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最終章 数多の未来への選択編
第三十三話 龍の恋は流される?彼と彼女の脱出劇!
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……ふかふか~…。
良い感じのスプリングが効いてる。高級なベッドに寝てるみたい。
シーツも良い匂いがするし~…もう一眠りしても良いくらいだよ~…。
ふみ~……って、ダメでしょ、私。
何寝こけてるの?
思い出せ、私。どうしてベットの上にいるの?
だって、落下したんだよ?
急激に下降し出したヘリコプターから。普通に考えてベッドにいるのは可笑しいでしょう?
あまりのふかふかベッド具合に騙されるところだった。
目をゆっくりと開くと、全然見覚えのない天井があった。
はーい、自宅や夢じゃない事確定ー。
キョロキョロと視線を動かすと、立派なシャンデリアにふっかふかの絨毯。超高級らしきベッドに高そうなクローゼットに小さいけれど洗練されたデザインの猫足テーブル。テーブルの上には割ったら絶対弁償させられそうなティーカップセット。
見る限りはそんな感じ。もう少しきちんと見てみよう。
手を付いて起き上が、カシャン。
……カシャン?
え?何の音?
起き上がって、両手を確認する。
何もついてないね。
じゃあ頭?…特に何も感じない。
となると残るは…?
そっとかけられていた毛布を剥いで足を確認すると、右足に枷がついていて枷から伸びた鎖は床へと続いている。
「……試しに引っ張ってみる?」
鎖を握って、えいやっ!
ガツンッ。
案の定何かに繋がれている。勢いよく引っ張ったからじんわりと手が痺れた。
「ん。無理っ!」
キリッと断言。…何してるの、私。
えー?これどうなってるのー?
ベットの上で立ち上がってみると、鎖は結構長く部屋の中を隅々まで歩く事は可能そうだ。
そもそもここ何処ー?
そうだ。ベッドの上にいた訳だしっ。自分の服装っ…あ、良かった。どこも違和感ない。
ホテルにいた時のまま、Tシャツにロールアップのデニムのままだ。
「ふみみ…?」
ひとまずベッドを降りて、辺りを探索する事にした。
まず一番に確かめるのは、ドア、だよね。
外に出れるかどうかは大事。
えっと、ドア…ドア…、あっ、はっけーんっ。
駆け寄ってドアノブを回す。
うん。トイレだ。
バスもセットのタイプだね。
出口ではなかった、と。
え?もしかして…もしかしなくても私監禁されてる?
………いやいや。ちょっと待って。すぐそう考えるのは早計過ぎるよね。
もっと他にドアは…あ、あるわ。
そちらにも駆け寄って
こっちのドアノブを…うんっ、開かないよねっ!分かってたっ!
鍵、かかってるんだろうな。
上と…下にもついてる。
………さて、どうしよう。
ヘリから落下して、あの後どうなったんだっけ?
棗お兄ちゃんの手を掴み損ねて、あの気持ち悪い溶けかけのクローンと一緒に落下したんだよね?
体に傷らしき傷はないし…どうやって着地したのか解らないけど、意識失った私はそのまま拉致監禁ってことであってるよね?
脱出経路出来そうな…窓でも覗いてみる?
窓に駆け寄り、窓を開ける…は流石にちょっと何かあったら怖いから、ガラス越しに外を覗く。
あわよくば逃げられたり…?
微かな希望を込めて窓の外を覗いて、
「わーお」
思わず出たのが何とも気の抜けた声だった。
いやー…まずここが何階かは解らないけど思ってたよりずっと上層階にいる事は解った。
ついでに、下の方を目を凝らしてみると、私と一緒にヘリを落ちたのと同じようなクローンが徘徊している。
私こんなの見た事あるー。
ほら、銃を持ってゾンビと戦うあれみたいな…。
「……もう、ホラーゲームじゃんっ!」
どないせいっちゅうのよっ!
どちらにせよ、窓の外から脱出案は消えた。例え下に奴らがいなくても普通に落下して死ぬわ。
ふみー?
これ、私詰んでね?
