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最終章 数多の未来への選択編

※※※

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「いってぇー…。奏輔、少し手加減しろよー…」
「大丈夫?大地お兄ちゃん」
両方のほっぺがパンパンになるだけ往復ビンタされた大地お兄ちゃん。
触れるのも痛そうで、どうしたらいいだろうと私はおろおろした結果、透馬お兄ちゃんが持って来ていた救急道具に入ってた湿布を両頬に貼り付けた。
…何か一昔前の漫画であった虫歯のある少年みたい…。
「にしても、すげぇな、大地。お前一人でこんなのぶっ倒したんかよ」
「…鴇と戦うよりは余程楽だったよー。ただ固いだけでー」
「…鴇がこいつより強い事に驚くべきか、それともこいつを固いだけって考えるお前に驚くべきか」
透馬お兄ちゃんが溜息をつきながら呆れている。
「……こいつが隠しボス…」
「ママ?」
静かにママが隠しボスの側に歩み寄る。
一体何を探しているんだろう?
私は大地お兄ちゃんと顔を見合わせて、首を傾げた。
愛奈と近江くん、奏輔お兄ちゃんと透馬お兄ちゃん。四人もママの行動をただ眺めている。
すると、ママは腕を振り上げて、
「ママっ!?」
その隠しボスの胸に巨大な氷柱を突きたてた。
ボシュンッ。
風圧と同時に隠しボスは消えた。
ママは自分で隠しボスに止めを刺したと言うのに、愕然として膝から崩れ落ちた。
顔を両手で覆って肩を震わせている。
「ママ…?」
泣いてるの…?
……いや、違うっ。
膨れ上がる、この肌をピリピリさせる感じは…殺気だっ!
誰に向けられてるかって、そんなのっ。
私とママが動いたのはほぼ同時。

ガキィンッ!

