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最終章 未来への選択編

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武蔵先生のお見舞いに行って、一か月が過ぎた。
武蔵先生についての情報は特に変化はなく、変化したと言えば鴇お兄ちゃんが家を出た事くらい。
ストーカーにストーリー通りに進んでますよ、ヒロイン補正がかかってますよと知らしめる為に敢えて家を出た。
とは言っても、鴇お兄ちゃんが今暮らしてるのは、昔鴇お兄ちゃん達が暮らしていたマンションの一室。要するに誠パパと鴇お兄ちゃん達の産みの親である澪さんとお兄ちゃん達で暮らしていた家だ。
誠パパはいつかの為にとずっと管理してたんだよね。何度か改装とか建て直しとかあったらしいけど、契約は継続していた。たまに誠パパが家に帰れない時はそこに泊まってたりしてるから暮らす分には全く不自由ない。
強いて言うなら。
「鴇お兄ちゃん、ご飯出来たよー」
「あぁ、今行く」
鴇お兄ちゃん、料理だけは出来ないからご飯が外食になってしまうのが辛いって言ってたので。私は土日だけこうやって泊りに来るようにしていた。
「美鈴。この前の案件なんだが…」
「ふみ?あれは先方の案を通すって事で解決したんじゃないの?」
「その先方が寄越した書類に一か所だけおかしな場所があってな」
テーブルの上に出来上がった料理を置いて、エプロンのポケットに入れて置いたタオルで手を拭いてソファに座る鴇お兄ちゃんの側に駆け寄る。
ひょいっと鴇お兄ちゃんの肩越しに書類を覗き込む。契約書だね。提携条件と詳細の…1つめ…はオッケ。知ってる内容だね。…2も、オッケ。…3…3?この会社との条件は二つだけだった筈だ。
「…気づかれないとでも思ったのかな?」
「だろうな。見ろ、美鈴。一番下の協賛の所」
「協賛…?えっと…都貴…?」
私と鴇お兄ちゃんの二人の額に怒りマークが浮かぶ。
「この前の、美鈴にした仕打ちを棚上げして、更にこんな条件を持ってくるか」
「………本気で提携、打ち切っちゃおっか♪」
もう、やっちゃおうっ♪
大丈夫。下で働く真っ当な社員の皆様は白鳥財閥が回収いたしますからっ♪
「…都貴静流との対決が済んだらそれもいいかもな。今は動向を探る為にもそれは避けたい」
「それも、そっか」
むぅ…残念。
「じゃあ、とりあえずその書類は話し合った条件ではないので、改めて契約書を提出するか、提携は無かったことにするかの二択でお願い」
「了解」
鴇お兄ちゃんが書類に付箋を貼って、文字を殴り書いて鞄に入れこむと、立ち上がった。
「さて。飯、食うか」
「うんっ。今日は筍が美味しそうだったから、筍ご飯にしたよ~♪」
「あぁ、いいな。旬の素材って奴か」
「多分、美味しく出来てるよっ♪」
私が胸を張って言うと、鴇お兄ちゃんはきょとんとして、それから穏やかに微笑んで。
「お前の料理が美味いのは知ってる。疑ってない」
そう言って頭を撫でてくれた。嬉しい。そして反則。
鴇お兄ちゃんのこう言う優しさってホント反則だと思う。反則には反則で返すしかないよね?
「鴇お兄ちゃん」
「うん?なんだ?」
もう既に椅子に座って箸を持っていた鴇お兄ちゃんの側に寄り頬にキスをする。
「仕返しっ♪」
「……」
あ、あれ?鴇お兄ちゃんの目が、意地悪な光を放ってますよ?
「美鈴。後でゆっくり話、しような?」
口の端だけ上げた、鴇お兄ちゃんの何時もの笑み。…の筈なのに、何でだろう?肉食獣に睨まれた気分になるのは…。
その笑みの意味を理解したのは、ご飯を食べ終わり、お風呂から上がった直後の事だった。

