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第二章 小学生編

※※※(樹視点)

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俺はひたすら走っていた。
エレベーターが動く内に出来るだけ進まねばならない。
真っ先に最上階の23階に行ってしまう事にする。
まさか自分がこんな風に爆弾解除をしてまわるなんて思っても見なかった。
だが…。
(こんな非常事態なのに、わくわくする…)
これも全部白鳥妹が俺の想像外の事をやってくれるからだろう。
あのパーティでいきなりピアノの難曲を弾きこなした事といい、あっさりと爆弾を解除して、場所を導き出した事といい。
美鈴に関わっていると、飽きる事がない。楽しい。
最上階に辿り着いて急いで美鈴が言っていた2317号室へ走る。ドアを開ける為にカードキーを通してドアを開けると倒れている白鳥兄がいる。
そいつはどうやら意識はしっかりあるらしい。美鈴仕込みの荒業、解毒剤を口に突っ込み、爆弾の在処を探す。
何処にあるっ!?
ありそうな場所を手当たり次第探して、何とか発見し、12と入力して、青のコードを鋏で切る。
これでいいんだな。
そのまま白鳥兄に近寄ると、そいつは問題なさげにいとも簡単に立ち上がり、舌打ちした。
「おい。樹財閥の跡取りだな、お前。葵のダチの」
「そうだ」
今美鈴に関して若干不仲になりつつあるが、間違いではないので頷く。
「これは、美鈴の指示だな?」
「あ、あぁ」
驚いた。兄がこういうって事は、それだけ美鈴が賢い事を証明している訳で。
「次は葵と棗を助けに行くってとこか?」
「そうだ」
「なら、こいつが使い時だな」
そう言って胸ポケットからカードキーが二枚取り出される。
「変な奴らが襲ってきて応戦してたら落としてったんでな。咄嗟に拾ったら麻痺する薬使って来やがった」
「成程」
「美鈴は二人の居場所が何処だと言っていた?」
「21階の食材倉庫、そして18階の1801号室らしい」
「そうか。なら俺が18階に行く。お前は21階へ行け」
「分かった。ならアンタにこれを渡しておく。解毒剤だ」
「あぁ、俺がさっき飲まされた奴だな」
「そうだ。それから部屋には必ず爆弾がある。箱の鍵は12、あと青いコードを切ればいいそうだ」
「了解だ」
ざっと説明して俺達は部屋の外で別れた。今度はエレベーターより階段の方が速い。
階段を駆け下りて21階の食材倉庫へと真っ直ぐ突撃する。カードキーを入れて中へ入るとそこには葵が倒れていた。
こちらも意識はあるようだ。凄い目をして何かを睨んでいる。そこには爆弾の入った箱。あぁ、嫌味のように目の前に置かれていったのか。
俺は葵に解毒剤を飲ませてる間に、爆弾を解除した。
そう言えば白鳥兄は鋏を持ってるのかっ?
「葵っ!俺は先に18階の1801号室へ行くっ!お前も体が動くようになったら直ぐ来いっ!」
再び走り出すと突然電気が消えた。
非常電源のお陰で真っ暗闇とまではいかないものの、エレベーターはもう使えないな。
非常灯だけが照らす階段を駆け下り18階まで急ぐ。直ぐに葵が追い付いて来て、二人で1801号室へ飛び込み白鳥兄が見ていた爆弾の青のコードを鋏で切った。
「下で美鈴達と合流する事になってるっ!階段だっ!行くぞっ!」
先頭をきって走り出す。流石にこんなにも走りっぱなしで階段の繰り返しだと息が切れるが、そんな事も言ってられない。
ただただ階段を駆け下りていると、下から足音が近づいてくる。
あれは…猪塚かっ!?
「先輩達っ!良かったっ!合流出来たっ!これをっ!」
そう言って駆け寄ってきた猪塚が渡してきたのはヘッドマイク型の通信機だった。
どうやらこれは本機に通信が集中するタイプらしく、子機から他の子機へ通信は不可能。その為、今は代表して白鳥兄に会話して貰う事にする。
本機からの声は全員に届くから問題はない。
「美鈴っ!無事かっ!」
あっさりと機械の仕組みを理解して、白鳥兄はマイクをつけ通信する。
すると直ぐに返事は返ってきた。
俺達も急いでヘッドマイクを着用すると、美鈴の声が聞こえてきた。
