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第五章 全面対決編(高校生)

※※※

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「そっちはどう?」
「いませんでした。大地は?」
「こっちもそれらしき人影はなしー」
街中を走り回ったと言うのに、ストーカー小学生の姿が見つけられない。
一体何処に行ったと言うの?
隠れるのには最適そうな場所は全て当たった。念の為に美鈴に関する所も全て回ったのに、全然見つけられない。
「いっそ、鴇達の後を追いますか?」
透馬くんがそう窺ってくるけれど、正直そっちにアイツがいる気がしない。
もしも、アイツが生徒会長のアイツよりも後に転生したのだとしたら、この後の結末を知っている可能性がある。一緒に行動したら不利になる事が多い筈。
私達は道の真ん中で立ち止まり、思考を巡らせた。
………思い付く所は全て行ったのよ。
後は、何処を探したら…。

「佳織さんっ!」

考え込んでいると、突然声がした。
振り返ると、こちらへ向かって走ってくる奏輔くんの姿がある。奏輔くんは美鈴を看てくれていた。もしかして、美鈴に何かあったとかっ?
慌ててこちらからも駆け寄ると、奏輔くんの手には一枚の紙が握られていた。
「金山さんから預かってきました」
「金山さんから?」
素直に受け取り四つ折りにされたその紙を開く。そこに書かれていたのは、一言。

『○×港の波止場』

波止場?…成程。ここにあの小学生ストーカーがいるのね?
「波止場?ここからだと結構距離があるな」
「俺の車があるよー」
「車っつーか、トラックな。ついでに俺のバイク載せてきて正解だったな」
「サイドカーも積んできたんか?」
「おう」
一体いつの間に…?
彼らは鴇とつるむだけの事はあり、抜かりなく全て必要なものは揃えているようだ。
「佳織さん、どっちに乗る?」
「……透馬くん。乗せてくれるかしら?」
「了解です」
「急ぎましょー」
「せやね」
四人で同時に大地くんがトラックを止めた駐車場に走る。走りがてら、奏輔くんが美鈴が樹くんを助けに行ったことを聞く。…真珠さんが付き添っているから大丈夫だと言っていたけれど。正直忍びの力は当てにならない。何故なら相手も同じ力を使っているから。けれど、…私は自分の子供達を信じる。
美鈴はちゃんとトラウマを克服するだけの力があるって信じているから。私は、美鈴の為に一つでも多く障害を消す方に心血を注ぐ。
「…どうします?佳織さん。姫を助けに行きますか?」
「いいえ。私の子はそこまで弱くないわ。ちゃんと戦略を立てて乗り込んだ。そうでしょう?奏輔くん」
「勿論や」
「なら、私のすべきことはそこじゃないわ」
「佳織さん…」
「鴇も向かったのだから、美鈴は絶対に大丈夫。樹くんもいるしね。…それよりも、美鈴がより窮地に陥らないようにするのが私の役目よ」
「佳織さん、かっこいー」
走って駐車場に到着した私達は直ぐさま、大地くんのマイカーである軽トラックに駆け寄る。バイクを降ろし、透馬くんがバイクに跨り、私もサイドカーへと乗り込む。軽トラの助手席に奏輔くんが乗りこみ、運転席に大地くんが乗りこんだのを確認して、透馬くんがバイクを動かした。
うぅん…風で髪がなびいて邪魔ね。ゴムで一括りにまとめてしまいましょう。この歳でポニテ…いいえ、まだいけるはず。それにこの後確実に…。
私の予想だと確実に襲われる。あいつの手下どもに。そして、その予想はバッチリ当たった。
隣町に行く為に、自動車道に乗り上げた時にあいつ等は姿を現した。
夕暮れ。正しくはもう日は落ちかかって、闇に包まれそうな時。私達の後ろに黒い車が続いていた。透馬くんに頼みスピードを上げると、その車はピッタリ後ろをつけてくる。私の勘違いの可能性も考えて暫く何もせずに走っていると前方にも途中合流で黒い車が現れた。ここまで色、車種共に同じ車で来られると完全に私達を狙ってるとしか思えない。しかも、だ。この自動車道は二車線。後ろにいたはずの車が横に並走してきて、後ろにもう一台黒い車が尾行する。
もう、完全に怪しいでしょうっ。
中に乗ってるのは、黒いスーツを着た、黒いサングラスをつけた…言うまでもない。ストーカーの手下だ。
そして、私達を狙ってきたそいつらは当然。

ギュルルルッ!!