…………いやいや、待たれよ、私。色々困惑し過ぎて日本語まで怪しくなってる。ちょっと落ち着いて考えよう。
まず、私が落下した事はお兄ちゃん達は分かっているわよね?って事は、きっと私を今も探してくれている筈。何かあっても発見されないって事はないと信じても良いよね。
で、次に。
私は今何処にいるか、なんだけど…。
……この部屋を見る限り、日本じゃなさそうだけどなぁ…。
まるでどっかの西洋城の一室みたいな?………ラブホじゃ、ないよね?ラブホだったら私発狂するよ?
ふみ~ん…。
どうしよう。
一人だとやれる事、限られてるよね。
味方がいてくれたらいいんだけど、拉致監禁の状況でそんな幸運な事あるとも思えないし…。
外に男がいたとしたら、私は下手に動かずここで助けを求めた方が安全の可能性もあるし、逆に、狙いによってはここにいると男がわんさか来て危険な可能性もあるし、何かの実験に使われたり、それこそクローンの群れってことはそれに関する、『SPICA』の連中が私の知識を狙って何かしでかすかもしれない。
「と、なると…逃げた方が利点は多いかな?ついでに味方を探せるともっといいんだけど…」
味方って言えば、すっかり記憶から抜け落ちてたけど。
私達の乗っていたヘリとは別の、優兎くん達が乗っていたヘリも落ちてた気がする。
と言う事はあっちの三人も狙われてたって事で、ここに連れて来られてる可能性もあるんじゃない?
味方がいる可能性は高いかも。
例えば隣の部屋とかにいてくれたり、とか?
…そもそも隣の部屋なんてあるのかな?
まずはそこからだよね。
窓を少ーしだけ開けて、何とか左右を確認する。
右…は私の今いる部屋の窓だね。
じゃあ、左は…窓が無い。
って事は私の部屋が一番端って事だ。右の窓の奥には何もないのかな?
うぅ…見辛い…。
……右の窓に移動しろって事ですね。はい。
まずは今の窓を閉めて、鎖が引っかからないように注意しながら右側の窓をこっそりと開けて右隣りを見る。
あれ?格子戸?窓に格子が付けられてる。
「あれじゃあ、窓からつたって行くのは無理かも」
まぁ、ある意味格子があるから掴みやすいかもしれないけど。外れたり掴み損ねたら真っ逆さまだよねー。
ベランダがあるような窓なら良かったけど、それもないし。
あれ?でも待って?
隣の部屋の窓には鉄格子…要は、何かあるって事だよね?
盗られたくない『物』だったり、逃げ出されたくない『人』だったり。ね?そう言う事だよね?
これは…行くしかないよね?
じーっと隣の部屋を眺め、どっか行けそうな場所はないかと観察していると、唐突に窓を叩く音が聞こえた。
ガンッ、ガンッ、ガンッ!
ガンッ、ガシャンッ!
窓が割れた。
破片が下に落ちて行く。
「ちっ。やっぱり鉄格子は無理かっ。しかもこの部屋こんな高い位置にあるのか。ならこっからの脱走は無理だな。隣の部屋は…んんっ!?」
あれ?この声っ。
「樹先輩っ!?」
「やっぱりその金髪、美鈴かっ!?」
「金髪って、何ですか」
「仕方ないだろ。こっからじゃ髪しか見えねーんだよ」
「鉄格子、ついてますもんね。そこ」
「…お前の部屋にはなさそうだな。でも、無事そうで何よりだ」
「これを無事と言っていいのか解らないですけど、でも、先輩も無事で良かった」
「美鈴。そこに葵達はいるのか?」
「いません。樹先輩こそ、優兎くん達は?」
「いや、いない」
「私と樹先輩だけがここに拉致された?」
「可能性は高いな」
「………どうします?樹先輩。私としては、ここに留まるリスクの方が高そうなのでどうにかして逃げたいんですが」
「俺もだ」
「どうにかして、先輩と合流出来ないかなぁ」
「そうだな。どうにか…どこか繋がってる場所でもあれば…」
「部屋に何かそれらしいものあるかな?ほら、昔みたいなさ」
「昔?あぁ、小学生の時のあの事件の時みたいにか?」
「そうそう。あくまでもここは一つの建物だから、何処か繋がってる場所があるかもしれないし」
「探してみるか」
「うんうん。探索パート開始だねっ」
「探索パート?」
「あ、こっちの話。気にしないで。それじゃあ、私部屋を探ってくるね」
「あぁ。また後でな」
顔を引っ込めて、窓をちゃんと閉めてから、私は改めて部屋をぐるりと見回した。
まず必要なのは紙とペン、かな?
