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最終章 数多の未来への選択編

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「うめーっ!!超うめーっ!!」
「ふふっ、ありがとう。でも出来れば座って食べてね?」
一口食べては立ち上がる陸実くんを注意しつつ、お代わりのご飯を茶碗に山盛りにして大地お兄ちゃんに渡す。
「姫ちゃんのご飯食べれるだけでも、陸実のマネ受けた意味あるわー」
「大地お兄ちゃん、おかず足りる?追加で作ろうか?」
「良いのー?って言いたい所だけど、姫ちゃんもちゃんと食べることー。後で双子に怒られるぞー?」
「ふみっ!?…じゃあ、大地お兄ちゃんの美鈴特製生姜焼き追加で焼いたら、食べるっ。陸実くんは?お代わりどうする?」
「食うっ!!って言いたい所だけど、多分、カロリーとか」
「ふっ。私が計算してないとでも思って?」
「だよなっ!じゃあ食べるっ!!」
よしよし。一杯食べさせようっ。
勿論太る程食べさせたり栄養を偏らせたりはしないけれど。今日あんな目にあったんだし少しくらい甘やかしても良いと思うの。
「……お姉ちゃん。僕達もお代わりっ」
「はいはーいっ!旭達も一杯食べて一杯大きくなるんだよっ!」
「うんっ」
「「「おーっ!」」」
どうしよう…家の子達(陸実含む)が滅茶苦茶可愛いっ!
そしてそんな可愛い子を狙った奴、許すまじっ!
ピロン。
ピロピロピロン。
「さ、てと。私は陸実くんの着替えの用意して来ようかなー」
ピロン。
「こら、姫ちゃん。ご飯ちゃんと食べる約束でしょー」
「…ふみぃ…バレたー…」
ピロピロン。
「………ねぇ?陸実くん?」
「ふぁ?」
「さっきから陸実くんのスマホ、大合唱してるんだけど…?」
「気の所為だろ」
ピロピロン。
「いや、めっちゃ鳴ってるから」
「気のせい気のせい」
「いいの?見なくて」
「誰からかは解ってるし、ちゃんと横目で見てるから平気だ」
「そう?なら、いっか」
とか言いつつ、私が視線で陸実くんの携帯をみていたら、陸実くんも流石に気になったのか、音を切って裏返しに置いてしまった。
その後ちゃんと私もちゃんとご飯を食べ終え、私が後片付けをしている間に大地お兄ちゃんが陸実くんの宿題を見てくれて。
二人にデザートを出そうかなと紅茶の茶葉を取り出した時に、華菜ちゃんとユメが家に突撃して来たので、二人の分も一緒に準備して。
結構騒がしく一日が終わった。
……陸実くんが変なトラウマを持つ事なくすんで良かった。

