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最終章 数多の未来への選択編
第三十三話 猪の想いは曲がれない?彼との恋は体力勝負!
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「…さんっ…鳥さんっ!…白鳥さんっ!」
耳元で声がして、何か体が揺さぶられてる…?
ってか、ゆっさゆっさ思い切り揺さぶられて、ちょっ、気持ち悪ぃ…。
やめっ、揺らすな。
「白鳥さんっ!白鳥さぁぁぁんっ!!」
「だああああっ!!やかましい上に気持ち悪いからやめぇいっ!!」
叫びながら目を抉じ開けて勢いよく置き上がると目の前にある顔に全力頭突き。
ゴンッ!!
とすんばらしい音が聞こえた。
折角目開いたのに、痛みで再び閉じる事になるとは…。
「白鳥さんっ!無事だったんじゃねぇかっ!」
「~っつー…。相変わらず石頭ですね、猪塚先輩。なんでそんなケロッとしてるんです?それと言葉遣い。戻ってますよ」
「あっ…。色々とごめんなさい」
「いえ、いいんですけどね」
デコを擦りつつ私はやっと開けたけど、痛みで涙に滲んだ視界で周囲を確かめた。
「…ここは?」
「解らねぇ。気付いたらここにいた」
猪塚先輩もどうやら動揺してるみたいだね。言葉遣いがおかしい。
「猪塚先輩。落ち着いて。で詳しく説明して」
「『ご、ごめんなさい。えっと…』」
「イタリア語で構いませんよ。今は私しかいませんし」
「いや。それは止めた方が良いです。外に、イタリア語を話す人がいました」
「そうなんですか?」
「はい。油断はしない方が良さそうです」
厳しい目を外に向ける猪塚先輩の姿越しに私もそちらへ視線を向ける。
すると、どうやらここは檻で、鉄格子の向うには誰か警備員のような格好をした男性が立っているのが分かる。
「成程…。窓はあるのかな?」
「ありませんね。僕が見た限りは、ですが」
私も周囲を見るけれど、確かに…ないね。
ピチョンッ。
「ん…?」
私の頬に滴が落ちて来た。雨漏り?
天井を見上げようとして、気付いた。
どうやら雨漏りではなく、猪塚先輩の髪から滴ったみたいだ。
「猪塚先輩。どうして、濡れて…」
「あぁ、それは、あのヘリから落ちて行く白鳥さんを見て、助けなければとパラシュートを持って飛び降りて、あの訳が解らないクローンから白鳥さんを奪い返したまでは良かったんですが。パラシュートが風に流されて海に落ちたので」
「そうなんですか?…助けてくれてありがとうございます。猪塚先輩」
言われてみたら、私が寒くないのは猪塚先輩が着ていたスーツのジャケットを私に着せてくれていたからだ。
「ごめんなさい。寒かったでしょう?」
「大丈夫。この位寒くなんてありませんよ。それよりも白鳥さんはもっと暖かくしていてください」
相変わらず猪塚先輩は、紳士だ。目つきの悪さをも補える程だ。うんうん。
一先ず、猪塚先輩の優しさだからこれはこのまま着て置こう。その方が猪塚先輩がいざ寒くなった時に温かいまま渡せるし。
猪塚先輩に退いて貰って、私は猪塚先輩のジャケットを羽織った。
「ふみみ?やっぱり少し大きいですね。ダボダボだ」
「プライスレスッ!!」
ダダンッ!
唐突に前かがみになって床を叩いた猪塚先輩から湯気が出てる。
「猪塚先輩、大丈夫ですか?」
熱上がってたり…?
心配になって訊ねてみたものの、ふおおおおおっと何やら荒ぶってらっしゃるので取りあえず放置の方向で。
「あれ?そう言えば猪塚先輩?」
「何でしょう?白鳥さん」
「流石の切り替えだわ。っと、そうじゃなく、猪塚先輩も気付いたらここに居たって言ってませんでした?」
「言いました。海に落ちた後、幸い近くに陸があったので意識を失った白鳥さんを担いで上がって。意識が無かった白鳥さんに必死で呼びかけていたら、後ろ頭に強い衝撃が走って」
「ふみっ!?叩かれたのっ!?ちょっと見せてっ」
それを早く言ってよっ!