こちらに突っ込んでくるわよねっ!

「透馬くんっ!全速前進っ!」
「了解っ!」

ドルルンッ!
アクセルが回され、一気に加速する。すると、たった今私達が走っていた所に並走していた車が突っ込んできていた。

ドガガガガッ!

車がガードレールに接触し、ガリガリと車体を擦りながら方向転換をしている。それを上手い事回避した大地くん達がスピードを上げて私達と並走する。
窓を開けて奏輔くんが顔を出した。風で眼鏡が飛ばないように抑えつつこっちに向かって叫んでくる。
「佳織さんっ!あいつらっ」
「お察しの通りよっ!まだまだ来るわっ!勝つわよっ!」
『了解っ!』
風で聞き取り辛い所はあれど、言葉は伝わった。
「佳織さんっ、スピード上げるぜっ!」
「行ける所まで上げて良いわよっ」
「ははっ、流石っ!」
一瞬Gを感じて、一気にまたスピードが上がる。
逃げられると思ったのか、黒服連中は電話で応援を呼んでいるようだ。誰が逃げるものですか。きっちりかっきり潰させて貰うわっ!
道途中、一台、また一台と車は増える。
「あんまり、得意じゃないんだけどね。透馬くんっ、速度は保ってて頂戴ねっ!」
「へ?佳織さん?」
確か…胸の所にこっそりいれておいた…あったあった。手裏剣。近接戦は得意なんだけどなぁ…四の五の言ってられないか。
車のタイヤをバーストさせるっ。大地くん達に前に行くように指で合図し、私達の前に回ったのを確認して手裏剣を車のタイヤへと投げつけた。
すると面白い位に私達を追い掛けていた黒い車のタイヤはパンクしてギュルギュルと回転、クラッシュした。後続に待機していた黒い車達も巻き込んでくれたおかげで後方は全滅ね。
さて、後は前方。
「透馬くん。後で弁償するからサイドカー、切り離していいかしら?」
「は?切り離すって、どうやって?」
どうやってって、こうやって?
立ち上がって、いつの間にか並走していた大地くんの軽トラの荷台へと飛び移る。
そこに私がこっそり乗せていた武器を持って、もう一度、今度は透馬くんの後ろへと飛び移る。
「佳織さん…今、110キロで走ってるんだけど…」
透馬くんが何か言ってるけれど、風圧の所為で何を言っているか聞き取れないわ。取りあえず年齢のことじゃないならそれでよし。
私は手に持っていた釘バットでサイドカー接続部分を力の限り叩き、
「透馬くん、前の車に並走してっ」
「りょ、了解っ」
黒い車の側まで行ったのを見計らって、サイドカーを蹴り飛ばた。
バキンッと音を立ててサイドカーは離れ、黒い車へと見事にぶつかってくれる。
「行くわよっ!透馬くんっ!」
「お、おうっ!」
前方にいた黒い車がスピードを落として、わざとぶつかろうとしてくる。それを透馬くんは上手に回避してくれて、並走してくれる。
手に持っていた釘バットを力の限り叩きつけて窓を割り、運転中のそいつをぶん殴る。
運転出来なくなった奴の助手席に座ってた奴が苦し紛れに懐から銃を取りだしてくるけれど、それは後方から追い掛けてきてくれている大地くんが軽トラごと衝突して車の向きをずらしてくれた。

バンッ!