翌日の朝。
ベッドの中で鴇お兄ちゃんと二人だらだら過ごしていると、ほぼ日課のようになった質問をされた。
「何か変わった事はないか?」
「…特にない…と言いたい所なんだけどね」
「変化が出て来たか?」
「ううん。武蔵先生関係の変化はないの。ただね?最近私の私物が良く無くなるんだよね」
そうなのだ。本当に良くなくなるの。最初は私が落としてるだけなのかな?って思ってたんだけど。
「初めの内はね。ペンとか、ヘアピンとかその程度だったの。それくらいはさ?正直」
「あぁ…。俺達には良くある事だな。俺も学生時代、何故かペンとか消しゴムとか…酷い時は靴下とかシャツとか持って行かれた」
「シャツ…。鴇お兄ちゃんのシャツは良い匂いがするから解らなくも無い様な…って違う違う。今のなしっ。そ、それでねっ?最近はその…飲みかけのドリンク入ったペットボトルとか、い、一番気持ち悪かったのが、使ってた割り箸が、なくなってた…」
割り箸なんて一体何に使うのさーっ!
って叫びたいけど使い所も大体想像つくから嫌ーっ!!
と心の中で大絶叫していると、鴇お兄ちゃんが眉間に皺を寄せて、じっと私をみつめてきた。
「鴇お兄ちゃん?」
「…それ、いつからだ?」
「物がなくなったの?最初気付いたのは…二週間くらい前、かな?」
「…そうか。美鈴。そろそろ都貴が動き出す。気を引き締めろ」
真剣な眼差し。
と言う事は、私の物がなくなるって事も、鴇お兄ちゃんの覚える前世の記憶にあるって事だね?
私は同じく真剣に頷いた。
都貴が動くとなると…。何か予感がした。
「鴇お兄ちゃん。テレビつけても良い?」
「構わないが、この部屋テレビ無いぞ?」
「大丈夫っ!携帯で見るっ!」
枕の横に置いておいた携帯を手に取って、テレビを映す。
鴇お兄ちゃんに背中から抱っこされた状態で一緒に見れるように携帯をちょっと上めに持つ。
あ、丁度良くニュースだ。
………やっぱりね。
ニュースの内容一覧を見て、私の予感が当たった事を知った。
「…やっぱり、死んだか…」
「うん…」
タイミング良く、私達が注目していたニュースが流れた。武蔵先生が、医療ミスにより亡くなった…。
「記憶を消す薬…飲まなかったんだね…」
「美鈴。こればっかりはどうしようもない。武蔵は…記憶量が多い奴だったから。こうなるのはもう仕方ない事だと割り切れ」
「う、ん…」
二人でキャスターが読み上げるニュースをただ黙って聞いている。
「問題は…転生体が、何処に生まれるか、だな」
「ねぇ?鴇お兄ちゃん。前も思ってたけど、都貴の記憶を消すだけじゃ駄目なの?彼が初代でしょう?彼の記憶がなくなれば解決するんじゃ…?」
「駄目だ。まだ、この世界のどこかに記憶を維持している転生体がいる筈だ。そいつらが必ず都貴を守る様に動く。…言っただろう?薬は美鈴が武蔵に持って行った奴と、俺が保管している奴しかもうないと。それを他の転生体に奪われる可能性があるんだ」
そっか。またどこから襲われるか解らないんだ…。あくまで今記憶を消されたのは、あの小学生以降の転生体なんだ…。
「勿論警備に気を抜くつもりはない。だが…もしもの可能性もある。それに、あの薬はあくまでも『一番忘れたくない人を記憶から消す』薬だ。都貴がまだお前をそこまで想っていなければ意味をなさないんだよ」
「そう、だね。もし奪われて、私達に使われても最悪だしね」
「そう言う事だ」
もし私達どちらかに使われたら…、きっと私も鴇お兄ちゃんも、互いを忘れてしまう。そんなの嫌。幸せになるって決めたんだから。
「転生体については俺に任せておけ。お前は都貴にだけ気を付けていればいい。いいな?美鈴」
「うん。解ってるよ。鴇お兄ちゃん」
「良い子だ」
鴇お兄ちゃんが頭を撫でてくれるので、それに甘えていたら携帯に円からのメール着信の知らせが入った。円もあのニュースみたんだね、きっと。
メールに返信を返しつつ、私達は起き上がってちょっと遅めの朝食をとることにした。

