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小学生編小話

二回目の豊穣祭

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「今年は鬼ごっこじゃっ!」
鬼ごっこ…?
そもそもが去年、この村に来ていないから今年はと言われてもピンと来ない。
概要は美鈴ちゃんに聞いたから大体理解しているものの、その話とは若干違いそうで私は首を傾げた。
そんな私の横で美鈴ちゃんも首を傾げている。周りを見ると、鴇くんを始め皆首を傾げていないにしても源お祖父さんの言う事を理解出来ていないらしい。
「ルールは、至って簡単よっ!」
佳織さんが源お祖父さんを蹴り飛ばして、さっきまでお祖父さんが仁王立ちしていた場所に同じく仁王立ちした。
「各家、それぞれ一人鬼を決めます。そして、その他の人は皆逃げる人よ。ここまでは普通の鬼ごっこと一緒ね。でこっからが重要。鬼に捕まった人は鬼の仲間になる。なので増え続ける鬼からずっと逃げ続けなくてはいけないの。でもそれだと最初から鬼の人間には勝ち目がないじゃない?だから勝利条件は『制限時間一杯まで逃げ切った人』もしくは『一番多く捕まえた家』と二つ、ね」
「佳織母さん、質問」
鴇さんが手を上げる。
「はい、何かしら?鴇くん」
「くんって…まぁいい。それって逃げれる場所って決まってるのか?」
「決まってるわ。今回は山はなし。この村の中だけの鬼ごっこよ。逆に言えば村の中だったら屋根の上でも地中でも好きな所に逃げていいし隠れても良いわ」
はー、なるほどー。
「はい、佳織母さん。僕も質問」
「なにかしら?葵くん?」
「制限時間ってどのくらい?」
あ、それは大事だよね。
「朝の九時から始まってお昼、だから十一時までの三時間ね」
長っ!?うわー、耐えきれるかなー?
話には聞いていたけど、今年も凄そうなんだね。
私が感心していると、今度は、
「はい、佳織母さん。僕も聞いていい?」
きらきらな双子の弟が手を上げた。
「いいわよ、棗」
「鬼は誰の予定なの?」
「家は美鈴にしようかなって思ってるの」
「ふみっ!?」
佳織さんの宣言で面白い位に美鈴ちゃんが跳ねた。
「わ、私?」
「そうよ」
「な、なんで私?」
「美鈴。追いかけられるよりは追い掛けた方がましでしょう?」
にっこり笑って言う佳織さんに、美鈴ちゃんは慌てて首を振って否定した。
「参加しないって案だってあるでしょーっ」
それもそうよね。こくこくと皆で頷いていると、
「いいの?村中皆遊んでるのに、美鈴だけ一人でお留守番でいいの?」
と佳織さんが言う。それに負けたのはやはり美鈴ちゃんだった。
「…うぅ…。一人でお留守番、やだ…。皆と遊ぶ…」
そう言いながら私に抱き着く美鈴ちゃんは天使である。可愛い。
「大丈夫よ、美鈴。鬼はね?自分の家の人間も捕まえる事が出来るの」
「あ、なら、僕達が真っ先に鈴に捕まってあげれば問題ないね」
「うん。そうだね。鈴ちゃん。待っててね。すぐに捕まりに行くから」
「うんっ。私もまずはお兄ちゃん達を捕まえに行くねっ」
あぁ、満面の笑顔超可愛いっ!
けど…自ら捕まりに行く逃げ役。…鬼ごっことは一体…?
微妙な空気の中双子を眺めていると、大ちゃんが口を開いた。
「どうせなら、どっちの勝利条件も満たして、賞品を全てゲットしたい所だよねー」
「そうなのよっ!!大地君っ!そこよ、そこっ!!」
佳織さんが意気込む。
「各家、作戦は自由。鬼側と逃げる側はスタート地点が違うからそれも踏まえて作戦を立てましょうっ!」
バッとポケットから地図を取り出して広げる。そして、地図を指さして説明を開始した。
「…んー…佳織は元気だなぁ…」
幸せそうに誠さんが呟いているけれど、果たしてそんな問題なのだろうか?
そして源お祖父さんがいまだに壁にふっ飛ばされた衝撃でこちらの世界へ帰って来ないんだけど、いいんだろうか?
色々疑問に思いつつ、私達は明日の豊穣祭へ向けて作戦会議を繰り広げるのだった。