ちっ。撃って来たわねっ。
余裕がなくなって来た証拠とも言えるけれど。
後方からも、立て直した奴らが追い掛けて来ている。それは大地くんが車を盾にして防いでくれているけど、危険な事には変わりない。
「あぁっ、もうっ、鬱陶しいわねっ!」
「佳織さんっ?」
「透馬くんっ、このまま真っ直ぐ行ってっ!こいつら全員海に叩き落とすわよっ!」
「了解っ!」
「スピードを上げて、上げまくって前の奴らの車も追い越してっ!良いわねっ!」
「おうっ!」
こんな面倒なカーチェイス。繰り広げてる暇はないのよっ!
透馬くんと大地くんにガンガンスピードを上げさせる。
良しっ!黒い車全てを追い抜いたわねっ!
1、2…5…7か。かなり減ってるわ。これなら銃弾を防ぐのも問題はなさそう。
バイクの後ろで、後方向きに座って、撃たれた銃弾を釘バットで叩き落とす。流石、母さんが使っていただけの事はあるわ、これ。銃弾でもびくともしないなんて。母さん、便利なものをありがとう。
ついでだから…釘を抜いて、ていっ!
追い掛けて来ている車のライトを全て投げつけた釘で割ってしまう。これであいつらは私達の明かりを頼りにしなくては真っ直ぐ走る事も不可能ね。
ドリフト音をさせてカーブを曲がり、敢えてスピードを更にガンガンとあげて、
「透馬くんっ、大地くんっ、ライトを消してぎりぎりで左右に割れてブレーキっ!!」
叫ぶ。二人は流石の反射神経で見事に左右へ割れて動きを止めた。そして―――。

ドォンッ!!

水音と言うか、爆発音に似た音を上げて、車はブレーキをかける事なく宙を舞った。
いち、にい、さん…うん。全部逝ったわね。
「はぁ…はぁっ…」
「流石に、これだけのカーチェイス、やるのは、想像してへんかったわ…」
「だねー…」
私達はそれぞれ乗り物を降りて一か所に集まる。
「皆、怪我はない?」
「怪我はない、けど」
「しんどー…」
「ってか、逆に何で佳織さんは、あんなに動いとったのに、そんなケロッとしとんねん…」
「ふっ。皆、修行が足らなくてよ」
どやっと胸を張っといてあげるわ。
そんな私の姿を見て、三人はやれやれと笑う。

