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最終章 数多の未来への選択編
※※※(奏輔視点)
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あれも駄目、これも駄目、と。
もうかなりのパターンを試してみたと思う。
(けど…それらしき結果は出なかったな)
しかも、何日も夜通しぶっ続けで実験を繰り返していたから、正直体力的にも限界に来ている。
(いい加減、何か食べないと…頭が上手く回転せぇへん)
あれから何日経過している?
この部屋には窓がない上に地下にあるようで、さっぱり今が何日の何時なのか解らない。
一先ず時間だけでも確認出来ないかと周囲を見回して、壁にかけてある時計を見つけた。見ると時間は十五時を指している。
(ここに来た当初は気に止めんかったけど、良く見回してみるとここ、時計いくつあるん?しかもなんで全部日時時計で表示が二十四時間?)
疑問には思ったものの直ぐに理由に思い至る。成程。その時計にしないと感覚が狂うからか。数があるのも例えば何かの時計が狂った時に他の時計で時間を合わせる為なんだろう。
あれから五日経ってたのか…。俺良く動けてたな…。
さてと。
足をキッチンのドアに向ける。
姫さんとの会話とトイレしか往復してなかったから、キッチンに入るのは初めてだな…って、これはキッチンか?
シンクと蛇口の横に何故か電子レンジ。横にドでかい冷蔵庫と床にカセットコンロ。狭いキッチンの面積はほぼ冷蔵庫が占めている。
冷蔵庫を開けて気付く。
(これ冷蔵庫でなく、冷凍庫や…)
恐らくヨネ婆さん手製の料理がジップされて積み重ねられている。
…佳織さんが言っていたのはこれの事だったんだろう。
適当に手に取り、そのまま電子レンジへ入れて解凍と温めをする。その間に皿を……ないやん。
食器類が何もない。せめて、せめて箸か何か…。
周りを見回し、部屋の隅に小さな段ボールがあるのを発見し、急いでそれを開けると中から使い捨てのスプーンが大量に出て来た。
(スプーンがあるなら、何とかなるわ…)
チンッと音が電子レンジから聞こえ、解凍されたジップの中に入っているのがおでんだと解る。
汁が零れないように慎重に取り出さなあかんね…熱いだろうから袋の上の部分の端っこを掴んで…あちち…。
キッチンから戻り、どうせならと姫さんと会話しながら食べようと姫さんのベッドの側へ。
俺は床に座って、姫さんの手を握った。
「姫さん。聞こえるか?」
(はいはーい♪聞こえてるよー♪)
会話をしながらおでんの卵を齧る。
姫さんと会話しつつ、研究を進めてを繰り返していた多分三日目の夜。ふと思い立って額をくっつけずに会話出来ないものか?と二人で色々試した結果。
こうして手を繋いでいたり、体の何処かがくっついていれば会話出来る事に気付いた。
ただ、最初は抱きしめてたりしてても会話出来なかった事を考えると、何かしらの変化があったんだろうと思う。
その変化が何かはまだ解っていない。
まぁ、普通に考えるなら、レベルが上がったって考える所だけど…。
そもそも俺達にレベルの概念あるんか…?
姫さんのステータスにはレベルがあったが、俺達のにはなかった。共通レベルって考えた方が良さげだ。
もぐもぐと口を動かして、姫さんの言葉に耳を傾けつつも次に研究すべき何かを掴むために頭も動かす。
(ねぇねぇ、奏輔お兄ちゃん)
「うん?」
(何か咀嚼音が聞こえるんだけど、何か食べてるの?)
「おう。佳織さんが用意してくれたヨネ婆さん特製おでんや」
(えー?いーなぁ…)
「……姫さん…」
そうやった。今姫さんは何も感じる事が出来ないから…。
無神経な事を言うた…。
(いいなぁ…。料理したぁい…)
「そっちかいっ」
思わず突っ込みを入れてしまった。食べたいとかそう言う事だと思ったら、まさかの料理がしたいの方だったとは…。
(暇なのぉー。手伝える事もないし。これで体が動くなら奏輔お兄ちゃんの手伝いだって出来るし、自分の体の事は自分でどうにか出来たのに…)
「……ははっ」
(奏輔お兄ちゃん?)
「あぁ、ごめんな。姫さんが姫さんで、全然変わってなくて安心したんや…」
(ふみみ?)
「…姫さん、俺も早く姫さんの作った料理食いたいわ。姫さんの体治せたら、ご褒美に作ってくれる?」
(奏輔お兄ちゃん…。うん、勿論だよっ。山ほど、山ほど作るからっ!)
