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最終章 数多の未来への選択編

※※※

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車で揺られる事、数時間。
「そろそろ目的地に近いと思うんだけどー」
大地お兄ちゃんの言葉に私は、運転席と助手席の間から顔を出して、カーナビを見る。
確かにそろそろ免許証にあった住所につく。
なんてこったい、案外近かった…。
高級住宅街。言うだけあってそれはそれは立派なお家が建ち並んでいる。
そんな住宅街のド真ん中に、後藤鉄平(ごとうてっぺい)宅はあった。
「うぅ~ん、確かに立派な家だけど…」
「姫さん。白鳥家と比べたらあかんで?」
「あ、うん。それは勿論比べたりはしないけど。でも、なんでかな?高級なお宅感があんまりしないのは…何で?」
「言われてみたら確かに。何て言うん?こう…悲壮感が漂うてると言うか…」
悲壮感?窓の外を見ると、高級な住宅が何軒も建ち並んでいるが。どこの家にも高級住宅街と言うには違和感がある。
一体何が他の高級住宅街と違うのかな?
じーっと違和感を探る。高級住宅……あれ?
「あぁ、そっか。庭とか壁とか全部放置されてるんだ」
「?、姫さん?」
「ほら、奏輔お兄ちゃん。見てみて。普通の高級住宅なら、誰かしらがお庭の手入れとか、壁の修繕とかするはずだよね?なのに、見て。外観の目立つ所以外は」
「ほんまやね。…元々あった金を当てにして、何もせんからこうなるんや」
車がゆっくりと狙いの後藤家の前に止まる。一先ず降りたりはせずに、車の中から家の中の様子を窺った。……特に私達の事は報告されている訳では無さそうだね。報告が行ってるのなら、この車にだって何しかしら反応を示すはず。スッと後藤家の窓の方に視線だけを向ける。…視線は感じない。こちらの様子を探っている訳でもなさそう。
視線を車の中へ戻すと、前に座っているお兄ちゃん達もこちらを振り返っていた。目を見ると、お兄ちゃん達も真剣に頷いた。きっとお兄ちゃん達も同じ結論に達しているんだろう。
「まず、俺が行って様子を見てくる」
シートベルトを外した透馬お兄ちゃんが車を降りた。
門の前に立ち、律儀にチャイムを鳴らすと、奥さん?らしき人が出て来た。
透馬お兄ちゃんを見て、一瞬固まったかと思うと一言二言話して、会釈して戻って行ってしまった。
透馬お兄ちゃんがそれから数度チャイムを鳴らすけれど、奥さんらしき人は戻って来なくて。透馬お兄ちゃんはそのまま車に戻って来た。
「どうだった?」
後部座席に座る私と奏輔お兄ちゃんは身を乗りだして、助手席に座る透馬お兄ちゃんに聞く。すると、透馬お兄ちゃんは髪を掻き上げて軽く舌打ちした。
「後藤鉄平の家か?って聞いただけで、今忙しいからとっとと帰れだと」
「勧誘か何かと勘違いしたんじゃないー?」
「だったらまず人となりの確認するだろ。あの女、俺の顔見て一瞬顔を顰めやがった。絶対俺の事知ってやがる」
「となると俺らの事も知ってる可能性が高いな」
「だねー。どうするー?」
どうするって、相手がこっちの顔を知ってるなら遠慮なんて時間の無駄でしょう?
私達は顔を見合わせて頷く。
全員で乗り込みますっ!
今度は全員で車を降りて、私が代表でチャイムを押す。うん。出て来ないね。
もう一度確認の意味を込めて押しておこうかな。
チャイムの音はするけれど、反応はない。
「ごめんくださーい」
声を上げてみる。反応なし。
もう一度だけ、声を上げる。
「ごめんくださーい。出て来て貰えませんかー?後藤さーん?」
…全く反応がない。
「こっちも命を狙われた手前、あんまり優しく出来る気がしないんですよー。出て来て貰えませんかー?会話で済ませられるなら済ませたいのですよー?後藤さーん」