武蔵先生が亡くなってから、また数日が過ぎた。
今回は武蔵先生の所に行くのは、桃とユメに任せる事にした。今行ってもしそこに転生体がいたら厄介だから。
なので、今日は普通に大学に講義を受けに来た。
良く物がなくなるの、と皆にも一応伝えていたんだけれど、それの所為か必ず誰か一人は側にいてくれるようになって。
私は逆にそれが少し心配になっていた。
だって巻き込んじゃったりしたら…。そう思ったから。
でも鴇お兄ちゃんが言うには、普段通りの姿を見せないと相手を油断させるなんて出来ない、って事らしく。まぁ正直言ってその通りだから普通に過ごすしか出来ないよね。
講義が終わり、皆が席を立つ中、私は少し人が減るのを座って待っていた。
…実は、皆に、鴇お兄ちゃんにも伝えてない事が一つだけある。
それは、都貴に指をべろりと舐められたあの日から、分かりやすい視線をもって私は誰かに跡を付けられている。……まぁ、誰って言うまでもないよね。都貴静流に決まってる。
二度と側に来るなって言ったのに。いや側には来てないかも、だけれども。離れてるから良いって訳でもないでしょ。
常に一定距離を保って、私が歩くと同じ速度で歩いてくる。普通にキモい。それってさ?恋心とか好感とかじゃなくて、ただの執着じゃん。
不思議なのは、都貴静流が私を好きになった瞬間ってどこなんだろって事。前世での…要するに鴇お兄ちゃんがホストだった頃の前世での私ってどんなだったんだろう?
鴇お兄ちゃんにそこ詳しく聞いておけばよかった。だって鴇お兄ちゃんがホストだった頃って、私一般家庭の娘だったわけじゃない?白鳥家が財閥継いでないんだもの。となると都貴との接点はないと思うの。大学でしか。大学で優しさに絆された?それとも、それこそ鴇お兄ちゃんに私は惹かれてて、鴇お兄ちゃんと同じ名前だからって気を許してたりしてた、とか?
前世の私ってそこまで馬鹿だった?……うぅ、何か完全に否定出来ないとこが切ない。
鞄に教科書を詰めて、立ち上がる。
さて、と。今日は華菜ちゃんと待ち合わせしてるんだよね。逢坂くんが今日は用事があるからって。そう言えば逢坂くんの用事って何なのかな?
「あ、白鳥さーん」
名を呼ばれて、はい?と振り返る。
すると教室内に残っていた数名の女子がこっちに向かって手を振っていた。いかにもな大学生女子の三人組。特徴と言う特徴はあまり感じられない…?
「白鳥さんってさー?サークルに入ってなかったよねー?」
サークル?うん。入ってないね。
事実なので頷いておく。
「あ、じゃあさじゃあさーっ。今日うちのサークルで飲み会あるんだけど来なーい?」
「日高(ひだか)さんの入ってるサークルの?」
名前が日高って事しか私貴女の事知らないんだけど。何故お誘いが?
「ちょっと止めときなよー。アンタのとこの飲み会いつもカオスじゃん。それに付き合わせたら白鳥さんが可哀想だよ」
「そうそう。そもそも白鳥さん、まだ未成年でしょー」
「えー?飲み食いするだけだもん。お酒は勿論飲ませないから」
うんうん。あのね?そもそも私貴女方のこと詳しく知らないのね?何でお誘いなの?
「えーっと、ごめんね?日高さんって何のサークル入ってるの?」
断るにしても、乗るとしても、やっぱりそこは詳しく聞いておかないと。
私は彼女達に近寄って、問いかける。すると、日高さんは嬉しそうにニンマリと笑って、私の手に何かを握らせた。
これ何?……形から言って携帯チャームか何かだよね……ハッ!?これはっ!?
「白鳥さんなら絶対楽しいと思うの。行かない?」
い・き・た・いっ!
握らされたのは、今ママとひっそりこっそりと本当にばれないように、ひっそりひっそりやってるBLゲームの推しメンチャームだった。同人グッズって奴ね。その円型のチャームの裏にはサークル名が書かれていた。