「ははっ、何で二回も言うたん?」
(大事な事だからねっ!)
「そうなん?」
(そうなのっ。そう言えば、高校の時ね?実は…)
姫さんの話す言葉の一つ一つを聞き逃さないように、時には相槌を打って。
少しでも姫さんは治せるんだと、心に刻みつける。
研究を重ねれば重ねるほど大きくなるもう一つの可能性。
それだけは絶対に嫌だと全身が叫んでいた。
姫さんを治す。
それだけが今の俺の心を支えていた。
そして、また数日が過ぎた…。
この数日の間に一通りのスキルの組み合わせは試した。
しかし案の定、姫さんがかけられた【凍結(フリジット)】の効果を表すスキルもそれを解除出来るスキルも探し当てる事は出来なかった。
(…正直少しずつだけど焦ってきてる。…いや、ちゃうか。元々焦ってはおったけど、落ち着いてやればどうにかなると思っとったんや…)
せやけど、スキル全てを試してみても、こうも結果が出ないとなると…。
焦っても仕方ない状況だ。
それでも自分がやれることは変わらない。とにもかくにも姫さんが言う通り【再構築】をしてみないといけない。
それには何かこの状況を覆す情報が欲しい。ほんの小さなことでも構わない。
情報を再検討するか。
資料をもう一度見直し、何気なくステータスを開く。…習得スキルは増えとるわ、って当り前やな。手に取った資料とステータス画面のスキルを見比べる。本来覚える筈のスキル以外にも研究中に組み合わせて作られた特殊スキルが増えているのだ。
…ん?そろそろMPが無くなりそうやな。
食事して、姫さんと会話して少し癒されよう。
キッチンへ行き適当に食事を温めて、姫さんの側に行く。
これも何気に日課になりつつある。
姫さんの手を握ってっと。
「姫さん」
声をかけるが…反応が返って来ない。
「姫さんっ?」
やっぱり声は帰って来ない。
嘘やろっ!?
持っていた食事を床に投げつけ、急いで額と額を合わせる。
「姫さんっ、姫さんっ!」
やはり反応が無いっ。
なんでやっ!?なんでこんななったっ!?
ちゃう、そうやないっ。落ち着けっ、俺っ。
朝はちゃんと話出来ていた。
相違点はなんやっ!?探せっ、何かないかっ!?
姫さんの体自体には異変は無い。これじゃないっ。
他にはっ!?
周囲を見渡す。時計は、関係ないっ。本棚も変化ないっ。
他はっ!?そやっ、ステータス画面っ!
けど、姫さんのステータスを見るには姫さんが開かないとっ…いやっ、そうやっ。確かスキルの中にっ。
「ステータスっ」
声を上げてステータス画面を開き、スキルのページを開いてスクロールする。
狙いのスキルを見つけて、直ぐにそれを発動させる。
【能力解析(アナライズ)】
相手のステータスを開示するスキルだ。本来は敵に使用する物だろう。
スキルは発動し、姫さんのステータスが開示された。
何か、おかしな所はないかっ?
以前と変わらない所と、変わってもおかしくない所。
色々あるが…体力、所謂HPはギリギリだが残っている。これは瀕死の状態だから想定の範囲内だ。逆に言えばまだHPがなくなりきっていないのだから、助けれると言う事だ。
して、MPは……?MPもギリギリになってないか?なんでや?まぁ確かにMPは精神力や。こんな状況が長く続けば精神がおかしなっても仕方ない。仕方ないんやけど、姫さんのあのテンションを見る限り、こんなに減っているのはおかしいやろ。
何かMPを消費している原因があるんちゃうか?
その原因があると仮定して、MPを減らすものと言えば、それこそスキルか?
スキルのページを開き、何か発動しているものはないかと上から順にチェックして、一つスキル発動がオンになっているのに使用不可になっているものがあることに気付いた。
「【会話(コンタクト)】…?これって確か【口寄せ】の上位互換スキルじゃ…?まさか、これを使ってるからか?せやけど、これを切ったら姫さんと会話が不可能になる。それは姫さんの生存確認の為にも絶対に必須やろ。このスキルはオフに出来ない。ってなると、俺が今出来るのは…」
自分のスキルページをスクロールして、別のスキルを発動させる。
【魔力譲渡(チャージ)】
これは使用者のMPを選んだ対象に譲り渡すスキルだ。
俺のMPを姫さんに譲渡する。俺のMPは姫さんの5倍以上はある。五分の一渡した所で何にも問題ない。
それに姫さんと休めば一気に回復もする。
姫さんが俺に取って回復ポイントなんや。
姫さんのMPを一気に回復させて、俺はもう一度額をくっつける。
「姫さんっ」
(ふみ?どうしたの?奏輔お兄ちゃん。そんな大きい声で)
「………はぁ~……」
聞こえて来た声に、大きく安堵の息を吐いて脱力した。
姫さんの体に覆いかぶさるような形で脱力してしまったが、この際許して欲しい。
「ほんっま、勘弁してや、姫さん…」
(ふみ~?)