翌朝。
大地お兄ちゃんに陸実くんを送って貰い、私はユメと華菜ちゃんと一緒に事務所に寄ってから陸実くんの収録現場へと向かう予定だ。
大地お兄ちゃんと何故か何時もの倍は上がっているハイテンションの陸実くんを見送って、私達も真珠さんの運転の下、事務所へと向かった。
事務所は昨日の事件が知れ渡っているのか、タレントさん達は騒いでいたけれど、スタッフの皆さんは冷静に動いているのか、記者達が来た様子もなく、安定していた。
「莉良さーん、来たよー?大丈夫ー?」
「あ、白鳥総帥っ。はい、おかげさまで何とかっ。いざって時の対処法を学んで置いて良かったです」
「手伝いますよ。良いよね?美鈴ちゃん」
「あ、うん。頼んでもいいかな?華菜ちゃん。ユメはどうする?」
「私はここでまーくんと合流してから、次の現場に行くよ」
「そう?じゃあ、私は真珠さんと一緒に陸実くんの現場に行くから」
こっちの事は任せるねー?と言おうとしたんだけど、何故かユメにぐわしっと手を握られた。
「ユメ?どうしたの?」
「王子。私はね。王子が誰を選んでも良いと思ってるの」
「ふみ?」
「でね?アイツ等を選ぶなら選ぶで構わないんだけど。でもね?でもね?私も一応アイツ等の姉なのね?だからね?」
「ふみみ?」
「………………あ、うん。いいや」
首を傾げてユメの言葉の続きを待ってたんだけど、何故かそんな私の行動を見てユメは勝手に納得して頷いて顔を逸らした。
ちょっと待って?
私何か悪い事した?
ユメの行動が理解出来なくて焦っていると、ユメは私を見て微笑んだ。それはそれは綺麗に嬉しそうに微笑む。
「え?ユメ?」
「いいの。今の表情でアイツ等になーーーーんもチャンスがないって解ったから。それならそれで私としては特に問題なしっ!」
「ふみ~?」
大変だ。
ユメの言っている事がさっぱり解らない。
でもユメはニコニコだし、……ま、いっか。
「えっと、じゃあ、またね?」
困惑しつつ手を振ると、皆が応えて手を振ってくれたので良い事にした。
真珠さんが待機してくれていた車に乗り込んで、念の為に陸実くんの収録現場へと向かった。
到着して、真珠さんが車を止めに行っている間、私はきちんと受付を済ませて中へと入る。
受付のお姉さんが、私の事を知ってくれていたらしく、私はにこやかに営業トークをしていた。
「あれー?誰かと思ったら、白鳥総帥じゃないですかー?」
「ホントだー。何々?お気に入りのアイドルに媚売りに来たんですかー?」
………誰?
くるっと振り返ると、そこにはアイドル服を着た男性が二人。
……ん?ちょっとあまりにも似合わない服着てる所為で気付かなかったけどこの二人陸実くん達の前にアイドルデビューした二人?
え?ちょっと待ってっ!?
なんで近づいてくるのっ!?
一歩二歩と近づいてくるから、私は二歩、四歩と多めに遠ざかる。
「えーちょっと。逃げなくても良いじゃんかー」
「そうそう。俺達の面倒もちゃんと見てよ」
「じゃ、じゃあ、そっちも足を止めて貰えますか?その勢いで来られると流石に…」
「は?何だって?」
聞いてくれないんじゃーんっ!
ど、どうしようっ、真珠さん来るまで少し時間あるし、ま、まずは普通に対応を頑張るっ!
「それで?私に何の用でしょう?」
あくまでも必死に平静を装って問うと、二人は互いに顔を見合わせてニヤッと笑った。
うん。何かとても嫌な予感がする。
「あんたが来てからうちの事務所、やりづらくなったんだよねー?」
「そうそう。何であんな三人推してるのか解らないけど、あんたみたいなお偉いさんな男狂い女がいると迷惑なんだよね」
男狂い女っ!?
一周回って合ってる気がしてくる言葉だわ。
まぁ間に『男(が近寄ってきたら)狂い(意識を失う程怯える)女』と注意が入るような女だけども。
って言うか、この二人お酒臭くない?
アイドルが未成年とは限らないけど、だからって仕事中に飲む?普通。それとも仕事の企画で飲まされた?
「依怙贔屓は駄目だろー?なー?総帥ー?」
「ちゃーんと俺等にもチャンス寄越せよな?」
ぎゃーっ!?それ以上近づいて来ないでーっ!?
心の中で叫びつつも、一応彼らも莉良さんの所のタレント。不祥事を起こさせる訳にはいかない。
今は陸実くんの件でてんてこ舞いだしね、事務所。
私は叫びたいのをグッと堪え、しっかりと彼らの目を見た。
……ん?目は何処?あまりに糸目過ぎて解らない。もう一人もすんごい垂れ目。
こんな人達の面談やったっけ?………いや、記憶にないな。
「私はちゃんと平等にチャンスを与えた筈ですが?」
「そのチャンスが来てないから言ってんですよ、そうーすい」
「そうそう。俺達の仕事はぜーんぶあの三人に回したんだろー?アンタが」
「………まぁ、それも仕方ない事では?貴方方ではあの仕事には向いていないので」
「なんだと?」
「今の態度見たら解ります。お酒飲んで女の子に絡んで。アイドルって職業に一番必要なものは清潔感なんですよ。貴方方にはそれがない」
「あぁっ?」
……やばっ?
つい本音で言っちゃったっ。この手の男性はこう言うと、
「てめぇ、今なんつったっ!?」
逆上するんだよねーっ!?
「……お前ちょっと落ち着けって。じゃあ総帥?アンタは俺等にどんな仕事を紹介してくれるんだ?」
糸目が垂れ目の前に出て私に言う。
どんな仕事、ねぇ…?
男性が近寄る恐怖から逃れる為にも意識をそちらへ持って行く。
彼らに紹介出来るとしたら、アイドル系の仕事でも…ダンス、とか?二人の感じを生かすとしたら妖艶系?
目立たせる為には衣装に拘る必要があるかな~…。となると、
「バックダンサーに…」
可愛い子を使うより、ちょっと大人な感じの…。
「……何て言うかと思えば、バックダンサーだって?ちょっと総帥。俺らの事馬鹿にし過ぎじゃねぇ?」
「え?」
え?ちょっと待って?何の話っ!?
どうして二人してこっち睨んでるのっ!?
意味が解らなくて、でも、これはヤバいのではと数歩後退する。
だけど、あっちのが早かった。
「―――ヒッ!?」
腕をがっしりと掴まれた。
悲鳴を上げなかっただけ褒めて欲しい。
だけど体は震えるし、声は出ない。恐怖で血の気が引く。
「ハッ、この程度でビビる女が偉そうに」
「何が総帥だよ。ちやほやされたいだけだろ」
何か、二人が言ってる。
けどそんな事も耳に入らない。
ただただ怖くて。でもどうにか、悲鳴だけは上げるまいと、堪える。
「まぁ、でも確かに?顔は滅茶苦茶可愛いし?」
「俺等が遊ばれたとでも言えば、この女の評価は下がる、俺等は被害を訴えれば知名度が上がる、更に、そう言う意味でのペットも出来る。良い事尽くめじゃねぇか」
「ハハッ。そりゃあいいっ!ほら、来いよっ!今から泣いて助けを請い願う位抱き潰してやるよ」
やばいヤバイヤバイっ!!
無理っ、もうっ、無理だよっ!!
怖い怖い怖い怖いっ!!
叫ばずにいられないよっ!!
腕が引っ張られる。恐怖で動かなくなった体を無理矢理引っ張られる。
受付のお姉さん達に咄嗟に視線を送ると、彼女達は慌てながらも誰かを呼んでくれているようだった。
そんな姿を見て思い出す。そうだ、真珠さんを呼ぼうと。
だけど、掴まれている方と反対の手を動かそうとすると、私の動きを読んだのか、糸目が私の空いた手を掴み救援を遮った。
「悪い手だなぁ~…。そんな手は、こうして俺が握っておいてやるよ」
「痛ッ!」
腕に鋭い痛みが走る。
こんな握られただけでこんな痛みなんて、あるわけ…ヒィッ!?
手首を思い切り齧られている。
もうっ、無理ぃッ!!
叫び出しそうになった、その時…。