てっきり大学のサークルの話かと思ったら、そうではなく、ガチでそっち系のサークルの話だったようだ。
「私も行っていいの?」
「勿論っ!藍から話聞いてずっと会いたいって思ってたんだっ」
「そうなんだっ。もっと早く声かけてくれたら良かったのに」
「やー、それは無理でしょ。白鳥さん、住む世界違い過ぎるし」
「えー?そんな事ないよー。見た目お嬢様纏ってるけど中身ただのオタだよ~?」
私と日高さんは急激に距離が近くなった。何故って?それがオタと言う物なのです。そもそも『藍』って愛奈のペンネームだからね。ようは愛奈のオタ友って奴だね。
暫く日高さんと会話を楽しみ、私達の会話に付いて来れない女子二人が日高さんを求めていたので、メールアプリのアドレス交換だけして私はその場を去った。
私も華菜ちゃんと合流し、今日のサークル飲み会に参加する旨を伝える。すると、
「当然私も行くよっ。いいよね?美鈴ちゃんっ」
と両手を上げて宣言してくれた。勿論断る理由はないので、直ぐに日高さんに連絡して許可を貰った。
さてさて。こう言う事を考えるのは、正直どうかと思うんだけど。時が時なので。仕方ないって事で、言いますね?
…日高さん、転生体じゃないよね?
だって唐突過ぎるでしょう?学校に通い始めて結構経つのに、何で今?……怪しい。
疑ってかかるのはあんまり良くないって事も知ってるんだけど…怪しいよね?
という訳で、やってきました。飲み会に。
「ちょ、おい。日高。お前が連れてきたのレベル高過ぎね?」
……サークルの飲み会って言ったじゃん?これ、合コンだよね?どゆこと?
私と華菜ちゃんが未成年な事もあって、飲み屋は不味いと言う流れになって、今はカラオケに来ている。ここなら飲める人は飲んで、飲めない人は歌ったり食べたりして楽しめるから、らしい。
そんな事はどうでもいい。私の隣には華菜ちゃんと日高さんが。
向かいには男が三人。左から順に、ちゃらい、ちゃらい、ちゃらいで構成されております。碌なのいねぇ…。どんなちゃらいのかって?右から順番に、顔中ピアスまみれ、茶髪ドレッド、首にどでかいタトゥー(漢字間違い)の典型的チャラ男集団です。
「…って言うかさ。今回は女だけのサークル飲み会なの。なんでアンタ達いるのよ」
あれ?もしかして、日高さんは元々私達だけでやるつもりだったのかな?
「決まってんじゃん?俺達彼女欲しいし」
「お前が集まったり飲みしたりする時、いっつも女子だけじゃん?」
…そりゃそうだろう。腐女子の集まりなんだから。女子しかいなくて当然だよね。
「しかも、愛想も対応も良い女子ばっかりだしな」
そりゃそうだよ。秘密知られたくなくて、猫のフル装備なんだから。滅茶苦茶愛想良くなるか、一気に無表情になるかの二択に決まってる。
「それに俺達を気分よくさせてくれるし。なんつーの?盛り上げ上手?」
でしょうねっ。だって自分を対象にはしなくていいけど。勝手に盛り上がって男同士で絡んでくれたら嬉し…げふんげふんっ。
「ご、ごめんねっ、白鳥さんっ、花崎さんっ。こんな予定じゃなかったんだけどっ」
「あ、うん。大丈夫。察したよ」
「私も平気。ただ、ごめんね?日高さん」
華菜ちゃん?私の左手掴んでどうしたの?自分の左手と並べて…うん?
「私達、もうほぼほぼ人妻みたいなものなの」
ちょーっ!?華菜ちゃんっ!!そ、そそそそれは唐突過ぎないかなーっ!?
指輪を見せつけた華菜ちゃんのドヤ顔と、呆気に取られてる男三人。更に、何故か食い付いてきた日高さん。何、このカオス。
「二人共こんなに美人だもんねっ!藍にもカッコいい彼氏いたしっ!そう言えば白鳥さんの双子のお兄さんもカッコいいよねっ!ちょっと、二人共っ、彼氏の写真あるでしょっ!?見せて見せてーっ!」