「心臓に悪過ぎるわ」
(ふみみ?なに?なんかあった?私の足の氷だけ溶けて腐ったとか?)
「そんなことあったら、急いでもう一度凍らすわ」
姫さんの軽口に突っ込みを返す。そんな軽口ですら今は安心する。
(本当に、何があったの?)
「実は…」
今起きた事を姫さんに説明する。
全部説明して、姫さんが俺に言った第一声は。
(MP、私に譲渡して奏輔お兄ちゃんは大丈夫なの?)
だった。本当に、ほんっとに姫さんは…。
「俺の心配なんて後回しでええやろ。まずは自分の体調を考えや」
(……奏輔お兄ちゃん。そうは言うけど、私はハッキリ言えばもうほぼ死人だよ。むしろ奏輔お兄ちゃんの命を削って生きているって状態を保っているようなものだもの。…そんな死人も同然の私を助けようとしてくれてる人を労ったり心配をするのは当然の事じゃない?)
「姫さん…」
(いつ死んでもおかしくない。それが今の私だよ)
「姫さんっ」
俺は姫さんの言葉を遮った。聞きたくなかったから。
…姫さんが言ってる言葉は事実で正論だ。分かってはいる。けど理解はしたくない。
「姫さんは、俺が助けるんや。だから…いつ死んでもおかしくないとか言わんでくれ。俺は姫さんを失いたくない。失くしたくないんや…」
(奏輔お兄ちゃん…)
「諦めないでくれ。絶対に、絶対に助けるから」
(…奏輔お兄ちゃん。…うん、解ってるよ)
「姫さん…?」
(自分の事はちゃんと理解してる。理解している上で、まだ諦めてないの。まだ生きていたい。奏輔お兄ちゃんを自分の目でまたしっかりと見たい。奏輔お兄ちゃんと自分の足でお出かけだってしたい)
「姫さん…」
(願望だってあるよ。元に戻ったら奏輔お兄ちゃんとデートしたいな。こんなに、こんなにも心配して、私の事を大事にしてくれる人を慕わない訳ないじゃない?)
「姫さん、それは吊り橋効果って奴やろ」
(吊り橋効果でもなんでもいいんだよ。それを越えるほど愛しいと思えれば。毎日話して、奏輔お兄ちゃんの優しさを知って、奏輔お兄ちゃんの少しドジな所とか可愛い所とか知って。毎日毎日愛おしいって、好きだなって思って増えて溢れていく)
「………ッ」
(奏輔お兄ちゃん。私、全然諦めてないの。奏輔お兄ちゃんにだけ頑張らせてる酷い女だけど、でも諦めきれない。奏輔お兄ちゃんと一緒に生きたい。けどその為には奏輔お兄ちゃんに頑張って貰わなきゃいけない。私だけ助かっても何の意味もない。…今奏輔お兄ちゃんを心配出来るのは私だけ。私だけの特権だよ。誰にもあげないんだから)
「……やめぇや、姫さん」
(え?)
「泣いてまう…やろ」
と震える声を抑えて、努めて明るく言う。
けど無駄かもしれん。姫さんは賢いから察してしまうやもしれない。
それでも、姫さんの心が知れて嬉しくて、死なせたくないと言う恐怖からまた決意が生まれる。
絶対に姫さんを生かせてみせると。
「助けるからな、姫さん。絶対に」
(うん。待ってる)
「デート、しような?」
(するっ!何処に連れてってくれるの?奏輔お兄ちゃん)
「…そうやな…。まずは図書館か?」
(だったら私の運転で大きい図書館に行こうよっ)
「…せやね。『俺』の運転でドライブがてらいこか」
(うんうん。『私』の運転で行こうねっ)
「姫さん。折角生き残ったのに、また生き急ぐ必要はないで?」
(…奏輔お兄ちゃん。それはどう言う意味?)
「言葉のまんまや。姫さんの運転が粗いのは周知の事実や」
(ふみっ!?粗くないもんっ!ちょーっと蛇行するだけだもんっ!)