大地お兄ちゃんの前に立ち、ママの氷の剣を私は薙刀で受け止める。
ギリギリと力と力がぶつかり拮抗する。
「……ッ、…何、するのっ、ママっ!」
「どきなさい、美鈴っ。貴女を助けるには、こうするしかないのよっ」
「意、味が、解んないんだけどっ!?」
渾身の力を込めてママの剣を払い、そのまま来る反撃に今度はこっちからも薙刀を振るう。
ギィンギィンッ。
剣と薙刀がぶつかり合う音が辺りに響く。
「私はっ、貴女の、呪いを解きたいだけよっ」
「それとっ、大地お兄ちゃんをっ、狙うのとっ、何のつながりがあるのよっ」
互いの武器を振るう速度はガンガン上がって行く。
「あるわよっ!美鈴にかけられた呪いは大地くんを経由しているっ!なら大地くんを殺せばその呪いは消えるっ!」
「もしそれで消えなかったらどうするのっ!?大地お兄ちゃん死に損じゃないっ!!そもそも大地お兄ちゃんは私の呪いを解く為にここに来たんでしょっ!体張って隠しボス倒してくれたんでしょっ!?だったらっ」
「もう無理なのよっ!本来隠しボスが持っている筈だった『聖石』がなかったのよっ!」
「はぁっ!?意味解んないんだけどっ!!大体ママは昔から秘密主義過ぎるのよっ!」
「仕方ないでしょうっ!娘を守るためですものっ!」
「その所為で、後手に回った事がないって言い切れるのっ!?」
「言い切れるわっ!」
「嘘だっ、絶対に嘘っ!」
叫びながら戦っている所為で、二人共息絶え絶えである。
それでもママは大地お兄ちゃんを狙ってくるし、私はママを何としても止めたい。
こんな本気の親子喧嘩。初めてかもしれない。
どっちも体に攻撃を当てて怪我をさせる事は本意ではないと思っているから、尚更細かい事に注意する事で疲れが増してくる。
最終的に、私とママは同時に膝から落ちた。
疲れた……。
「もー……ママのわからずやー」
「どっちが」
「ちゃんと説明してよ。ここにあるはずだった『聖石』って何?さっきママは神様がいるって言ってたじゃん」
「その神様を呼び出す為に『聖石』が必要なのよ。けどそれを隠しボスが落とす確率は百分の一なの。ゲームの時、私がハッピーエンドを見る為にどれだけやり直した事か…」
ぜはぜは言いながら私の質問にママは答えてくれる。
ママがこれだけ焦っていると言う事は私の呪いは多分刻一刻と進行しているんだろう。
だけど、なんでだろう。そんなに怖くない。
「……佳織さん」
それはきっと、大地お兄ちゃんがいてくれるからだと思う。
戦い終えた私の側に大地お兄ちゃんがそっと膝をついて何かを差し出した。
「これを手に入れたんだ。これは一体何だ?」
私とママは二人揃って大地お兄ちゃんの手の中を覗き込む。
私とママの親子喧嘩と言う戦いが終わった事によって、やっと近づけるようになった愛奈や透馬お兄ちゃん達も一緒に中を覗きみる。
「これは…『呪石』ね。…何処でこれを?」
「それこそ隠しボスが持っていた」
「…そう。じゃあ、『聖石』は本当に手に入らなかったと確定してしまったのね」
「それはどう言う事?」
「隠しボスは百分の一の確率で『聖石』を落とす。そして十分の一の確率で『呪石』を落とす。『呪石』を落とした場合、『聖石』が落ちる事はない。だから、これを手に入れた今、『聖石』を入手することはない。…美鈴の助かる手段はない」
「どうして、そうなるんだ?」
ママの言葉に心底不思議そうに大地お兄ちゃんは首を傾げた。
「諦めるにはまだ早いだろ。まだやれる事はある」
「大地お兄ちゃん…」
「調べてない事が一杯ある。姫ちゃんも佳織さんもこの世界がゲームの世界だったと固執し過ぎじゃないか?」
「…どう言う意味?」
「オレ達はこの世界で生まれて生きてきた。ゲームの世界だと意識する事も無くだ。そんなオレから見たら、姫ちゃんと佳織さんの世界は狭い」
「世界が狭い?」