反応なし。しぶとい。
「…乗りこんじゃいますよー?」
反応なし。
「…大地お兄ちゃん。よろしく」
「はいはーい」
ちゃんとこちらは出て来いって言った。話がしたいとも言った。私の命を狙って置いて、反応しないとか。しかもそれで帰って貰えると思ってるなんて、都合良過ぎでしょ。
ガキンッ。
大地お兄ちゃんが門の鍵をぶち壊して、開けてくれる。そのまま大地お兄ちゃんが先導して、私達は敷地内へ入る。真っ直ぐ玄関へ向かった。
ドアをノックして、反応がない。
「ごめんくださーい」
念の為に再度声をかけてみるが、反応なし。
「出て来て頂けないようなので、ドアをぶち壊します。良いですよね?」
続けて声をかけてみる。ただの脅しだと思ってるのかな?相変わらず全く反応ないけど。
でも残念。脅しじゃないんですよー。本気なんですよー。
「よいせっ、とっ!!」
バァンッ!!
おおっ、結構大きい音が鳴ったな。全力でドアを蹴破ったらこの位の音はするか。ふふんっ、私だってこの位の力はあるんだからっ。どやっ。
靴は…脱がなくていっか。お行儀悪いけど、ドア壊しておいてお行儀も何もないもんね。それに、ここが忍びの家なら、何が仕掛けられてるか解らないし。
ごめんなさーい。心の中ではちゃんと謝ってます。
家の中に入り、ざっと中を確認する。
右手に階段で左手に仕事部屋らしき場所にお風呂、かな?両方とも人の気配はしない。奥、かな。
一歩二歩と慎重だけど大胆に奥へと進み、人の気配がする方へ進む。
すると一番奥の部屋の前に辿り着く。
ドアを開けると、そこには誰もいない。
でもこっちから人の気配がするのは確かなんだけど…。
「姫ちゃん」
大地お兄ちゃんが奥を指さす。そこにあるのは収納スペースのドア。
示されて、そちらを見ると、確かに気配がする。…成程。隠しスペースなんだね。
進んでドアを開けるとそこは、想像していたような収納スペースではなく、なんと子供部屋があった。
ベッドに学習机、テレビにテレビゲーム、玩具。子供部屋にありそうなものは全て配置されている。
その部屋の隅で、顔を真っ赤にして荒い呼吸をしている男の子を大事そうに抱えている奥さんがいた。
怯えてる。まぁ、当然か。
私は奥さんと向き合い、その場に正座した。
「初めまして。こんな形で来て、しかも土足でごめんなさい。でもどうしても聞きたい事があるんです」
「き、ききたいこと?」
「はい。まずはお子さんを寝かせてあげて下さい。私もお兄ちゃん達もこれ以上近寄らない様にしますから」
そう言いながら、私は動かない。お兄ちゃん達は私を守る様に立って威圧しているけど、そこは勘弁して欲しい。だけどお兄ちゃん達もそれ以上は決して動かなかった。
そんな私達が一歩も動かない事を確認して、奥さんはびくびくと怯えながらも子供をベッドへと寝かせた。そしてゆっくりと側へ来て、私と向き合う形で座ってくれた。
「き、聞きたい事、とは?」
…じっと奥さんを見ると、随分やつれている。さっきは遠目で解らなかったけれど、目の下の隈はかなりなものだ。日本人特有の黒目黒髪だけど、白髪も大分混じって来ている。…苦労してるのかな?…いや同情は後で。今は確認しなきゃいけないことが沢山ある。あくまでもここは忍びの家。警戒は怠っちゃいけない。
私は、奥さんを挑発しないように、言葉を選んでから問いかけた。
「まずは、一つ目。ここは後藤鉄平さんの家で間違いはないですか?」
「……はい」
「それでは二つ目。貴女は後藤さんの奥さん?」
「そうです」
「三つ目です。貴女は鉄平さんが私を襲った事を知っていますか?」
「襲ったっ!?」
じっと彼女の挙動を見守る。この動きが嘘かどうか見破る為に。