「その蛇行が怖いんや」
姫さんと会話して、どんどん心が落ち着いてくる。
大丈夫。姫さんはまだ大丈夫や。
今度からは姫さんのステータスは常に表示している状態にしよう。
常に確認して、MPが切れる前に補充をする。
毎朝六時に確認する事にしよう。
ある程度会話をして、放り投げていた食事も改めて袋を開けて食べる。
自分のパラメータが完全に回復したのを確認して、俺はまた研究へと戻った。
机の上にある紙を改めて確認する。
ここにあるのは全て実証済みのデータ、もしくは既存のデータだ。
その結果が目の前にあるステータス画面の内容だ。
だが、様々な事を試してみたが、良く考えると結果がステータス画面に出る時点で有り得る事象と言う事だ。
あり得るものってのは、言葉の通りこの世界に元々ある事である。
と言う事は、だ。
姫さんの言う【再構築】ではないって事だ。
他の世界にしかない出来事は、この世界にはないって事で。
無から有を作る事は出来ない。
ただ、無を【再構築】して有に似せる事は出来る。
この方式に姫さんの状況を当てはめて考えてみるならば。
あの男が姫さんを捕らえる為に、他の世界で使った【術】を【再構築】して【スキル】にしたという事になる。
だとすれば、もともとの【術】がなんであるかが解らないとこっちは対処のしようがないって事か?
(そもそも、スキルって一体どうやって発動しとるんやろ?)
根本的な疑問に辿り着いた。
姫さんや佳織さんは、ここが乙女ゲームの世界だからと納得していたが、突き詰めて考えるとそんなことあるかいと突っ込みを入れたくなる内容だ。
(スキルの根本は何?)
これは…気になる。
今度はそこを調べてみるか。
幸いここにはそれらしき記述のある本が沢山ある。
調べてみる価値はありそうだ。
俺は次から次へと本を取り出し、読み耽った。
また数日が経過した。
姫さんと解った事実を共有し、答えを導きだして行く。
この会話が今の俺に取って最高の癒しの時間となっていた。
(成程。じゃあ、スキルって言うのは、【精神力】で出来てるって事?)
「う~ん、ちょいちゃうな。簡単に言うなら【スキル】ってのは『【想像力】で思い描いた物を、【ある力】によって作りだすことが出来る』力の事を言うんやろな」
(ある力って何だろう?)
「俺は、これ言うと中二病爆発してると思われそうなんで躊躇いたくなるんやけど…【神様】の力なんやないかと思っとる」
(神通力とか、そんな感じ?)
「に、近いものと思っとっても良いんちゃうかな?」
(そっか。だから、私達が使うスキルには制限がある?)
「そや。俺等は力を神に【借りている】のに対し、恐らくあの男は何らかの方法で神から力を【奪い取っている】んだろうと思う」
(奪い取る…。だからあの男は私達が使えないスキルも術も使えるってことか)
「と俺は思う。あくまでも仮定やけどな」
(うん。でも説得力はあるよ。でも奏輔お兄ちゃん。それを踏まえると)
「…姫さんを治すには、あの男にもう一度技を使って貰うか、あの男直々に姫さんを治して貰うかのどちらかになる」
(だよねぇ)
「けど、そこらの心配はいらんやろ。何せ佳織さんが向かったんやから」
(それもそうだね。ママだもんね)
「佳織さんやからな」
二人でクスクスと笑い合う。
(その佳織さんがあれから一度も来てへんな)
忘れていた訳ではないが、佳織さんの事だから他にも何か情報を得る為に動いているんやろと勝手に納得していた。
だが、ちょっと遅すぎる気もする。
時計を見て日時を確認する。
佳織さんがあの男の事を調べに出て、既に二週間は過ぎている。
佳織さんの事だし、一度くらい姫さんの状況を確かめに来てもおかしくないのに…。
様子を見に行くべきか?
いや、でも、姫さん一人を置いて出て行く訳にもいかない。ましてや姫さんはこんな状況だ。増々選択肢に一人残すって言葉は薄くなる。
だったら今俺がやれる事は研究をすること。
ただそれのみだ。
姫さんに研究に戻る事を告げて、立ち上がり食事に使っていた袋とスプーンをごみ箱に捨てて机に戻ろうと一歩を踏み出した。その時―――。
バアアアンッ!!
「なんやっ!?」
建物全域が揺れた。
上で何かが起こってるっ!?