「世界は広いぜ?姫ちゃん、佳織さん。ゲームなんて小さな視野で世界の全てと思うのは間違ってない?」
目から鱗がボロボロと落ちそうだ。
確かに、私もママもゲームの世界にこの世界を当てはめて考えようとしてた。
ゲームの世界だから、こうなるだろうって思って、ヒントがある状況で生きていた。
でも、言われてみたら大地お兄ちゃんの言う通りだ。私達の知識なんてほんの小さなものに過ぎない。
それにさっきも私思ったじゃない。この世界の人が作ったと考えるならって結界を破ってきたじゃない。
結局私達はゲームの世界だからって、意識し過ぎて自分の視野を狭めていたんだ。
私達がそんな小さな視野でグルグルしてたのに、大地お兄ちゃんはずっと前を見ていてくれていた。
…そう言う所、ほんと好きだなぁ…。
「おい、近江。この『呪石』について何か知ってるか?」
「『呪石』でござるか?…どっかで聞いたことがある気がするでござる…。ちょっと待つでござる。確か、秘伝の巻物に…」
近江くんは自分の懐を探り、「あったでござる」と一つの巻物を取りだした。黒い巻物…ちょっとお高そう。
それをあっさりと解いて、暫く解いて狙いの一文に辿り着いたのか動きを止めた。
「そうそう。ここに書いてたでござる。『呪石』とは…。『呪石とは、神にあだなした人間が持っていた神殺しの石である。その石は神の裁きを受けた人間の罪を一緒に受け継ぐものであり、全ての呪いを凌駕する呪いの力を持っている』となってるでござる」
「神殺しの石。なんちゅー物騒な」
「それよりも、全ての呪いを凌駕する呪いの力って部分だろ」
「そもそもこの石にある呪いは何なんだ?」
「えっと、待つでござるっ。ここは、管理地ナンバーが…」
懐から新しい巻物を取りだして、近江くんが必死に調べる。
その横で愛奈が散らばった巻物を回収したり、開かれた巻物を丁寧に丸め直している。愛奈、まめだね…でも、それ以上にどうしたら愛奈の両手いっぱいになるだけの巻物を懐に入れる事が出来るのか教えて欲しいよ、近江くん。そこには四次元ポケットとかあるのですか?だったら欲しいです、私も。
「……どうやらランダムみたいでござるな…。どれを見ても呪いが確定されたとは書いていないでござる」
「そうか」
「あ、ただ一つ有益な情報があるでござる」
「有益な情報?」
「さっき丑而摩先生が倒した怪物はどうやら復活するようでござる」
「えっ!?」
「あの怪物は『神の裁きを受けた人間』で永遠に罰を受ける様に一度死んでもまた翌日には復活すると書いてるでござるよ」
「…姫ちゃんに残されたタイムリミットまで恐らく残り5日」
「最低でも4回は戦えるわ。『聖石』を手に入れるチャンスが4回はある」
希望が見えて来た。私達は頷き合う。
「よっしっ。やるかっ」
「今度は俺等も付き合うで」
「私も手伝うわ。王子の為だもん、当然でしょっ」
「…いや。透馬、奏輔、あと新田達も手伝わなくていい」
「大地?」
「なんでや?」
「もっと手段が欲しい。時間がないのは変わらないんだ。もっともっと情報が、姫ちゃんを救う手段が欲しい」
「大地お兄ちゃん…」
「他の管理地も全て回ってくれ。花崎や真珠さんにも頼んで出来る限り、姫ちゃんを救う手立てを集めてくれ…頼む」
大地お兄ちゃんが頭を下げた。
大地お兄ちゃんが私の為に頭を下げて、お願いしてくれている。
私がそのままでいられる訳がない。
慌てて私も頭を下げた。
「王子。そんな頭を下げないでっ。王子の為なら私達頑張るよっ」
「あぁ、当然だろ」
「大地に頭を下げられるまでもないで」
「ほんっと、頼もしいなー。お前ら」
笑う大地お兄ちゃんに私は大きく頷いた。
ママを見るとママの瞳にも再び光が宿っていた。
「まずは一度戻ろか」
「どちらにせよ、明日にならないとここの怪物は復活しねぇんだしな」
笑いながら私達は外へと出た。