「鴇お兄ちゃんっ!こっちは大丈夫っ!」
声を聞く限りは本当に大丈夫そうだ。
全員が胸を撫で下ろす。それと同時に爆弾の解除が完了した事を伝えると、あっさりと残り10個あると告げてきた。
たった今安堵した所にそれかよ。
確かに美鈴は最低5個と言っていた。10個あってもおかしくない、な。
逃げた方がいいと提言する白鳥兄に、美鈴はそれだと助かる可能性が低くなると断言する。
そして、爆弾のある場所を指示するから走れと言う。
俺達の現在位置を確認して、美鈴は素早く指示を出していく。
『だったら、まず葵お兄ちゃんと棗お兄ちゃんは22階へっ』
「了解っ!」
双子が頷き、一瞬だけ俺達に向かって頷くと階段を駆け上り始める。
俺も行かなければっ。
指示を待つだけ何てもどかしい。
俺はこちらから問いかける。すると、
『先輩は19階にっ!』
「分かったっ!」
こちらも階段を駆け上がる。三段位は楽に飛ばしてのぼっていく最中にも美鈴の声はマイクを通して入って来た。的確な指示。流石だ。何処で指示を出してるのかは解らないが、その姿を思い浮かべ口元に笑みが浮かぶ。
19階に到着した事を美鈴に告げる。
『先輩っ、そのままトレーニングルームへっ!一つだけ色違いのエアロバイクの下にありますっ』
足を止める事をせずに真っ直ぐ向かう。走りながら、
「箱のナンバーは同じかっ!?」
『はいっ!赤のコードを切って下さいっ!』
必要事項だけを確認してトレーニングルームのドアを開けた。
そう言えば、どうして開いたんだっ?電気も点いてるし…。
色違いのエアロバイクを探しながら思っていると、トレーニングルームのテレビで女性が話していた。美鈴の母か?今日のパーティでも一緒にいる所を見かけたから間違いはないだろう。
『テロリストの一人が一瞬の隙をついて爆弾を起動しましたっ。電気はもう通常に戻りましたっ!エレベーターは動きますっ!あと、ホテルのオーナーに頼んで全ての部屋のオートロックとセキュリティは解除っ!繰り返します…』
成程。納得した。美鈴が焦りだした理由も納得だ。
っと、色違いのエアロバイクってこれかっ!
他は全て青いのにこれだけが赤い。急いで下を覗き込むと確かにそこに箱がある。取り出して、12と入力し蓋を開けると、17:04と画面に表示されている。本当に起動してる。驚きながらも赤のコードを鋏で切ると、画面のカウントダウンは消え、爆弾は解除された。
即効で解除した事を伝えると、12階へと指示が来る。
俺は急いでそこへ向かった。
今ならばエレベーターも動いているだろう。でも、エレベーターを行く気にはなれない。
途中でまた電気が消えでもして、そこに閉じ込められたら何も出来なくなる。それは避けたい。
階段へ向かって、いつか美鈴がしたように手すりを使って素早く滑り降りて行く。確かにこうすれば体力を使わずに早く降りれるな。ただバランスとるのが難しいが。
12階に辿り着き、急いで事務所の場所へ向かうと、そこには猪塚と花島が必死にドアノブを引っ張り開けようとしていた。
「猪塚っ!花島っ!どうしたっ!?」
「樹先輩っ!ドアが開かないんですっ!」
「なんだとっ!?」
一緒になってドアを引っ張ってみるがびくともしない。オートロックとセキュリティは解除されてるはずなのに。という事は、誤作動かっ!?
「おいっ!どうしたっ!?」
駆け付けた白鳥兄に事情を説明すると、俺達をどかせ轟音を響かせドアを蹴り飛ばした。ドアは凹みはするものの開かない。凹ませるだけ凄いけども。
「猪塚っ、美鈴に現状を連絡しろ。お前だけが一度もとってないからなっ、美鈴が心配してるはずだっ」
俺はそう指示を出して、壁を壊す方に力を貸す。白鳥兄より力は劣ってもあるとないとでは違うだろう。白鳥兄が足を休ませてる隙にドアの凹みに蹴りを入れる。メキッと音がした。
「兄さんっ、皆っ!」
「僕達も手伝うっ!」
双子が俺達の状況をみて即座に手伝いを申しでる。双子も同時に蹴りを入れてメキメキッとドアが軋む音がする。
「最後だっ!!」
白鳥兄が再び轟音を響かせた。それと同時にドアは破壊されてバタンッと奥に向かって倒れる。
猪塚がやりとりを開始する。