「……楽しそうですねぇ」

そんな私達の空気を打ち消す声が耳に届く。
私達が探しに探した相手は、暗い波止場のビットの上にそいつは座りこんで海を眺めていた。
「随分遅かったね。私を探すのはそんなに大変だったかな?」
「大変だったわ。街中で貴方の手下どもが襲ってくるんだもの」
「生身の人間相手ですから、手加減しなくてはいけませんからね」
ハハッと嘲笑うそいつに私はハンッと鼻で笑い返す。
「手加減?しないわよ、そんなもの。さっさと倒してポイしてやったわ」
「おや?…流石お義母さんですね」
「そのお義母さんって言うの、やめてって言った筈だわ」
こんなやつの母親になんてなる気はない。絶対にごめんだ。
「それは失礼。佳織様」
今度は様付け?とことん嫌味な奴ね。
「……もう逃がさないわっ」
「…そのようですね」
そう呟き、海から視線を私へと向けてきた。
今まで散々っぱら攻撃を仕掛けてきた癖にいきなり何?
唐突なまでの戦意喪失に若干拍子抜けする。
「……もう少しで、私の記憶が完全に消えるので、ある意味勝ち逃げと言う奴かもしれません」
記憶が消える?
「…鴇達が無事、お前を倒して姫さんを助け出したって事やな」
「奏輔が姫を一人で行かせたって聞いた時には滅茶苦茶驚いたが」
「姫ちゃんが戦う意志を持って乗り込んで行ったのならって我慢した甲斐があったねー」
さっきまでぐったりしていた癖に、鴇の御三家が私の背後を守る様に立ってくれる。
やっと見つけ出したのに何も情報を得られずに終わると言うの?
「あぁ…美鈴との記憶がどんどん薄れて行く…美鈴…華…キャリー…」
沢山の名前が出てくる。
「消える前に私の疑問に答えなさい」
「………何故?」
「私には知る権利があるわ。貴方が愛してやまない人間の母親なのでしょうっ?あの子を産めるのは私だけ。私に恩を売っておかなくてもいいのっ?」
「もう、失われる記憶にそんなもの必要ないでしょう。余計な知識を付けて、愛しい人を産まなくなってもそれはそれで面倒ですし」
「なら、力尽くでも話して貰うわっ」
一気に近づき、小学生の前に対峙する。しかし、その小学生は死んだ魚の目で私を見るだけ。
「力尽く…。無駄ですよ。何をしても話しませんし、殴られても痛みは感じません。どうぞ、ご自由に」
何もかもコイツの方が一歩上手で腹が立つ。いっそ本当に殴ってしまおうかしら?
そう思っていたけれど、
「……無駄な演技はよすんだな」
私の耳にはとても優しい、相手にとっては氷よりも冷たく、ナイフより鋭い声が届く。
ゆったりとした足音が聞こえ、その足音は私の横で止まる。
「……悪いが、透馬くん、奏輔くん、大地くん。私の車で寝ている申護持の三人を連れて帰ってくれないか。ここから先は、君達には聞かせる事が出来ない話になる」
「え?」
「でも…」
「途中で虎太郎くんの方へ向かった子達や、美鈴達も拾ってやってくれ。……頼んだよ。君達なら守れるだろう?」
三人は互いに目で会話して頷くと、駆けて行った。足音が消えると直ぐに車とバイクのアクセル音が響いて、その音は遠ざかって行く。ふと隣を見ると、鴇に良く似た…いいえ。鴇が誠さんに似たのよね。
「さて。これで余計な邪魔は入らない。教えて貰おうか。何故、貴様は記憶をとどめておくことが出来るのか。一体どんな呪いを己にかけた?」
「…さっきも言ったように、私の記憶は今消えて行っている。そんな状況で教える必要はない」
「そうか。今の言葉で大体は理解出来た。貴様は【同じ人間に転生する事が出来ない】んだな?」
「―――ッ!?」
目の色が、変わった。
その反応を見て、誠さんは口の端だけ上げて笑みを浮かべ、ビットの上でこちらを見るそいつを見おろした。
「となると、貴様が記憶を維持する為に自分に向けた代償と言う名の呪いは三つ。【心の消失】【同じ人間に転生する事が出来ない】そして【特定条件の追加】だな」
きっぱりと断言した誠さんの言葉を聞いて、そいつの顔はどんどん青褪めて行く。…図星なのね?
「…な、んで…」
「……俺はな。貴様を殺したくて殺したくて仕方ないんだよ。どの世界に転生しても、私とリョウイチにとって大事な娘を犯し、殺していく貴様が憎くて憎くて仕方ない。ましてや…俺の大事な女を殺している。そんな人間を許せるとでも?」
誠さんの殺気が、私をも威圧する。こんなにも鋭く恐ろしい怒りを向けられたら、私だったら間違いなく気絶する。
「この前、きっちり轢き殺したと思ったんだがな。…俺も甘くなったもんだ。金山の力だと気付けなかった。記憶持ちの厄介な所だな。運動能力が例え前世と同じでなくても、力を使うコツや方法を知ってさえいれば…それを補うだけの知識さえあれば、同等の力を扱う事が出来る」
「な、んで、そんな事まで…」
「これだけ生きていながら、知らなかったのか?俺は貴様と同様の【転生者】だ。佳織や美鈴みたいな一時的な転生と違う。【永遠の転生者】だ」
「なっ!?」
「…だが、貴様と一緒にするなよ。貴様は【私欲で呪いをかけた転生者】。私は【祝福を授かった転生者】だ」
祝福…?誠さん、それは、一体…?
私ですら解らない言葉でのやりとりが続く。
「ば、馬鹿なっ。祝福など、聞いたこともないっ」
「ある訳がないだろう。貴様に祝福される資格などある筈もない。それに貴様が知る必要はない」
「なぜだ、何故だ何故だ何故だっ!!私はただ、ただあの愛しい子を手に入れたいだけなのにっ!!」
狂ったように懐から何か取り出し誠さんに投げつけてくるが、誠さんは全く動じず、投げられたものを回避し、一つは受け止め手の内でそれをクルリと回して、投げ返す。
「ヒッ!?」
投げられたそれは苦無。それはそいつの首元すれすれをそれて飛んでいき、後ろの海へと落ちた。
「無駄な演技は止めろと言った筈だ。今徐々に記憶がなくなったとしても、貴様が呪いをかけようと思ったきっかけの人間の記憶。【初めのストーカー】の記憶がある限り、貴様の記憶はまた甦る。だと言うのに、わざとらしい演技をするな」
「そ、れは…っ」
「…あぁ。そうか。渋ると言う事は、【特定条件】が余程厄介なものらしいな」
「ぐっ…」
「そこまで睨んでくるとなると…、記憶を取り戻す条件は記憶を持っていそうな人間との接触が最低条件っぽそうだな。成程。そうなると、お前が消えると言うのも間違いではなさそうだ」
誠さんがストーカー小学生の襟首を掴み、地面へと放り投げた。海に捨てなくて、ちょっとだけホッとする。美鈴の敵と言えど、それはストーカーの記憶がそうさせる訳であって、その記憶さえなくなれば普通ではないけれど、ただの小学生になるのだから。誠さんが腕時計で時間を確かめる。
「そろそろ、か」
「え?」
一体何がそろそろなのか?
問う前に。