この時はまだ希望があった。
だけど、1日が過ぎ、2日、3日…。
私を救う手段は見つからず、そして隠しボスもまた『聖石』を落とす事はなかった…。
4日目。
透馬お兄ちゃん達はそれでも頑張って調査を続けてくれた。
陸実くんに至っては、自分のSNSで色んな人に情報提供を呼び掛けてくれた。
それでも近場の管理地には手立てはなく、なら遠くならと足を伸ばして探してくれた。
だけど、この呪いに関する解呪方法は一切見当たらなかった。
隠しボスも…『聖石』を落としてはくれなかった。
…もう、時間は無い。
そして、5日目。
5日連続で戦い続けた大地お兄ちゃんは隠しボスを倒すコツも覚え、ほぼ瞬殺の勢いで倒して…。
「頼むっ。今度こそあってくれっ!」
大地お兄ちゃんは隠しボスに止めを刺した。
ボシュンッ。
音を立てて、隠しボスの姿が消えた。
最後の頼みの綱だった隠しボスのいた場所には何も、なかった…。
愕然として…大地お兄ちゃんが崩れ堕ちた。
慌てて駆け寄ると、大地お兄ちゃんが私を引き寄せてきつくきつく抱きしめる。
震えてる…。
大地お兄ちゃんが、泣いてる…?
「……大丈夫だよ、大地お兄ちゃん。泣かないで」
「泣きたくもなる…。あんなに豪語してたのに、オレは結局姫ちゃんの体しか守れねぇなんてっ。情けなくてっ、…情けなさ過ぎてっ…ッ」
「ちょっと待って…。大地お兄ちゃんっ。どう言う意味っ!?」
大地お兄ちゃんが私からそっと体を離して、涙を流しながらも微笑んだ。
大地お兄ちゃんの肩越しに、氷の剣を握っているママがいた。
痛ましそうな顔して…でも、その柄をきつく握り占めて一歩また一歩と近づいていくる。
まさかっ、…まさかっ!嘘でしょうっ!?
体しか守れないって、そう言う事っ!?心は守れない…大地お兄ちゃんが死ぬ事で呪いは解けて体は守れるけど、ショックで心は保たれないだろうって事なのっ!?
解ってるならそんなことしないでよっ!
「や、やめてっ!ママっ、待ってっ!!大地お兄ちゃんも諦めないでっ!」
大地お兄ちゃんの手を両手で握って止めにかかるが、大地お兄ちゃんの意志は固い。
それでも、それでも止めなきゃっ!
大地お兄ちゃんがいないなんてっ、好きな人がいないなんて、自分の所為で自分の母親に罪を負わせたなんて、しかもその罪が好きな人を殺させたなんて耐え切れないよっ!!
「大地お兄ちゃんっ!待ってっ!諦めないでっ!お願いっ!」
どうにか、どうにか止めなきゃっ…そうだっ!
「私に最後のチャンス、頂戴っ!」
「……姫ちゃん?」
手を、止めてくれた…。
内心でホッと息をつく。
「私にはあとどれくらい時間が残ってるのっ?」
「あと一時間もない…」
「それだけあるなら十分っ!大地お兄ちゃんっ、どうせ捨てる命なら私に頂戴っ!」
「え?」
「『呪石』を使うのっ!一か八かの賭けに出るわっ!」
私は立ち上がり大地お兄ちゃんの手を引いた。
「美鈴っ!待ちなさいっ!」
「待つ訳ないでしょっ!絶対、皆生き残るんだからっ!」
ママの制止を振り切って私は走り出す。
走りながら、私は脳内で様々な可能性を模索し始める。
近江くんは言ってた。『呪石』は全ての呪いを凌駕する力があるって。もうその情報に縋るしかない。
これはあくまでも私の予想だけど、近江くんが言っていたのは、今かかってる呪いを更に強い呪いで塗り潰すって意味じゃないかなって思うの。正直呪いはランダムだと言っていたし、どんな呪いがかかるかなんて解らないけど。今以上に悪い呪いでもしかしたら即死する可能性もない訳じゃない。でも逆に言えば、もしかしたら今の呪いよりもマシな呪いになる可能性だってある。呪いにかかっているのは変わらないけど、時間を稼ぐ事だって出来るかもしれない。
一か八かの賭けだ。
だけど、今大地お兄ちゃんをママに殺させて私も心を死なせて生きるよりは余程良い。
梯子を登って、階段を駆け上ったり、洞窟内をグルグル回って、何とかママを撒いて、現在地下四階。
棺桶が一杯並んでる。不用意に棺桶に触らないように、けどママにばれないように立てかけてるタイプの棺桶の影に私と大地お兄ちゃんは隠れた。
大地お兄ちゃんがママから隠れようとしている私の意図を読んで、私を腕の中に抱き込んだ。
これで外身は大地お兄ちゃんしか見えないだろう。
「姫ちゃん…」
大地お兄ちゃんに呼ばれて顔を上げると、大地お兄ちゃんは凄く困惑した顔をしていた。
私がどうしたいのか解らず、きっと大地お兄ちゃんの中で葛藤してくれている。