―――ザワッ。

なんだ、この鳥肌の立つ感じ。
…嫌な予感がする。
理由を探す為にキョロキョロと辺りを見渡す。
そして気付く。
ここに空気の流れがない事に。言い方を変えるなら、人が入った気配がない。
他の場所には爆弾を設置する為に人が侵入しなければならない為、微かながらも人の気配がする。なのに、ここにはそれがない。
(だとするならここに爆弾はない。だったら、何処に…)
考え込みふと美鈴の言葉を思い出す。

『あわよくば隣の爆発に巻き込まれて足の一本や二本無くなってくれれば万々歳って所じゃないですかね』

そうだ。足の一本や二本を奪えるようにするはずだ。だったら美鈴が閉じ込められていた所に爆弾があってもおかしくないっ!
あいつはその可能性を提示していながら考えてなかったのだ。
今美鈴は一人だ。しかも、このまま爆弾が見つからないと美鈴に誰かが伝えたら、あいつは直ぐに場所を思いつき一人で走るだろう。
その可能性は回避しなければっ!
だが、一歩遅かった。
白鳥兄が爆弾がないと告げ、美鈴が驚きそこからの通信が消える。
俺はもう走り出していた。
目指すは13階の倉庫だっ!
階段へ行き、一気に駆け上がる。
13階倉庫へ飛び込むと、そこには爆弾を前に座りこんでいる美鈴がいた。
「解除したのかっ!?」
背を向けて座りこむ美鈴へ向かって叫ぶ。
だが美鈴は静かに首を振った。
慌てて近寄り覗き込むとカウントは残り00:59。
「なんで解除しないっ!?」
「わ、解らないのっ」
「解らないっ!?どう言う事だっ!?」
美鈴は泣きそうな顔で俺を見た。
「事務室にあったなら黄色のコードを切れば良かった。でも、ここにあったと言うなら青の可能性があるのっ!事務室なら『いぬ』だったのに、ここにあったのなら私の…白鳥がいた場所になる。『とり』の可能性が出てくるの…」
言ってる意味が分からない。でも、鋏を持った美鈴の手は震えている。なら、俺が取れる行動は…。
「お前の言ってる可能性は何対何の比率なんだ?」
「…6対4くらいで黄色が強い」
「だったら、鋏を黄色側から挟んで青と同時に切れ」
「え?」
「もうカウントが30秒過ぎてるっ、悩んでる余裕なんてないだろっ!だったら2つとも切れっ!」
「で、でもっ」
「大丈夫だっ!もし外れても俺が美鈴をぎゅっと抱きしめて、守ってやるっ!」
敢えて口の端を上げてにやりと笑う。
すると、一瞬驚いた顔をした美鈴は笑い、
「それだけは絶対に避けないとねっ、分かったっ!切るよっ!」
鋏を改めて持ち直し、美鈴はコードに手をかけて、黄色のコードを、そして青のコードを同時に切った。