「美鈴センパイを離せっ!!」

陸実くんの声がフロア中に響いた。
足早に駆け寄ってくる音。
そして直ぐに二人を引き離して、私を自分の背後に隠してくれた。
「大丈夫かっ、美鈴センパイっ」
「むつみ、くんっ…」
た、助かったぁ…。
本当に心の底からそう思う。
陸実くんの背後で私は震える手を握って、大きく深呼吸をして自分を落ち着かせた。
「お前ら、センパイに何してやがったっ!」
「何って、俺達もマネージングして貰おうと思ってな」
「嘘だっ!!」
「嘘じゃないさ。なぁ?そーすい?」
「美鈴センパイに話かけんなっ!近づくなっ!」
「あ?なんだ?癒着関係か?」
「良く解んねーけどそうだっ!」
んんーっ!?
陸実くーんっ!?
そこ頷いちゃ駄目なとこじゃなかったーっ!?
私の聞き間違いカナーっ!?
「はぁん?マジか。こりゃスクープだな」
あーっ!?この反応聞き間違いじゃなかったーっ!?
「スクープでもスプーンでもなんでもいいっ!とにかく、美鈴センパイに何したかって聞いてんだよっ!!」
うんうん。陸実くんの優しいのは良い所なんだけどね?
お願いだから人の話はちゃんと聞いてーっ。
こんな展開になるなんて思ってなかったし。
どうしたらいいのーっ!?
って言うか、こんだけ大騒ぎにしちゃって。周囲に人も集まって来てるし。
叫ぶまいとした私の努力は一体ー…。
それに良く考えてみたら、陸実くん、収録はー?
「安心しろよ。何にもしてねぇよ」
「まだ、な」
ニヤニヤと笑う二人に私は鳥肌が止まらなかったんだけど、陸実くんは、
「ふざけんじゃねぇっ!!」
激怒した。
拳を振り上げて、二人に殴りかかる。
これは本格的にヤバいっ!
けど、私は今の状態だと体が震えたままで止めるなんて出来ない。
でも私が止めなきゃっ!
伸ばした手に触れたのは陸実くんの背中ではなく、