―――翌日。

私達逃げる人間はスタートラインに立っていた。村の西側の入り口。因みに鬼の人達は東側の入り口に立っている。
…それにしても…。
「皆、細身の人ばっかり…」
本当にアスレチックなんて出来るの?と思わず聞きたくなる位にはスマートな人が多い。
「…七海。侮るな。この村の住人の見た目に騙されたら痛い目を見るぞ」
「そうそう。七海ちゃんは女の子なんだから十分気を付けないとー。七海ちゃんに傷一つでもつけたらオレが将軍兄貴に怒られるー」
「とくにあいつに気をつけや、七海ちゃん。あいつに視線をやったら最後。目が離せなくなるで」
と言いながら指をさす。視線をやったらダメと言いながら見る様に促すんだから。
そっとそっちを窺い見ると、………え?なにあの巨人。
「因みに、美鈴と同い年だ」
「うええっ!?」
「いるかなとは思ったけど、やっぱりいたね」
「うん。良い子、だとは思うんだけど…」
白鳥家の三兄弟が珍しく退いている。
じーっと行動を見詰める。
むふんむふん言いながら、お菓子を食べて…ずっと食べ続けてるよね?大丈夫なの?あれ?
「七海ちゃん。目の安全の為、あまり見ない方が良い。佳織、そこ足元気を付けて」
「大丈夫よ、誠さん。もうお腹に子供もいないんだから平気平気。にしても、相変わらずねー、露見尾君」
「一年でそう変わるものでもないわよ。ほらほら、佳織。旭を預かるわ」
「うん。ありがとう、母さん」
あ、佳織さん達が合流したんだ。誠さんも佳織さんが側にいるとデレデレだよね。
そんな誠さんがきょろきょろと辺りを見回している。どうしたんだろう?
「あれ?お義父さんは?」
そう言えばいない。
私も一緒になって周りを探ってみるけどやっぱりいない。
けど答えは予想外の所から返って来た。
「今ごろ河童と合流してる頃ね」
…………。
ヨネお祖母さんがニコニコと微笑んでいる。その微笑みが怖いと感じたのはどうやら私だけではなく。皆静かにヨネお祖母さんから視線を逸らし、誠さんに至ってはしまったという顔をしている。確かに聞いては行けなかったことかもしれない。
あれ?でも源お祖父さんがいないって事は司会や実況は誰がやるの?
「勿論、私よっ、七海ちゃんっ」
「えっ!?」
あ、あれ?私今声に出してたかな?
「いいえ、出してないわよ?」
「ええっ!?」
じゃあなんでっ!?
そう思ったその時、肩にぽんっと手が置かれた。
何事?と顔を上げるとそこには透馬の真剣な顔があり。
「考えたら負けだ」
と妙に説得力のある言葉で返された。頷くしかない。

『それでは村の皆様、準備は宜しいですかーっ!?』

何時の間にか手にマイクを持ち、すっかり実況に入っている佳織さん。
慌てて私達は位置につく。

『ではでは、カウントダウンを開始しますっ!100っ!99っ!』
「長いっつーのっ!(長いよっ!)」
『はい、透馬君、去年に続き突っ込み有難うっ!七海ちゃんも突っ込み有難うっ!では行きますっ!5、4、3、2、1、スタートっ!』