こう言うのは大概ベッドサイドの小棚に入っているよね。
鎖が絡まらないように今歩いた道を戻る様にして、小棚の側へと移動する。
棚の所には案の定メモスタンドとペンが置かれていた。
うん。これに見取り図を書いて行こう。
部屋は全体的に長方形型をしてる。横長の長方形だね。私の起きたベッドは頭の方が右の壁にぴったりとくっついて、尚且つ真ん中にででんと陣取ってる。
んでもって、えっと…鎖が繋がってる床は…あ、ここだ。ベッドの下。ご丁寧に埋め込み式のアンカー使ってるし。太っいアンカーだから手でも道具でもこりゃ無理だ。
で、えっと、そうそうドアがあるね。
一つは右下にあるバストイレのドア。もう一つが恐らく出入り口のドア。
長方形の左下の辺りだね。こっちのドア。もう一度確認してみようかな。
もふもふとした絨毯の上を裸足で歩いて、ドアの前に辿り着く。
念の為にともう一度ドアノブに手をやって回してみるけれどやっぱり開かない。
鍵は上と下に二ヵ所。上の方は南京錠タイプ。下の方はナンバーロックかな?…四桁の数字?
後は?…見当たらない。
他に何かあるかな?…鍵がかかってるし、外に繋がってるのは確かなんだろうけど…念の為に。ドアに耳をピトっとくっ付けて。耳をすます。
…話し声らしき音はしない、な。
見張り、いるのかな?いないのかな?どちらにせよ用心は必要だね。
後は、そう。左上にある窓の側に本棚がある。ここには何の本があるのかな?
ガラス戸を開けて中を見ると、そこにはドイツ語の本がズラーっと並んでいた。
特に目新しい物はなさそう…かな?ガラス戸の下にある引出しには何が入ってるんだろう?…空っぽだ。まぁ、そうだよね。
他にも探ったけれど、特に役に立ちそうな物はなかった。最悪分厚い辞典でガラス戸叩き割って、ガラスを武器にしよう。うん。
左の窓と右の窓の間に鏡台があるけど、それも鏡とヘアーブラシ以外は特に何もなかった。
「え?ちょっと、ブラシだけで髪が整えれるとでも?スプレーも何もなく?セットしろと?無理でしょ」
思わず突っ込み入れたけれど、それ以外なのもないので次に行く。
右の窓の右隣にはクローゼット。
服、何か入ってるかな?
クローゼットを開けると、めっちゃ透け透けのメイド服が一着。
……これは後で切り刻もう。もしくは樹先輩に着せよう。誰が着るかこんなもん。むしろ着替えさせられてなくて良かったわ。
他は?他にはないの?
クローゼットの中にあった小さな棚には下着類が入っている。だから、誰が着るかこんな下着。ショーツに至ってはT字のしかないじゃない。あとで燃やそう。もしくは樹先輩に着せよう。
クローゼットの中もこんなものか。
後は中心にテーブルとティーポットとティーカップだね。
これに関しては飲み物として置いといてくれてるんだろうけど、飲む気にはならないな。
他には…長方形の左側に暖炉があるけど…何かあるかな?
何もない?あ、でも薪は補充されてるな。火種がないけど。どうやって火つけるのよ。
…こんなものかな?
大体全部調べたけど、…特にこれと言って役に立ちそうなのはなかったな。
あ、そうだ。トイレ。
あそこ調べてないよね。
トイレのドアを開けて中を見回す。
トイレットペーパーは二つ。ナプキンは置いてない。生理だったらどうすんねんっ。攫うならそれくらい考慮しとけーっ。
ってのは冗談だとしても、特に変哲もないバストイレだよね…?