私は急いで猪塚先輩の後ろに回って後頭部を確かめた。そう言えばさっきも頭突きしちゃったじゃんっ!
ついでにデコもしっかり調べよう。
「あ、大丈夫です。特に傷も違和感もないので」
「頭は血が出ない方が危ないって言うじゃないっ」
「大丈夫です。僕は石頭なので」
少し笑いを含んだ声に、少し安堵するもののここを出たらすぐに検査させようと私は強く決めた。
「それよりも…どうしますか?白鳥さん」
言いながら猪塚先輩は外を見る。
「逃げますか?様子を見ますか?」
「見張りは何人?」
「僕が知る限り左右に二人です」
「二人…。勿論男性なんだよね」
「そうですね」
猪塚先輩から私は距離を取りつつ、もう一度この場所を見回した。完全に見た目は牢屋だね。
しかも、コンクリートじゃなくて石で出来てる昔ながらの牢だ。
手枷足枷を嵌める様に端の方に鎖と枷があるけど、私達に嵌めていない所を見ると今は気にする必要はない。
一応武器に出来ないか、確かめてみようか。
足音を立てないようにこっそりと近づいて、鎖を手に持ち引っ張って見る。
……ん?これ、外せそうじゃない?
鎖に力を込めて、いっせーのっ、でっ!
ガコンッ!
「あ、外れた」
武器ゲット~。
やっぱり腕や足を拘束する為の物だから二つある。
もう一個も取り外せたので、それを持って他を見る。ベッドとかトイレとか最低限の物も無い。
これは、一時的にここに閉じ込めとくつもりだったのかな?
だとしたら、逃げるには今がチャンスでもあるよね?
ここが何処だか解らないけど、皆から遠ざかる訳にもいかないし。
猪塚先輩の所にこそこそと戻り私は手に入れた鎖を手渡した。
「これは…?」
「鎖」
「それは見て解ります。これをどうし…はっ!もしかしてっ」
おお、解ってくれた。
私は大きく頷く。それに猪塚先輩も顔を赤らめながら大きく頷く。
ん?何故顔を赤らめる?
「白鳥さんが望んでくれるなら喜んでっ!さあ、僕を縛って下さいっ!」
「なんでやねーんっ!!」
思わず全力で突っ込んでしまった。
外の見張りがビクゥッ!と肩を上げたのがここからでも解ってしまったじゃないかっ!!
「冗談ですよ」
嘘だ。絶対本気だった。だって、今顔がしょんぼりしてるものっ!
顔文字のしょぼーんと同じだもんっ!
じーっと私が疑わしい目線を送りつつ、少しずつ遠ざかっていると猪塚先輩はごほんっと咳をして改めて自分の手に渡された鎖を見た。
「これで見張りを狙いますか?」
「見張りを狙うと言うよりは、恐らく見張りはある程度すると私達にご飯を届けに来るだろうから、そこをこうっ」
バチコンッと一撃喰らわせて意識を失ったタイミングで鎖で縛り上げる。
と私はジェスチャーで説明した。
「……プライスレスッ!」
「いやいや。人の話聞いてますか?猪塚先輩」
しかも何がプライスレス?本日二回目なんですけど。
とにかくカムバック。猪塚先輩。
いちいち地面を叩きつけないで。話が進まないの。
「…解りました」
「ふみ?何が?」
「え?ご飯を届けに来るタイミングで」
キョトンとしながらも猪塚先輩はジェスチャーで見張りを指さしてから鎖を持ちあげた。
ちゃんと聞いてたんじゃないかーい。
私は通じていた事にホッとして、しかも猪塚先輩が問題なさそうなので安心感から笑顔で頷いた。
「プライスレ」
「それはもういいから」
じゃあ、少し待とうかな。
作戦決行まで私と猪塚先輩は体力を温存する事にした。
……ってカッコよく言ってみたものの、目を覚ましたのはどうやらお昼だったみたいで。
その時は直ぐに訪れた。