ぐいぐい来るねっ!
「お、俺達にも見せろよっ!」
「そ、そうだそうだっ」
「俺達よりカッコ良く無きゃ認めんっ!」
…別に貴方達に認めて貰う必要はないんだけど…ま、いっか。
私、写真全般苦手なんだけど…その、鴇お兄ちゃんの写真だけは携帯に入れてるんだよね。…えっと、画像、どこだったかな?
私が画像を探している内に、華菜ちゃんが先に逢坂くんの画像を出して見せていた。
「……なんつーか、普通?」
「だな。…可もなく不可もなく?」
「一般的?」
あ、華菜ちゃんの額に怒りのマークが…。
「確かに一般的だけど。恭くんはもう就職決まってるからね?何なら少しずつだけどもう仕事してるから。高校の時はエイト学園の生徒会長だからね?アンタらみたいな大学卒業してもなお遊んでる連中とはそもそもレベルが違うからね?」
うんうん。言って良しっ!もっと言っても良いよっ、華菜ちゃんっ!
って言うか大学生じゃないのっ!?彼らっ!!華菜ちゃん、その情報どっからっ!?
因みに逢坂くんが働いてるのは、優兎くんの会社です。本当は起業したかったらしいんだけど、その為にはまず修行をつまないと、とか何とか色々言われて優兎くんが上手い事持って行きました。くそー、ズルいぞ、優兎くん。私も逢坂くん部下で欲しかったっ!だが華菜ちゃんが確実にうちの会社に入ってくれるって言うから我慢するけどねっ!
「一般的って、カッコいいじゃん、彼。男は見た目じゃないよっ!中身っ!」
日高さん、目がらんらんですよ?楽しそうだよ?そして、そのターゲットが私に切り替わったよ?
仕方ないなぁ。画像を選び、皆の前に見せた。瞬間、華菜ちゃん以外の全員が停止した。
「………レベルが、違い過ぎる…」
「いや、待てっ。望みを捨てるなっ!外見が良い奴程中身が屑が多いっ!」
「美鈴ちゃんの彼氏。すっごく優しいから。まぁ美鈴ちゃん限定だけど」
「実は顔だけだったりっ」
「エイト学園で伝説と言われた人だから。頭も運動能力もトップクラス通り越して頂点だから」
「とか言いながら金がないとかオチがついたりっ!」
「今日本トップに君臨する白鳥財閥の総帥補佐してるから」
男達の悪あがきを華菜ちゃんがばっさばっさと斬り捨てる。そして残った屍累々。
「残念でしたー」
日高さんが嬉しそうにウヒウヒ笑う。すると、
「そうだな」
とあっさり認める人物が…。
………お?ちょっと待って?真ん中のちゃらいのの反応が気になる。もしかして、これは…。
「ね?ね?日高さん。もしかして、日高さんとそっちの真ん中の彼って仲良かったり?」
つんつんと日高さんを突くと、ハテナマークを浮かべながらも頷いた。
「小学校からの付き合い。小中高と何故かクラスが全て一緒だったのよ。腐れ縁」
「って事は、日高さん。やっぱりもう成人してるんだ?」
「あぁ。うん。私専門入った後、学びたい事あって大学に入ったんだ」
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と、言う事は…。じっと真ん中のチャラい男を観察してみると、ばつが悪そうにすぐさま顔を逸らした。ははーん?これは、やっぱりそう言う事かな?。
両サイドに座る二人にも視線だけで確認とると、しっかりと頷かれた。おおーっ、これで確定だっ。両サイドの二人は別として、真ん中の彼は日高さんの事が好きなんだー。だから、こうやってオフ会にも無理矢理参加して他の男がいないかどうか確かめてるんだ。
なーんだ。だったら最初からそう言ってくれれば味方したのにー。
ね?華菜ちゃん?
視線だけ華菜ちゃんに向けると華菜ちゃんもしっかりと頷いてくれて。
「そう言えば日高さんの彼氏は?」
「私ー?あははっ、いたらこんなのとつるんでたり、二次元に嫁求めたりしないよー」