佳織さんの声で鬼ごっこが開始が宣言された。


美鈴ちゃんは何処だろう?
私は村の東側を目指して全力で走りながら美鈴ちゃんを探していた。
「おい、七海っ!」
そんな私を民家の一階の屋根の上から見下ろしている透馬が呼び止める。
って言うかどうやってそんな所に登ったのよ。
私も登ってみたい。けど…そんな命知らずな事出来ないしなぁ…。地味に悔しい。
「なによ、透馬っ」
気付かれてないと思われても面倒なので足は止めずにしっかりと返事を返す。
「あっちに姫がいるっ!誠さんが既に合流している。さっさと行け」
「分かってるわよっ!もう、うるさいなっ」
透馬が指さしてるのは…役場の方?よし、行こうっ!
確か誠さんがもういるって言ってたね。急げ急げーっ!
透馬の存在なんて丸無視して駆け抜ける。
にしても誠さん流石と言うか何というか。まさか双子より速いとは。
いや、うん。あの三人の父親なんだから当然と言えば当然だけども。
「あ、逃走人発見っ!」
やばっ!?
美鈴ちゃん以外の鬼に捕まって堪るもんですかっ!
例え鬼になれるのだとしても、私は美鈴ちゃんを抱きしめたいのよっ!
走るスピードを上げる。
追ってくる人はどうやら村の外の住人らしく結構足が遅い。
私は楽勝で逃げ切ると、遠目で可愛いほわほわを見つけた。
「美鈴ちゃーんっ!」
手を振ってそっちへ駆けると、美鈴ちゃんは私に気付きパッと笑みを浮かべた。可愛いっ!
「七海お姉ちゃーんっ!」
互いに駆け寄り合い、ぎゅっと抱きしめ合う。
「七海お姉ちゃん、つっかまえたーっ。えへへ~」
「あぁん、もうっ、可愛いっ!!」
もう離さないんだからっ!誰にもあげないんだからっ!
「あぁ、やっぱり七海ちゃんも速いねぇ。サッカーしてるだけの事はあるね」
そう言いながら誠さんが歩きながら感動の再会をしている私達の側へ来た。
「誠パパ。お兄ちゃん達はー?」
「今、そこの屋根に登って見てみたら、村の女の子から逃げつつこっちに向かってるようだよ。流石村の女の子だよね。粘り強い」
誠さん、屋根に登ってたんだ。だから姿が見えなかったのね。透馬が誠さんといると言っていたのいなかったから、ホラ吹きやがったのかこの野郎と殴りつけてやろうかと思ったけど、どうやら違ったらしい。透馬を殴るチャンスが減ってしまった、残念。
「えっと、葵お兄ちゃんと棗お兄ちゃんと合流したら、今度は逃走人を捕まえるんだよね?」
「そうだよ。逃げ切る方は鴇達に任せておけばいい。あの四人なら楽勝で逃げ切れるだろう」
「あー…透馬が足を引っ張らないといいんですけど」
私が冗談交じりに言うと誠さんは優しく微笑んだ。
「大丈夫だよ。透馬君も兄としてのプライドがあるだろうから」
ハハッと笑いながら言われたけれど、良く納得が出来ない。兄としてのプライド?そんなものあったの?透馬に?
「鈴ーっ!」
「鈴ちゃーんっ!」
屋根の上から声が聞こえて、傍にあった木を伝って双子が到着した。
そして、その双子が私と美鈴ちゃんを見て、しょんぼりと寂しそうな顔をする。
あらー…分かりやすい焼き餅。何だか微笑ましい。
「はい、美鈴ちゃん。葵君と棗君の所に行ってあげて」
苦笑しながら抱っこしていた手を離すと、美鈴ちゃんは真っ直ぐ二人の下へ走って行く。
すると二人は、それはそれは嬉しそうに微笑む。可愛いなぁ。こういうのを眼福って言うんだよね。
「…家の子供達は何でこうも可愛いのかっ…」
「……誠さん」
「なんだい?」
「カメラ、入ります?」
言いながらポケットからカメラを取り出すと、
「是非、買い取らせてくれ」
と財布を取り出された。いやいや、あげるとは言ってない。貸すと言っただけだ。
「新しいカメラを買うなら、これくらいで良いかな?」
「な、何ですか、その札束っ!それに貸すだけですよっ!」
「あ、そっか。そうだよね。…いいのかい?」
「いいですっ!ちゃんと後で写真を現像してあげますからっ!なんならディスクに落として加工もして差し上げますからっ!」
それにもう一つカメラあるし。パーカーのお腹の部分にあるポケットにはカメラが入ってるから問題ない。
誠さんはそれはそれは嬉しそうにカメラを受け取り、写真撮影に精を出した。
……良く考えたら今鬼ごっこの最中なんだけど…。

『ピンポンパンポーンッ!!』

…チャイム…なんだよね?
佳織さんが自分の口で言ってるみたいだけど。
私達は取りあえず一か所に固まって放送の続きを待った。

『ただいまよりファーストミッションの説明をしまーすっ!逃走人サイドのミッションは『村の中に十個のボーリングの玉が隠されています。それを探し出して役場にある台の上に集めろ』ですっ!次に鬼サイドのミッションは『東西南北にある村の入り口に隠された網を探し出そう』ですっ!』

「……網?」
「網って言ってたね。って言うかミッションって」
「まぁ、佳織母さんが企画する物だし、普通の鬼ごっこな訳ないと思ってたけど」
「佳織だからね。…しかし絶好調だな」

『網は後々のミッションで便利なアイテムとなりますっ!大きいから持ち運ぶの大変だけど鬼は逃げる訳じゃないから大丈夫ですよっ!逃走人は重いと不利っ!けれどこのミッションをこなさないと…受理江島家の皆様が全員鬼として参加致しますっ!更にどちらかがこのミッションをクリアした時点でミッションタイムは終了しますっ!さぁ、皆急ごうっ!』