「…落ち着けー。陸実」

大地お兄ちゃんの大きな右手だった。
左手で子猫を咥える親猫の様に陸実くんの襟首を掴んで軽々と持ち上げている。
「師匠っ、何で止めるんだっ!」
「ここで喧嘩なんて馬鹿な事すっからだろー」
「馬鹿な事じゃねーっ!美鈴センパイが怖い目にあったんだぞっ!」
「そりゃまー確かに?でも、姫ちゃんが何の為に必死に叫ばずに我慢してたか解ってるかー?」
「え?」
「陸実。お前の為だぞー?ここで騒ぎを起こしてお前の不利にならないように必死で我慢してくれてたんだぞ?少しは考えろ」
「そーなのか…?」
あぁ、しょんぼりしちゃった…。
眉も肩も落としちゃってる。
物凄いベストタイミングで助けに来てくれたのに…最後までカッコよさを保てない陸実くんに苦笑してしまう。
「だけど、陸実が怒る気持ちも解る。…で?てめぇらは美鈴に何をした?」
大地お兄ちゃんが怒ってるーっ!?
名前の呼び捨てにドキッとした自分もいるのよーっ!?
……何か私おかしくなってるな?うん。落ち着こう。
「うっ…」
二人が大地お兄ちゃんの威圧に負けている。じりじりと後退しているけれど…。
「大方、仕事を取られた腹いせだろうけどな。昨日の陸実の殺人未遂の件といい、仕事がなくて暇してるってとこか?」
大地お兄ちゃーんっ!?
それ言っちゃ駄目な奴じゃないのーっ!?
せめて人気のない所で言ってよーっ!?
私の焦りは大地お兄ちゃんには届かず。
「回りくどい事してねぇで、真っ向から勝負しろよ。いらねぇことで美鈴を巻き込むな。これはお前にも言ってるからな、陸実」
ポイッと大地お兄ちゃんから投げられる。
その後ポケットをごそごそと漁り四つ折りの紙を取り出して、二人の方へと投げた。
「今度、アイドル対抗番組があるのは知ってるだろー?これで勝負つけろー。勝った方が負けた方の言う事を聞くって事でー。よっ、と」
ひょいっ。
……ひょい?
あれ?私大地お兄ちゃんに担ぎあげられた?
しかも真っ直ぐ外へ向かってる?
スタジオ前で真珠さんとバッタリ会って、私はそのまま真珠さんへと預けられた。
「姫ちゃん。陸実はオレが面倒見るから、暫く干渉禁止なー」
「ふみっ!?で、でもっ」
「姫ちゃん。陸実だって男だ。少しくらい良いカッコを付けさせてやって。これからアイツは死ぬ気でやるだろうから。結果が良くても悪くてもその努力は受け入れてやってよ」
何て言っていいのか解らなかった。
だけど、大地お兄ちゃんが優しく笑うから、私はどう返事して良いのか解らずただただ頷いた。
そうして、真珠さんに連れて帰られて、大地お兄ちゃんに干渉禁止を言い渡された私は大人しく仕事をする事にした。
その間、お兄ちゃん達が手を組んで私に陸実くん達の情報を入れない様にしていたからか、あれからどうなったのかさっぱり解らなかった。