ぐるりと見回しても特におかしな所は…うん?
あれ、なんだろう?
天井から何か金色の鎖が伸びてる。
……浴槽の淵に乗れば届くかな?
ちょっと危ないかもだけど、裸足だし…何とか行けるかな?
お風呂の浴槽の淵に乗ろうとして、思い出す。
「いや、あっちのテーブルの所に椅子あったじゃん」
それを持って来たらいいんじゃん?
バストイレを出て椅子を持って戻ってくる。
金の鎖が見える真下に椅子を置いて、慎重にそれに登って鎖を掴んだ。
「?、これどっから出てるの?どう見ても天井に埋まってるようにしか見えない」
一応引っ張って、取ってみる?
「えいっ」
引っ張ったと同時に、
ガコンッ。
何かが開く音がした。しかも、隣から。こっちは特に変化した様子はない。
って事は、場所的に隣、樹先輩のいる場所から音がしたって事だよね?
何か変化があると良いんだけど…。
鎖はどうやら外れるらしく、私はそれを外してまじまじとその鎖を観察した。
鎖って言うかこれ多分ストラップだよね?だって先についてるこれ、『鍵』だよね。鍵を注意深く見ると、そこにはLiと文字があり、その裏面にはマークがあった。
……これ、星座記号かな?二本のラインに上の方の線には凸がある。この記号は天秤座かな?
もしかしてこれって部屋の鍵?
急いでバストイレを抜けて、ドアへと駆け寄って鍵を入れる。
鍵はすんなり入ってくれた。ドアノブの鍵穴に。
「確かにこの部屋の鍵だけど、これじゃあ意味ないのよねー。欲しいのはノブの鍵じゃなくて、上と下の鍵だもんねー…まぁ、でも何かあるかもしれないしこれは取っておこう」
私は鍵をポケットへと入れて、窓へと向かった。
樹先輩の方はどうなってるのかな…?
良い感じのスプリングが効いてる。高級なベッドに寝てるみたい。
シーツも良い匂いがするし~…もう一眠りしても良いくらいだよ~…。
ふみ~……って、ダメでしょ、私。
何寝こけてるの?
思い出せ、私。どうしてベットの上にいるの?
だって、落下したんだよ?
急激に下降し出したヘリコプターから。普通に考えてベッドにいるのは可笑しいでしょう?
あまりのふかふかベッド具合に騙されるところだった。
目をゆっくりと開くと、全然見覚えのない天井があった。
はーい、自宅や夢じゃない事確定ー。
キョロキョロと視線を動かすと、立派なシャンデリアにふっかふかの絨毯。超高級らしきベッドに高そうなクローゼットに小さいけれど洗練されたデザインの猫足テーブル。テーブルの上には割ったら絶対弁償させられそうなティーカップセット。
見る限りはそんな感じ。もう少しきちんと見てみよう。
手を付いて起き上が、カシャン。
……カシャン?
え?何の音?
起き上がって、両手を確認する。
何もついてないね。
じゃあ頭?…特に何も感じない。
となると残るは…?
そっとかけられていた毛布を剥いで足を確認すると、右足に枷がついていて枷から伸びた鎖は床へと続いている。
「……試しに引っ張ってみる?」
鎖を握って、えいやっ!
ガツンッ。
案の定何かに繋がれている。勢いよく引っ張ったからじんわりと手が痺れた。
「ん。無理っ!」
キリッと断言。…何してるの、私。
えー?これどうなってるのー?
ベットの上で立ち上がってみると、鎖は結構長く部屋の中を隅々まで歩く事は可能そうだ。
そもそもここ何処ー?
そうだ。ベッドの上にいた訳だしっ。自分の服装っ…あ、良かった。どこも違和感ない。
ホテルにいた時のまま、Tシャツにロールアップのデニムのままだ。
「ふみみ…?」
ひとまずベッドを降りて、辺りを探索する事にした。
まず一番に確かめるのは、ドア、だよね。
外に出れるかどうかは大事。
えっと、ドア…ドア…、あっ、はっけーんっ。
駆け寄ってドアノブを回す。
うん。トイレだ。
バスもセットのタイプだね。
出口ではなかった、と。
え?もしかして…もしかしなくても私監禁されてる?