しかし、顔面蒼白からの徐々に怒りで赤くなるのを見る限り、彼女は驚きは嘘ではなさそう。
さて、次は何を言うべきか。下手な事を言って知りたい事を隠されても困るし。どうしようかな。
「…あの、男…。今度は、絶対に、浮気しないと…」
……何か、呪いの如く低い声が聞こえた。だ、誰の声だろー?きっと、お兄ちゃん達誰かの声だよね。うん、きっとそう。うふふ…奥様の顔がこわーい。さっきのから怒りがどんどん膨らんできている模様。こえー。
奥さんに一体何を言ったらいいかな?
増々言葉に困っちゃう。
そんな風に迷ってる私に、あちらの方から声がかかった。
「…申し訳ありませんが、こちらからもお聞きしてよろしいでしょうか?」
「え?あ、はい」
「襲ったと言うのは、どう言う事でしょう?…あの人がいい歳して、貴女みたいな若い子を…?」
「へ?」
「浮気したら、息の根を止めるとあれほど言ったのに…」
うんっ、どうしようっ。全然違う所に火がついちゃったんだけどっ!?
怖くて、ゆっくりと後ろ振り返って助けを求めたら、お兄ちゃん達に視線逸らされた。ずるいっ。
「あの人は昔から女好きで…いつか、いつかやるとは思っていたけれど…」
続きを話す声がして、奥さんの方を向くと、わほーいっ。
どーしよー。オドロオドロシイ空気が、オーラが奥様から出ていらっしゃいますのことよーっ?
予想外の展開にまたもバッと振り返ったら、お兄ちゃん達は顔を逸らした。なんですとっ!?
えっ!?私一人に奥様の相手させないでっ!?
「どうしてくれようかしら…?自分の子がこんなに呪いで苦しんでいると言うのに…」
「呪い?」
「ふふ…ふふふ…」
きゃーっ!!怖いよーっ!!素直に声に反応するんじゃなかったーっ!
助けてとズババッと勢いよく振り返る。お兄ちゃん達は私に背を向けていた。なんてこったいっ!!護衛の意味がねーっ!!
そして前から来る負と怒のオーラは全然収まってくれない。
た、立ち向かうしか、ないのっ!?
そっと奥様の方に向きなおしつつ、なるべく慎重に言葉を発した。
「お、落ち着いて。私が言った襲うってのはそう言う意味じゃなくて」
「あら?違うの?でもここに乗り込んでくる位でしょう?傷ものにされたんじゃないの?」
「まぁ、傷ものと言われたら…」
命を狙われたり、二回殺された訳だから、傷ものって表現も間違いではない…かも?
どう思う?お兄ちゃん達。
振り返ってみると、お兄ちゃん達があわあわしてる。何で?
「ひ、姫さんっ。それ肯定したらヤバい奴やろっ」
「ふみ?」
ずもももももっ…。
ふみーーーっ!?
奥さんから黒い何かがっ、黒い何かが溢れてるーっ!!
懐から苦無が取り出されたーっ!?
しかもっ、投げられたーっ!?
内心大慌てな私を、
「姫ちゃんっ!」
ひょいっと背後から大地お兄ちゃんに持ちあげられて、お兄ちゃん達は一斉に後方へ飛ぶ。すると苦無は先程まで私がいた場所…ではなく、何故か天井に飛んでいった。
ドスドスドスッ。
天井に鈍い音を立てて苦無が刺さる。
「おっぎゃああああっ!?」
うん?刺さると同時に変な声が聞こえた。
もしかして、上にいる?
あれ?じゃあもしかしてさっきお兄ちゃん達が私に背を向けたのは上に誰かが隠れていると気付いたから?…本当に?あんまりタイミングが良過ぎる所為で疑っちゃうよ?絶対黒いオーラから逃げたかったって意味も混ざってるよね?混ざってるよねぇ?
……まぁ、今はそれ所じゃないから追及しないけどねっ!今はねっ!後で咲お姉ちゃんと七海お姉ちゃんの監修の下問い質そう。
それよりもだ。もしかして、上にいるのは後藤鉄平なのでは…?
「ふふふ…」
ビクゥッ!!
いきなり発せられた低音の笑い声に思わず大地お兄ちゃんにしがみついた。
なんでだろうねっ。普通に怒られたり威嚇されたりするより、こうやって笑われてる方が怖いのはっ!?