そうして、一ヶ月後。
私は華菜ちゃんと逢坂くんの三人でテレビの前に座り待機していた。
大地お兄ちゃんから連絡が来たのだ。
今日の夜7時からやる特番を見て欲しい、と。
その番組はアイドルの対抗番組。男子の部、女子の部とあり、歌、ダンス、トーク力等々色々な部門でアイドルが実力を競い合う番組だ。
女子の部にユメが、男子の部にアッフェが出る事になっている。
アイドル対抗と言えど、基本は個人戦だ。空良くんは歌、海里くんは演技力、そして陸実くんとユメはダンス。
審査員は各事務所の社長、番組スポンサー、過去アイドルで今は俳優などで一線で活躍している人達、そして歌なら歌、ダンスならダンスの、所謂その道のプロの人がいる。そして更に視聴者も審査員となり視聴者票を持っている。一番票が投票された人が優勝し、スポンサーのCMの出演権利を得る事が出来る。
この番組にかけているアイドルは多い。
そんな番組を見て欲しいと言われて私達はこうして待機している。
番組が始まり、MCの進行で対決が始まって行く。歌で空良くんが出て来て、三人で湧いて。結果は二位であーと悔しがる。次の演技力で海里くんが出て来て。私達からみたらとてもとても良い演技でも、目が肥えた人達から見たらまだまだなのか結果は四位。
「残念だったねー」
「まぁ、でも四位でも凄いよ。今をときめく最前線アイドル達も出てる中でこの順位なら立派立派」
「けど、あーあ。見ろよ、空良と海里の顔。悔しいって感情必死に隠してる」
「それは、そうだろうね。頑張ったんだもん」
お姉ちゃん、泣きそう。
成長は凄い事なんだけどさ。あの、ひねくれた子達がこんなに成長して…うぅ…。
「お、CMの後はダンス勝負だね」
「とうとう陸実が出てくるか。さて、どうなるかな」
「私が出てる訳じゃないのに緊張するね。…甘いお菓子持ってくるね。しょっぱいのも。酸っぱいのも欲しいかな」
「それもう全部じゃない?美鈴ちゃん。食べるけども」
落ち着かなくてキッチンにある作り置きのお菓子を持てるだけ持ってリビングのテレビ前へと戻る。
ダンス対決が始まる。
一人目は知らないアイドルの女性だった。
「あれ?さっきまで男性からだったのに、今回は女性からなんだ?」
「さっきMCが言ってたけど、今回の男性ダンス対決、レベルが高いから最後に持って行くんだって」
「へぇ~。じゃあこの女性ダンス対決が終わったら、次は他の部門に行くんだ?」
「らしいよ」
じゃあ、まだ落ち着いて見れ…いやいや、見れないよ。ユメが出るんだもん。ちゃんと待機っ!
暫く見ていると、ユメが出て来て、それはそれはカッコよく踊っている。
「凄い…。ユメ、頑張ったんだねぇ」
円の次に運動が出来る事は知っていたけれど、ここまで出来るなんて…練習したんだねぇっ!
「美鈴ちゃん。涙、涙」
「ほら、白鳥。ティッシュ。食器拭きで涙を拭くのはやめろ」
「ありがとう…えぐえぐ…」
泣く私を見て、二人は仕方ないなと笑う。
「すっかり保護者目線だね」
「白鳥は昔からそうだろ。そう言う所本当変わらないよな」
「それが美鈴ちゃんの良い所だからいいのっ」
「華菜ちゃんっ、好きぃーっ!」
「私も好きーっ!!」
「この疎外感にもすっかり慣れたわ」
逢坂くんが呆れ果てるのを華菜ちゃんと二人で笑い、テレビに視線を戻す。
番組は進みユメがしっかりと一位を取り、私達は喜びでハイタッチをする。
『優勝おめでとうございます。MEIさん、今のお気持ちを誰に伝えたいですかっ?』
MCのインタビューにユメはとても綺麗に笑い、
『『王子』と『私の王子』の二人にっ!』
ハッキリと宣言して、視線をカメラと多分舞台袖にいるであろう未くんへと向けた。
「美鈴ちゃん(恩人)と未くん(彼氏)の二人に、か。夢子ちゃんらしいわ」
「うわあああんっ!!ユメが可愛いぃぃぃぃっ!!」
「今日一で泣いてるぞ、白鳥」
