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幼児編小話
筋肉と筋肉と弟(日常:睦)
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「大地お兄ちゃ~ん」
向こうから姫ちゃんが手を振っている。両側には双子がぴったりとくっついており、その後ろには鴇がゆっくりと付いて来ていた。
とりあえず姫ちゃんに笑顔で手を振り返す。なにを置いてもこれだけはしなければ。
「うおぉ…可愛い…」
「楽園だ…ここは楽園だ…」
「兄貴達、五月蠅い」
姫ちゃんが兄貴達の存在に気付いたのか、ピュッと音が聞こえてくる速さで棗の後ろに隠れてしまった。
そして、そーっと影から俺達を窺い見る。可愛い。
「真っ白な耳宛てに猫耳付きっ」
「ピンクのコートっ」
「真っ白なタイツっ」
「生きててよかったっ」
「今日は全力で目に焼き付けるっ」
………兄貴達の変態っぷりがエスカレートしている。
そっと双子が姫ちゃんの前に出た。あぁ、うん。正しい判断だ。
「よう。お待たせ」
「雪で遊ぶとか、子供か?」
透馬と奏輔が合流した。因みにここは公園である。
奏輔が言った通り、今日はここで皆で雪遊びする為に皆を呼び出した…のは、建前で。本当は、兄貴達が五月蠅かったからだ。
『あの天使と遊びたいっ!』
『眼福したいっ!』
『こんなに毎日仕事を頑張ってるんだから褒美の一つや二つあってもいいはずだっ!』
『大地っ!天使と戯れさせろっ!』
姫ちゃん、男苦手だから無理ー、と一応反撃を試みたが。
『奏んとこの女帝様だって一緒に遊んだと言っていたぞっ!』
女だからね。
『透馬の所のボーイッシュな女神だって遊んだと言っていたぞっ!』
うん。女だからねー。
『予定を組めっ!』
『俺達に癒しを寄越せっ!』
いや、だから、無理ー。
『次の日曜日はどうだっ!?』
『男が苦手なら公園でどうだっ!?』
聞いてー。って言うか家じゃなきゃいいって訳じゃないからー。
『あんまり寒くない方がいいなっ!』
『今、冬だからなっ!』
『午後にしようっ!』
『そうだなっ!』
だから聞けってー。ま、言った所で聞かないのは知ってるし。
きっと勝手に鴇にメールを出すんだろう事も分かっている。
だったらオレから出した方がまだマシだよね。
所でさっきから兄貴達が姫ちゃんをガン見してるんだけど。公園のど真ん中で。しかも正座。雪の上で正座。
溜息しか出ない。
肩を落として溜息をついていると、両サイドから肩をポンッと叩かれた。
「…分かるで。その気持ち」
「痛いほど解る」
同情された。なんだろう。この同情はやたらと心に優しい。
―――ペシッ。
ん?今、足に何か当たった?
足を見ると雪がついた跡と、足元には丸かったであろう雪の塊。
「えへへっ。大地お兄ちゃん、隙ありー」
きゃっきゃっと雪玉作って、姫ちゃんは鴇や双子と投げ合っていた。
「あー、やったなーっ」
固く握ると怪我させちゃう可能性もあるから、柔らかく握って姫ちゃんに投げる。
「きゃーっ」
楽しそうに逃げる姫ちゃんはそれを見事に回避した。
「楽園だ…」
「俺、今なら羽ばたけるっ」
……。本当なら何処にと突っ込むところだけどー…面倒だから、もう羽ばたいたらいいよ。いってらっしゃい。
「透馬お兄ちゃんにも、えいっ」
「っと、あぶねーなぁ。こっちも仕返ししてやろうか~?」
「きゃーっ。とか言いつつ、奏輔お兄ちゃんにえいっ!」
「おわっ!?こら、お姫さんっ。悪戯はあかんでっ?」
なんて言いながら、二人は姫ちゃんに当てる気はない。雪玉は柔らかく握られて、いつもその手前で落ちる。楽しそうだ。オレも混ざろー。
雪玉をきつく堅く握り、全力で鴇へ投げる。
「っ!?、あっぶねーなっ、大地っ!」
「もう一弾行くよー。おりゃっ!」
鴇へ投げるふりをして、透馬へ投げる。
「ふぎゃっ!?」
よしよし。ナイスコントロール。見事に顔に当たった。
「てんめぇ…良い度胸してるじゃねぇかっ!」