『お前達。飯の時間だ』
牢が開いて、そこに見張りが鍵を外しピザを片手に入って来た。
猪塚先輩が動いた。
見張り…仮に右に立っていた人を見張りA、左に立っていた人を見張りBとして。Aが中に入って来たんだけど、猪塚先輩の見事な一撃に意識を飛ばした。
おお、流石。
それに気付いた見張りBも中に入って来たが、それも猪塚先輩はあっさりと倒して、二人を鎖でグルグル巻きにして縛り上げてしまった。
「凄いねっ、猪塚先輩っ」
怪我一つもせずに二人共伸せるなんてっ。
「ハハッ。こんなの棗先輩のしごきに比べたらなんてことないですよ」
「そうなの?」
「はいっ」
確かに棗お兄ちゃんと毎日バトルってた気もするけど、そんなに鍛え上げられてたのかぁ、そうかぁ。
「さぁ、逃げましょうか。白鳥さん」
「あ、ちょっと待って。このピザは食べて行こう」
「え?ですが、もし何か入っていたら」
「大丈夫。それはないよ。もし致命傷になるような毒を入れる位なら私達はそもそも生きてここに入れられてないし。もしどちらか片方の命だけ奪おうとするならピザは二枚用意されるはず。睡眠薬や何かを入れるのであれば何か目的があってだろうけど」
「目的?」
「そう。例えばここから更に他の場所に移動させる為、とか、何か弱みを握る為、とかね。でもそれならば今じゃないよね。私達が目を覚ましているのは見張りは気付いていたと思うの。そして今は昼。ここが何処かは解らないけど、万が一私達がその薬に寄って異常が出た場合日が高い内は周りにバレる場合がある。大抵は昼を避けて夜に実行するモノよ」
「…成程」
「と言う訳で腹が減っては戦は出来ないんだから、食べよう。はい、猪塚先輩」
六等分されているピザの六分の一を取って、猪塚先輩に向かって渡した。
「…え?」
「口、開けて。チーズが落ちちゃう」
私が急かすように言うと、猪塚先輩は目をギュッと閉じて口を開けた。
何故目を閉じる?
まぁ、いいや。猪塚先輩の口の中にムギュッとピザを詰めて、私も自分自身の分を取り口に入れる。
「……死んでも良い…。白鳥さんからあーんって…」
何か天井に向かって呟いてる。大丈夫?猪塚先輩。
「先輩。早く飲みこんで。はい、次」
椀子蕎麦よろしく、猪塚先輩が飲みこんだのを見計らって次を口に入れる。
私は1ピースで十分だけど、猪塚先輩は足りないだろうから。
先輩がお腹いっぱいになるまで口に突っ込んで、全部亡くなったのを確認してから私と猪塚先輩は牢を出た。
猪塚先輩がしっかりと見張りから鍵を奪っといてくれたから、牢の外からしっかりと鍵をかけて、と。
鍵は複数あったけどちゃんと牢番号とか書いてあったから直ぐに分かったし、なんなら逆に牢の鍵しかなかったから手が届かなそうな場所に使い終わった鍵はポイした。
私と猪塚先輩は走る。
勿論出口に向かってである。
何処に出口があるのかなー?
解らないけど、まぁ、こう言う場所は大抵見張りの都合上出入り口は一つだしね。
辺りに気を付けながら、先導してくれる猪塚先輩の後ろを付かず離れずで走る。
「っ!、白鳥さん、隠れて」
石廊下の突き当りT字路の所で猪塚先輩が言うので、私は慌てて猪塚先輩の影に隠れる。
壁を背に猪塚先輩と並んで様子を探る。
「……って……だろ…。……せぇ……金は……」
どうやら出口はあっちみたいだ。
「まずは僕があの人達をどうにかしてきますから、少し待っていて下さい。後ろから誰も来ない限りはここを動かないで下さいね」
小声で言われた事はもっともな事だから私はしっかりと頷く。
足手まといになってはいけないからねっ!