俺は咄嗟に姫さんを抱き上げて、キッチンへと逃げ込んだ…。
もうかなりのパターンを試してみたと思う。
(けど…それらしき結果は出なかったな)
しかも、何日も夜通しぶっ続けで実験を繰り返していたから、正直体力的にも限界に来ている。
(いい加減、何か食べないと…頭が上手く回転せぇへん)
あれから何日経過している?
この部屋には窓がない上に地下にあるようで、さっぱり今が何日の何時なのか解らない。
一先ず時間だけでも確認出来ないかと周囲を見回して、壁にかけてある時計を見つけた。見ると時間は十五時を指している。
(ここに来た当初は気に止めんかったけど、良く見回してみるとここ、時計いくつあるん?しかもなんで全部日時時計で表示が二十四時間?)
疑問には思ったものの直ぐに理由に思い至る。成程。その時計にしないと感覚が狂うからか。数があるのも例えば何かの時計が狂った時に他の時計で時間を合わせる為なんだろう。
あれから五日経ってたのか…。俺良く動けてたな…。
さてと。
足をキッチンのドアに向ける。
姫さんとの会話とトイレしか往復してなかったから、キッチンに入るのは初めてだな…って、これはキッチンか?
シンクと蛇口の横に何故か電子レンジ。横にドでかい冷蔵庫と床にカセットコンロ。狭いキッチンの面積はほぼ冷蔵庫が占めている。
冷蔵庫を開けて気付く。
(これ冷蔵庫でなく、冷凍庫や…)
恐らくヨネ婆さん手製の料理がジップされて積み重ねられている。
…佳織さんが言っていたのはこれの事だったんだろう。
適当に手に取り、そのまま電子レンジへ入れて解凍と温めをする。その間に皿を……ないやん。
食器類が何もない。せめて、せめて箸か何か…。
周りを見回し、部屋の隅に小さな段ボールがあるのを発見し、急いでそれを開けると中から使い捨てのスプーンが大量に出て来た。
(スプーンがあるなら、何とかなるわ…)
チンッと音が電子レンジから聞こえ、解凍されたジップの中に入っているのがおでんだと解る。
汁が零れないように慎重に取り出さなあかんね…熱いだろうから袋の上の部分の端っこを掴んで…あちち…。
キッチンから戻り、どうせならと姫さんと会話しながら食べようと姫さんのベッドの側へ。
俺は床に座って、姫さんの手を握った。
「姫さん。聞こえるか?」
(はいはーい♪聞こえてるよー♪)
会話をしながらおでんの卵を齧る。
姫さんと会話しつつ、研究を進めてを繰り返していた多分三日目の夜。ふと思い立って額をくっつけずに会話出来ないものか?と二人で色々試した結果。
こうして手を繋いでいたり、体の何処かがくっついていれば会話出来る事に気付いた。
ただ、最初は抱きしめてたりしてても会話出来なかった事を考えると、何かしらの変化があったんだろうと思う。
その変化が何かはまだ解っていない。
まぁ、普通に考えるなら、レベルが上がったって考える所だけど…。
そもそも俺達にレベルの概念あるんか…?
姫さんのステータスにはレベルがあったが、俺達のにはなかった。共通レベルって考えた方が良さげだ。
もぐもぐと口を動かして、姫さんの言葉に耳を傾けつつも次に研究すべき何かを掴むために頭も動かす。
(ねぇねぇ、奏輔お兄ちゃん)
「うん?」
(何か咀嚼音が聞こえるんだけど、何か食べてるの?)
「おう。佳織さんが用意してくれたヨネ婆さん特製おでんや」
(えー?いーなぁ…)
「……姫さん…」
そうやった。今姫さんは何も感じる事が出来ないから…。
無神経な事を言うた…。
(いいなぁ…。料理したぁい…)
「そっちかいっ」
思わず突っ込みを入れてしまった。食べたいとかそう言う事だと思ったら、まさかの料理がしたいの方だったとは…。
(暇なのぉー。手伝える事もないし。これで体が動くなら奏輔お兄ちゃんの手伝いだって出来るし、自分の体の事は自分でどうにか出来たのに…)
「……ははっ」
(奏輔お兄ちゃん?)
「あぁ、ごめんな。姫さんが姫さんで、全然変わってなくて安心したんや…」
(ふみみ?)
「…姫さん、俺も早く姫さんの作った料理食いたいわ。姫さんの体治せたら、ご褒美に作ってくれる?」
(奏輔お兄ちゃん…。うん、勿論だよっ。山ほど、山ほど作るからっ!)