カウント―――00:00。

爆発は、―――起きない。
「やった…?」
美鈴が俺の方を見て聞く。
「解らない。客室へ行ってテレビ見てみるぞっ」
「うんっ!」
急いで近くの客室へ二人で駆け込む。テレビを点けて、状況を確認する。
『緊急っ!爆弾は全て解除っ!よくやったわ、皆っ!!』
白鳥母が両手を上げて喜んでいる。そこでやっと全ての爆弾を解除した事が分かった。
「やったあああああっ!!」
「やったなっ!!」
美鈴が飛び跳ねて喜ぶ。俺にもじわじわと喜びが沁み渡り嬉しくなって、美鈴とハイタッチする。
「先輩っ!皆と合流しようよっ!」
「あぁっ!」
一緒に走りだし、エレベーターで12階へ移動する。
事務所の隣の部屋のドアが開いており、そこから歓喜の声がした。
二人でそこに飛び込み一緒に喜びを分かち合う。
取りあえず外に出て家族と合流しようという話になり、俺達はエレベーターに乗り込み一階へと向かう。
全員でエレベーターに乗ってると、そこでやっと美鈴が靴を履いていない事に気づく。
なんでだと聞くと、走るのに邪魔だったからと言う。
そこから、また無茶をしたの?と兄弟からの叱咤を喰らい、美鈴は強制的に白鳥兄の腕に抱かれる事になった。
……その役割は凄く羨ましい、が。正直走りまくった所為で体力がないのも事実だ。今一番体力があるのは白鳥兄だろう。
外に出ると、ホテルにいた人間皆外に出たのか人に溢れていた。記者会見に来ていた記者達も今の事件を報道するのに精一杯だ。道路もこの人数を管理するために警察が通行規制をかけている。
走り回った所為か風が気持ちいいな。
「お坊ちゃまっ!」
「銀川(ぎんかわ)っ!」
俺の下に泣きながら走ってきたのは執事だ。
いつもきっちりとまとめている白髪が今日はぼさぼさで顔は涙でぐちゃぐちゃ。…正直近寄って欲しくない。
「ご無事で、ご無事で何よりでございましたああああああっ!!」
「あ、あぁ。無事だ。こうして無事だから泣き止め。鬱陶しい。そして顔が怖い」
「坊ちゃまああああああっ!!」
まるで聞いてないな。どうしてくれよう、こいつ。
あぁ、やめろっ、抱き着くなっ、頬を摺り寄せるなっ!
「お嬢様ああああああああっ!!ご無事で、ご無事でえええええええっ!!」
「か、金山さんっ!だ、大丈夫っ、大丈夫だから落ち着いてっ!」
同じ声が聞こえて、そっと横に視線を向けると白髪をオールバックにした赤ん坊を背負った執事が美鈴の目の前で膝を折り、号泣していた。そして、美鈴も俺の方に視線を向けていた。互いにお互いを同情するような目線をやる。
他の奴らは何処に?一緒に出て来た筈?
白鳥の兄弟は両親と何やら会話をしている。猪塚は父親と合流したようだ。花島は祖母と抱き合っている。
「坊ちゃまっ!あぁっ!汗がっ!!」
「…銀川。お前五月蠅い」
「なんとっ!?私はお坊ちゃまの事を思って思ってえええええっ!!」
いや、だからそれが五月蠅いんだって。
俺は五月蠅い執事から離れ、美鈴へと近寄った。それに気付いた美鈴も助かったという顔でこっちに来る。
すると執事たちは互いの存在に気付いたのか、にこっと笑って、何故か火花を散らしていた。
「おや、銀川ではありませんか。何故ここに?」
「今日のパーティに家の優秀なお坊ちゃまが招待されたのをお忘れで?」
「あぁ、いけないいけない。そうでした。銀川如きを仕えさせてくれる優しくて優秀なお坊ちゃまが招待されていたんでしたね。駄目ですねぇ。仕える主に気を使わせては」
「ほっほっほ。それはご自分の事ですかな?」
……なんだ、こいつら?