私が頷いたから、猪塚先輩も安心したのか頷いて、すぐに戦闘モードの表情に変わった。
相変わらず悪人度が高い顔だけど、こう言う時は頼もしく感じるよね。
猪塚先輩はタイミングをはかり、飛び出して行った。
「てめぇっ!!何で逃げて来られたんだっ!?」
「おいっ!!応援を呼べっ!!」
「わ、分かったっ!!ぐあっ!!」
怒号が飛び合う中、それはあっという間に悲鳴に変わり、更にあっと言うまで静寂に変わった。
戻ってくる足音が聞こえて、猪塚先輩は涼しい顔で私の前に立った。
「おかえりなさい。猪塚先輩。怪我はない?」
「……ないですっ。……可愛いっ」
「ふみ?猪塚先輩?何処か痛い?」
「白鳥さんが可愛過ぎて、心臓が痛いっ!!」
「ごめん。その病多分私理解出来ないから治せないや…」
遠い目をするしかない。
…違うな。放置してたら駄目な奴だ。
今は脱出。先に進むのが吉。
ふるふる震えている猪塚先輩の背後を覗き込むと、その奥には数人のガタイの良い男性が数人ロープで縛られていた。
「恐らくあの場にいる人間はあれだけだと思います。さぁ、行きましょう。白鳥さん。白鳥さんは僕が絶対に助けてみせますからっ」
「……うん。ありがとう、猪塚先輩」
笑うと、猪塚先輩はまた崩れ落ちて地面を叩いた。
うん。助けてくれるのは良いんだけど、笑う度にそれをされるとタイムロスなんじゃないかな~…?
と思ったり思わなかったりしたけれど。
「さぁ、行きましょうっ」
立ち直りも早いようなので良い事にして、私と猪塚先輩は出入り口へと向かった。
ドアを開けると、そこには石階段。
どうやら私達は地下牢に閉じ込められていたらしい。
階段を駆け上ると、再びドアがあり猪塚先輩が警戒しつつドアを開ける。
すると…。
「ここは…?」
「何の施設だろう?」
私と猪塚先輩は首を傾げた。
目の前には廊下しかなく、足元には赤い絨毯が敷かれている。
「お屋敷かな?」
「お屋敷、と言うか城と言う感じがしませんか?」
「あぁ、確かに」
もっと言うなら、西洋のお城…しかも魔女の城みたいな感じ。
廊下には明かりがあるが、見る限り蝋燭っぽいんだよね。
「とにかく進みましょう。でないと判断出来ないですし」
「うん。そうだね。そうしよう」
猪塚先輩と私は走りだす。
途中ドアがあり開くかどうか確かめたけれど、鍵がかかっていた。
そんな鍵がかかっているドアの一つを蹴破ってみたけど、中はただの客間の様で。
ベッドと本があるだけだった。
なので私達は道なりに出口を探して走る事にした。
一応かなり慎重に進んでいたつもりだ。
つもりだったんだけど、どうやら私達は行き止まりについてしまったらしい。
「あちゃー。こっちじゃなかったのね。戻ろう猪塚先輩」
「そうですね。…この城はどうやら内装の違いがほぼ無いようです。目印置いて行きましょう」
「あ、いいね、それ」
猪塚先輩は付けていたネクタイのタイピンを外して、床の角に置いた。
よし、引き返そう。
足を引き戻そうとした瞬間。
―――ゴゴゴゴゴッ。
「ふみっ!?」
「うわっ!?」
地面が揺れたと思ったら、左右上下から石壁が現れて来た道を塞いでしまったっ!?
「えっ!?嘘でしょうっ!?罠っ!?」
「ですが、作動するようなものは何もっ!」
「だよねっ!?」
閉じ込められたっ。まさか、毒とか撒かれたりっ!?
どうしようっ!!
兎に角どこかに穴が無いか探さなきゃっ!