「くそっ!くそぉっ!!こんなの聞いてないっ!!自分に呪いをかけてまで、こんなになるまで追い掛けて来たのにっ!!なんでっ、何でぇっ!?美鈴っ!!美鈴ぅっ!!―――愛し、てる、のに…」

叫びが、断末魔がその答えを教えてくれた。
ストーカーの記憶が、その小学生の中から完全に消えた。
「?、ここ、どこ…?僕、どうして、こんな所に…?」
残されたのは、普通の小学生の男の子。キョロキョロと辺りを見てハテナマークを浮かべている。
「……その内、この子の迎えは来るだろう。厄介な事になる前に私達は行こう。佳織」
「えぇ。きっと海に落ちた黒服連中が来るでしょうしね。…でも、聞きたいことがあるの」
「分かっている。ちゃんと話すよ。…念の為に、当代の金山も呼んでおこう。あいつもある程度調べているだろうし、知っておかなければならない事もある」
「…そうね」
刺すような殺気が消えて何時もの誠さんに戻っている。私はゆっくりと誠さんに近寄りそっと抱き着いた。
「佳織?」
「……ううん。何でもないの。ただ…やっぱり誠さんはカッコいいなって思って」
「ははっ。それは嬉しいな」
私達は互いに微笑みあう。
その後、数秒も待たずに車と共に金山が私達を迎えに来たのだった。

場所を変えて。
私達は金山の自宅へと来ていた。安全面や、セキュリティの事も考えるとそこが一番信用が出来るから。
「何処に住んでるのかな?って疑問に思ってはいたけれど。まさか、普通のマンションだったとは…」
「普通って言っても、ここに住んでるのは大抵金山の下にいる忍び達だからね」
「あ、そうなの?」
「えぇ。流石、誠様。何もかもお見通しですね」
ちゃっかりソファに向かい合って座っている私と誠さんに甲斐甲斐しくお茶を用意してくれた金山。
そんな金山の家は、忍びなのに、部屋の内装は洋風で。ゆったりと座れるソファが二脚。ソファの間に小さなガラステーブルが置かれている。そんな部屋の床に金山が座った所で誠さんが口を開いた。
「…佳織。君は何処まで知っている?」
「私の知っている事なんて、誠さんの十分の一もなさそうよ?」
「ははっ。それは確かに。…じゃあ、佳織が知ってる事を教えてくれないか?そこに私が知っている情報と金山が知りたい事を織り交ぜてまとめて行こう」
「分かったわ。ストーカーの事を中心にしっかりと話していきましょう」
私の言葉に二人はしっかりと頷いた。