大地お兄ちゃんは自分が死んで私の命だけでも助かるならとそう考えて、今尚ママの所へ行くべきかと揺れている。
本当、優しいよね。
大地お兄ちゃんはいつも私を優先してくれる。
「ねぇ、大地お兄ちゃん。私ね、欲張りなの」
「……そうか?」
「うん。とってもとーっても欲張りなんだよ」
にかりと不敵に笑っても大地お兄ちゃんは今一納得出来ないと首を傾げる。
「姫ちゃんが欲張り…ってのはあんまり思えないなー」
「えー?そう?そんな事ないよー。だって私大地お兄ちゃんが欲しいんだもん」
「…え?」
やっぱり理解出来ないと驚く大地お兄ちゃんに、にんまり笑顔で答えてその広い胸に抱き付く。
「大地お兄ちゃん。私ね、大地お兄ちゃんが好きよ。とても好き。だーいすき。例え大地お兄ちゃんがそう言う意味で私を見た事がなくても」
「――ッ!?」
目を真ん丸にして驚かれると逆にちょっと心地いいかも。
…ママは言っていた。
隠しボスと戦う条件の一つに、恋仲になっていない事があると。
そうママに聞いた時点で私は大地お兄ちゃんを好きだと自覚していた。
でも、その時既に大地お兄ちゃんは隠しボスと戦っていた。
それはどう言う事か。
その理由は一つ。
大地お兄ちゃんが私を恋愛と言う目で見た事がないから。
要するに私の片想い状態だったから『恋仲』にはなっておらず隠しボスに挑むことが出来たのだ。
私をそんな風に見た事がない大地お兄ちゃんにとってこれは酷い選択かもしれない。
でも、でもね?
私は大地お兄ちゃんと一緒にいたいの。
それにね?大地お兄ちゃんは恋感情がなくても、私の事を大事だと、命に代えても良いと思ってくれているくらい好意を持ってくれていると私は知ってる。
だから、私は欲張りで我儘なんだ。そんな大地お兄ちゃんの優しさに付け込もうとしているんだから。
「他にも色々言い方があるのかもしれない。けど、大地お兄ちゃん。知ってると思うけど私はこういう性格だから…こうとしか言えないんだ。…図々しいかも知れないけど、大地お兄ちゃんのその命、私に頂戴。呪いを上書きするわ」
大地お兄ちゃんの顔を両手で包みこんで目線を合わせる。
「…だめ?」
「……姫ちゃん。オレは…」
大地お兄ちゃんがゆっくりと瞳を閉じた。
そして、もう一度開き合わされたその瞳は強い熱を孕んでいた。
不思議…。男の人にこの目を向けられるのが凄く怖かった筈なのに…大地お兄ちゃんの目は怖くない。
ううん。怖い所か、嬉しいとすら感じる。
「正直、オレは恋愛感情ってのが良く解らないんだ」
「うん?奏輔お兄ちゃんが初恋だったんだよね?あれ?違うの?」
「…誰から聞いた、それ。いや、問うまでもないな。透馬後で覚えとけよこの野郎」
透馬お兄ちゃん、ボコ決定。
「まぁ、でも、そうだな。奏輔に惚れた気ではいたんだけどなー。今思うとそれも少し違ったのかもしれないなー。ま、小さい頃の恋愛は憧れも込み込みって言うしー」
「それは確かにそうだけど…大地お兄ちゃん。念の為に言っておくけど、私はそうじゃないからね?」
じとー…。
睨みつけると大地お兄ちゃんは笑った。いっそ清々しいほどのイケメン笑いだった。
「解ってるって。…恋心って奴は今一つ解らないけど、でもオレは姫ちゃんに命を捧げても良い位に姫ちゃんの事が好きだぞ」
「…うん。嬉しい。ふふ…じゃあ、これで大地お兄ちゃんは私の彼氏だね」
「うん?解らないぞー。姫ちゃんに他に好きな人が出来るかもしれないしなー」
「あはは、あり得ないよ。私、男性苦手だし」
「それもそっかー」
「それに、大地お兄ちゃんによそ見させるつもり欠片もないから。私が鴇お兄ちゃんの妹って事忘れちゃ駄目だよ、大地お兄ちゃん?狙った獲物は逃がさないから」
「ハハッ。どんとこい、だよー」
こんな状況なのに二人互いに笑い出す。
一頻り笑い合って、私は『呪石』が乗っている大地お兄ちゃんの手の平に自分の手を重ねて握りしめた。
後は発動させるだけ。
私が笑うと大地お兄ちゃんも笑顔で応えてくれる。
「私ね、大地お兄ちゃん」
「うんー?どうしたー?」
「解ってるからね」
「何を?」
「大地お兄ちゃんが私の大事にしているもの、全て守ろうとしてくれたの、全て助けようとしてくれたの、ちゃんと解ってるから。だから、例えこの呪いが失敗したとしても、大地お兄ちゃんを恨んだりは絶対にしないから。安心して」
「あぁ。それこそオレだって解ってるよ。姫ちゃんが、人を恨むような子じゃないって」
笑い合って、じゃれるように互いに頬を擦り寄せながら、私達は『呪石』を発動させた。