周囲に意識を向けた瞬間、―――アナウンスが響いた。
『ステージ1 ゲーム開始します』
「「……はい?」」
私と猪塚先輩の間抜けな声が重なった。
耳元で声がして、何か体が揺さぶられてる…?
ってか、ゆっさゆっさ思い切り揺さぶられて、ちょっ、気持ち悪ぃ…。
やめっ、揺らすな。
「白鳥さんっ!白鳥さぁぁぁんっ!!」
「だああああっ!!やかましい上に気持ち悪いからやめぇいっ!!」
叫びながら目を抉じ開けて勢いよく置き上がると目の前にある顔に全力頭突き。
ゴンッ!!
とすんばらしい音が聞こえた。
折角目開いたのに、痛みで再び閉じる事になるとは…。
「白鳥さんっ!無事だったんじゃねぇかっ!」
「~っつー…。相変わらず石頭ですね、猪塚先輩。なんでそんなケロッとしてるんです?それと言葉遣い。戻ってますよ」
「あっ…。色々とごめんなさい」
「いえ、いいんですけどね」
デコを擦りつつ私はやっと開けたけど、痛みで涙に滲んだ視界で周囲を確かめた。
「…ここは?」
「解らねぇ。気付いたらここにいた」
猪塚先輩もどうやら動揺してるみたいだね。言葉遣いがおかしい。
「猪塚先輩。落ち着いて。で詳しく説明して」
「『ご、ごめんなさい。えっと…』」
「イタリア語で構いませんよ。今は私しかいませんし」
「いや。それは止めた方が良いです。外に、イタリア語を話す人がいました」
「そうなんですか?」
「はい。油断はしない方が良さそうです」
厳しい目を外に向ける猪塚先輩の姿越しに私もそちらへ視線を向ける。
すると、どうやらここは檻で、鉄格子の向うには誰か警備員のような格好をした男性が立っているのが分かる。
「成程…。窓はあるのかな?」
「ありませんね。僕が見た限りは、ですが」
私も周囲を見るけれど、確かに…ないね。
ピチョンッ。
「ん…?」
私の頬に滴が落ちて来た。雨漏り?
天井を見上げようとして、気付いた。
どうやら雨漏りではなく、猪塚先輩の髪から滴ったみたいだ。
「猪塚先輩。どうして、濡れて…」
「あぁ、それは、あのヘリから落ちて行く白鳥さんを見て、助けなければとパラシュートを持って飛び降りて、あの訳が解らないクローンから白鳥さんを奪い返したまでは良かったんですが。パラシュートが風に流されて海に落ちたので」
「そうなんですか?…助けてくれてありがとうございます。猪塚先輩」
言われてみたら、私が寒くないのは猪塚先輩が着ていたスーツのジャケットを私に着せてくれていたからだ。
「ごめんなさい。寒かったでしょう?」
「大丈夫。この位寒くなんてありませんよ。それよりも白鳥さんはもっと暖かくしていてください」
相変わらず猪塚先輩は、紳士だ。目つきの悪さをも補える程だ。うんうん。
一先ず、猪塚先輩の優しさだからこれはこのまま着て置こう。その方が猪塚先輩がいざ寒くなった時に温かいまま渡せるし。
猪塚先輩に退いて貰って、私は猪塚先輩のジャケットを羽織った。
「ふみみ?やっぱり少し大きいですね。ダボダボだ」
「プライスレスッ!!」
ダダンッ!
唐突に前かがみになって床を叩いた猪塚先輩から湯気が出てる。
「猪塚先輩、大丈夫ですか?」
熱上がってたり…?
心配になって訊ねてみたものの、ふおおおおおっと何やら荒ぶってらっしゃるので取りあえず放置の方向で。
「あれ?そう言えば猪塚先輩?」
「何でしょう?白鳥さん」
「流石の切り替えだわ。っと、そうじゃなく、猪塚先輩も気付いたらここに居たって言ってませんでした?」
「言いました。海に落ちた後、幸い近くに陸があったので意識を失った白鳥さんを担いで上がって。意識が無かった白鳥さんに必死で呼びかけていたら、後ろ頭に強い衝撃が走って」
「ふみっ!?叩かれたのっ!?ちょっと見せてっ」
それを早く言ってよっ!