……受理江島家?って誰?どこの人?
「むふんっ!」
え?今の声は一体…?
私達が全員で声がした方を振り返り…止まった。
巨人が四体っ!?露見尾くんとか言う子の親族だと一目で解るその容姿っ!
むふーむふー。もふーもふー。
「もしかしなくても、あれが会話っ!?」
「ちょっ、取りあえず鈴を隠そうっ!」
「って言ってもあっち女の人ばっかりだよっ!?お兄ちゃん達の方が狙われるんじゃないっ!?」
「三つ編み、ポニーテール、おかっぱにストレートロング。…それ以外の違いが分からない…」
確かに…。棗君がかなり退いている。何なら私の影に美鈴ちゃんと葵君をつれて一緒に隠れてしまった。
「皆、落ち着け。彼女達は鬼サイドだから、一先ず私達はターゲットにはならないよ」
「あぁ、そっか。そうですね。私達はとにかく入口付近にある網を手に入れなければいけないですね」
誠さんの言葉に我に返る。この人達はマジでやばい。常識って意識を破壊してくる。
「取りあえず、どうする?皆で別れて行くかい?四つ手に入れれるか分からないけれど」
「うーん。それよりだったら確実に一個手に入れようよ。ね、七海お姉ちゃんっ」
「そうねっ、美鈴ちゃん…と言いたい所だけど。私は別行動しますよ。どうせならもう一つ位手に入れておきたいし。誠さん、良いですか?」
「あぁ、構わないよ。因みに、何処を狙うつもりだい?」
「ここからなら…南口、でしょうか」
ポケットから地図を取り出し皆の前で広げ、南口を指さす。ちょっと距離があるけど、多分穴場の筈。だって皆多分真っ先に西口を狙うと思うんだ。そっちに逃走人が多いだろうから。それでもって逆に東口も多いと思う。何せ鬼のスタート地点だから。
そう考えると、南か北。でも北は少し遠い。となれば南口がベストだ。
「なら私達は一度東口を狙ってみようか。一番近いしね」
「分かったよ、父さん」
「鈴、手繋ぐ?」
「うーん…走ってもいいんだけど…。足手まといになりそうだし…誠パパ、背中に乗ってもいい?」
「あぁ、勿論」
しゃがんだ誠さんの背中に美鈴ちゃんがおぶさる。美鈴ちゃんも考えるなぁ。確かに誠さんに走って貰った方が速いよね。下手に一緒に走るより余程良い。
「じゃあ、私行きますっ!後でね、美鈴ちゃんっ」
「うんっ!後でね、七海お姉ちゃんっ!」
手を振って走りだす。
南口まで行く途中何人かの男にタッチして鬼にした。
あ、そうそう。逃走人は一人一つワッペンを付けててね。タッチするとそれを奪い取る事が出来るんだ。そうすると逃走人は鬼になる。
鬼になった逃走人は奪い取ったワッペンを家族の最初から鬼だった人に渡す事でポイントとなる。だから私はこれを美鈴ちゃんに渡せばポイントになるんだよね。
っと、南口発見。あぁ、やっぱり何人か鬼がいるね。
どこに網があるのかな?隠されたって言ってるから、多分分かりにくいとは思うんだけど…。

『おおっと、逃走人サイドっ!残るボーリングの玉は三つっ!こら、大地君っ!それは露見尾くんであってボーリングの玉ではないですよっ!透馬君もっ!ダルマじゃないですよっ!え?なに?奏輔君。ひょうたん?いやだから違うのっ!露見尾くんは普通の小学生っ!』

……普通、なの?本当に?
……………疑っちゃ駄目かな…?
疑問に思ったら負けなのかもしれない。
…ん?あれ?これ何だろう?
南口の周りをうろうろと網を探していたら、足元に紐が落ちていた。
思わずそれを手に取って引っ張り上げてみると、パカッと隠し扉が開いた。
「えええっ!?」
道の真ん中に隠し扉とか。ゲームのダンジョンじゃあるまいしっ!
マンホールとかならまだ納得出来たものを…。
改めて中を見るとそこは小さな収納スペースみたいな感じになっていて、その中にいかにもな宝箱が置かれている。
鍵もかかっていないそこを開けると、…あ、網だ。
それを手に取ったと同時に。

『南口の網が発見されましたーっ!これで鬼サイドのミッション終了ですっ!受理江島家が放出されますっ!』

ドドドドドドドドッッッ!!

「ええええっ!?何、この地響きっ!?」
地面が揺れてるーっ!?