「二次元の嫁は彼氏がいようがいまいが関係ないよっ!」
「美鈴ちゃん。食い付くとこそこじゃないよ」
おっといけない。ついつい腐心が…。で、えーっと、彼氏は今いないの一言を聞いて彼の反応は…お、上々じゃない?
「じゃあ、例えばさ、日高さん。この三人の中で言うなら誰がタイプ?」
「えー?この三人ー?」
「そうそう。世の中にこの三人しか男がいなければ誰選ぶ?」
華菜ちゃん、一気に制約がついたねっ。
「そうだなー。この中だったら元(はじめ)を選ぶわ」
元ってどれだ?周りの反応と当人の反応を見る限り、日高さんに惚れている彼っぽいっ!良しっ!脈あるよっ!!
これは、今日の話の種は決まったっ!
そこから私達は楽しい楽しい恋バナトークに花を咲かせまくるのでした。
でもさ?
会話の最中それとなく日高さんにお母さんの名前を聞いたんだけど、真貴子さんって言うんだって。鴇お兄ちゃんが言うには都貴は必ずショウコって女性から産まれるらしいのね?だとしたら、日高さんは違うんだよね?
うぅーん。ちょっと疑り過ぎたかな?ちょっと反省。
楽しいカラオケ飲み会タイムが終わり、私達は解散する事になった。
ちゃら男達にちゃんと日高さんを送る様に言うと、
「ええー?一人で平気だよ?」
と断ろうとしたので、せめて元って言う日高さんに気があるチャラ男だけは持って行けとごり押しした。
私達四人で、頑張れと視線だけで応援する。だがしかし、無理矢理襲ったりしたら殺す、ともちゃんと伝えて置いた。うん。大事。
残った男二人は邪魔だったので、さっさと追い返した。それこそ彼らに送られる方が色々と身の危険を感じる。
カラオケの入り口にある椅子に座りつつ、携帯で電話しようとしていると、
「あれ?王子?華菜も?」
円の声が聞こえて、驚き顔を上げると、そこには円が誰も連れずにそこに一人こちらに歩いて来ていた。
「円?なんでここに?」
「剣道部のサークルのお付き合いって奴だよ。全く。サークルの飲み会って言うから来てみたら言い方変えただけの合コンだったんだ。彼氏持ちのアタシには関係ないってさっさと出て来たんだよ」
肩を竦める円に私達は苦笑を返す。
「何処も一緒だね」
「だねー」
「って事はアンタ達もかい?」
頷くと円も苦笑して、私の隣へと座った。
「ここからだと家も結構近いし歩いて帰ろうと思ったんだけど」
「駄目、絶対っ!」
「って華菜ちゃんが言うから、大人しく華菜ちゃんの言う事を聞いておこうかな?って」
「成程。それで?華菜は誰に電話かけてんだ?」
聞くまでもなく逢坂くんだとは思うんだけどね。実際そうだったんだけど…。
「繋がらない…。コール音はするんだけど直ぐに留守電に変わっちゃう。おかしいな…今日は用事あるって言ってたけど、そこまで遅くなるような事はないって言ってたのに」
「そうなの?」
腕時計で時間を確かめると、既に20時は回ってる。確かに、この時間に繋がらないと逆に心配だよね。
「…華菜ちゃんは逢坂くんに電話してて。私は真珠さんに連絡とってみる」
携帯を手早く操作して真珠さんにかける。……繋がらない?
……あらら?何か雲行きが怪しくなって来たなぁ…。これは、念には念を入れておいた方がいいかな?
携帯を再び操作して、鴇お兄ちゃんに電話をかける。…やっぱり繋がらない。
「円。円は風間くんに連絡着いた?」
横で携帯を操作している円に尋ねると、首を横に振った。うん。これは本当に可笑しな事態になって来たね。
「どうする?美鈴ちゃん」
「歩いて帰る、って言いたい所だけど…」
「けど?」
それだと、流石に不味い。自分から大きな隙を与えるような事をする訳にはいかない。それに、何処かで私達の会話を聞いて居るのだとするならば。