私は急いで猪塚先輩の後ろに回って後頭部を確かめた。そう言えばさっきも頭突きしちゃったじゃんっ!
ついでにデコもしっかり調べよう。
「あ、大丈夫です。特に傷も違和感もないので」
「頭は血が出ない方が危ないって言うじゃないっ」
「大丈夫です。僕は石頭なので」
少し笑いを含んだ声に、少し安堵するもののここを出たらすぐに検査させようと私は強く決めた。
「それよりも…どうしますか?白鳥さん」
言いながら猪塚先輩は外を見る。
「逃げますか?様子を見ますか?」
「見張りは何人?」
「僕が知る限り左右に二人です」
「二人…。勿論男性なんだよね」
「そうですね」
猪塚先輩から私は距離を取りつつ、もう一度この場所を見回した。完全に見た目は牢屋だね。
しかも、コンクリートじゃなくて石で出来てる昔ながらの牢だ。
手枷足枷を嵌める様に端の方に鎖と枷があるけど、私達に嵌めていない所を見ると今は気にする必要はない。
一応武器に出来ないか、確かめてみようか。
足音を立てないようにこっそりと近づいて、鎖を手に持ち引っ張って見る。
……ん?これ、外せそうじゃない?
鎖に力を込めて、いっせーのっ、でっ!
ガコンッ!
「あ、外れた」
武器ゲット~。
やっぱり腕や足を拘束する為の物だから二つある。
もう一個も取り外せたので、それを持って他を見る。ベッドとかトイレとか最低限の物も無い。
これは、一時的にここに閉じ込めとくつもりだったのかな?
だとしたら、逃げるには今がチャンスでもあるよね?
ここが何処だか解らないけど、皆から遠ざかる訳にもいかないし。
猪塚先輩の所にこそこそと戻り私は手に入れた鎖を手渡した。
「これは…?」
「鎖」
「それは見て解ります。これをどうし…はっ!もしかしてっ」
おお、解ってくれた。
私は大きく頷く。それに猪塚先輩も顔を赤らめながら大きく頷く。
ん?何故顔を赤らめる?
「白鳥さんが望んでくれるなら喜んでっ!さあ、僕を縛って下さいっ!」
「なんでやねーんっ!!」
思わず全力で突っ込んでしまった。
外の見張りがビクゥッ!と肩を上げたのがここからでも解ってしまったじゃないかっ!!
「冗談ですよ」
嘘だ。絶対本気だった。だって、今顔がしょんぼりしてるものっ!
顔文字のしょぼーんと同じだもんっ!
じーっと私が疑わしい目線を送りつつ、少しずつ遠ざかっていると猪塚先輩はごほんっと咳をして改めて自分の手に渡された鎖を見た。
「これで見張りを狙いますか?」
「見張りを狙うと言うよりは、恐らく見張りはある程度すると私達にご飯を届けに来るだろうから、そこをこうっ」
バチコンッと一撃喰らわせて意識を失ったタイミングで鎖で縛り上げる。
と私はジェスチャーで説明した。
「……プライスレスッ!」
「いやいや。人の話聞いてますか?猪塚先輩」
しかも何がプライスレス?本日二回目なんですけど。
とにかくカムバック。猪塚先輩。
いちいち地面を叩きつけないで。話が進まないの。
「…解りました」
「ふみ?何が?」
「え?ご飯を届けに来るタイミングで」
キョトンとしながらも猪塚先輩はジェスチャーで見張りを指さしてから鎖を持ちあげた。
ちゃんと聞いてたんじゃないかーい。
私は通じていた事にホッとして、しかも猪塚先輩が問題なさそうなので安心感から笑顔で頷いた。
「プライスレ」
「それはもういいから」
じゃあ、少し待とうかな。
作戦決行まで私と猪塚先輩は体力を温存する事にした。
……ってカッコよく言ってみたものの、目を覚ましたのはどうやらお昼だったみたいで。
その時は直ぐに訪れた。