瞬間。
ぶわりと風が巻き起こり、私達の目の前に一人の女性が現れた。
女性は、体が透き通っている。
この人はママが言っていた神様?
いや、女性だし服装も神様のようだし、女神が正しいのかな?
どちらにせよ、神様ならば『聖石』でなければ呼びだせないはず。だったら死神なのだろうか?死神だと言うのなら賭けは負けたのかな?所謂お迎えって奴なの?
私の脳内はぐるぐるとフル回転をしている。
兎に角疑問をぶつけてみよう。
そう思ったのに、声が出ない。

『無理しちゃ駄目よ。私がいる所為で、圧がかけられているの。声とかも全て封じられてるわ。…遅くなってごめんなさいね。これでも出来る限り早く来たのよ?そもそも『あの人』が干渉する場所もう少し考えてくれたら、わざわざこんな怖い思いをさせながら呼び出させる事もなかったのに……ぶつぶつぶつ…』

温かく柔らかい声。
なのに言ってる事が誰かに対する愚痴、不満。
このギャップは一体どうしたら…?

『…『様々な貴女』を見てきたけれど…。『今の貴女』がもしかしたら一番強いかも知れないわね。それでも、私は『母』として、いつかは『あの子』と結ばれて欲しいと願ってしまうのよ』

ごめんなさいね?とまた謝られて、苦しそうな笑みを零しながら言われても私と大地お兄ちゃんにはさっぱり解らない。

『安心して。今の私の言葉を貴女達は覚えてはいられないから』

(覚えていられない?それは一体どう言う…?)

『私の力では、呪いを解除してあげる事は出来ない。出来るのは『時間』を伸ばす事位よ。どうにかして、神と…リョウイチと対話が出来る聖地を探しなさい。そこにある天然の『聖石』を探し出して呪いを解除しなさい』

(覚えていられないのに、そんな大事な事を言われてもっ)

『大丈夫。大丈夫よ。貴女は『神の子』だもの。ちゃんとあの馬鹿…もとい『リョウイチ』が落としたヒントに気付けるわ。絶対に手に入れられるから…大丈夫』

目の前の透き通る女性はそう言って微笑み、私達の前にふわりと降り立ち、透き通る綺麗な手をそっと私達の頭上へと伸ばした。

『………頑張ってね。―――華ちゃん』

(えっ!?)
驚いた時にはもう遅く…。
どうして私の前世の名前を知っているのか、とか。
彼女の顔が誰かに似ているはずなのに何故思い出せないのか、とか。
疑問が降って湧くのに。
私の意識は伏せられていく瞼と同時に遠のいて行くのだった。