「バスタオル持ってくるぅぅぅぅっ!!」
もうティッシュやハンカチ、タオルでは無理だ。
ダッシュで洗面所へ向かい、洗濯したばかりのバスタオルを取って戻る。
私がエグエグと感動で泣いている間に番組は進み、気付けば最後男性部門のダンス対決となった。
基本的にこの番組は審査員の点数と視聴者票で決まるんだけど、審査員の点数が低いとまず優勝は無い。どれだけ視聴者票が入ったとしても、だ。視聴者票が一番多いアイドルに審査員一人が持つ十点が加算される仕組みになっている。
最初にMCが言っていた通り、確かに男性のダンス対決はレベルが高い。
勿論ダンスに関しては私は素人中の素人だから詳しくは解らないけれど、でも、そんな私でもこれ凄いんじゃない?って思わせるダンスを皆踊っている。
すると、どうやら次の番は例の糸目らしい。
ハードなダンスを難なく妖艶な笑顔で踊っている。
ダンスは二通り披露する。一つは課題として出されている共通のダンス。もう一つは自由曲でフリーダンス。
一曲目のPOPな曲を踊り切った糸目が、二曲目で魅せたのは日舞。
「えっ!?確かにフリーダンスだけど、日舞っ!?」
ダンスの一部だけど、そっちで来るとは思わずに。
会場もテレビのこっち側も皆その踊りに魅せられた。
糸目のターンが終わり、次の人が入ってくる。その人もまたフリーダンスでラテンダンスだったりと、全然予想もしないダンスを魅せて来た。
「レベルが高いと言うか、競う場所が違うくない?」
華菜ちゃんの言葉に思わず頷いてしまう。
そんな中、陸実くんの順番が来た。
ドキドキと両手を合わせて、ジッとテレビの向うの彼を見守る。
まずは課題曲。
楽しそうに明るく、飛び跳ねる様に踊る陸実くん。その姿は何時もの彼よりもカッコよく見えた。
課題曲のダンスに失敗らしい失敗も見られず、むしろ魅せられる所が多くて点数は高いだろう。
それで次のフリーダンスは…。
曲が流れる。
あれ?この曲って、アッフェの曲では?
「ねぇ、美鈴ちゃん」
「うん。私も多分同じ事考えてる」
私も華菜ちゃんも急いでスマホを操作して、フリーダンス使用曲禁止事項を検索して読む。
そこに自分達の曲を使っちゃ駄目、とは書かれていなくて一先ずホッとする。
「書き忘れたのかな?」
「どうだろ?でも敢えて書いてないのかもよ?…そこらへんは大地お兄ちゃんが監修してくれてるから大丈夫だと思うけど…」
「まぁ、リハもしてるだろうし、失格ならこの場にいないだろ。今はそれよりダンスを見ようぜ」
逢坂くんに言われて、それもそうだとスマホをしまい、陸実くんの演技に集中する。
本来のダンスとは違って、アレンジにアレンジを加えられて、大技を何個も何個も入れこまれていて。
更に、陸実くんは自分のパートだけでなく、海里くんや空良くんの踊りも入れこんで踊って見せた。
「…知ってる曲なだけあって、見てる人のテンションも高くなってるね」
「そうだね…。SNSの呟きも凄い勢いでトレンドに上がって来てる」
陸実くんは終始笑顔だった。それはそれは楽しそうに踊る。ダンスで体力を使ってる筈なのに、そんな事微塵も感じさせない。
あ、なんだろ。また泣けてきた。
陸実くんの演技が終わると拍手が鳴り響いた。
思わずだけど、私達も拍手をしていた。この賛辞の気持ちを少しでも表したかったからかもしれない。
その後、垂れ目の演技もあったんだけど、陸実くんのあの演技を見た後にはどうしても薄れて見えてしまう。
そうして、番組は最後の結果発表となった。
垂れ目はもう負けを確信した顔をしており、逆に糸目は自分が勝つに決まっていると自信に満ちた顔をしている。
一方陸実くんは、やり切ったと清々しい顔をしている。
『本日のラスト、男性アイドルダンス部門の優勝者はっ!』
MCの言葉の後、ドラムロールが鳴り響き、スポットライトが当たったのはっ!