「ははっ、何で二回も言うたん?」
(大事な事だからねっ!)
「そうなん?」
(そうなのっ。そう言えば、高校の時ね?実は…)
姫さんの話す言葉の一つ一つを聞き逃さないように、時には相槌を打って。
少しでも姫さんは治せるんだと、心に刻みつける。
研究を重ねれば重ねるほど大きくなるもう一つの可能性。
それだけは絶対に嫌だと全身が叫んでいた。
姫さんを治す。
それだけが今の俺の心を支えていた。
そして、また数日が過ぎた…。
この数日の間に一通りのスキルの組み合わせは試した。
しかし案の定、姫さんがかけられた【凍結(フリジット)】の効果を表すスキルもそれを解除出来るスキルも探し当てる事は出来なかった。
(…正直少しずつだけど焦ってきてる。…いや、ちゃうか。元々焦ってはおったけど、落ち着いてやればどうにかなると思っとったんや…)
せやけど、スキル全てを試してみても、こうも結果が出ないとなると…。
焦っても仕方ない状況だ。
それでも自分がやれることは変わらない。とにもかくにも姫さんが言う通り【再構築】をしてみないといけない。
それには何かこの状況を覆す情報が欲しい。ほんの小さなことでも構わない。
情報を再検討するか。
資料をもう一度見直し、何気なくステータスを開く。…習得スキルは増えとるわ、って当り前やな。手に取った資料とステータス画面のスキルを見比べる。本来覚える筈のスキル以外にも研究中に組み合わせて作られた特殊スキルが増えているのだ。
…ん?そろそろMPが無くなりそうやな。
食事して、姫さんと会話して少し癒されよう。
キッチンへ行き適当に食事を温めて、姫さんの側に行く。
これも何気に日課になりつつある。
姫さんの手を握ってっと。
「姫さん」
声をかけるが…反応が返って来ない。
「姫さんっ?」
やっぱり声は帰って来ない。
嘘やろっ!?
持っていた食事を床に投げつけ、急いで額と額を合わせる。
「姫さんっ、姫さんっ!」
やはり反応が無いっ。
なんでやっ!?なんでこんななったっ!?
ちゃう、そうやないっ。落ち着けっ、俺っ。
朝はちゃんと話出来ていた。
相違点はなんやっ!?探せっ、何かないかっ!?
姫さんの体自体には異変は無い。これじゃないっ。
他にはっ!?
周囲を見渡す。時計は、関係ないっ。本棚も変化ないっ。
他はっ!?そやっ、ステータス画面っ!
けど、姫さんのステータスを見るには姫さんが開かないとっ…いやっ、そうやっ。確かスキルの中にっ。
「ステータスっ」
声を上げてステータス画面を開き、スキルのページを開いてスクロールする。
狙いのスキルを見つけて、直ぐにそれを発動させる。
【能力解析(アナライズ)】
相手のステータスを開示するスキルだ。本来は敵に使用する物だろう。
スキルは発動し、姫さんのステータスが開示された。
何か、おかしな所はないかっ?
以前と変わらない所と、変わってもおかしくない所。
色々あるが…体力、所謂HPはギリギリだが残っている。これは瀕死の状態だから想定の範囲内だ。逆に言えばまだHPがなくなりきっていないのだから、助けれると言う事だ。
して、MPは……?MPもギリギリになってないか?なんでや?まぁ確かにMPは精神力や。こんな状況が長く続けば精神がおかしなっても仕方ない。仕方ないんやけど、姫さんのあのテンションを見る限り、こんなに減っているのはおかしいやろ。
何かMPを消費している原因があるんちゃうか?
その原因があると仮定して、MPを減らすものと言えば、それこそスキルか?
スキルのページを開き、何か発動しているものはないかと上から順にチェックして、一つスキル発動がオンになっているのに使用不可になっているものがあることに気付いた。
「【会話(コンタクト)】…?これって確か【口寄せ】の上位互換スキルじゃ…?まさか、これを使ってるからか?せやけど、これを切ったら姫さんと会話が不可能になる。それは姫さんの生存確認の為にも絶対に必須やろ。このスキルはオフに出来ない。ってなると、俺が今出来るのは…」
自分のスキルページをスクロールして、別のスキルを発動させる。
【魔力譲渡(チャージ)】
これは使用者のMPを選んだ対象に譲り渡すスキルだ。
俺のMPを姫さんに譲渡する。俺のMPは姫さんの5倍以上はある。五分の一渡した所で何にも問題ない。
それに姫さんと休めば一気に回復もする。
姫さんが俺に取って回復ポイントなんや。
姫さんのMPを一気に回復させて、俺はもう一度額をくっつける。
「姫さんっ」
(ふみ?どうしたの?奏輔お兄ちゃん。そんな大きい声で)
「………はぁ~……」
聞こえて来た声に、大きく安堵の息を吐いて脱力した。
姫さんの体に覆いかぶさるような形で脱力してしまったが、この際許して欲しい。
「ほんっま、勘弁してや、姫さん…」
(ふみ~?)