「……水と油?ハブとマングース?」
隣からぼそりと美鈴の呟きが聞こえる。
「そんな可愛らしい物か?」
つい俺も突っ込んでしまう。互いの言い分がおかしくて顔を見合わせて笑った。
初めて真正面から微笑んだ顔をみたかもしれない。
「そうやって笑うと増々可愛いな、お前」
はっきりと言ってやると、美鈴は一瞬キョトンとした後に顔を赤く染めた。
「先輩、セクハラ」
「なんでだよっ。可愛いって褒めたんだろうがっ」
「キスもセクハラですよ?」
「うっ…それは…」
言い返されて言葉に詰まる。
美鈴…お前、俺に対して少し辛辣過ぎないか?
がっくりと肩を落とすと美鈴はクスクスと笑った。
「美鈴、お前俺にだけ酷くないか?名前も呼んでくれないし」
「え?」
「猪塚だって猪塚先輩って名前を呼んでるってのに」
美鈴は俺の事先輩としか呼ばないし。名前を呼んで欲しいとあんにそう言ってみると美鈴はまたくすくすと口元を両手で隠して笑って言った。
「だって、先輩。私、先輩から自己紹介して貰ってないもの」
「へ?」
「ふふっ。私が逃げてたのも悪いんですけどね」
自己紹介?記憶を辿る。初めて会った時も、追いかけた時もそう言えば一度も自分の名前を相手に伝えていなかった。
樹財閥の跡取りの所為か自分の名前は相手が知ってて当然と思ってたのかもしれない。
「そう、だな。俺は自分の名前すらお前に伝えずにいたんだな」
微笑む彼女に俺も笑みを浮かべた。
「俺の名前は樹龍也だ」
「はい。樹先輩。私は白鳥美鈴です。よろしくお願いします」
見上げてくるその顔が可愛くて。名前を呼ばれた事が嬉しくて思わず美鈴に手が伸びる。
けれど、それを見越した美鈴は数歩距離をとってしまった。そうだ。男が苦手だったんだった。
伸びた手を降ろし、美鈴にもう何もしないと意思表示をすると、微笑み少し距離を縮めてくれる。
本当に不思議な奴だ。
誰よりも強く見えたかと思うと今みたいに弱さも見せる。
美鈴と恋人になるにはまずは美鈴の男性恐怖症を越えなければならない。だから今は差しさわりのない話で美鈴の恐怖を取りはらう努力をしよう。
「そうだ。そう言えば、美鈴に聞きたいんだが」
「なんでしょう?」
「お前、爆弾の解除の方法をどうやって知ったんだ?」
これはずっと疑問だった。『いぬ』『とり』『とら』とか言ってたから十二支に関係しているだろう事は何となく理解してたが、でもなんでその十二支に当てはまるのか、対応していたのか理解出来ない。それを知りたかった。
だが、美鈴は、数歩俺から離れて前に進み、
「女には秘密があるんですよ。それを掘り起こしちゃダメですよ、龍也先輩」
そう言って振り返った美鈴は口元に人差し指を当て片目を閉じて―――微笑んだ。

「―――っ!」

思わず息を呑む。

―――見惚れた。

―――その壮絶な美しさに。

―――謎めいた妖艶さに。

(反則だろ。あんな風に名前呼ぶなんて、あんな風に笑うなんて……あぁっ、くそっ!)
熱くなる顔を隠すように俯き、額に手を当て、早鐘を打つ鼓動を落ち着けるため深く息を吐き出した。
あまりの事に呼吸すら止めてた自分に悪態をつきつつ、笑みを浮かべるのを止められない。
改めて思った。

『美鈴が欲しい』

と。その為にはあいつに釣り合う自分を作り上げ、周りを蹴散らしていかなければ。

「面白い。絶対手に入れてやるからな。覚悟しとけよ―――美鈴」

小さく口の中で呟き、真っ直ぐ前を見据え美鈴の後を追い掛けた。
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