………いやいや。ちょっと待って。すぐそう考えるのは早計過ぎるよね。
もっと他にドアは…あ、あるわ。
そちらにも駆け寄って
こっちのドアノブを…うんっ、開かないよねっ!分かってたっ!
鍵、かかってるんだろうな。
上と…下にもついてる。
………さて、どうしよう。
ヘリから落下して、あの後どうなったんだっけ?
棗お兄ちゃんの手を掴み損ねて、あの気持ち悪い溶けかけのクローンと一緒に落下したんだよね?
体に傷らしき傷はないし…どうやって着地したのか解らないけど、意識失った私はそのまま拉致監禁ってことであってるよね?
脱出経路出来そうな…窓でも覗いてみる?
窓に駆け寄り、窓を開ける…は流石にちょっと何かあったら怖いから、ガラス越しに外を覗く。
あわよくば逃げられたり…?
微かな希望を込めて窓の外を覗いて、
「わーお」
思わず出たのが何とも気の抜けた声だった。
いやー…まずここが何階かは解らないけど思ってたよりずっと上層階にいる事は解った。
ついでに、下の方を目を凝らしてみると、私と一緒にヘリを落ちたのと同じようなクローンが徘徊している。
私こんなの見た事あるー。
ほら、銃を持ってゾンビと戦うあれみたいな…。
「……もう、ホラーゲームじゃんっ!」
どないせいっちゅうのよっ!
どちらにせよ、窓の外から脱出案は消えた。例え下に奴らがいなくても普通に落下して死ぬわ。
ふみー?
これ、私詰んでね?
…………いやいや、待たれよ、私。色々困惑し過ぎて日本語まで怪しくなってる。ちょっと落ち着いて考えよう。
まず、私が落下した事はお兄ちゃん達は分かっているわよね?って事は、きっと私を今も探してくれている筈。何かあっても発見されないって事はないと信じても良いよね。
で、次に。
私は今何処にいるか、なんだけど…。
……この部屋を見る限り、日本じゃなさそうだけどなぁ…。
まるでどっかの西洋城の一室みたいな?………ラブホじゃ、ないよね?ラブホだったら私発狂するよ?
ふみ~ん…。
どうしよう。
一人だとやれる事、限られてるよね。
味方がいてくれたらいいんだけど、拉致監禁の状況でそんな幸運な事あるとも思えないし…。
外に男がいたとしたら、私は下手に動かずここで助けを求めた方が安全の可能性もあるし、逆に、狙いによってはここにいると男がわんさか来て危険な可能性もあるし、何かの実験に使われたり、それこそクローンの群れってことはそれに関する、『SPICA』の連中が私の知識を狙って何かしでかすかもしれない。
「と、なると…逃げた方が利点は多いかな?ついでに味方を探せるともっといいんだけど…」
味方って言えば、すっかり記憶から抜け落ちてたけど。
私達の乗っていたヘリとは別の、優兎くん達が乗っていたヘリも落ちてた気がする。
と言う事はあっちの三人も狙われてたって事で、ここに連れて来られてる可能性もあるんじゃない?
味方がいる可能性は高いかも。
例えば隣の部屋とかにいてくれたり、とか?
…そもそも隣の部屋なんてあるのかな?
まずはそこからだよね。
窓を少ーしだけ開けて、何とか左右を確認する。
右…は私の今いる部屋の窓だね。
じゃあ、左は…窓が無い。
って事は私の部屋が一番端って事だ。右の窓の奥には何もないのかな?
うぅ…見辛い…。
……右の窓に移動しろって事ですね。はい。
まずは今の窓を閉めて、鎖が引っかからないように注意しながら右側の窓をこっそりと開けて右隣りを見る。
あれ?格子戸?窓に格子が付けられてる。
「あれじゃあ、窓からつたって行くのは無理かも」
まぁ、ある意味格子があるから掴みやすいかもしれないけど。外れたり掴み損ねたら真っ逆さまだよねー。
ベランダがあるような窓なら良かったけど、それもないし。
あれ?でも待って?