「心臓に悪過ぎるわ」
(ふみみ?なに?なんかあった?私の足の氷だけ溶けて腐ったとか?)
「そんなことあったら、急いでもう一度凍らすわ」
姫さんの軽口に突っ込みを返す。そんな軽口ですら今は安心する。
(本当に、何があったの?)
「実は…」
今起きた事を姫さんに説明する。
全部説明して、姫さんが俺に言った第一声は。
(MP、私に譲渡して奏輔お兄ちゃんは大丈夫なの?)
だった。本当に、ほんっとに姫さんは…。
「俺の心配なんて後回しでええやろ。まずは自分の体調を考えや」
(……奏輔お兄ちゃん。そうは言うけど、私はハッキリ言えばもうほぼ死人だよ。むしろ奏輔お兄ちゃんの命を削って生きているって状態を保っているようなものだもの。…そんな死人も同然の私を助けようとしてくれてる人を労ったり心配をするのは当然の事じゃない?)
「姫さん…」
(いつ死んでもおかしくない。それが今の私だよ)
「姫さんっ」
俺は姫さんの言葉を遮った。聞きたくなかったから。
…姫さんが言ってる言葉は事実で正論だ。分かってはいる。けど理解はしたくない。
「姫さんは、俺が助けるんや。だから…いつ死んでもおかしくないとか言わんでくれ。俺は姫さんを失いたくない。失くしたくないんや…」
(奏輔お兄ちゃん…)
「諦めないでくれ。絶対に、絶対に助けるから」
(…奏輔お兄ちゃん。…うん、解ってるよ)
「姫さん…?」
(自分の事はちゃんと理解してる。理解している上で、まだ諦めてないの。まだ生きていたい。奏輔お兄ちゃんを自分の目でまたしっかりと見たい。奏輔お兄ちゃんと自分の足でお出かけだってしたい)
「姫さん…」
(願望だってあるよ。元に戻ったら奏輔お兄ちゃんとデートしたいな。こんなに、こんなにも心配して、私の事を大事にしてくれる人を慕わない訳ないじゃない?)
「姫さん、それは吊り橋効果って奴やろ」
(吊り橋効果でもなんでもいいんだよ。それを越えるほど愛しいと思えれば。毎日話して、奏輔お兄ちゃんの優しさを知って、奏輔お兄ちゃんの少しドジな所とか可愛い所とか知って。毎日毎日愛おしいって、好きだなって思って増えて溢れていく)
「………ッ」
(奏輔お兄ちゃん。私、全然諦めてないの。奏輔お兄ちゃんにだけ頑張らせてる酷い女だけど、でも諦めきれない。奏輔お兄ちゃんと一緒に生きたい。けどその為には奏輔お兄ちゃんに頑張って貰わなきゃいけない。私だけ助かっても何の意味もない。…今奏輔お兄ちゃんを心配出来るのは私だけ。私だけの特権だよ。誰にもあげないんだから)
「……やめぇや、姫さん」
(え?)
「泣いてまう…やろ」
と震える声を抑えて、努めて明るく言う。
けど無駄かもしれん。姫さんは賢いから察してしまうやもしれない。
それでも、姫さんの心が知れて嬉しくて、死なせたくないと言う恐怖からまた決意が生まれる。
絶対に姫さんを生かせてみせると。
「助けるからな、姫さん。絶対に」
(うん。待ってる)
「デート、しような?」
(するっ!何処に連れてってくれるの?奏輔お兄ちゃん)
「…そうやな…。まずは図書館か?」
(だったら私の運転で大きい図書館に行こうよっ)
「…せやね。『俺』の運転でドライブがてらいこか」
(うんうん。『私』の運転で行こうねっ)
「姫さん。折角生き残ったのに、また生き急ぐ必要はないで?」
(…奏輔お兄ちゃん。それはどう言う意味?)
「言葉のまんまや。姫さんの運転が粗いのは周知の事実や」
(ふみっ!?粗くないもんっ!ちょーっと蛇行するだけだもんっ!)