「まずは、あのストーカーの存在についてね」
「私どもの調べですと、星ノ茶高校の生徒会長、名は早乙女蟹次(さおとめかいじ)、小学生の男の子が早乙女蠍三(さおとめかつただ)で、二人共血の繋がった実の兄弟です。長男に鴇様を愛してやまない早乙女権蔵(さおとめごんぞう)と長女に棗様をナンパした早乙女麗子(さおとめれいこ)がおります。四姉弟揃って皆早乙女組の頭の子でございます」
「成程。名前の付け方や、後半の情報は置いておいたとして。ヤクザの息子だったのね。だとしたらあの黒服連中の意味も解るわ」
「ボディーガード兼手下って所だろうね。でも実際は彼らの素性なんて関係ない。問題は彼らが前世で美鈴を殺したストーカーの生まれ変わりだと言う事だ」
「そうね。時系列は美鈴やそのストーカーが実証している様に、関係ない。どの時代、どの時間軸でも生まれる可能性はある。だから、同時に存在してもおかしくはない」
「そうだ。今生存している命全てが何かしらの転生者だ。その転生者の中でも違いがある。それが記憶の有無。前世の記憶を維持している転生者は【条件付き転生者】と【覚醒転生者】の二通りに分けられる。詳しく説明すると、美鈴や佳織みたいな突発的に思い出す天然な転生者を【覚醒転生者】と言う。一方で私や嶺一、そしてストーカーは特定の条件がなければ記憶を思い出す事がない【条件付き転生者】なんだ。例えば私とリョウイチは【カオリ】に出会う事が条件。カオリに出会う事によって記憶が覚醒するようになっている」
「それは、さっきストーカーに言っていた【特定条件の追加】に関係してる?」
「あぁ。私やリョウイチは自分の死を受け入れて、新たな生を得て【カオリ】に出会い、その存在を思い出す。自分の手で幸せにしたいから【カオリ】の側にいくけれど、それとは別に私もリョウイチもただカオリの幸せを願っている。カオリが幸せであればそれで私達も幸せなんだ。記憶はあれども記憶に縛られてはいない。だからこれはあくまでも授かりもの。授けられた祝福なんだよ。まぁ、記憶を取り戻すのは良い事ばかりではないから祝福という言い方も微妙ではあるが。その点、あのストーカーは違う。自分の記憶を絶対に無くさないように、自分に呪いをかけて記憶に自ら縛られる事を望んだ」
「呪い?」
「そう。あのストーカーが記憶を取り戻す方法は恐らくかなり複雑な筈だ。まず、一つは確定だ。【美鈴の姿を見ている】事。これは間違いないだろう」
「そうね。他にもあるかしら?」
「僭越ながら私に。本日入手した情報がございます」
「それは?」
「被害にあった人間が言うには、小学生の男の子と【視線があった瞬間から記憶がない】のだそうです」
「成程。なら二つ目はそれだ。【視線を交わす】事」
「けれど、誠さん?この二つは案外直ぐに達成できそうよ?」
「そうだな。もう一つ。決定的な何かがありそうだ。ストーカー一人の力ではどうにもならなそうな何かが」
「…誠様。佳織様。こちらを。手書きメモで申し訳ありませんが…」
机の上に金山が書き殴ったであろう文字が羅列されていた。そこには女性の名前が書かれている。一番上に書かれてる名前は、早乙女星子…さおとめ…?何て読むのかしら?
「星の子と書いて、ショウコと読むようです」
へぇ、珍しい読み方…ってちょっと待って?二番目に書かれているのは、真珠さんよね?真珠翔子。その次は、武蔵晶子…。
「もしかして、全てショウコと読むのかしら…?」
「その通りです。ここに上げられた人物は全て、お嬢様を襲った人間の母親に当たる人物です」
「ショウコ……成程。そこが繋がって来る訳か…」
「誠さん?」
「いや。そこについては確信を得てからまた話すよ。それよりも、そのショウコと言う人物はどうやら君と同じようだね」
「私?」
「そうだ。君は必ず美鈴の母親として生まれている。同じく、ショウコも必ずストーカーを産み落とす」
「そう言う意味で、同じ?」
「あぁ。多分これがストーカーに課せられた一番困難な条件だろう。【ショウコの魂を持った女から産まれる】事だ」
「誠さんの言葉を纏めるなら、ストーカーに課せられた【特定の条件】と言うのは【美鈴の存在を目視している事】【生まれ変わった自分と視線を交わす事】【ショウコの魂を持った女から産まれる事】の三つね?」
