上 下
289 / 359
最終章 数多の未来への選択編

※※※(樹視点)

しおりを挟む
美鈴が沸かしてくれたお湯でカップラーメンを作り食べ終えた。
しかし、盲点だった。箸を持ってくるのを忘れてたと言う…。割り箸は自販機室にあったのは覚えてたんだが。あったのに持ってくるのを忘れると言う…。情けなさのあまりつい二回言ってしまった。
俺の監禁されていた部屋にガラス棒があったからそれを良く洗って箸として使ったが…明日、外へ行ったら持って来よう。絶対。水を無駄に使ってしまったしな。
美鈴は気にしてないってケロッと使っていたが、あいつのそう言う所、ホントに…。
思わず遠い目になる。
「ふみみ~…?」
美鈴の声がしてハッと我に返る。
そもそもアイツはあのパソコンで何してるんだ?
…背後に回るのは、怖がるだろうから。俺は美鈴がちゃんと気配を察知出来る位置から移動して美鈴の隣に座ってパソコン画面を覗き込む。
「…数字パス?」
「そなの。恐らく、3の位置は確定。残りは多分2、5、7、9のどれかが入るんだと思うの」
美鈴が適当に数字をはめ込んでいくが、どうにも一致しないらしい。…考えすぎなんじゃないのか?
俺は手を伸ばして、キーボードを叩く。3は確定って言ってたな。なら順番に、2、5、3、7、9でどうだ?
【MISSION CLEAR】
「ふみっ!?」
「やっぱりな。ごちゃごちゃ考え過ぎなんだよ、お前」
「うぅー、反論しようがないー」
ふみふみ泣きながら美鈴はキーボードを叩く。
それを横から覗き込むと、そこにはこの黒い箱が映っていた。多分その画面に今切り替わったんだろう。美鈴もキーボードを叩く手を止めて首を傾げていた。
「これ、なんだろー?」
「箱、だよな?良く見ると12個の丸い窪みが無いか?」
パソコンに手を伸ばしてその箱の角度を変えて確かめると、やっぱり12個の窪みがある。それもどうやら深さは無くまるでコインが一枚入りそうな…うん?
「もしかして、これか?」
「っぽいね。メダルをはめる為の箱かも」
「…だが画面の中だぞ?」
「さっきみたいにMISSIONをクリアするとパソコン内でゲット出来るか、それともこの箱が何処かに実在するか。どっちだろう?」
「俺達はまだ行ってない階があるからな。もしかしたらそこにあるかもしれない」
「うん。その可能性もあるよね」
「この中のデータには、他に何かありそうか?」
「んー…探れる限り探ってるけど、どうも怪しいなぁ。特になさそう」
『そうだろうなぁ。何せ、このパソコンは私の生み出したクローンの育成キットに過ぎないからな』
「っ!?」
唐突に声がして、俺は咄嗟に美鈴の手を引いて腕の中に庇う。
突然パソコンの画面が砂嵐状態になり、画面が切り替わった。そこにはさっき俺が見た都貴静流の父親、都貴社長がいた。
『今日はいつも以上にミッションをクリアするスピードが速く、久しぶりに優良種が出たかと喜んでいたんだが。君達が解いていたとは気付かなんだ』
「(………どうして?ここには電波が届いていない筈なのに…)」
美鈴が小さな声で呟く。電波が届いていない?だが、俺はさっきもこいつらの会話を見たぞ?どう言う事だ?
『ふむ。…もしかして邪魔をしてしまったかな?なに。こちらのことは気にせず続けるがいい。そなた達の子が出来るのはこちらとしても望ましい』
カチ…。
『そなた達の子が私の子(クローン)達とまた子を作れば最高の頭脳を持った子が出来るに違いないっ!』
カチカチカチ…。
振動と何かが小さくぶつかる音がする。
俺の腕の中で美鈴が俺の服をぎゅっと握った。
コイツが…美鈴が俺にこんな風に縋るなんて…初めてだ。それだけの恐怖が今美鈴の中にあるんだろう。