※※※



―――月日は過ぎて。

「おーい、美鈴ー。メールが来てるぞー」
「はーいっ!」
大地が私の携帯を持ちながら、手を振っている。私は持っていた鍬を畑の土にぶっ刺し、大地の側へと駆けよった。

結果から言って、あの時の私達の作戦は成功した。
呪石を発動させて、その呪いを私と大地は受けて意識を失った。
意識を失うまでの記憶が全くと言っていいほどに無いので、恐らく発動と同時に意識を失ったんだろうと思う。
そんな意識を失いぶっ倒れた私達を発見したママは一瞬死んだものと勘違いして泣き崩れたらしい。けれど、そこに何故か駆けつけてくれた陸実くんが、『あの』陸実くんが私達の心臓が動いている事に気づいてくれた。
その時点で私達に本来かかっていた呪いは制限時間を越えており、死んでいてもおかしくない状態だったのに、心臓が動いていたから呪いの上書きは成功したのだと解る。
ママと陸実くんは私達を担ぎ急いで病院へと連れて行ってくれて、私達は無事意識を取り戻した。
体の傷はなかったから、私達は直ぐ退院をする事が出来た。
とは言え、あくまでも私達がしたのは『呪いの上書き』だ。
上書きと言う事は、私達が最初にかけられた呪いより、より強力な呪いが私と大地にかけられたと言う事になる。
意識を取り戻した私達は、生き長らえたチャンスを得た事を喜ぶよりも、まず上書きされた呪いが何かを調べる事が先決となった。
近江くんや愛奈、華菜ちゃんにお兄ちゃん達。金山さんや銀川さん、真珠さん色んな人に協力して貰ってやっと自分達の呪いが何なのかを理解した。
私と大地にかけられた呪いは。

『寿命の共有』

の呪いだった。
大地と私の寿命が足して2で割られてると考えて貰っていいと思う。
ただここで注意すべきは、私の寿命はあの時で尽きていたと言う事だ。
私は前の呪いの所為で寿命がギリギリの所まで来ていた。
本来は私の寿命が2、大地の寿命を4とするなら合わせて6の時間を二人分で割って、互いに3ずつになる筈だった。
だけどこの時の私の寿命はほぼ0に等しかった。大地の寿命が4とするなら、0+4で合計が4のまま。足して2で割られたら、大地の寿命を私が奪ってしまう事になってしまった。
私のこの命は全て大地のモノと言う事になる。大地の寿命を縮めてしまったのだ。
私は頑張った。
この私だけにかかった呪いならまだしも、大地の寿命を私が吸収する呪いなんてのは予想外だったから。
でも、大地は何故か嬉しそうだった。
それを問い質すと大地はこう言った。
『これで平等だなー』
と。それに私は猛抗議。
だって、そもそも私の為に大地は頑張ってくれて、それで呪いをかけられたんだ。発端は私だったのに、大地を通じて私に呪いがかけられてもそれこそ自業自得なのに、大地は必死に頑張ってくれた。
泣いて、命を失ってもいいからって言ってまでくれた。で更に、その後寿命まで私に奪われた。
大地に平等って言葉を調べ直してと辞書を渡す位には抗議した。
でも大地は全然気にしてない様子だった。
大地曰く。
『オレ、超長生きする気でいたしー。多分姫ちゃんと半分にするくらいがちょうど良いんだよー』
な、らしい。
んなバカなーとその時は焦って呪いの解呪方法を探していた。
探してたんだけど、それから1年経ち、2年が過ぎと月日を過ごしている内に、もしかしてそれは本当だったんじゃないかと思ったのだ。