『お前達。飯の時間だ』
牢が開いて、そこに見張りが鍵を外しピザを片手に入って来た。
猪塚先輩が動いた。
見張り…仮に右に立っていた人を見張りA、左に立っていた人を見張りBとして。Aが中に入って来たんだけど、猪塚先輩の見事な一撃に意識を飛ばした。
おお、流石。
それに気付いた見張りBも中に入って来たが、それも猪塚先輩はあっさりと倒して、二人を鎖でグルグル巻きにして縛り上げてしまった。
「凄いねっ、猪塚先輩っ」
怪我一つもせずに二人共伸せるなんてっ。
「ハハッ。こんなの棗先輩のしごきに比べたらなんてことないですよ」
「そうなの?」
「はいっ」
確かに棗お兄ちゃんと毎日バトルってた気もするけど、そんなに鍛え上げられてたのかぁ、そうかぁ。
「さぁ、逃げましょうか。白鳥さん」
「あ、ちょっと待って。このピザは食べて行こう」
「え?ですが、もし何か入っていたら」
「大丈夫。それはないよ。もし致命傷になるような毒を入れる位なら私達はそもそも生きてここに入れられてないし。もしどちらか片方の命だけ奪おうとするならピザは二枚用意されるはず。睡眠薬や何かを入れるのであれば何か目的があってだろうけど」
「目的?」
「そう。例えばここから更に他の場所に移動させる為、とか、何か弱みを握る為、とかね。でもそれならば今じゃないよね。私達が目を覚ましているのは見張りは気付いていたと思うの。そして今は昼。ここが何処かは解らないけど、万が一私達がその薬に寄って異常が出た場合日が高い内は周りにバレる場合がある。大抵は昼を避けて夜に実行するモノよ」
「…成程」
「と言う訳で腹が減っては戦は出来ないんだから、食べよう。はい、猪塚先輩」
六等分されているピザの六分の一を取って、猪塚先輩に向かって渡した。
「…え?」
「口、開けて。チーズが落ちちゃう」
私が急かすように言うと、猪塚先輩は目をギュッと閉じて口を開けた。
何故目を閉じる?
まぁ、いいや。猪塚先輩の口の中にムギュッとピザを詰めて、私も自分自身の分を取り口に入れる。
「……死んでも良い…。白鳥さんからあーんって…」
何か天井に向かって呟いてる。大丈夫?猪塚先輩。
「先輩。早く飲みこんで。はい、次」
椀子蕎麦よろしく、猪塚先輩が飲みこんだのを見計らって次を口に入れる。
私は1ピースで十分だけど、猪塚先輩は足りないだろうから。
先輩がお腹いっぱいになるまで口に突っ込んで、全部亡くなったのを確認してから私と猪塚先輩は牢を出た。
猪塚先輩がしっかりと見張りから鍵を奪っといてくれたから、牢の外からしっかりと鍵をかけて、と。
鍵は複数あったけどちゃんと牢番号とか書いてあったから直ぐに分かったし、なんなら逆に牢の鍵しかなかったから手が届かなそうな場所に使い終わった鍵はポイした。
私と猪塚先輩は走る。
勿論出口に向かってである。
何処に出口があるのかなー?
解らないけど、まぁ、こう言う場所は大抵見張りの都合上出入り口は一つだしね。
辺りに気を付けながら、先導してくれる猪塚先輩の後ろを付かず離れずで走る。
「っ!、白鳥さん、隠れて」
石廊下の突き当りT字路の所で猪塚先輩が言うので、私は慌てて猪塚先輩の影に隠れる。
壁を背に猪塚先輩と並んで様子を探る。
「……って……だろ…。……せぇ……金は……」
どうやら出口はあっちみたいだ。
「まずは僕があの人達をどうにかしてきますから、少し待っていて下さい。後ろから誰も来ない限りはここを動かないで下さいね」
小声で言われた事はもっともな事だから私はしっかりと頷く。
足手まといになってはいけないからねっ!