『鬼ごっこ、再開でーすっ!』

そして、まさかの続行宣言。
念の為に私は網を持って、近くの民家の家の庭に避難した。

…良く考えたら私も鬼なんだから隠れる必要ないんだよね…。
ついつい恐怖から隠れちゃったよ。
だって彼女達が駆け抜けてった跡を見ると…。
足跡の場所、凹んでるんだよね…。罠の様に足跡がべっこりと。
全力で走ったらあぁなるの?彼女達って。
まって?まってまって?
って事は露見尾くんってまだ可愛い方なんじゃないの?
………………怖い考えに辿り着いた気がする。…うん。忘れよう。それが己の身の為だ。
私は庭から抜け出して、また鬼ごっこを再開する。
逃走人を三人捕まえたあたりで再び放送が流れる。
今度のミッションは逃走人の方にのみ課せられたミッションらしく『四つの鍵をゲットせよ』って佳織さんが言っていた。
四つの鍵?入口の数と同じだけあるのが関係あるのかな?
私の予想は当たっていて、各入口付近に鍵があるらしい。逃走人全員分あり鍵をゲットしないとゲット出来なかった鍵のエリアに逃走人は潜入不可能となるそうだ。
おお、鬼にとって有利だ。
そう思っていたのに。大抵の人は皆ゲットしてしまったらしい。
佳織さんがマイクの向うでチッと舌打ちするのが聞こえた。
私は数少ない鍵をゲット出来なかった面々を捕獲して、美鈴ちゃんと合流する事に決めた。
こうも走りっぱなしだと流石に疲れる。
何より、あっついっ!
下にキャミソール着てるし…いっそ上のパーカー脱いじゃおうかな?半袖のパーカーとは言え暑いんだよね…。
うんっ、脱いじゃおうっ!
道のど真ん中で足を止めて、服の裾に手を伸ばして、ぐいっと上に捲ると、
「おわっ!?何してんだ、七海っ!!」
どっからか透馬の声がしたような?
と思った瞬間目の前に透馬が現れた。屋根から飛び降りたんだ。
「危ないことするよね、透馬」
捲っていた手をそのままに、透馬に言うと、
「そりゃこっちのセリフだってのっ!とにかくその出しっぱなしの腹をしまえっ!」
服を引っ張られて戻されてしまう。暑いのにー…。
「あちーのは解るけど、ここの村は男が多いんだぞっ。んな格好で歩き回るなっ!」
「えー。下にちゃんと着てるよー?ブラ一枚で歩く訳じゃないし。別に良くない?」
「良くねぇっての、この馬鹿っ!」
「むっ!?馬鹿って何よ、馬鹿ってっ!」
「馬鹿は馬鹿だっ!ったく、よけーな心配させんなっ!いいか、絶対に脱ぐなよっ!じゃあなっ!」
言うだけ言ってまた屋根の上に戻ってった。
なんなのよ、もー…。
…どうしよう…。また何か言われても面倒だから我慢しようかな。
でもせめて水分補給したい。
休憩所と言う名の安全地帯に行こう。
真っ直ぐ、源お祖父さんの家(私達のお泊り場所)へ向かって走る。
玄関に入ると家の中は日影だから、風が通って凄く涼しい。
「あらあら?七海ちゃん?休憩?」
「あ、ヨネお祖母さんっ。そうなんですっ。喉乾いちゃって」
「あらあらまぁまぁ。今、スポーツ飲料用意するわね」
パタパタとスリッパを鳴らして奥へ消える姿を見送る。
あー…廊下の床、冷たくて気持ち良さそう…。寝転がっちゃえっ。
ごろんと横になり、床に頬をくっつける。生きかえるー…つめたーい…。
ん?何か外から声が聞こえる。数人の足音も…。
「あ、七海お姉ちゃんも一休みー?」
この声はっ!?
がばりと起き上がるとそこには美鈴ちゃんの姿。その後ろに双子と誠さん。
「そうなの。もー暑くて暑くて…」
「だよねー。まさか今日がこんなにもあっつくなるなんて思わなかったよー」
隣にスペースを空けて美鈴ちゃんが座れるようにすると、さっきの私みたいに廊下にぺったりとくっついた。
「気持ちいー…」
私も転がろう。美鈴ちゃんの横に同じく寝転がる。
「父さん。次のミッションはどんなのが来るかな?」
「そろそろ時間的にも最終ミッションだよね?」
「そうだな。鴇達も順調に逃げているようだし。何より手に入れたファーストミッションのこの網をまだ使っていないから」
そう言えば、そうだ。この網、どこで使うんだろう?
「さー、皆ー。水分ですよー。スイカも切って来たから少しでも水分補給して頂戴」
「わーいっ!」
「やったぁっ!」
私と美鈴ちゃんは揃って起き上がり素直にスイカを手に取る。
そんな私達に苦笑しつつ、双子はスイカ、誠さんは氷たっぷりのスポーツ飲料を手に取った。
あれ?でもなんでヨネお祖母さん、美鈴ちゃん達がいるって気付いたんだろう?…話し声で、かな?
首を傾げても答えは出て来ないので気にしない事にした。
二切れ目のスイカに手を伸ばしたと同時に、聞き慣れた佳織さんチャイムが聞こえた。

