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幼児編小話

ロシアンルーレット(日常:長)

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『ママに頼まれて栄養ドリンク作ってみたんだ。だけどね?スムージーっぽく作ってみたはいいものの、どれが美味しい奴か分からなくなっちゃったの。どうしたらいいと思う?』
語る美鈴の前にはそのスムージーが入ったボトルが四つ。
俺は素直に透馬と大地に飲ませようと、心に決めその四つのボトルを持って登校した。
そして昼休み。
二人を呼び出して、その二人の前にボトルを置いた。
「え?なに?これ」
「美鈴が作った栄養ドリンク」

………。

二人が何とも言えない顔をした。
それは栄養ドリンクとは言い難い色をしていたから。
確かにどれも同じくらい濃い緑色をしていて、ただの青汁に見えなくもない。
ボトルを傾けるとスムージーか?と疑問に思う程その液体は動かない。

………。

見た目が全て同じそれ。
しかし、美鈴は言っていた。
『どれが美味しい奴か分からない』と。
と言う事は確実に不味いのがあると言う事だ。
「鴇。まさか、俺達にこれを飲まそうって言うんじゃ…?」
「透馬。良く気が付いたな」
微笑んで頷く。
「え?なんでオレまでー?」
「大地。美鈴が作ったドリンクだぞ?体にはいいはずだ」
笑顔を大地にも向ける。
だが味の保証はしない。
二人はじーっとそのボトルを見詰めている。
ボトルは小さい缶コーヒー程の大きさで、多分こいつらなら二本位軽くいけるだろう。
「美鈴が作った物を飲めないとでも?」
目を細め睨む。
「…ん。ほんなら俺が先にのもか?」
言って立候補したのは、何故か俺達より先に生徒会室にいた奏輔だった。
そして、何のためらいもなくボトルを一つ手に取り、ぐっと飲み干した。
「ん?なんや。上手いやん」
ケロッと満足そうに言う奏輔に逆に俺が驚く。
……なら俺も飲んでみるか。
一つ手に取り蓋を開け飲んでみる。あぁ、これ、人参が多く入ってるのか。甘さの為に林檎も入ってるな。確かに旨い。
「栄養ドリンクって言うから何かと思えば、ただの野菜ジュースじゃないか」
「そやね。こっちはちょっと酸味が強いさっぱりした味やったけど、そっちは?」
「甘み重視、だな。多分林檎と人参が入ってる。他の野菜の味を隠す為、だな」
俺と奏輔が感想を言い合っていると、透馬と大地が顔を見合わせた。
「そんなに美味いなら」
「飲んでみよっかー」
二人が一本ずつ手に取り、同時に呷る。

………。

「ぐほぉっ!」
「おえぇっ!」

……二人仲良く散って行った。

「……なぁ、鴇?」
「うん?」
「知ってたやろ。外れがどれかって」
「いいや?知らなかったぞ?ただ、行く間際に美鈴が『甘み、酸味、苦み、刺激の四種類を意識して作ったの。特に刺激はカプサイシンが強めだから気を付けてね』って言ってたからな。ついでに『ボトルの蓋が青いのが、多分甘みの奴だと思うの。これだけは合ってると思うんだけどな~…自信ないや』とも言っていたから、なら青いのに賭けてみようと思って飲んだんだ。実際甘くて美味かったしな」

………。

再びの沈黙。
「運が良くて良かったな、奏輔」
「ほんまにね」
俺は足下で屍となった二人を見捨てて、早速美鈴の作ってくれた弁当を食べようと席につく。
奏輔も持参の弁当を俺の前で開いた。
美味い弁当を食べながら、ふと思う。
(しかし、美鈴でも失敗するんだな…)
妹の新たな発見を少し嬉しく思いながら、昼休みは過ぎて行った。
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