―――にゃーにゃーにゃー。

ほら、やっぱりメールが来た。
もう確信して良いね。都貴の転生体か、もしくは都貴本人が何かしらの妨害をしていると考えるべきだ。
念の為にメールを開く。
すると、そこには鴇お兄ちゃんからのメールがあり、
『車を回すからそれに乗って帰ってこい』
とあった。なりすましメールか。ふぅん…。本当に言葉通りのなりすましメールだよね。
あからさまな罠だ。罠だって解るけど、ここは乗っておく。
「鴇お兄ちゃんが車回してくれるって。少し待ってよ~。円も一緒に乗せてくよ~」
態と明るく言って、二人に不安感を与えないようにする。二人も私がいつも通りに話している所為か、ほっと安心した様な顔をして改めて携帯に向き合い己の彼氏と連絡をつけた。
電話は繋がらないけどメールは繋がる。私が今それを実証したから。
暫くして、カラオケの外に出ると車が一台停まっていた。……あの姿は金山さん?うわー、増々怪しいじゃない?
けど、今は何も気付かないふり。二人をちゃんと送って貰わないと。
運転席にいる金山さんにお礼を言って、車に乗りこむ。三人で後部座席に座ると車はスムーズに走りだす。
今日のカラオケであった日高さんの恋愛事情を話している間に車は円の家に到着。円と別れ、次いで車は走り華菜ちゃんの家に到着。華菜ちゃんを降ろして、また車は走りだす。
……私の家は華菜ちゃん家の近く。なのにどうして離れて行くのかな~?
「………何処に行く気?」
私はゆったりと座席の背もたれに背を預け、腕を組んで問いかける。
「鴇様のご自宅にお連れするおつもりでしたが…?」
「私は、そんな事頼んだ覚えないんだけど…?」
家に帰るとは言ったけれど、鴇お兄ちゃんの家に連れてってとは頼んでいない。
「おや?今日は泊まりに行かないのですか?美鈴様」
「…相変わらず下手な変装ね。ストーキングしてる時もそうだったけれど。相手がどう言う人物か、しっかり調べてから来なさいよ。それで?……私を何処に連れて行く気なの?都貴くん」
「っ!?、……バレてたか」
金山さんのふりをしていたんだろうけど見た目からして若さも声も違うからバレバレ。帽子でどうにか隠せるほど私は鈍感じゃない。
「もう一度聞くけど。何処に連れて行く気なの?」
「俺の家だよ。白鳥さんを嫁に貰う為にね」
そこまで私にこだわって何になるんだか…。
車はスピードを上げて走っている。今飛び降りたら危険だって事も解ってる。正直同じ空間にいるのも気持ち悪いけど……今は黙って目的地に着くのを待つしかないか。
また暫く車は走り、そしてついた場所は…確かに都貴くんの家だった。きっと独り暮らしように間借りしてるマンションの一室。…見覚えがある。ここって…鴇お兄ちゃんがゲームの中で住んでた家なんじゃ…?
「さ、降りて下さいよ、美鈴様。降りなければ、車で犯す事になりますが?」
やれるものならやってみなさいよ。…と言いたい所だけど、車の中は抵抗がし辛いので今は我慢。
大人しく車を降りて、キョロキョロと辺りを見渡す。もう夜も遅い所為か人は誰もいない。マンションの部屋の明かりですら、消えている所もチラホラ見える。
「何か面白いものでも?」
「…特には」
「じゃあさっさと中に行こう」
「……どうして私が都貴くんについて行かなきゃいけないの?ましてや家に連れ込まれて襲われそうになってるのに。付いて行く必要性が無い」
言って、睨みつける。すると都貴くんは幸せそうに、けれど明らかに歪んでいる笑みを浮かべて、私の頬に触れた。
「あるよ、必要性。ほら、これ」
これ、って携帯?
