクも同じ反応をしてしまった。
「新田先輩?」
新田先輩が全力で走っている。どこへ向かってるんだろう?
あぁ、でも今一人歩きは危ないよねっ。金山さんも同じ事を思ってはいたらしく、けれど、後続車の手前、急に止まる事も出来ずそのままトンネルの中に入ってしまった。
空は電話の途中だったのだが、トンネルに入って電波が通わなくなったのか、電話は切れてしまったそうだ。
トンネルを出てUターンした時には既に新田先輩の姿はなかった。
「一体何処に向かってるんだ?」
「…………ここらの近く……聖女、ある?」
「…あるね。だってここ、僕達の前の施設の近く」
「なら、新田先輩が向かったのって、聖女?」
「一応、連絡だけはしておきましょう」
金山さんの提案に陸が逸早く頷き連絡を取る。
車はどんどん進み、星ノ茶の生徒会長と小学生の姿しかなくなっていた事に気づく。
近江先輩はどこではぐれたのか…。
でも三人同時に追いかける事は不可能。だったら一番危険のありそうな小学生を追おう。
この判断が間違いだったのかもしれない。

「おぎゃあああああっ!!」
「うわああああああっ!!」
「………………死っ!!!」
「口を閉じていないと舌を噛みますよ」

車が上下左右に飛びまくる。
危ないとか言うレベルじゃない。
前方でカーチェイスを繰り広げている鈴先輩のお母さんや透馬兄達の後方を追い掛けているから、透馬兄達に倒されたであろう奴らの車が飛んで来て、それを回避する度に車があり得ない角度で動くんだ。
シートベルトじゃなくて、いっそジェットコースターとかにある安全ベルトが欲しいよっ!
確かに、僕達は一度小学生の行方を判明させて、星ノ茶の生徒会長の行動を金山さんと予測して、後は新田先輩が追い掛けた近江先輩の事とか色々調べて、それこそあちこち走り回って、最終的にもう一度小学生の場所へ向かおうとしたよ?
でもねっ!?もう居場所知ってるんだから、そこまできっちりついて行かなくてもいいんじゃないかなっ!?

「こ、こんな状況になるならっ、美鈴センパイに加勢した方が良かったんじゃねぇかっ!?」
「………この際、夢姉達の所でも良かった……ッ!!」
「た、確かにっ!でも、でも、一番危険そうで情報が欲しそうなのは、ここここだったとおおおおもうっ!!」

ギュルルンッ!!
車が一回転ーッ!!

「ぎゃああああっ!!」
「わあああああっ!!」
「………………サヨナラ」

さよなら?さよならって何っ!?
慌てて振り返ると、空の意識が旅立っていた。
えええっ!?ズルいよっ!!空っ!!一人だけ逃げるなんてっ!!

―――ガンッ!

今度は何っ!?天井から音がしたっ!?
「おや?……海里様。申し訳ありませんが、シートベルトを外して後ろに回って頂けますか?」
「この状態でっ!?」

―――ガンガンッ!!

天井からの音が増して、しかも隣からは「はい」と良い笑顔。
これは…やるしかなさそう。ガタガタと動き回っている車の中で、シートベルトを外して、真ん中から必死に後部座席に移動する。
ギュルンッ!
「うわぁっ!!」
「海里ッ!大丈夫かっ!?」
陸の伸ばしてくれた手に必死で捕まり、気を失っている空を真ん中にして座り、直ぐさま空ごとシートベルトを締める。
すると、突然、ドアが開き。
ザアアアアアッ!!
外から入り込む強風、むしろ風圧がボク達の顔にぶち当たる。
そして、スーツ姿の男性がひらりと中に入って来て、再びドアが閉められた。
「ふぅ。助かったよ。金山」
「いえ。そろそろいらっしゃる頃かと思っておりました。誠様」
嘘でしょ…?天井で音を響かせてたのって、もしかして鈴先輩のお父さん?
ちょっと待って?今時速何キロ…?100?……は?
「………本当に人間か?」
「…ボクもそう思ったよ…」
一体どうやって天井に乗ったの?とか、走ってる最中にどうやってドア開けたの?とか気になる事は一杯一杯あるけど…。
「さて。金山。運転代わってくれ」
この状況で運転まで変わるのっ!?
二人は器用に入れ替わり、そして―――。
「悪いが、もう少し急ぐ」
「かしこまりました」
「え?」
「えぇ?」
ギュオンッ!!
一気にアクセルがふかされて、スピードがガンガン上がって行くっ!Gがっ、Gがぁっ!!
何なら金山さんがボク達の為に避けていた車の破片や車そのものとかにも、多少ならぶつかって行く始末っ!!
「陸…」
「だなっ」
『これは、もう、無理ぃぃぃぃぃっ!!』
ボク達は喜んで意識を手放した。
目を覚ました時には、もう色々事件が解決してて。運転手も奏輔さんに変わっていた。
……安全運転万歳…。
こう言っちゃなんだけど、ボク達、平凡な人間の割には頑張ったと思うんだ―――絶対。

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