表面上はパソコン画面を睨み気丈に振る舞っていても、男性恐怖症の美鈴にしてみたら恐怖以外の何者でもない。
まして、今は美鈴を癒し守り通せる家族がいない。いるのは何のあてにもならない俺と敵であるこいつらのみ。
怖がるなって方が無理だ。
美鈴が今の今まで気を張って何とか平常心を保っていたのだと、俺は『今』やっと気付いたんだ。
その事実に腹が立った。
美鈴をきつく抱きしめ、目の前の野郎を睨みつけた。
「それで?俺の大事な妻をこんな風に怖がらせてどうなるか、解った上でやってんだろうな?」
『はっ!閉じ込められてる分際でよくもそこまで言えるなぁ。樹龍也坊ちゃんよ』
「……その声。都貴静流か」
『睨むなよ。こう見えて俺、アンタの事結構気に入ってんだからさ』
「……何言ってやがる」
『言葉通りさ』
画面に映る自分の親父を押し退けて、都貴静流は画面の向うで嫌味ったらしく椅子に座りこっちを見た。
『何でかな。昔から俺、アンタの事嫌いになれないんだよね。何処か似た所があるからかな?だから、白鳥さんの最初を譲っても良いって思えてるんだよね』
「何の冗談だ。俺が何も知らないとでも思ってるのか?お前はさっき俺の手垢がついた女になるとそう嫌悪していただろう」
『あれ?聞いてたんだ?ハハッ。あれはちょっとした冗談だよ。だってそうでも言わないと悔しいじゃないか。俺はそこの美人で清らかな女を真っ先に汚せると思ったのに、二番手になるんだぜ?でもちゃんと考えたんだ。樹龍也坊ちゃんの次ならまぁいいかってな』
「(………ゃ…ぃや…)」
ハッと腕の中を見ると美鈴の顔が真っ青になっていく。これ以上聞かせたら駄目だっ。腕で美鈴の頭を覆い耳を塞ぐ。
『だーかーらー。さっさとその女抱いてこっちに寄越せよ。樹龍也坊ちゃん。二番煎じでも我慢してやるって言ってんだからよ』
「ふざけるなっ。てめぇはそこらの女でも抱いとけっ。美鈴は俺の妻だっ」
『つ~ま~?妻ねぇ?政略結婚で?しかも滅茶苦茶嫌われてるのに?それこそ冗談だろ』
「―――ッ!!」
痛い所を突かれた気がした。
政略結婚でしかも嫌われている。今更な事なのにこんなにもショックを受けている自分にまた衝撃を受けた。
『大体、龍也坊ちゃんは本当にそこにいる女、好きなの?』
「……どう言う意味だ」
『俺が見る限り、アンタのそれは執着だろ。後はプライドか?ちやほやされてきて初めて逆らってきた女、敵わない女に一矢報いたい、ただそれだけだ。それを恋慕と勘違いしてるだけだろ。ハッ、面白すぎて腹が捩れるぜ』
「……だとしても、少なくとも、お前みたいに頭すっからかんの馬鹿に抱かれる方より俺の方が余程マシだと思うがな」
『なんだと?』
「もう一度言って欲しいのか?頭の中が空っぽだって認める様なもんだな」
『お前…っ』
ギリッと睨み合う。
だが、そこに嫌な横やりが入った。
『いい加減にしなさい、静流。一々下らない挑発の売り買いをするな』
『あー、はいはい。じゃあ、俺は龍也坊ちゃんの御下がりを楽しみにしながら、樹財閥の乗っ取りに精を出しましょうかねー。それじゃあ、精々励んでくれよ?樹龍也坊ちゃん』
ニタリッと気味の悪い笑みを残し映像は切られた。
くそっ。言われっ放しかよ。
「………ぅっ……」
小さな呻きが聞こえ、腕の中に視線を戻すと涙目の美鈴が俺を見上げていた。
「…大丈夫か?」
美鈴は震えたままでコクコクと頷く。
俺の胸を軽く押して離せと態度で示されたので大人しく腕から力を緩めると美鈴はよろよろと俺の側から抜け出した。
だが、数歩四つん這いで進み、ベッドの上だったことを忘れていたのか、それともそれすら考えられないくらい限界に来ていたのか、美鈴はベッドから落下した。
慌てて駆け寄り美鈴の腕を掴み引っ張り上げようとした。だが―――。