一体何の…、ってこれ…誠パパ?誠パパと知らない女性がホテルから出て来ている画像だ。
「まだ、あるよ。ほら、こんなのも」
こっちも誠パパだ。鴇お兄ちゃんも写ってる。何か怪しい封筒を私の知らない男性に受け渡している画像。
「これを、ネットにあげたらどうなるかな?」
どうにもならない。私が全力で叩き潰すから。…でも下手したらもっと何かを持っているかも知れない。それを聞き出してからでも遅くはない、か。
ぎりっと手を握り、反撃したいのをぐっと堪えて私は都貴を睨んだ。
「さ、俺の部屋はこっちだ」
腕を引っ張られ、マンションの都貴の部屋まで引き摺りこまれる。靴も脱がないまま、ベッドの上に転がされた。
「一つ、聞かせて」
「なに?」
都貴が私の上に覆いかぶさる。
「貴方が持ってる情報はそれで全部?私が貴方の嫁になれば、それは当然全て私に明け渡してくれるんでしょう?」
「勿論。嫁のものは旦那のもの。旦那のものは嫁のもの。だから白鳥さんが俺のものになれば、俺のものは全て君のものだ」
はぐらかした…。って事は情報はまだある上に、更に何かまだ優位に立てるものがあるって事か。しかもこんな事をしでかしても怖くない何かが都貴の会社の方にもあるって事だよね。
……だとするなら、いっそ。
両腕をベッドに抑えつけられてはいるけど…、足は自由なんだよね。
私は精一杯の力で、相手の股間を蹴りつけた。
「―――ッ!?!?」
手の力が緩んだ瞬間に、頬を殴り飛ばす。急ぎ起き上がって自分の携帯を床に叩きつける。
「て、めぇっ」
「なぁに?」
にっこりと優雅に微笑んで見せる。
「男が、怖いんじゃっ…」
「ふふっ。残念ながら、もう怖くないの。私は鴇お兄ちゃんのものになった時に、心が解放されたの。鴇お兄ちゃんが私を解放してくれたんだよ。男への恐怖って言う、貴方の呪いからっ!」
そう。私はもう男の人は怖くない。鴇お兄ちゃんが私を初めて抱いてくれた時、スゥッと心を縛る恐怖が、トラウマが消えて行くのを感じた。そしてもう一つ。自分もまたこのストーカーに呪いをかけられていた事に気づいたんだ。
ストーカーから逃げられなくなる様に、恐怖と言う呪いをかけられていた事実に。
「確かに私は強くない。けど…貴方みたいな外道に黙って犯される程落ちぶれちゃいないっ!」
「なん、だと…?てめぇは自分の立場が分かってるのか?こっちには…」
「切り札があるって?好きなだけばら撒いたらいい。私はそんなのに負けないわ」
不敵に笑う。だって私は負ける筈ないもの。私には、

―――バァンッ!

ドアが派手な音と共に開けられる。そして、

「美鈴ちゃんっ!」


―――大好きで情報通な親友と、


「恭くんっ!片っ端から怪しい情報源を探りだしてっ!」
「了解だっ」

動き始めた音が響く。


「王子っ!!」


―――それぞれに揺るがない強さを持った仲間と、

「双子の兄さん達っ!やっぱり警察を呼んだ方が良いっ!」
「分かったっ!」
「風間に伝えるっ!」

コツコツと歩く音が聞こえて、ふわりと優しい風が私を包む。


「美鈴。待たせたな」


―――愛してやまない大切な人がいるんだからっ!


私を抱きしめてくれる力強い、暖かい腕。


「負けないっ。今度こそ、終わりにしてみせるっ!都貴くん、私から貴方を解放するわっ」

きっとこれが私と都貴くんの最後の対峙となる。
最後にしてみせるっ!
私は、もう―――負ける訳には行かないんだっ。
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