隣の部屋の窓には鉄格子…要は、何かあるって事だよね?
盗られたくない『物』だったり、逃げ出されたくない『人』だったり。ね?そう言う事だよね?
これは…行くしかないよね?
じーっと隣の部屋を眺め、どっか行けそうな場所はないかと観察していると、唐突に窓を叩く音が聞こえた。
ガンッ、ガンッ、ガンッ!
ガンッ、ガシャンッ!
窓が割れた。
破片が下に落ちて行く。
「ちっ。やっぱり鉄格子は無理かっ。しかもこの部屋こんな高い位置にあるのか。ならこっからの脱走は無理だな。隣の部屋は…んんっ!?」
あれ?この声っ。
「樹先輩っ!?」
「やっぱりその金髪、美鈴かっ!?」
「金髪って、何ですか」
「仕方ないだろ。こっからじゃ髪しか見えねーんだよ」
「鉄格子、ついてますもんね。そこ」
「…お前の部屋にはなさそうだな。でも、無事そうで何よりだ」
「これを無事と言っていいのか解らないですけど、でも、先輩も無事で良かった」
「美鈴。そこに葵達はいるのか?」
「いません。樹先輩こそ、優兎くん達は?」
「いや、いない」
「私と樹先輩だけがここに拉致された?」
「可能性は高いな」
「………どうします?樹先輩。私としては、ここに留まるリスクの方が高そうなのでどうにかして逃げたいんですが」
「俺もだ」
「どうにかして、先輩と合流出来ないかなぁ」
「そうだな。どうにか…どこか繋がってる場所でもあれば…」
「部屋に何かそれらしいものあるかな?ほら、昔みたいなさ」
「昔?あぁ、小学生の時のあの事件の時みたいにか?」
「そうそう。あくまでもここは一つの建物だから、何処か繋がってる場所があるかもしれないし」
「探してみるか」
「うんうん。探索パート開始だねっ」
「探索パート?」
「あ、こっちの話。気にしないで。それじゃあ、私部屋を探ってくるね」
「あぁ。また後でな」
顔を引っ込めて、窓をちゃんと閉めてから、私は改めて部屋をぐるりと見回した。
まず必要なのは紙とペン、かな?
こう言うのは大概ベッドサイドの小棚に入っているよね。
鎖が絡まらないように今歩いた道を戻る様にして、小棚の側へと移動する。
棚の所には案の定メモスタンドとペンが置かれていた。
うん。これに見取り図を書いて行こう。
部屋は全体的に長方形型をしてる。横長の長方形だね。私の起きたベッドは頭の方が右の壁にぴったりとくっついて、尚且つ真ん中にででんと陣取ってる。
んでもって、えっと…鎖が繋がってる床は…あ、ここだ。ベッドの下。ご丁寧に埋め込み式のアンカー使ってるし。太っいアンカーだから手でも道具でもこりゃ無理だ。
で、えっと、そうそうドアがあるね。
一つは右下にあるバストイレのドア。もう一つが恐らく出入り口のドア。
長方形の左下の辺りだね。こっちのドア。もう一度確認してみようかな。
もふもふとした絨毯の上を裸足で歩いて、ドアの前に辿り着く。
念の為にともう一度ドアノブに手をやって回してみるけれどやっぱり開かない。
鍵は上と下に二ヵ所。上の方は南京錠タイプ。下の方はナンバーロックかな?…四桁の数字?
後は?…見当たらない。
他に何かあるかな?…鍵がかかってるし、外に繋がってるのは確かなんだろうけど…念の為に。ドアに耳をピトっとくっ付けて。耳をすます。
…話し声らしき音はしない、な。
見張り、いるのかな?いないのかな?どちらにせよ用心は必要だね。
後は、そう。左上にある窓の側に本棚がある。ここには何の本があるのかな?