『最終ミッションですっ!逃走人サイドは『逃走範囲縮小っ!!最後まで逃げ切れっ!!』今から5分以内に村営広域広場へ移動しないと失格!!更にそこからタイムアップまで出られないっ!!はい、透馬君っ、文句言わないっ!!続いて鬼サイドっ!!『受理江島家を捕獲せよっ!!』散らばった受理江島家を捕まえて、ワッペンを奪取出来ればボーナス点10ポイントが加算されますっ!!さぁ、皆ラストスパート頑張れっ!!あ、露見尾くんっ、ボーリングの玉を食べちゃっ、ブツ―――』

……ボーリングの玉を食べ…んん?
「あー…そうか。成程。それで網、か」
誠さんの言葉に私は肩に引っ掛けていた網を見た。
あ、そっか。これさえあればあの化けも…げふんげふんっ、受理江島家を捕まえやすくなるね。
「あらあら。受理江島家を網で捕まえようなんて。佳織も無茶を言うわねぇ」
「え?」
「無茶なの?」
私と美鈴ちゃんが思わずヨネお祖母さんをマジマジと見るけれど、にこにこ笑顔で返されるだけ。
「と、とにかくやってみるしかないよねっ!」
「そ、そうだねっ。棗の言う通りやってみよう。ね?父さん、鈴ちゃん、七海さん」
全員で頷き、十分水分補給をした私達は飛び出した。
地響きのする方に行けばあの人達がいるって事は解る。
真っ直ぐそっちへ向かって行くと、ポニテと三つ編みの子が二人走っていた。
「私が屋根の上から網をかけて妨害するから、その間に皆はワッペンを奪ってくれ」
『了解っ!』
誠さんが綺麗な跳躍であっさりと屋根の上まで登ると走る二人と並走してまるで漁のように網を広げて投げた。
「まふっ!?」
二人が驚いている隙に、ワッペンを奪い取る。
あら?二人が双子を見て頬を赤らめてる。……女の子だねー…。
「…え、っと」
「はは…ごめん、ね?手荒な、こと、して…?」
双子が全力で退いている。……男の子だねー…。あんまり関係ないか。
「まだ、二人いるだろう?行こうか、皆っ」
あっさりと屋根から降りた誠さんの言葉に頷き、再び駆け出す。
あ、そうそう。ワッペンは全部美鈴ちゃんの腰に括りつけられました。
再び地響きのする方へ足を動かし、おかっぱとストレートロングの二人を発見。
今度は私が屋根の上に行った方が良さそうだねっ!
「作戦はさっきと同じで良いですねっ!?私行きますっ!」
「えっ!?七海ちゃんっ!?」
誠さんが驚いていたけれど、今は気にせず、屋根の上に登る。
ここの家、屋根の横に踏み台あって登りやすい。
隣の家も幸いすっごく近く建ってるから飛び移りやすいし。
ぴょんぴょんと屋根の上を移動して、二人と並走して少し先へ行った所で網を投げる。
やったっ!うまいこと二人にかかったっ!
って、えええっ!?
網が食べられてるっ!?
焦った美鈴ちゃんと双子が急いでワッペンを奪い取った。

『タイムアーップっ!!終了でーすっ!!』

時計を見ると十一時ジャスト。
おあー、ぎりぎりだったんだー。
でも、このポイントは大きいよねっ!!
「むふー」
「むふふー」
捕まった二人が双子を凝視している。うん。被害も大きかったみたいだ。

『結果っ!逃走人の優勝者は奏輔くんっ!!』

「おーっ!!」
「やったぁっ!奏輔お兄ちゃん凄いっ!!」
下の方で美鈴ちゃん達が喜んでいる。
勿論私も嬉しいっ!

『そして、鬼サイド、最もポイントを稼いだのは、佐藤家っ!!今年も賞品は頂いたわっ!!』

「やったーっ!!」
手放しで喜んだ。
けどそれが失敗だった。
ここ、屋根の上だったっ!!

「わっわっ!?」

お、落ちるっ!!