ダンッ。

「えっ!?その薙刀何処からっ!?」
私の突っ込みも奥さんには届かず。
天井に向かって薙刀を突きあげた。

「子供の呪いを解く為、とか」

ドスッ!

「その為に命をかけるとかっ」

ドスッ!

「言っておきながらっ!」

ドスドスッ!

「貴方がしてたのは浮気とかっ!」

ドスドスドスッ!

「どう言う事なのよおおおおっ!!」

ドスドスドスドスドスッ!!

わーお。天井穴だらけ。
上、どうなってるんだろう…?

バリッ、ドスンッ!!

天井が薙刀で刺され過ぎて、一部壊れ天井の一部と、その上に立っていたであろう男が…あ、駄目だ。これ私見たら駄目な奴。
大地お兄ちゃんの胸に顔を埋めておく。
なんでダメって?
だって真っ裸なんだもん。
「首、跳ね飛ばしてあげるわ…」
「ちょ、ちょちょちょっ。落ち着けっ!俺はお前を裏切ってなんかっ」
「……」
「本当だっ!裏切ってなんかいないっ!言っただろっ!春雄(はるお)を助けるには呪いを解くしかないっ!その呪いを解くには、金持ちで金髪の美しい女の生き血が必要だってっ!」
「………見る感じ彼女はまだ学生のようだけど?彼女がお金持ちだって言うの?」
「そうだっ!彼女は、白鳥財閥の総帥だっ!」
「……ふぅん。で?」
「で?って。だからっ」
「………裸で言われても説得力皆無なんだけど」
「確かにっ!」
「姫。突っ込みを入れる場面じゃねぇぞ」
「あ、ごめん。つい…」
私達は空気。空気、空気…。
暗示をかけつつ、とりあえず成り行きを見守る。
「そもそも、私は貴方が言っている呪いも疑わしいのよね。私達がこの子を連れて行ったのは、小さな病院だったでしょう?大学病院とか都会の病院に行ったら、もしかしたら治るかもしれないじゃない。今時呪いって。しかも貴方が言っていた事が本当なら、財閥の総帥の命を狙ったのよ?超ド級の犯罪者よ?解ってる?」
「お前こそ解ってるのかっ?これは俺の家だけの問題じゃないっ!忠や岩治、それに俺の親戚筋の子供、皆苦しんでるんだっ!しかも、皆違う症状だと言うのに、一斉に倒れたっ!時間帯すら同じだっ!」
「感染症の可能性だって」
「ないっ。だったら俺達にだってかかっても良い筈だ」
「子供だけにかかるのかも」
「だったら俺達の親戚筋でない子供もかかっているだろ」
「それは、確かに。でも、だとしても、よ。何故真っ先に襲う必要があるの?」
「は?」
「男が一人の若いか弱そうな女の子を狙うとか、恥ずかしくないのかしら?」
「え?」
正論の百裂ビンタ受けてる…。
「大体貴方解ってるの?生き血よ?方法は他にもあったでしょう?献血に協力して貰うとか」
確かにっ!!
っといけないけない。また突っ込みいれる所だった。
慌てて口を抑えてムぐムぐ。
「いくら貴方の家系の人間がお金がなくて大変だと言っても、もう少しやりようがあるでしょう」
正論過ぎて、後藤鉄平さん、ぐうの音も出ないようです。奥さんの圧勝?
言い争いは続いているけど、私達がいること忘れてるのかな?結構重要な情報が飛び交ってるよ。
えーっと。
後藤夫婦の言っている事をまとめると。

まず、ある日突然『子供』が倒れた。その症状は皆違えども、倒れた『日時』は全て同時だった。当然焦った親は医者に診せたものの何の病か一切解らなかった。そこで後藤鉄平は家にある様々な資料を調べた。結果子供達は『呪い』にかかっているのではないかと言う結果に辿り着いた。後藤家に受け継がれる書物の中に、子供がかかる呪いらしき事が載っていたのだ。その呪いが載っていたのなら、呪いを解く方法も載っている筈だと躍起になって探し見つけた出したのが、ヨレヨレの古びた紙。その紙に墨で書かれていたのが私達も見たあの文章―――。