ガラス戸を開けて中を見ると、そこにはドイツ語の本がズラーっと並んでいた。
特に目新しい物はなさそう…かな?ガラス戸の下にある引出しには何が入ってるんだろう?…空っぽだ。まぁ、そうだよね。
他にも探ったけれど、特に役に立ちそうな物はなかった。最悪分厚い辞典でガラス戸叩き割って、ガラスを武器にしよう。うん。
左の窓と右の窓の間に鏡台があるけど、それも鏡とヘアーブラシ以外は特に何もなかった。
「え?ちょっと、ブラシだけで髪が整えれるとでも?スプレーも何もなく?セットしろと?無理でしょ」
思わず突っ込み入れたけれど、それ以外なのもないので次に行く。
右の窓の右隣にはクローゼット。
服、何か入ってるかな?
クローゼットを開けると、めっちゃ透け透けのメイド服が一着。
……これは後で切り刻もう。もしくは樹先輩に着せよう。誰が着るかこんなもん。むしろ着替えさせられてなくて良かったわ。
他は?他にはないの?
クローゼットの中にあった小さな棚には下着類が入っている。だから、誰が着るかこんな下着。ショーツに至ってはT字のしかないじゃない。あとで燃やそう。もしくは樹先輩に着せよう。
クローゼットの中もこんなものか。
後は中心にテーブルとティーポットとティーカップだね。
これに関しては飲み物として置いといてくれてるんだろうけど、飲む気にはならないな。
他には…長方形の左側に暖炉があるけど…何かあるかな?
何もない?あ、でも薪は補充されてるな。火種がないけど。どうやって火つけるのよ。
…こんなものかな?
大体全部調べたけど、…特にこれと言って役に立ちそうなのはなかったな。
あ、そうだ。トイレ。
あそこ調べてないよね。
トイレのドアを開けて中を見回す。
トイレットペーパーは二つ。ナプキンは置いてない。生理だったらどうすんねんっ。攫うならそれくらい考慮しとけーっ。
ってのは冗談だとしても、特に変哲もないバストイレだよね…?
ぐるりと見回しても特におかしな所は…うん?
あれ、なんだろう?
天井から何か金色の鎖が伸びてる。
……浴槽の淵に乗れば届くかな?
ちょっと危ないかもだけど、裸足だし…何とか行けるかな?
お風呂の浴槽の淵に乗ろうとして、思い出す。
「いや、あっちのテーブルの所に椅子あったじゃん」
それを持って来たらいいんじゃん?
バストイレを出て椅子を持って戻ってくる。
金の鎖が見える真下に椅子を置いて、慎重にそれに登って鎖を掴んだ。
「?、これどっから出てるの?どう見ても天井に埋まってるようにしか見えない」
一応引っ張って、取ってみる?
「えいっ」
引っ張ったと同時に、
ガコンッ。
何かが開く音がした。しかも、隣から。こっちは特に変化した様子はない。
って事は、場所的に隣、樹先輩のいる場所から音がしたって事だよね?
何か変化があると良いんだけど…。
鎖はどうやら外れるらしく、私はそれを外してまじまじとその鎖を観察した。
鎖って言うかこれ多分ストラップだよね?だって先についてるこれ、『鍵』だよね。鍵を注意深く見ると、そこにはLiと文字があり、その裏面にはマークがあった。
……これ、星座記号かな?二本のラインに上の方の線には凸がある。この記号は天秤座かな?
もしかしてこれって部屋の鍵?
急いでバストイレを抜けて、ドアへと駆け寄って鍵を入れる。
鍵はすんなり入ってくれた。ドアノブの鍵穴に。
「確かにこの部屋の鍵だけど、これじゃあ意味ないのよねー。欲しいのはノブの鍵じゃなくて、上と下の鍵だもんねー…まぁ、でも何かあるかもしれないしこれは取っておこう」
私は鍵をポケットへと入れて、窓へと向かった。
樹先輩の方はどうなってるのかな…?
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私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。
自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。
彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。
それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。
やれるかどうか何とも言えない。
だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。
だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺!
◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。
詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。
◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。
1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。
◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます!
◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。
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