『アッフェの陸実くんとSFのシュンくんですっ!』

二人っ!?
スポットライトは陸実くんとシュンと呼ばれたあの糸目に当たっていた。
『こんな事この番組始まって以来始めての事ですよっ!だが、ここは厳しい勝負の世界っ!この番組は一位を決めなければならないっ!と言う訳で、この二人で決勝戦だああああっ!!』
MCが煽る煽る。
会場の空気は一気に湧く。
『決勝戦は、互いのデビュー曲の振り付けをやって貰いますっ!!ダンスで勝負した二人なら完璧に出来る筈だあああっ!!』
出来るかあああっ!!
無茶言わないでよっ!!
皆練習に練習を重ねてここにいるのにっ!!
初めての曲を直ぐに完璧に踊るなんて無理でしょっ!!
と私はMCに怒りが沸くけれど、テレビの向うにいる陸実くんと糸目は笑っていた。そして『望む所だっ!』と勝負を受けた。
「…男って馬鹿だよねぇ」
「そう言ってやるなって。人には戦い時ってのがあるんだからさ」
逢坂くんが言う言葉に華菜ちゃんは不満そうだったけど、私はその言葉に心で頷いて。
テレビを見る。
練習時間はなし。視聴者には互いの曲と振付を見せる為PVが流される。恐らくその時間にモニターか何かで互いの曲と振付を彼らは確認しているんだろう。
PVが流れ終わって。
先行は糸目。
アッフェの陸実くんのパートを踊る。何か所か間違ってはいるものの自分の魅せ方を知っているのか、ミスは感じさせずに見る人を魅せていく。
綺麗にフィニッシュを迎えた糸目は綺麗に礼をして後ろへ下がり、逆に陸実くんが前に出る。
そして踊り始めた陸実くんのダンスは―――完璧だった。
糸目のパートを完コピしている。
ここまで完璧だと…逆に疑いたくなる。もしかして、陸実くんはこの決勝戦の内容を知っていたんではないか、と。
テレビのSNSに表示された呟きも私と同じような事を言っている。
さっきまでの優勝の流れとは打って変わり、陸実くんが一気にアウェーになっていた。
ダンスが終わり、審査を待つ間、踊り切った二人にインタビューされる。
『凄いですねっ、陸実くんっ。完コピじゃないですかっ!』
『はいっ、頑張りましたっ!』
『頑張るだけであんなに踊れますかね?陸実くん、もしかして決勝戦の内容知ってました?』
なんつータイミングでそれを言うの、糸目。
ニヤリと笑う糸目には悪い意志しか感じられなかった。まぁ、はた目には笑顔にしか見えないだろうけど。
『やー、知ってる訳ないですよ。オレはただ、先輩方も後輩の方達も。皆凄いダンスが上手いから。追い付く為に練習してたんです。オレは馬鹿だからこうして体に覚えさせるしかないんですよ。その証拠にオレこの会場にいるアイドルの皆の曲、大抵は踊れますよ。女子のも全部ねっ』
『は?』
『ええっ!?それは本当ですかっ!?陸実くんっ!?』
『勿論っ。試しに踊ってみましょうか?えっと、審査を待つ間にクイズ形式でどうでしょう?オレが踊った曲は何処のアイドルの曲か皆さんで当ててみて下さい。でオレが踊った曲のアイドルの方はダンス参加して下さい。それが答えです。行きますよーっ!』
言って踊りだした陸実くんに海里くんと空良くんが手拍子を付ける。
その完コピ具合に、観客は驚き、でも直ぐに陸実くんの空気に包まれて笑顔になり、いいタイミングで踊った曲のアイドルが参加して。
陸実くんは審査が終わるまで踊り続けた。
アイドル達も視聴者も皆が笑顔で。
そんな時に審査員の採点が終わり、優勝者が発表された。