固く握られた雪玉がオレ目掛け飛んでくる。それを回避し、逃げ回る。
「透馬、加勢すんでっ」
「俺も加勢してやるっ」
「ちょっ、三対一はずるいーっ」
「とか言いつつ、ちょこまかと逃げてんじゃねぇかっ!」
三方向から飛んでくる雪玉を避けつつ、投げ返す。
逃げて投げて、逃げて投げて。
あ、流れ弾が姫ちゃんの方にっ。
「全く…危ないです、よっ!」
葵が姫ちゃんに当たる前に蹴りで雪玉を割った。おぉー。良い感じの回し蹴りだったなー。
「鴇兄さん。こっちには鈴ちゃんがいるんだから、気を付けて」
「大丈夫だった?鈴」
「んっ、平気っ。えへへ、楽しいっ」
「そっか」
「いっぱい遊ぼうね」
あー…可愛いなー…。双子も込みで可愛い。こうなると本気で鴇が恨めしい。
可愛い弟と妹。なんだそれ。こっちには筋肉ダルマが二つもいるというのに。
じと目で未だ正座で、雪玉の流れ弾があたっても微動だにしない兄貴達を睨む。雪にまみれても気にならないのかー。そうかー。残念だー。
視線を鴇達に送ると、しっかりと頷かれた。
アイコンタクトが出来るって良いよねー。
足元にある雪を掬い、それはそれは固く握って、全力で筋肉ダルマその一へ投げた。
「……可愛い…」
こっちを一切見ず。
「うわー…全然効いてない」
マジかー。続いて透馬と奏輔が全力で筋肉ダルマその二へ投げる。
「羽が見える…」
やっぱり反応なし。
「相変わらずの体だな」
「せやね。鴇、全力でいいんちゃう?」
鴇が頷いた。これでもかと固く握って。オレ達四人がかりでそれはもうきつくきつく握って。鴇に雪玉を渡す。
そして、鴇が全力で投げた。
―――ズバァンッ!
結構な音が響きそれは見事筋肉ダルマその一―――勝利(かつとし)兄貴の頬へ命中した。
「な、なんだっ!?今頬に何かあたったようなっ!?」
やっと気付いてくれたのはいいとして、なんでダメージゼロー?
「相変わらず、お前の所の兄貴は化け物だな」
「鴇の全力が全く効いとらんね」
「まぁ、でも、こっち向かせただけでも大したもんなんじゃね?」
確かにと頷きあう。
「成程…。お前達が投げたんだな」
「…ふっ、仕方ない。お前達にこの筋肉を見せる時が来たかっ」
ちょっと待って。兄貴達。なんで上着脱ぐっ!?
しかもダウンジャケットの下にタンクトップ一枚ってなんだそれっ!?
「行くぞっ!!」
「覚悟を決めろっ!!」
雪玉を構え始めた。
ゴキッ、バキッ。
「いやいやいやっ!雪玉握る音じゃねーだろっ!!」
「逃げよーっ!!」
「何処へ逃げるんっ!?あんなんぶつけられたら、公園の設備皆壊されてまうでっ!!」
筋肉がもりっと浮き出て、雪玉のターゲットは完全に俺達に向いている。
どうしよーっ、こういう時の兄貴達って手加減しないんだよなーっ。いっそ設備壊されても逃げるかっ?
三人で慌てていると、鴇が突然姫ちゃんの方へ歩きだした。双子が姫ちゃんに変な物を見せないように盾になっているそこへ辿り着くと、姫ちゃんへ何か話している。
「さぁっ、行くぞっ。小童どもっ!」
野球の全力投球の構えを筋肉ダルマその二―――将軍(しょうぐん)兄貴がとった。
あー、やばいかなー?
と覚悟した、その時。
―――ポスッポスッ。
「お兄ちゃん達、隙ありー?」
兄貴達の足に二つの雪玉があたった。
その当てた主に視線を合すと、えへへっと笑って双子の背後へ隠れてしまった。
兄貴達はそんな姫ちゃんを見て、わなわなと体を震わせると…。
「ありがとうございますっ!」
「ごちそうさまですっ!」
―――ズドォンッ。
顔を真っ赤にして兄貴達が直立不動でぶっ倒れた。
「えっ?えっ?」
「鈴ちゃん。奇妙な物は視界に入れちゃダメ」
「鈴。あっちで雪だるま、作ろうか」
にこにこと双子が姫ちゃんから奇妙な物(兄貴達)を隠す。
オレ達四人はその奇妙な物に近づき見下ろす。
「て、て、天使の…いたずら…」
「も、もっと…」
うわごとー?きめー。
「……よし。見なかった事にして帰るぞ」
鴇の宣言にオレ達は素直に頷いた。
……にしても、一撃でこの怪物を倒すんだから、姫ちゃん最強説?