『聖なる乙女の生き血を捧げよ。さすれば、扉は開かれん。
 
 聖なる乙女は黄金を持つ。
 聖なる乙女は美しさを持つ。
 聖なる乙女は清さを持つ。
 聖なる乙女は慈しみの心を持つ。
 聖なる乙女は明日を持つ。

 聖なる乙女の生き血は我を呼ぶ。
 聖なる乙女の生き血を捧げよ。さすらば、扉は開かれん。

 扉の先には、汝が望む全てがあるだろう』

って奴だった。都合良く書物に挟まっていたらしいその紙。その文末にある『汝が望む全てがあるだろう』と言う言葉に、子供達の解呪という望みを賭けた。
彼らは必死で聖なる乙女の条件にあてはまる人間を探したらしい。そしてその白羽の矢は私へと当たった。聖なる乙女かどうかは別として。黄金を財力ととるなら、まぁ、日本一、だよね。美しさを見た目の良さととるなら…まぁ、中身こんなでも乙女ゲームのヒロインだしね。清さ…あるかぁ?慈しみの心…いやぁ、あんまりないよ?私。明日を持つ…私の知ってる乙女ゲーム時代終わっちゃったしなぁ。もう明日どころか今日の終わりですらどうなるか解らないし。
…五つの条件中、大まかに見ても二つしか当てはまってないよ?探せばもっと条件の合う人いると思うんだけど…?
兎に角、彼らは以上の都合上から、私から生き血をとる為に襲い掛かってきた。
ただし、彼らにはミスが何か所もあった。まずは自分達が表門の末裔で、自分達が狙ったのが裏門の頭が仕える人間だったって事。
何度か、8日以前にも襲撃をしようと試みた事があったらしいのだ。全て金山さんや真珠さんに撃退されたらしいが。しかも、表門と裏門。本来は不干渉が約束だった筈。なのに、それをあっさり破ってしかも自分の主を狙ってきた。裏門の、正しくは金山さんが激おこだった。それでも子供の事がある。金山さんも約束があったから一度の叱責で終わらせるつもりだった。だからそこを逆手に取った。諦めれば良かったものを逆手に取ったのだ。要は裏門が怖いから、覚醒遺伝して忍びの力を持っている人間を陽動隊と実行隊の二つに分けて同時に行動を起こしたのだ。裏門相手の方に男達をなるべく置いて、逆に私を襲うのに女を集めた。
そして何度も何度も作戦を練って、情報を集めては練り直して、いざ襲撃と挑んだらお兄ちゃん達に返り討ちにあった。ここまでが事の顛末らしい。
うん。成程。
確かに、奥さんが言うように献血で良かったのでは?とか思うし、献血位なら喜んで協力するけど?とか色々思う所はあるんだけど…。
でもちょっと待って。冷静に考えてみるに、生き血ってどのくらい必要なのかな?その分量によって話はまた変わってくると思うの。からっからになるまで持って行かれても困るし。
そもそも私前に殺されてるじゃない?生き血を狙ってきたんだよね?殺したら生き血じゃないって文字を見たら理解出来るよね?解るよね?でも解らなかったんだよね?となると…人体に必要な血液量とか絶対知らなそう。からっからフラグがそこにいる。
………自分から提供するのは止めて置こう。
私が脳内で結論を出している間にも、言い争いは続いていた。
うぅ~ん。あの中に割って入るのは面倒…ごほんっ、危険なので、今の内に目ぼしい情報がないか探して置こう。
視線を巡らせると、この部屋に入った時に目に入った息子さんの机があった。その上にヨレヨレの紙が置かれている。
幸い大地お兄ちゃんに抱き上げられているおかげで視界が超高い。上からそっとそれを覗きみると、『必要な血液、三升』と書いてる。…ちょっと待って?
子供全て救う、もしくは子供一人救う分だとしても、三升ってっ。三升って解るっ!?因みに一升は1.8リットルって言われてる。3×1.8は?5.4リットル?死ぬわ。無理無理無理っ!本当にからっからフラグだったっ!あー、良かった、安易に返事しなくて。
なんつー怖い事するんだ、この人達は。
他には何か書いてないの?もう危険な事はない?
その紙に視線を戻し、書いてある文字の続きを読む。
『扉への道が開くのは年に一回。表も裏もなくなる時』
扉?…あぁ、確かにあの聖なる乙女は…って書かれてた紙の終わりの方に、『聖なる乙女の生き血を捧げよ。さすらば扉は開かれん』って書いてたっけ。成程。生き血を手に入れても、扉へ辿り着く間にも障害があるってことね。
でも、気の所為かな?この扉に関しての情報と聖なる乙女の情報って何か違うような…?
だってさ?扉に生き血を捧げたら扉は開かれるって書いてるのに、扉へ辿り着くまでに障害があるのなら、それも書かれていてもおかしくないよね?聖なる乙女の文章を読む限りだと、扉の在処はもう既に分かっている様に書かれてる。
……扉への道ってのはまた別の情報なんじゃないだろうか…?
ほら、私は今RPG系乙女ゲームに添って進んでいる訳じゃない?んで、ロールプレイングゲームに良くあるのは、先のイベントの伏線、な訳だ。…これって、所謂別イベントの伏線って奴なんではなかろうか?
……他には?他に情報は?
紙を凝視したけど特には載っている事はなさそうだった。
これだけじゃ謎が増えただけだ。他にも情報プリーズ。
視線を巡らせる。
他にも何かないのー?

キラッ。

……うん?今、机の側。壁の所に貼られたポスターのアンパンで出来たパンチが有名なキャラクター絵の目が、光ったような?
キラッ。
やっぱり気の所為じゃないっ!
「大地お兄ちゃんっ、壁っ、ポスターっ、裏っ。誰、いるっ!」
カタコトになっちゃったのは勘弁して貰おうっ。
今は狙われている事を伝える事が大事っ!
叫ぶと即座に反応してくれて、大地お兄ちゃんは私の頭を抱え込む様に抱きしめ自分の体を盾にしてくれて、それと同時に透馬お兄ちゃんがポスターの方へ何かを投げつけた。

バスッ!

ポスターが破ける音がした。その音しかしないって事は、中にいた人間は透馬お兄ちゃんの攻撃を回避したって事。

―――ガシャンッ!!