急に狂ったバランス。
体が傾き、足が滑って―――。

「七海お姉ちゃんっ!?」

驚いた美鈴ちゃんの声が聞こえた。

咄嗟にとろうとしたバランス。
それでも、体が傾くのを止められなくて。
ここの家が平屋で良かったのか悪かったのか。
私は足を滑らせ、足から落ちそうになって私の名を呼ぶ美鈴ちゃんの声が耳に響いて。
ぎゅっと目を閉じて次の衝撃を覚悟する。
けれどいつまでたっても痛みは訪れず、私は何か柔らかい感触に包まれていた。

「七海っ!大丈夫かっ!?」

透馬の声が聞こえ、あぁ、透馬が助けてくれたんだと。
あれでやっぱり私の兄なんだなと改めて思い直した。
その姿を確かめようとゆっくりと目を開けると。
「大丈夫かしら?」
「えっ!?」
素直に目を丸くした。
って言うか、この綺麗な女の人誰?
佳織さん並に綺麗だけど、この人の方が若干雰囲気が柔らかい。
そもそもなんで私この人にお姫様抱っこされてるの?
ん?ちょっと待って。って事はもしかして、私はこの女性に抱きとめて貰ったってことなのかな?
自分より細そうな、か弱そうな人に抱きとめて貰うってどうなのっ!?
「す、すみませんっ!重いですよねっ!今、降りますっ!」
「あらぁ?ちっとも重く何てないわよ~。ほら、回転出来るもの」
「うわわっ!?」
私を抱き上げたままその場でぐるぐる回転される。
三半規管あんまり強くないんですけど。うえぇー…。
「すみません、瑠衣さん。妹が瀕死状態なんで解放して貰っていいですか?」
「あら?あらあら?ごめんなさいね。可愛くてつい」
目が回るー…。ぐるぐる目の私を透馬が受け取る。…透馬。あんたまでなんでお姫様抱っこ。
「すまないね、透馬くん。私がついていながら」
「え?いやいや。誠さんは悪くないですよ。悪いのはこの愚妹で」
おい、こら。誰が愚妹よ誰が。この愚兄が。
さっき見直しかけたのに。綺麗さっぱりなかったことにする。
「七海お姉ちゃん、大丈夫…?」
あぁ、この手の小ささと可愛い声は、私の天使。
透馬の腕から降りて、大丈夫と言おうとしたのに、何故か透馬は降ろしてくれない。
「ちょっと、透馬。降ろしてくんない?」
「何言ってんだ、馬鹿。いくら瑠衣さんに抱きとめて貰ったとは言え、どっか怪我してたりぶつけてたりしたらどうすんだ。このまま一旦帰って医者に診て貰うぞ」
「必要ないよ、そんなの。どこも痛くないし」
「うるせぇ。いいから行くぞ」
「ちょ、問答無用とかっ。何なのよ、透馬っ」
こんなに暴れてるのに透馬には全く意味なし。透馬ってばいつの間にこんな力つけてたのよっ!
悔しくてぎりぎりと目を吊り上げてしまう。
「七海お姉ちゃん。私も行く。ちゃんと診て貰おうね」
「で、でも、美鈴ちゃん、わたしは平…気…あ、れ…?」
頭がくらくらする。回転で酔ったのかな?
その割には体中があっつい…あれ?
「おい?七海?」
透馬の声がなんか遠い?
あれ?あれれ?目の前が真っ暗にー…?
自分の体に何が起きたのか分からないまま、私の意識は吹っ飛んだ。

意識が覚醒したのは、その日の夕方だった。
目を開いてまず真っ先に視界に入ったのは、心配そうな私の天使の顔だった。
「みすず、ちゃん…?」
「七海お姉ちゃんっ、目が覚めたっ!?大丈夫っ!?どこも痛くない?辛くないっ!?」
可愛い顔のどアップ。えっと、この状況は一体…?
「それは、大丈夫だけど…。喉、乾いた、かな?」
「水分だねっ!今持ってくるからっ!」
元気よく立ち上がり美鈴ちゃんは部屋の外へと出て行った。
「透馬お兄ちゃーんっ!!七海お姉ちゃんが起きたーっ!!」
そんな声が聞こえて、つい苦笑してしまう。
体を起こすと、やっとここが源お祖父さんの家で私の借りている部屋だと分かる。
窓の外を見ると夕日が射し込み、涼しい風が室内に吹き抜ける。
「七海。大丈夫か?」
「兄ちゃん…」
思わず言ってからハッとした。い、今私なんて言ったっ!?
無意識に昔の呼び方をしてしまい、恥ずかしさに顔が赤くなる。
けれど、そんな私を気にした様子もなく透馬は近寄ってくると、頬に触れてきた。
「まだ熱いな。ったく、無茶しやがって…。ほら、寝てろ。今姫が飲み物持って来てくれるから」
体を横たえつつ透馬を見る。
「ね、兄ちゃん…。私は」
なんで寝てるのか?と問う前に透馬があっさりと答えてくれた。
「熱中症だよ。屋根の上を走るんだから普通より体力食うし暑いって事ちゃんと分かってたか?」
「う…」
「サッカーやって少し暑さに強いからって自分を過信してただろ。っとに馬鹿だな、お前」
「ば、ばかじゃない、もん…」
「十分、馬鹿だ。…お前がそんな奴だって知ってて気付かなかった俺も、だけどな」
「兄ちゃん…」
笑って私の頭を手に持っていたうちわでペシッと叩いて。そのうちわを使って私に風をくれる。
「……皆は?」
「皆?あぁ、それは俺に聞かなくても」
言って透馬は口の前に人差し指を置いた。
耳を澄ませって事?
言われた通り声も出さずじっとしていると。