ふと脳裏を過ったけれど、まぁ可愛いからいいかと一人納得して先を歩く皆と公園を去るのだった。
兄貴達?三日後に帰って来たよー?幸せそうにニヤケながら。
向こうから姫ちゃんが手を振っている。両側には双子がぴったりとくっついており、その後ろには鴇がゆっくりと付いて来ていた。
とりあえず姫ちゃんに笑顔で手を振り返す。なにを置いてもこれだけはしなければ。
「うおぉ…可愛い…」
「楽園だ…ここは楽園だ…」
「兄貴達、五月蠅い」
姫ちゃんが兄貴達の存在に気付いたのか、ピュッと音が聞こえてくる速さで棗の後ろに隠れてしまった。
そして、そーっと影から俺達を窺い見る。可愛い。
「真っ白な耳宛てに猫耳付きっ」
「ピンクのコートっ」
「真っ白なタイツっ」
「生きててよかったっ」
「今日は全力で目に焼き付けるっ」
………兄貴達の変態っぷりがエスカレートしている。
そっと双子が姫ちゃんの前に出た。あぁ、うん。正しい判断だ。
「よう。お待たせ」
「雪で遊ぶとか、子供か?」
透馬と奏輔が合流した。因みにここは公園である。
奏輔が言った通り、今日はここで皆で雪遊びする為に皆を呼び出した…のは、建前で。本当は、兄貴達が五月蠅かったからだ。
『あの天使と遊びたいっ!』
『眼福したいっ!』
『こんなに毎日仕事を頑張ってるんだから褒美の一つや二つあってもいいはずだっ!』
『大地っ!天使と戯れさせろっ!』
姫ちゃん、男苦手だから無理ー、と一応反撃を試みたが。
『奏んとこの女帝様だって一緒に遊んだと言っていたぞっ!』
女だからね。
『透馬の所のボーイッシュな女神だって遊んだと言っていたぞっ!』
うん。女だからねー。
『予定を組めっ!』
『俺達に癒しを寄越せっ!』
いや、だから、無理ー。
『次の日曜日はどうだっ!?』
『男が苦手なら公園でどうだっ!?』
聞いてー。って言うか家じゃなきゃいいって訳じゃないからー。
『あんまり寒くない方がいいなっ!』
『今、冬だからなっ!』
『午後にしようっ!』
『そうだなっ!』
だから聞けってー。ま、言った所で聞かないのは知ってるし。
きっと勝手に鴇にメールを出すんだろう事も分かっている。
だったらオレから出した方がまだマシだよね。
所でさっきから兄貴達が姫ちゃんをガン見してるんだけど。公園のど真ん中で。しかも正座。雪の上で正座。
溜息しか出ない。
肩を落として溜息をついていると、両サイドから肩をポンッと叩かれた。
「…分かるで。その気持ち」
「痛いほど解る」
同情された。なんだろう。この同情はやたらと心に優しい。
―――ペシッ。
ん?今、足に何か当たった?
足を見ると雪がついた跡と、足元には丸かったであろう雪の塊。
「えへへっ。大地お兄ちゃん、隙ありー」
きゃっきゃっと雪玉作って、姫ちゃんは鴇や双子と投げ合っていた。
「あー、やったなーっ」
固く握ると怪我させちゃう可能性もあるから、柔らかく握って姫ちゃんに投げる。
「きゃーっ」
楽しそうに逃げる姫ちゃんはそれを見事に回避した。
「楽園だ…」
「俺、今なら羽ばたけるっ」
……。本当なら何処にと突っ込むところだけどー…面倒だから、もう羽ばたいたらいいよ。いってらっしゃい。
「透馬お兄ちゃんにも、えいっ」
「っと、あぶねーなぁ。こっちも仕返ししてやろうか~?」
「きゃーっ。とか言いつつ、奏輔お兄ちゃんにえいっ!」
「おわっ!?こら、お姫さんっ。悪戯はあかんでっ?」
なんて言いながら、二人は姫ちゃんに当てる気はない。雪玉は柔らかく握られて、いつもその手前で落ちる。楽しそうだ。オレも混ざろー。
雪玉をきつく堅く握り、全力で鴇へ投げる。
「っ!?、あっぶねーなっ、大地っ!」
「もう一弾行くよー。おりゃっ!」
鴇へ投げるふりをして、透馬へ投げる。
「ふぎゃっ!?」
よしよし。ナイスコントロール。見事に顔に当たった。
「てんめぇ…良い度胸してるじゃねぇかっ!」
固く握られた雪玉がオレ目掛け飛んでくる。それを回避し、逃げ回る。
「透馬、加勢すんでっ」
「俺も加勢してやるっ」
「ちょっ、三対一はずるいーっ」
「とか言いつつ、ちょこまかと逃げてんじゃねぇかっ!」