ガラスの割れる音がした。私達が通ってきた部屋、隣の部屋の窓が割れた?だってこの部屋に窓はないものっ!隠しスペースに窓はある訳がない。
音に驚いていると、バキッと壁を破って、ドンッと天井を落として、多数の忍びが一斉に現れた。
これは、ヤバいっ!
「逃げるぞっ!」
咄嗟に身構えそうになったけど、透馬お兄ちゃんの言葉に冷静さを取り戻して、一斉にお兄ちゃん達は走りだす。
私も走らないとと思ったけれど、襲撃者達は皆男。私は今ここに降ろされたら多分恐怖で走れなくなる。
それを既に解っているお兄ちゃん達は私を走らせようとはしなかった。大地お兄ちゃんから奏輔お兄ちゃんに私が手渡され、先頭を透馬お兄ちゃん、後方を大地お兄ちゃんで防御を固めつつ、家を飛び出す。
ある意味玄関のドアを破壊しておいて良かった。ドアで手間どる事がないから。
そのまま門を抜けて、てっきり車に乗りこむかと思いきや、お兄ちゃん達はそのまま道を駆け出した。確かにお兄ちゃん達の足は速いけど、車を使った方が…あ、そっか。さっき乗り込んできた連中は軽く視認した限り10人以上はいた。あんだけ人数がいて誰も車に細工しなかったなんてある訳がない。
「奏輔お兄ちゃん、降りるっ」
私は走る奏輔お兄ちゃんの腕からタイミング良く降りて、そのまま激走する。お兄ちゃん達は私を守る様に周りを囲って走ってくれる。
複数の追跡者の気配を感じる。一度気付いてしまえば、男の気配をそこら中に感じて、鳥肌が立つ。恐怖と緊張感で吐きそうになりながらも私は必死に足を動かした。
こんだけ必死に走ってるのに、大地お兄ちゃん達は相談を始めた。
「罠だったって事ー?」
「いや。罠って様子はなかったで。あの奥さんの怒りはマジもんやった」
「現れた連中は皆男だった。姫の様子を見てもそれは間違いない。恐らく金山さん達に送った陽動隊を呼び戻したんだ」
陽動隊…。私達を狙っていた実行隊の方もいずれ戻ってくると考えれば、こうやってただ走って逃げるのは正直分が悪い。
それはお兄ちゃん達も思っていたんだろう。走りながら透馬お兄ちゃんが言った。
「どっかで車を調達するぞ」
「どっかって何処ー?」
「どっかはどっかやっ。一先ず街中に出たらええっ。したらどこでも車は確保出来るっ」
「行くぞっ、姫っ」
「うんっ」
一斉に走るスピードが上がる。
流石、お兄ちゃん達の走る速度は半端ない。ついて行くだけで精一杯。でも置いてかれる訳にもいかないから。
必死で走って、住宅街を抜けて街中へと辿り着いた。
ショッピング街で、大きなショッピングモールもある。ショッピングモールの入り口には乗客待ちのタクシーが待機している。
人混みの中であればそうそう手は出せないだろう。
となると今の内にタクシーに乗ってしまった方がいいかも。
私達がタクシーへと足を向けると。