「その蛇行が怖いんや」
姫さんと会話して、どんどん心が落ち着いてくる。
大丈夫。姫さんはまだ大丈夫や。
今度からは姫さんのステータスは常に表示している状態にしよう。
常に確認して、MPが切れる前に補充をする。
毎朝六時に確認する事にしよう。
ある程度会話をして、放り投げていた食事も改めて袋を開けて食べる。
自分のパラメータが完全に回復したのを確認して、俺はまた研究へと戻った。
机の上にある紙を改めて確認する。
ここにあるのは全て実証済みのデータ、もしくは既存のデータだ。
その結果が目の前にあるステータス画面の内容だ。
だが、様々な事を試してみたが、良く考えると結果がステータス画面に出る時点で有り得る事象と言う事だ。
あり得るものってのは、言葉の通りこの世界に元々ある事である。
と言う事は、だ。
姫さんの言う【再構築】ではないって事だ。
他の世界にしかない出来事は、この世界にはないって事で。
無から有を作る事は出来ない。
ただ、無を【再構築】して有に似せる事は出来る。
この方式に姫さんの状況を当てはめて考えてみるならば。
あの男が姫さんを捕らえる為に、他の世界で使った【術】を【再構築】して【スキル】にしたという事になる。
だとすれば、もともとの【術】がなんであるかが解らないとこっちは対処のしようがないって事か?
(そもそも、スキルって一体どうやって発動しとるんやろ?)
根本的な疑問に辿り着いた。
姫さんや佳織さんは、ここが乙女ゲームの世界だからと納得していたが、突き詰めて考えるとそんなことあるかいと突っ込みを入れたくなる内容だ。
(スキルの根本は何?)
これは…気になる。
今度はそこを調べてみるか。
幸いここにはそれらしき記述のある本が沢山ある。
調べてみる価値はありそうだ。
俺は次から次へと本を取り出し、読み耽った。
また数日が経過した。
姫さんと解った事実を共有し、答えを導きだして行く。
この会話が今の俺に取って最高の癒しの時間となっていた。
(成程。じゃあ、スキルって言うのは、【精神力】で出来てるって事?)
「う~ん、ちょいちゃうな。簡単に言うなら【スキル】ってのは『【想像力】で思い描いた物を、【ある力】によって作りだすことが出来る』力の事を言うんやろな」
(ある力って何だろう?)
「俺は、これ言うと中二病爆発してると思われそうなんで躊躇いたくなるんやけど…【神様】の力なんやないかと思っとる」
(神通力とか、そんな感じ?)
「に、近いものと思っとっても良いんちゃうかな?」
(そっか。だから、私達が使うスキルには制限がある?)
「そや。俺等は力を神に【借りている】のに対し、恐らくあの男は何らかの方法で神から力を【奪い取っている】んだろうと思う」
(奪い取る…。だからあの男は私達が使えないスキルも術も使えるってことか)
「と俺は思う。あくまでも仮定やけどな」
(うん。でも説得力はあるよ。でも奏輔お兄ちゃん。それを踏まえると)
「…姫さんを治すには、あの男にもう一度技を使って貰うか、あの男直々に姫さんを治して貰うかのどちらかになる」
(だよねぇ)
「けど、そこらの心配はいらんやろ。何せ佳織さんが向かったんやから」
(それもそうだね。ママだもんね)
「佳織さんやからな」
二人でクスクスと笑い合う。
(その佳織さんがあれから一度も来てへんな)
忘れていた訳ではないが、佳織さんの事だから他にも何か情報を得る為に動いているんやろと勝手に納得していた。
だが、ちょっと遅すぎる気もする。
時計を見て日時を確認する。
佳織さんがあの男の事を調べに出て、既に二週間は過ぎている。
佳織さんの事だし、一度くらい姫さんの状況を確かめに来てもおかしくないのに…。
様子を見に行くべきか?
いや、でも、姫さん一人を置いて出て行く訳にもいかない。ましてや姫さんはこんな状況だ。増々選択肢に一人残すって言葉は薄くなる。
だったら今俺がやれる事は研究をすること。
ただそれのみだ。
姫さんに研究に戻る事を告げて、立ち上がり食事に使っていた袋とスプーンをごみ箱に捨てて机に戻ろうと一歩を踏み出した。その時―――。
バアアアンッ!!
「なんやっ!?」
建物全域が揺れた。
上で何かが起こってるっ!?
俺は咄嗟に姫さんを抱き上げて、キッチンへと逃げ込んだ…。
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