私が頷いたから、猪塚先輩も安心したのか頷いて、すぐに戦闘モードの表情に変わった。
相変わらず悪人度が高い顔だけど、こう言う時は頼もしく感じるよね。
猪塚先輩はタイミングをはかり、飛び出して行った。
「てめぇっ!!何で逃げて来られたんだっ!?」
「おいっ!!応援を呼べっ!!」
「わ、分かったっ!!ぐあっ!!」
怒号が飛び合う中、それはあっという間に悲鳴に変わり、更にあっと言うまで静寂に変わった。
戻ってくる足音が聞こえて、猪塚先輩は涼しい顔で私の前に立った。
「おかえりなさい。猪塚先輩。怪我はない?」
「……ないですっ。……可愛いっ」
「ふみ?猪塚先輩?何処か痛い?」
「白鳥さんが可愛過ぎて、心臓が痛いっ!!」
「ごめん。その病多分私理解出来ないから治せないや…」
遠い目をするしかない。
…違うな。放置してたら駄目な奴だ。
今は脱出。先に進むのが吉。
ふるふる震えている猪塚先輩の背後を覗き込むと、その奥には数人のガタイの良い男性が数人ロープで縛られていた。
「恐らくあの場にいる人間はあれだけだと思います。さぁ、行きましょう。白鳥さん。白鳥さんは僕が絶対に助けてみせますからっ」
「……うん。ありがとう、猪塚先輩」
笑うと、猪塚先輩はまた崩れ落ちて地面を叩いた。
うん。助けてくれるのは良いんだけど、笑う度にそれをされるとタイムロスなんじゃないかな~…?
と思ったり思わなかったりしたけれど。
「さぁ、行きましょうっ」
立ち直りも早いようなので良い事にして、私と猪塚先輩は出入り口へと向かった。
ドアを開けると、そこには石階段。
どうやら私達は地下牢に閉じ込められていたらしい。
階段を駆け上ると、再びドアがあり猪塚先輩が警戒しつつドアを開ける。
すると…。
「ここは…?」
「何の施設だろう?」
私と猪塚先輩は首を傾げた。
目の前には廊下しかなく、足元には赤い絨毯が敷かれている。
「お屋敷かな?」
「お屋敷、と言うか城と言う感じがしませんか?」
「あぁ、確かに」
もっと言うなら、西洋のお城…しかも魔女の城みたいな感じ。
廊下には明かりがあるが、見る限り蝋燭っぽいんだよね。
「とにかく進みましょう。でないと判断出来ないですし」
「うん。そうだね。そうしよう」
猪塚先輩と私は走りだす。
途中ドアがあり開くかどうか確かめたけれど、鍵がかかっていた。
そんな鍵がかかっているドアの一つを蹴破ってみたけど、中はただの客間の様で。
ベッドと本があるだけだった。
なので私達は道なりに出口を探して走る事にした。
一応かなり慎重に進んでいたつもりだ。
つもりだったんだけど、どうやら私達は行き止まりについてしまったらしい。
「あちゃー。こっちじゃなかったのね。戻ろう猪塚先輩」
「そうですね。…この城はどうやら内装の違いがほぼ無いようです。目印置いて行きましょう」
「あ、いいね、それ」
猪塚先輩は付けていたネクタイのタイピンを外して、床の角に置いた。
よし、引き返そう。
足を引き戻そうとした瞬間。
―――ゴゴゴゴゴッ。
「ふみっ!?」
「うわっ!?」
地面が揺れたと思ったら、左右上下から石壁が現れて来た道を塞いでしまったっ!?
「えっ!?嘘でしょうっ!?罠っ!?」
「ですが、作動するようなものは何もっ!」
「だよねっ!?」
閉じ込められたっ。まさか、毒とか撒かれたりっ!?
どうしようっ!!
兎に角どこかに穴が無いか探さなきゃっ!
周囲に意識を向けた瞬間、―――アナウンスが響いた。
『ステージ1 ゲーム開始します』
「「……はい?」」
私と猪塚先輩の間抜けな声が重なった。
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