「お嬢様っ!」

呼び止められた。
この声はっ…。
振り返ると、車の中から手招きしている真珠さんの姿があった。
「真珠さんっ」
思わず駆け寄ろうとして、後ろから手を引かれた。
驚いて振り返ると、透馬お兄ちゃんが私の腕を掴んだまま、静かに首を左右に振る。
行くなって事?
でも、真珠さんだよ?
視線でそう訴えても透馬お兄ちゃんは首を左右に振る。決して盾には振らなかった。
透馬お兄ちゃんの横にいる大地お兄ちゃんと奏輔お兄ちゃんに確認してみるも、反応は同じ。
どうして?
意味が解らず視線で問いかけると、透馬お兄ちゃんはスッと視線を真珠さんに向けた。睨みつける様にそちらを見ている。
「姫。真珠さんは今任を受けている筈だな」
「え、うん。表門の調査を」
私達を襲ったのが陽動隊の方なら、表門の陽動隊に足止めを喰らっていた真珠さんがやっと解放されてこちらに応援に来たと思ったのだ。真珠さんだったら早く移動するのもなんてことない筈だし、ここにいるのもおかしくないかなって、思ったんだけど…。
「姫さん。真珠さんの後ろ。後部座席見てみぃ」
後部座席…あ、男の人が乗ってる。
「本当に真珠さんなら、姫ちゃんが恐怖している男を乗せる訳ないよねー」
確かにっ!え?じゃあ何?あの真珠さんは偽物なのっ!?
冷汗が流れる私の背中をぽんぽんと透馬お兄ちゃんはあやしつつ、奏輔お兄ちゃんに視線で何かを伝えた。
視線の先にあるのは小さな事務所のような店。
「奏輔。あれ」
「あれ?…あぁ、了解や」
え?なになに?
奏輔お兄ちゃんはその店の中に躊躇いもなく入っていった。透馬お兄ちゃんがその後をゆっくりと追い掛けるから、私と大地お兄ちゃんもそれに従い追い掛ける。
あれ?奏輔お兄ちゃん、いない?
透馬お兄ちゃんも大地お兄ちゃんも気にした様子なく歩いて行く。
一体何処に行くんだろう?
奏輔お兄ちゃんに指示を出した店を通り過ぎて、ショッピングモールの入り口へと向かう。
…ショッピングモールの中って結構な人混みだから、男の人も一杯いて辛い。棗お兄ちゃんもいないし…うぅ。癒しがいない。
せめて、せめてっ、大地お兄ちゃんの背中に貼り付いておこう。むぎゅ。
「……議題。姫ちゃんが可愛い過ぎる件について」
「異議なし。まず、背中にくっ付いてる時に軽く服の背中を握ってくるのが堪らない」
「たまに背中に額をすりつけてくるのもヤバい」
「どこもかしこもふわふわ」
「笑顔すらもふわふわ」
「照れてる顔が必殺過ぎる」
「それで殺されるなら本望」
…お兄ちゃん達がヒソヒソと何か話してるんだけど、良く聞こえない。ふみみ?
聞こうと思って、聞き耳をたてると、黙っちゃう。むむ…やりおる…。
大地お兄ちゃんからぴったりくっついて離れないようにする事だけをに意識を集中させていたら気付けば目的地に辿り着いていた。…屋上駐車場?
そこには既に奏輔お兄ちゃんがいて、その手には車のキーがあった。
奏輔お兄ちゃんの車の鍵、な訳ないよね?
キョロッと視線を巡らせると、そこにレンタルショップ専用駐車場と書いてあるスペースがあった。成程。レンタカーか。
奏輔お兄ちゃんが車の運転席に乗り込み、私達も急いでその車に乗りこんだ。
私は助手席の後ろの後部座席。隣には透馬お兄ちゃん。助手席に大地お兄ちゃん。全員がシートベルトをしたのを確認したと同時に車は走りだした。
「何処に行くの?」
聞くと、答えが帰って来ない。お兄ちゃん達もどうやら決めかねているらしい。
「いっそ鴇と合流するか?」
「姫さんが言うてたやろ。攻略対象者同士は会えなくなるって。今鴇に会いに行こうとしても多分なんらかの妨害が入る」
「でも、確か姫ちゃん、海里に会ってなかったっけー?」
あ、確かに。透馬お兄ちゃんの所に行ったら海里くんに会えた。久しぶりに会話も出来たけど、あれ?何で?
「……それは、多分…」
「多分?」
「…いや、憶測に過ぎないから言わないでおくわ」
奏輔お兄ちゃんがそう言うのなら何かしらの意味があるんだね。
私は黙って頷いた。
「じゃあ、結局何処に行くー?」
「何処におっても、奴らは追ってくるやろうし。どう動こうが結果は一緒と思った方がええな」
「確かにな。…なら商店街に帰るか」
「アウェーで戦うよりは戦いやすいかもー」
「商店街に帰るの?じゃあ、私も一旦家に寄りたい」
セーブしたいっ!
今の所、順調に生き残ってるから。念の為にセーブがしたい。それにお兄ちゃん達にセーブの本を見せておきたいってのもある。
私が家に帰りたいと訴えると、あっさり商店街へ帰宅する事が決まった。
帰る事が決まってしまえば、あっという間。
忍びに攻撃されないように、お兄ちゃん達は迂回を続け忍びを撒いて、気付けば襲撃に会う事なく帰宅していた。
もう夕日も大分傾いて、お月様がうっすらと見え始めている。朝から一連の騒動。かなり時間は経過していたらしい。
お兄ちゃん達と一緒に家に入り、階段を上がって自室に入る。
私は急いでセーブの本を開いて、今分かっている事を全て書き込んだ。
「それがセーブの本か?」
「うん」
「…見えへんね」
「だねー。姫ちゃんが何か書いてるのは解るんだけどー」
「えっ?」
透馬お兄ちゃん達も見えないのっ!?