『優勝者はっ、―――アッフェの陸実くんですっ!!』
『っしゃーっ!!』

スポットライトが陸実くんを照らし、ダンス部門の優勝を陸実くんは勝ち取った。
『おめでとうございますっ!』
『ありがとうございますっ!』
トロフィーを受け取り、陸実くんは満面の笑みを浮かべ、そんな陸実くんに海里くんと空良くんは喜び、抱き付いた。
あぁぁーっ!!
陸実くんっ、おめでとおおおおおっ!!
止まった涙がだばだばと溢れる。
『優勝した今のお気持ちはっ!?』
『一杯一杯色んな人に助けて貰いましたっ!学校の友達や先輩、後輩、先生や事務所の社長や皆っ、それにアイドルの先輩達に後輩の皆っ!それに、何より海と空っ!!皆、みんなに心からの感謝で一杯ですっ!!ありがとうっ!!』
うわああああんっ!!
陸実くんが立派になってるぅぅぅっ!!
「……なぁ、華菜。白鳥干からびるんじゃねぇ?」
「……水分、用意しとこうか」
目の前にそっと置かれた水のペットボトルを開けて一気飲みしてまた画面に視線を戻す。
『今回の対決、一番のライバルはっ!?』
『勿論、SF先輩達ですよっ!!絶対に負けたくなかったっ!!先輩達、約束、覚えてますよねっ!!』
糸目と垂れ目は笑顔のまま固まった。
それでも頷いて見せたのは微かなプライドだろう。
『約束?えー何々?』
『オレ達と一緒に番組に出てくれるって約束ですっ!!』
『えっ!?』
MCのみでなく、糸目と垂れ目も驚いて目を見開いている。
『正気ですかっ?SFの二人っ!?』
『え?え?』
『アッフェの仕事ってSFが今まで避けて来たハードなバライティ―ばかりですよねっ!?』
『はっ!?えっ!?』
『だってこいつら、俺等の仕事を』
『先輩達はハードなスケジュールで動いてたので、バライティまで出来る体力がなかったんですよ。だからオレ達はそのおこぼれを貰っていたんですが、今回約束してたんですよ。この勝負で勝った方が負けた方の言う事を聞くって。だから、オレの希望として先輩達と一緒に番組出たい、って思ってっ!』
『え?じゃ、じゃあ、俺達はもしかして…仕事を奪われたんじゃなくて…』
『フォロー、されていた…?』
二人は笑顔のまま、固まって…ハッと我に返って、陸実くんの両サイドに立ち肩を組んだ。
『仕方ねぇなっ!!出てやるよっ!!』
『一緒にっ!これで諸々チャラだからなっ!』
本当はチャラになる訳ない。殺人未遂がそう簡単にチャラになる訳ない。
だけど陸実くんは満足そうだ。きっと訴えたりはしないんだろう。
それにあの二人ももう悪い事はしないだろう。この収録が終わり次第事務所に謝りに行くんじゃないかな?
これも陸実くんの人間性に引っ張られたってことかな?
そう考えると、大人になった彼の姿にまた涙がボロボロと…。
『では、最後に、この優勝。誰に伝えたいですかっ?』
『そんなの決まってるっ!!』
すぅーっと陸実くんが息を吸いこんだ。
『あ、バカッ!』
『………陸っ!』
海里くんと空良くんが慌てて陸実くんを止めようと手を伸ばしたけれど、陸実くんは一杯一杯息を吸いこんで、そして。

『美鈴センパあああああイっ!!大好きだああああああっ!!絶対絶対『壁』何かに負けねぇから、オレと付き合ってえええええええっ!!』

全力で叫ばれた言葉が、真っ直ぐ飛び込んで来た。
こんな全国番組のアイドルがそんな事叫んでどうするの?とか。
私は男性恐怖症だから無理、とか。
陸実くんの好きはきっと姉弟のような感情だと思うの、とか。
一杯一杯自分を制止する言葉はあるのだけれど。
陸実くんの言葉は真っ直ぐに私に届いて。
涙は止まり、顔が熱くなって。
思考が停止した。
「……あーあ、これから大変だぞ?陸実」
「でも、こうでもしないと意識はして貰えないんだから、頑張ったともいえるけどね」
「そりゃまー確かにな。何はともあれ、頑張った陸実の為に白鳥の意識を呼び戻してやるか」
「真っ直ぐここに来るだろうしね」
二人が何か話してるけど頭には届かない。

その後。
騒ぎを聞きつけたお兄ちゃん達と、収録終わりで駆けつけた陸実くん達の攻防戦が繰り広げられたけど。
その間、私は陸実くんの顔を直視する事が出来なかった。
そんな私の姿に陸実くんはいたく満足そうな顔をして。

私に向かってこう言ってくれたのだ。

「美鈴センパイにやっとオレの気持ちが届いたっ!」

って。
嬉しそうに微笑んだ陸実くんに、私はそう言う意味で向き合う事は出来ないかもしれない。
でも、それでも。
彼は楽し気に嬉しそうに笑うから。
彼にとって大事な人が出来るまで。

こうして彼を見ていようと―――そう、思うんだ。



陸実編 完
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