三方向から飛んでくる雪玉を避けつつ、投げ返す。
逃げて投げて、逃げて投げて。
あ、流れ弾が姫ちゃんの方にっ。
「全く…危ないです、よっ!」
葵が姫ちゃんに当たる前に蹴りで雪玉を割った。おぉー。良い感じの回し蹴りだったなー。
「鴇兄さん。こっちには鈴ちゃんがいるんだから、気を付けて」
「大丈夫だった?鈴」
「んっ、平気っ。えへへ、楽しいっ」
「そっか」
「いっぱい遊ぼうね」
あー…可愛いなー…。双子も込みで可愛い。こうなると本気で鴇が恨めしい。
可愛い弟と妹。なんだそれ。こっちには筋肉ダルマが二つもいるというのに。
じと目で未だ正座で、雪玉の流れ弾があたっても微動だにしない兄貴達を睨む。雪にまみれても気にならないのかー。そうかー。残念だー。
視線を鴇達に送ると、しっかりと頷かれた。
アイコンタクトが出来るって良いよねー。
足元にある雪を掬い、それはそれは固く握って、全力で筋肉ダルマその一へ投げた。
「……可愛い…」
こっちを一切見ず。
「うわー…全然効いてない」
マジかー。続いて透馬と奏輔が全力で筋肉ダルマその二へ投げる。
「羽が見える…」
やっぱり反応なし。
「相変わらずの体だな」
「せやね。鴇、全力でいいんちゃう?」
鴇が頷いた。これでもかと固く握って。オレ達四人がかりでそれはもうきつくきつく握って。鴇に雪玉を渡す。
そして、鴇が全力で投げた。
―――ズバァンッ!
結構な音が響きそれは見事筋肉ダルマその一―――勝利(かつとし)兄貴の頬へ命中した。
「な、なんだっ!?今頬に何かあたったようなっ!?」
やっと気付いてくれたのはいいとして、なんでダメージゼロー?
「相変わらず、お前の所の兄貴は化け物だな」
「鴇の全力が全く効いとらんね」
「まぁ、でも、こっち向かせただけでも大したもんなんじゃね?」
確かにと頷きあう。
「成程…。お前達が投げたんだな」
「…ふっ、仕方ない。お前達にこの筋肉を見せる時が来たかっ」
ちょっと待って。兄貴達。なんで上着脱ぐっ!?
しかもダウンジャケットの下にタンクトップ一枚ってなんだそれっ!?
「行くぞっ!!」
「覚悟を決めろっ!!」
雪玉を構え始めた。
ゴキッ、バキッ。
「いやいやいやっ!雪玉握る音じゃねーだろっ!!」
「逃げよーっ!!」
「何処へ逃げるんっ!?あんなんぶつけられたら、公園の設備皆壊されてまうでっ!!」
筋肉がもりっと浮き出て、雪玉のターゲットは完全に俺達に向いている。
どうしよーっ、こういう時の兄貴達って手加減しないんだよなーっ。いっそ設備壊されても逃げるかっ?
三人で慌てていると、鴇が突然姫ちゃんの方へ歩きだした。双子が姫ちゃんに変な物を見せないように盾になっているそこへ辿り着くと、姫ちゃんへ何か話している。
「さぁっ、行くぞっ。小童どもっ!」
野球の全力投球の構えを筋肉ダルマその二―――将軍(しょうぐん)兄貴がとった。
あー、やばいかなー?
と覚悟した、その時。
―――ポスッポスッ。
「お兄ちゃん達、隙ありー?」
兄貴達の足に二つの雪玉があたった。
その当てた主に視線を合すと、えへへっと笑って双子の背後へ隠れてしまった。
兄貴達はそんな姫ちゃんを見て、わなわなと体を震わせると…。
「ありがとうございますっ!」
「ごちそうさまですっ!」
―――ズドォンッ。
顔を真っ赤にして兄貴達が直立不動でぶっ倒れた。
「えっ?えっ?」
「鈴ちゃん。奇妙な物は視界に入れちゃダメ」
「鈴。あっちで雪だるま、作ろうか」
にこにこと双子が姫ちゃんから奇妙な物(兄貴達)を隠す。
オレ達四人はその奇妙な物に近づき見下ろす。
「て、て、天使の…いたずら…」
「も、もっと…」
うわごとー?きめー。
「……よし。見なかった事にして帰るぞ」
鴇の宣言にオレ達は素直に頷いた。
……にしても、一撃でこの怪物を倒すんだから、姫ちゃん最強説?
ふと脳裏を過ったけれど、まぁ可愛いからいいかと一人納得して先を歩く皆と公園を去るのだった。
兄貴達?三日後に帰って来たよー?幸せそうにニヤケながら。
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