「メール、なんてー?」
「うん?うん。旭から。彼女が出来た報告は聞いてたんだけど、初デートでめっちゃ引かれたって泣き言の嵐。一体何したんだろー?」

今現在私と大地、そして。

「おかーん。サツマイモ採れたーっ!」
「こっちは、茄子ーっ」
「はいはーいっ。今日はそのサツマイモと茄子で晩御飯作ろうかーっ」
『おーっ!!』

二人の息子と一緒に大地の父親の実家で暮らしている。
本当は子供を作る気はなかった。
いつ死ぬのか解らなかったから。
けど…全然寿命が尽きない。
大地もピンピンしていて、恐ろしい事に大地の曽祖父もピンピンしているのだ。
これは大地の言った通り、超長生きで半分にしたってどうって事ないのではと思い立ったのだ。
本来の私の寿命が1なら、恐らく大地を含め丑而摩家は20位の数値は持っているだろう。
それを知った私はなんか気にしてるのが馬鹿らしくなって、大地にプロポーズして、とっとと子供を作ったのだ。
だって子育ては時間がかかる。だったら早ければ早いほど良いじゃない?
勿論同時進行で呪いの解呪方法も探した。
でもある程度したら、これも大地が私に言ったのだ。
『オレの寿命って恐らく滅茶苦茶多いと思うんだー。今まで病気した事ないし、怪我も瞬間的に治るし。むしろ美鈴の本来の寿命より延びてる可能性もある訳だー。だったら、無理して探す必要なくない?』
と。ケロっと。更に。
『ここでもし呪いを解いたら、もしかしたら美鈴の寿命が0の状態に戻る可能性もある。それだけは避けたい。今更美鈴無しでオレは生きれねぇぞー?』
と、嬉しくて堪らない事も言ってくれた。
ここまで言われたなら、私の思考もプラス思考にならざるを得ないよね。
それから私と大地は片手間探索に切り替えて、いざ何かあった時も直ぐどうにかなるようにお義父さんの実家で暮らす事にして。
のんびり穏やかな日々を過ごしている。
あれから何年経っただろう?
一つ言えるのは、私も大地も全然病気も怪我もしなくなった。むしろ毎日畑仕事をしてる所為か、体力がめっちゃついた。
息子らもすくすくと育って、上の子が小学校入学時には既に私の肩くらいまで背が伸びていた。恐るべし、丑而摩家の血筋…。

「他には?」
「他には、えーっと…総帥は無理だからいい加減帰って来てって事が延々とー」
「帰るー?」
「やだー。私今の生活とぉーっても気に入ってるの。慌ただしくないのんびりライフ最高っ」
「そっかー」
「大地こそ帰りたいの?」
「オレ?オレもここで良い。帰る度に佳織さんと鴇の説教を聞く羽目になるからー」
「あー…あれは私もお腹一杯かなー…」

ママも鴇お兄ちゃん達も私達が勝手にした事に未だにちくちくと刺してくる。
双子のお兄ちゃん達に至っては、大地と結婚した事についてずっと大地をちくちく刺している。
未だにそうなんだから、白鳥家って本当に根に持つタイプだと思う…。
鴇お兄ちゃんは私が大地にプロポーズをしたと知った時に。
『お前は好きになったら、一途だからな。そうなる気がしてたが…そうだな。もう、俺はお前に触れる事は、敵わないんだな』
と切なそうに笑った。
鴇お兄ちゃんだったら何時でも抱き付けるよ?触れるよ?
そう言ったら、鴇お兄ちゃんは切なそうな瞳を静かに仕舞い込み、何時ものちょっと悪戯な瞳で口の端を上げて笑い私の頭をもしゃもしゃと撫でた。

「そういや、今度透馬と奏輔が遊びに来るって言ってたっけー?」
「いつー?」
「確か16日」
「へー、16日ー……って今日じゃない?」
「……確かにー」
「玄関の鍵開いてたっけ?」
「しっかり閉めて来たー」
「だよねー。今日確か誰も家にいないからって言ってたよねー」
「言ってたなー」
『………ま、いっかー』

二人で顔を合わせて笑い合う。
旭への返信は後で一言『ファイト!』って送る事にしよう。
大地と一緒に畑に戻って耕す。
同じ鍬を使って耕してるのに大地や息子のスピードはトラクター並で正直ついて行けない。
でも、楽しそうな三人の姿を見てると自然と私も笑ってる。
呪いは解けてない。
いつ突然死が訪れるかも解らない。
男性恐怖症だって治った訳じゃない。

だからって幸せじゃない訳でもない。

「美鈴ーっ」
「なぁにーっ?」
「今度こそ、女の子作ろうなーっ」
「それ大っぴらに大声で叫ぶことなのーっ!?」

笑いながら、子供の前で言う事なの?と疑問に思いながら。
それでもそんな毎日が幸せで幸せで。

「皆っ、お父さんに飛びつくぞーっ!」
『おおーっ!!』

三人で鍬をポイして、一斉に抱き付く。
大地は難無くそれを受け止めて、嬉しそうに楽しそうに笑った。

今の私なら胸を張って言える。
幸せだって。
それから私は願う。

願わくば、大地もそう思ってくれてますように。

心からこの幸せを共有してくれていますように、と…。



大地編 完

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