そう言えば、ママも本は見えても文字は見えないって言ってたっけ。
「そっか。やっぱりこの文字は私にしか見えないんだ…」
ペンが特別な訳じゃ、ないよね?
普通に売ってる一般的なペンだもんね。
となるとやっぱりこれはヒロインのみが使える本って事なんだ。
私が納得しつつも、ペンを動かしていると、お兄ちゃん達は家の中を見回ってくると部屋を出て行った。
私は引き続き部屋でセーブの本を確認する。下手に動いてもあれだしね。
…ん?確かハートって残り一つになってなかったっけ?
何故か残ったハートの横に半分に割れたハートが増えていた。二つ目のハートが半分まで回復してるってこと?
もしかして、話が進んだから?だから時間経過と共に回復した?
あ、そうするともしかして、ステータスも変わってたりする?
ステータス画面を開くと、レベルが5から8に上がっていた。おおっ!?
あ、いや、待てよ?これってママが言うには恋愛レベルだって…。となると、私はお兄ちゃん達に少しときめいたって事になる…?
ふみ、ふみみっ。
じんわりと恥ずかしさが込み上げて来て、誰もいない部屋で意味もなくセーブの本で顔を隠してしまった。
と、とにかく、他の数値も確認するっ。
えっと…年齢、性別は変わりようがないとして、BWHも変わりようが……バスト、少し増えて…ごほんっ。私は何も見なかった。
それからえーっと、他のパラメータは大きな変化ないな。…え?じゃあレベルが上がった事とバストが増えたくらいしか変化なくね?
………切ない。あ、でもちょっと待って?経験値は?経験値は増えたんじゃない?
ページを切り替えると経験値が半分くらい増えている。おぉ。これは後でお兄ちゃん達に相談して割り振りしよう。
ステータス画面を消して、セーブももう一度本を確認してから机の上に置いた。これで良しっと。
さ、お兄ちゃん達の所に行こうっと。部屋を出て階段を降り、話し声のするリビングへ行くと、そこでお兄ちゃん達は顔を突き合わせ何か真剣に話しあっていた。
私参加して大丈夫かな?
こっそりとドアから顔を覗かせると、私の視線に気付いたお兄ちゃん達が笑って手招いてくれた。
あ、う…。さっきのステータスの結果を思い出して、顔が火照り思わずスススッとドアの影に隠れてしまった。
「姫ちゃーん?どしたー?」
大地お兄ちゃんに呼ばれた。そりゃこんな不思議な行動したら疑問に思うよね。
深呼吸して気持ちを落ち着かせ、顔を手で扇いで顔から熱を冷ましてから、私はリビングの中へと入った。
そんな私の可笑しな行動を気にする事なく、透馬お兄ちゃんは私に向かって手招きをした。
呼ばれるまま、側へ行くと一枚のメモを渡された。
「姫。これを見ろ」
「ふみ?」
そこには、真珠さんの文字で、『佳織様の依頼された任務へ行きます』と書いてあった。
「間違いなくさっきのは偽物だったって事だな」
「うん。一緒に書いてある真珠さんの目的地。逆方向だもんね」
お嬢様って呼んだ声も、姿もあんなそっくりだったのに。お兄ちゃん達良く気付けたね。流石。そして忍びの変化能力恐るべし。
旭に化けた時もああだったのかな?
…自分の周りの人間を拉致して、成り代わられてる。…ちょっと怖いな。
体が小さく震えているのがばれないように、私は手首を握った。
けど、お兄ちゃん達はそんなのお見通しだったようで。
私の頭をぽんぽんと優しく叩き、透馬お兄ちゃんは不敵に笑った。
「姫の事は俺等がちゃんと守ってやる。だけど姫は暫く、一人で誰かに会うのは禁止な。誰かに会いたい時は必ず俺を呼ぶように」
「ちょーっ、透馬っ。さりげなく自分だけ売り込むのやめやっ」
「そうだそうだーっ!ずるいぞーっ!そこを退けーっ!」
「絶対どかねぇっ!」
うん?争いが勃発したよ?
これって私の所為?ど、どうしたらいいのかな?
えっと、こう言う時は…。
「わかった。必ずお兄ちゃん達を呼ぶね。えへへ」
皆を呼ぶことにすればいいのだっ!どやっ。
笑顔で宣言すると、何故か三人にめちゃくちゃ頭を撫でられた。解せぬ。
お兄ちゃん達が満足するまで私の頭を撫でた後、
「さて。商店街に帰るか」
と透馬お兄ちゃんが言ったので、私達は白鳥邸を出て車で商店街へと向かった。

―――向かうはずだった。

お兄ちゃん達が先に出て、門の前に停めた車の方へ歩いて行く。
私も後を追おうと白鳥邸を一歩出た瞬間。

―――嫌な気配がした。

全身の毛が逆立つような、視線。
それは、私を狙っている様に感じさせてはいるけれど…。
視線の狙いは、私じゃない。私に向けられてはいない。
私じゃないなら、あとは―――。

咄嗟に走りだしていた。

まるでスローモーションのように。

体の動きが鈍くて。

それでも―――。

「―――お兄ちゃんッ!!」

助けたくて。

声の限り叫んで。

抱きしめていた。

全身で彼を守ろうと、私は『彼』の背を抱きしめていた。

直後に。

―――トスッ。

背中に衝撃が走る。

声も出ない。

私の脳内は、驚き振り返る『彼』の顔と、彼を助けられた事の喜びだけが占拠していた…。


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