「いやあああっ!!」

叫ばれて、俺はビクリと体を跳ねさせた。
同時に美鈴に手を跳ね付けられる。
痛みはなかった。ただ、驚きだけが胸に残る。
「おい、美鈴…?」
声をかけると、我に返った美鈴が小さな声で「ごめん」と呟き俯いた。
自分を守る様に体を抱きしめて、小さく小さくなる美鈴に俺はどうしていいか解らなくなる。
抱き締めてやりたい。
だが、それをすると美鈴は怯えるだろう。
白鳥の長兄のように全てを理解している訳じゃない。棗のように癒しを与えてやれる訳でもない。葵の様に行動をしてやれる訳でもない。
俺は、惚れた女に何一つも与える事が出来ないのか。

『アンタのそれは執着だろ』

執着…。

『後はプライドか?』

プライド…。

『敵わない女に一矢報いたい、ただそれだけだ』

違うっ!!
………本当に?
違うと思うならどうして俺はそれを声に出して叫べなかった?
あの時、俺は話を逸らし真っ向から否定をしないで、ただ逃げた。
「……樹、先輩?」
美鈴の不安そうな声が耳に届く。
「樹先輩」
今度はハッキリと名を呼ばれる。
だが、今の俺は口を開くと…情けない事を言いそうで。
泣き言を言って、美鈴に八つ当たりをしそうで…答えられなかった。
「樹、先輩。…ごめん、ね。守って、くれたのに…」
未だに震えてる癖に美鈴は俺の事を心配して、手に触れてくれようとしている。
何、やってんだ…。
女で、男が怖くて、たった今も怖くて仕方ない癖に、俺を心配している、心配してくれてる奴に、どうして同じ心配をしてやれないっ?

「触るなっ!」

どうして、こんな言葉が出てくる?

「俺の事より自分の心配をしろっ!」

なんで優しく声をかけられない?

「………っ。何で、何で俺はお前と出会ったんだ…っ。お前がいなければ俺はこんな風には絶対にならなかったっ。俺は完璧でいられた筈なんだっ」

いらない言葉ばかり出てくる。だが止められない。
きっとこれが俺の心からの本音だからだ…。

―――悔しい。

あいつの言っていた事は全て当たっている。
きっと俺は美鈴に恋をしている訳じゃない。
俺はずっと美鈴に憧れて来たんだ。

その完璧さに。

その暖かさに。

その清らかさに。

俺が決して得られない物を、努力してでしか得られない物を、美鈴は全て持っていたから。
だから焦がれた。欲した。

焦がれて。

求めて。

拒絶されて。

それでもまた求めて。

美鈴を手に入れさえすれば、俺の足りない部分を補えると、そう心の何処かで思っていたんだ。
「ガキ、丸出しじゃねぇかっ…情けないっ…」
知らず目が潤む。
それでもせめてもの矜持として、涙だけは流すまいと俺は俯いた。泣き顔だけは見せてたまるかと、グッと歯を食いしばる。
「樹先輩…」
美鈴がふらりと立ち上がり、俺の目の前に立った。
「…ッ、触るなっ。こんな状況で慰められたら、俺は、もう俺が…」

―――許せなくなる。

こんな弱い自分はいらない。
俺は強くありたいんだ。
だが美鈴は手を伸ばした。俺の頬に向かって。
あぁ、やっぱり美鈴は…葵の言うように清らかな存在なんだろう。
だから、俺は手を伸ばしてはいけなかったんだ。
美鈴の慰めを…受け入れよう。
そう思って顔を上げた、次の瞬間。

「くらえーいっ!!」

ガツンッ!!