「しかし、生まれ変わった自分と視線を交わす事と言う事は、最低でも生まれ変わりは二人必要になりますね」
「いや。その時点で記憶が戻っている必要はないだろう。人は知らない間に、色んな人と視線を交わしている。その中に一人でも自分の転生者になりうる条件を持っていれば記憶のあるなしは関係ない」
「この特定の条件はあくまで【記憶を取り戻す条件】よね?じゃあ、誠さんが言っていた【心の消失】【同じ人間に転生する事が出来ない】【特定条件の追加】は何の事?」
「これは、転生する為の条件だ」
「記憶を取り戻す事と、転生する事は別物なの?」
「本来私達人間は転生する時に記憶を持って生まれ変わる事は出来ないんだよ。記憶ってのは重さを伴う。記憶を維持する為には心を消費する。記憶ってのは辛かったことや苦しかった事、恐れや絶望なども全て含まれて記憶だからね。だから、私達は生まれ変わる度に記憶を失う。心の負担を減らすんだよ。それは私達が私達を保つために必要な事。だが、ストーカーはその法則を捻じ曲げた。自分に呪いをかける事によって、【自分の意志で記憶を取り戻せる】ようにと」
「誠様。私は前世の記憶など持ちえない人間でございます。それでも記憶を維持しようと思えば可能なのですか?」
「…いや。自分に呪いをかけるなんて、余程の力がないと無理だよ。私は祝福を授かった人間だから記憶を維持出来るけれど。それでも【カオリ】と言う記憶の共有者を得るまではその記憶を封じられている。それはその記憶が重過ぎるからだ。私は自然の摂理に逆らうつもりはないんだよ。今までも、これからも」
誠さんは記憶があってもなくても、私を見つけてくれると、そう言ってくれてるのかしら?
だとしたら、それはとても嬉しい。誠さんに向かって照れながらも微笑むと、とても柔らかい笑みで返された。嬉しい。嬉しいけれど…話を進めなくては、ね。
「…そんなストーカーに抵抗するにはどうしたらいいのかしら?美鈴を守るにはどうしたらいいの?」
「今はとりあえず、鴇が作った薬が効果を出して、奴らの記憶が消されてはいるけれど。早乙女蟹次よりも前のストーカーの転生者が出てくる可能性がある。結局は、一番最初の、美鈴を見初めた初代のストーカーから美鈴の記憶を奪わない限りはこの負の連鎖は続く」
「………」
「とは言え、今美鈴の側にいるストーカーの転生者達は一様に記憶をけされているから、暫くは平穏な日々が続くはずだ」
「そう、ね…。後は美鈴がどのルートを…誰を選ぶかでまた話は変わってくるわね」
「ルート、とは?」
初めて、金山が疑問を口にした。そう言えば、金山の前でずっとこうやって話していたけれど、金山は私達と違って前世の記憶がないから理解出来ない所が多いのかもしれない。
「金山。私達が前世の記憶を持っていると言うのは何となくだが理解しているだろう?」
「…はい。正直最初は半信半疑ではありましたが、今は疑いを持ってもいません」
真剣に頷くのに応えて私達も真剣に頷く。
「私達が前世で暮らしたのはここと同じ地球。けれど、ここは私達の暮らした地球とは違う。ここは前世の私達から見たら、ゲームの中の地球なのよ」
「ゲームの中…」
「そう。美鈴が主人公の、ね。ゲームは恋愛ゲーム。一般的には攻略対象キャラクターと称されるイケメン達との恋愛を楽しむゲーム。その攻略者達は全部で16人。それだけで誰なのか大体察す事が出来ると思うけど」
「…鴇様、葵様、棗様、龍也様、優兎様、猪塚様、透馬様、大地様、奏輔様。ここまでは確定でございましょうか?」
「えぇ、そうね。後は、申護持陸実、海里、空良。それから未正宗、巳華院綺麗、近江虎太郎、風間犬太。この七人で全てよ」
「なんと…。虎太郎まで入っているのですね」
「結構面白いゲームだったのよ。って言うか、ゲーマーの間では流行ってたのよね、これ。人気ランキングも結構上位をキープしてたし。ファンディスクが出る位だったし。内容が濃かったのよね。私なんて思わずファンブックを娘に隠れて買い漁って。死ぬ間際にそれを娘に見せたくなくて親友に処分してくれと遺言に残した位…」
うふふ…。今はあれ買っといて良かったなとは思うけれど…。ついね、つい…色んなカップリングがあって楽しかったってのもあって、それはもう病院のベッドの下にトランクケースを置いて詰めに詰めまくってたわ…。華にあれがばれなくて良かった。本当に良かった…澪、ありがとう…。