「葵お兄ちゃん、レモン切ったーっ!?」
「うんっ。こっちにあるよっ!あ、棗っ!僕の分、残しておいてよっ!?」
「大丈夫っ。ちゃんと鈴が作った葛餅、僕と葵の分は寄せてあるからっ」
「っておい、棗?それ親父の分も入ってないか?」
「気の所為だよ、鴇兄さん」
「気の所為って、棗。明らかにそれ私のだと思うんだが…?」
「あらやだ。違うわよ、誠さん。誠さんのは私が食べたものっ」
「えっ!?」
「大丈夫。食べ切れなかったのを鴇の分と一緒に棗に渡しただけだから」
「いや、佳織?食べ切れなかったなら私に返したら良かったんじゃ…?」
「誠さん。…俺らの分を一緒に食べようや」
「うんうん。姫ちゃん、オレのはいつも少し多めに作ってくれるから、余分にあるからー」
「奏輔くん、大地くん。君達優しいね。おや?おかしいな、なんだか涙が…」
「…佳織。私の分はどこかしら?」
「えっ?あー…母さんの分はー…えーっと…」
「あの人の分は食べてもいいけれど。まさか、私のまで食べていないわよねぇ?」
「ん?ヨネや?儂の分は食べてもいいとか今言わなかったか?」
「食べて、ないわよ、ね?」
「え、えーっと、御馳走様でしたっ!」
「…………佳織、ちょっといらっしゃい?」
「きゃーっ!!母さん、ごめんなさーいっ!!」

リビングの方から色んな声が聞こえてきた。
「…な?言わなくても大体想像つくだろ」
「……うん」
脳内に光景まで浮かんできて思わず笑ってしまった。
「いいなぁ、美鈴ちゃんの手作り葛餅ー」
「姫なら飲み物と一緒に持って来てくれるだろ」
「だといいなぁ」
「……俺の分は大地の口の中に消えてそうだけどな」
それは確かに。否定は出来ない。
透馬の切なそうな顔が面白い。私が笑うと透馬は若干不貞腐れてペシペシと頭をうちわで叩いきた。
あ、そう言えば…。
「ねぇ、兄ちゃん?」
「なんだ?」
「私を助けてくれた、瑠衣って人誰?」
村の人なのは分かるけど。どう言う人なんだろう?お礼しないといけないし。そう思って尋ねたのに。透馬はそれはそれは複雑な顔をした。困ってるの?それとも怯えてるの?
「………七海。俺は今でも信じられないんだが。これが事実だから言っておく。一先ずこの写真を見てくれ」
写真?誰の?
ポケットから取り出された四つ折りの写真。ってか写真折らないでよ。
その写真には若かりし頃の瑠衣さんと、結構なイケメンの男性、それから佳織さんと…もう一人は佳織さんの前の旦那さんかな?美鈴ちゃんにそっくりだから直ぐに分かった。他にも数人写っている。
この写真がどうしたんだろう?
「佳織さんの前の旦那さんが美鈴ちゃんそっくり?」
「…そこも大事だが、もっと重要な問題がある」
「重要な問題?」
透馬の指が瑠衣さんの隣に立っているイケメンを指さす。
「この人が瑠衣さんの旦那さんだ」
へぇ、そうなんだ。カッコいい人捕まえたんだねぇ。
「そして、二人の苗字が受理江島と言うそうだ」
「………………え?」
「人類の神秘だ」
「………………………え?」
「確認をとったが、間違いなく瑠衣さんが産んだ子だそうだ。昔の瑠衣さんにそっくりだそうだ」
「……………………………………え?」
沈黙が続く。
って言うか何を言ったらいいか分からない。
透馬の言う通り人類の神秘としておこうか…。
透馬と顔を見合わせ、ハハッと乾いた笑いを零すしか出来ない。
……よしっ!忘れようっ!!
私は遠い目をしながら、心を癒してくれるであろう可愛い存在を心待ちにし、その足音に意識を集中したのだった。
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