「んぐっ!?」

一瞬何が起きたか解らなかった。
左頬がじんじんと痛みを訴えだして、しかも

「痛いじゃないっ!樹先輩っ!どうしてくれるのっ!?」

と美鈴が右拳を擦りながら文句を言ってくるから、そこでやっと俺は殴られた事に気付いた。
……は?
殴られた事は解ったが、何で殴られたのかが解らない。
そして何で俺が逆切れされてんだっ?
「はぁぁっ!?何で今俺が殴られたんだっ!?」
「決まってるじゃないっ!樹先輩が鬱陶しかったからよっ!ドヤッ!」
「いや、ドヤッじゃねぇわっ!胸張ってんじゃねぇっ!手を差し伸べた上に弾かれてしかも殴られるって何だそれっ!?」
「確かにっ!私最低じゃねっ!?」
「解ってんのかよっ!!確信犯質悪ぃなっ!!」
「仕方ないじゃないっ!!樹先輩が鬱陶しいんだものっ!!」
「悪かったなっ!!ここから脱出出来たら、もうお前には絡まねぇよっ!!離婚届だって直ぐ書いてやらぁっ!!その後に俺はもうお前の前に現れないっ!!これで満足だろうっ!?」
「……え…?」
美鈴の大きな目が更に驚きに見開かれて、そんな反応を返された事に俺も驚き言葉を失う。
「現れない、って、何で…?」
「…何でって、お前はいつも俺の事を嫌いだ嫌いだって言ってただろうが。むしろ逆に聞きたい。お前こそなんで驚いている?」
何でそんな泣きそうな顔してる?とは聞けなかった。
俺も美鈴も意地っ張りだから。
余計な言葉をかけると本音を話せなくなってしまう。
「……樹先輩の事は、嫌い…。だけど、…側にいないのも、やだ」
ぽそぽそと小さい、本当に小さい声で呟いた美鈴の言葉。
けど俺の耳にはしっかりと届いていた。
美鈴の可愛い本音が。
「美鈴…お前…」
「……うぅっ…。だ、大体っ、樹先輩より私が大人なのは当然なんですぅーっ!!」
「はぁ?どう言う意味だ?」
「あっ…」
しまった、とでも言いたげだな。
だが、その表情はすぐに引っ込ませ、それはそれは胡散臭い笑みを浮かべて「内緒」と唇に人差し指をよせた。
……あざとい奴め。
「と、兎に角っ。今は脱出っ!ここから脱出する事が優先っ!!脱出した後の事はそれから考えるっ!!それから」
「…それから?」
「…感情の生まれ方ってのは、一つじゃないよ。樹先輩。どこからでもどんな形でも自分が認めた感情に言葉を当てはめた瞬間に、それは自分が作った自分だけの感情になるんだよ」
感情の生まれ方は一つじゃない。
例えそれが執着から、プライドから生まれた感情だったとしても、その感情に俺が【恋】だと当て嵌めた瞬間に、それは俺が作り上げた俺だけの【恋】になる。
俺が、この感情を恋と言うなら、誰から何を言われようと俺は美鈴に【恋】をしていると。
ストンと、都貴に逆撫でられた心が元の形に収まった気がした。
「さぁ、樹先輩。一先ず明日の行動に備えて作戦会議しようっ」
「あぁ。そうだな」
俺は美鈴を抱きしめつつ大きく頷いた。
数秒後、「抱っこ、やーっ!!」と弾き飛ばされたが、それすらも俺は何故か嬉しくなった。


しおりを挟む
感想 1,230

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

【完結】死がふたりを分かつとも

杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」  私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。  ああ、やった。  とうとうやり遂げた。  これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。  私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。 自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。 彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。 それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。 やれるかどうか何とも言えない。 だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。 だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺! ◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。 詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。 ◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。 1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。 ◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます! ◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。

逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ

朝霞 花純@電子書籍化決定
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。 理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。 逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。 エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

処理中です...