「それで、美鈴は今誰の好感度を一番上げてるのかな?」
「どうかしら?一番はやっぱり鴇だと思うの。でもね。美鈴は昔から樹くんのキャラ絵が大好きなのよね。多分見た目だけで行けば樹くんが一番好みなのよ。あぁ、でも、葵と棗には甘えっぱなしだし。私としては猪塚くんを推したいんだけど、美鈴はどうしても男性恐怖症が表立って出てしまうからね。申護持の三つ子は弟感覚なんだろうし、その点では優兎も同じくくりになっていそうだわ。友達の恋人に手を出すなんてことはまずないから未、巳華院、虎太郎、ワンコは除外だと思うし。かと言ってじゃあ、御三家は?ってなると、彼らはお兄ちゃんが強くなってると思うの。でも、私としては…ってあら?どうしたの誠さん」
「…ふふ…何でもないよ。大事な大事な、目の中に入れても痛くない、むしろ目にしても良い位の可愛い娘が、男の物になると考えただけで私の心に刃が刺さる…」
「やだ、誠さんったら。娘なんてね。大事な人が出来たらようやく父親に優しくなるものよ。諦めなさいな」
「妻からも刃が…」
誠さんがこんな父親らしい言葉を言うなんて…。ちょっと新鮮で面白い。もう少し苛めてやろうかしら?
「…申し訳ありません。脱線させてしまいました。しかし、疑問があるのですが」
脱線したのはほぼ私の所為だと思うんだけど…。まぁ、いっか。そこに気を止める事なく金山に続けるように促す。
「どうして、攻略対象キャラとの恋愛を?お嬢様でしたら他の男性と恋愛をしても良いと思うのですが」
「そこは…乙女ゲームの強制力って奴かしら?基本的にゲームの流れに添うようにキャラクター達は動いてしまう。その理由は、ゲームとはキャラクター達の運命を描いたものだからね。私達はそれをヒロイン補正と呼んでいるけれど。でも確かにそこからそれて他の男性と恋に落ちても良かったと思う。―――普通なら」
「普通なら?」
「そう。このゲームは普通の恋愛ゲームとは違う。美鈴の命に係わるシーンがいくつもあるのよ。それはどれも、ゲームの展開から外れたら訪れる。美鈴が誤った運命を選択したら訪れるの。だから、私は今の内に―――【高校生】の内に美鈴が誰かと恋人同士になる事を望んでいるの。…例え好き合っていなくても良い。誰かを美鈴が選ぶならそれでいいの。だから、私は影ながら美鈴を誘導していた。選ぶべき選択を選ばせて美鈴が必要なイベントを発生させた。あえてヒロイン補正に乗っかったのよ。けれど、乗っかってばかりだといざと言う時、もしも美鈴に死が迫っていた時対処が効かない。だから、あえて【私】は自分に対するヒロイン補正を避けた。それは誠さんに早く出会った事に寄って解決したわ。ゲーム本編でいる筈のない旭に蓮、蘭、燐を産むことが出来た」
「成程。言うなれば、お嬢様はゲームの中の主人公。奥様はゲームをプレイしているプレイヤーな訳ですね」
「そうね。そう言う感覚かもしれないわ。美鈴に関しては失敗が出来ないゲームだけれど」
「お嬢様にその事はお話しないのですか?」
「…しないわ。美鈴が知る事によって、そのゲームの運命から大きく外れてしまう事が恐ろしいから。美鈴はきっとヒロイン補正が強過ぎない?程度にしか思ってないわ。けれどそれでいいの。同様に、攻略対象キャラクター達にも教える事は出来ない。ゲームと言う運命から外れる事はほぼ美鈴の死とイコールだから」
「そうなのですね。…となると奥様?ストーカーはそのゲームに出てくるのですか?」
「いいえ。言ったでしょう?乙女ゲームなのよ?恋愛要素が強いゲームよ?あんなホラーな人間がいて堪るものですか」
「それは、確かに…」
「あのストーカーはイレギュラーよ。おかげで私の計画が狂いっ放しだわ」
「ストーカーが変なタイミングで介入して来たから、ヒロイン補正とストーカー問題が一度に美鈴に襲ってしまった。こればかりはやられたと思ったね」
「全くだわ。でも、暫くは大丈夫よね?」
鴇のおかげでストーカー達の記憶は消えた。これで暫くは戻って来ないはず。卒業まではどうにかなるだろう。
あとは美鈴がどんな選択を選ぶのか。
こればかりはどうしようもない。
けれど、私は願う。
美鈴が幸せになれるルートを選んでくれますように、と。

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