『自由』

Liz

文字の大きさ
上 下
1 / 2

望んだ世界。

しおりを挟む

「うし。」
何故か決まって、食事‎担当は僕。
あいつらが作業してる間に料理をして、出来たら呼びに行く。
確かアリアが中央フロアに居た。まず行くか。

ーーー

「飯だけど。」
「ほんと?!すぐ行くー!俺よりヴィーを見てきてあげてよ!」
中央フロアの巨大ツリーで作業をしながら返事をしてくる。怖くねぇのかよ。ムカつく。
「分かってる。あいつは僕の最重要案件だ。」

まさか、本当にここを歩けるとはな。
あいつらに着いてきて、何かあるとは思ったが、ここまで来るなんて。
螺旋階段を上がって、2階の廊下を歩く。
赤い絨毯。縦長の窓。所々にある鎧。
スケボー出来そうなくらい長い長い廊下。
この廊下の1番端の部屋。
そこにあいつが居る。

「ゲヴィヒト。」
「あ、」深紅の短髪。揺れる黄金の瞳。
全ては、こいつから始まった。
「飯。」
「あ…、飯…。」
今までずっと、読んでいたんだろう。
床には、医学についての本がどっさり積んであった。
「お前なぁ、いい加減飯のある生活に慣れろって。」
「わ、悪い…。」
しおらしくなりやがって。結局、同じ事を繰り返すだろうに。
「本はそのままで良いからついて来い。」
「ん。」
ゆっくり立ち上がると、大きく伸びをした。小柄だった癖に、こんな短期間でこんなに伸びやがって。ムカつく。
「腹減ってるか?」
「…、まぁまぁ。」
まぁまぁってなんだよ…、どっちかにしろっつーの。

1人で上ってきた螺旋階段を2人で下って、中央フロアに。
「お、ヴィー!お帰り!どう?気に入った本は見つかった?」
「うん。ありがとう、リア。」
「俺はなーんにもしてないよ!よし、ご飯食べよ!」
アリアは、ツリーから滑り降りてきた。
勢い余りすぎて、僕とゲヴィヒトが止めて無かったら多分、あっちの玄関まで吹っ飛んでた。
「今日のご飯は?」
クリスマスだから張り切ったなんて思われたくねーなー。
「…バイキング。」
ボソッと言ったはずなのに、アリアはちゃんと聞き取った。
「…、は?」
豆鉄砲食らったような顔。
「はァ?」
「え…、何て?」
驚き過ぎだろ。大袈裟だぞ。
「バイキング。」
「え、マジ?!」
ようやくはっきり理解したようで、分かりやすく、キラキラした目になった。
「おう。」
「よっしゃぁっ!行くぞヴィー!」
「ぁ…、」
まるで興味無さそうなゲヴィヒトを引っ張って、俺を残して食堂へ走って行った。
「ったく…。疲れる。」
とか言いながら、口角はさっきから上がりっぱなしで。

こいつらと居ると、疲れるけど飽きねぇんだよな。
ほんと…、こんな事になるとは…。
僕正直、おまえらの夢、叶うと思って無かったぜ。それを叶えちゃうんだもんな。

すげぇよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

婚約破棄は結構ですけど

久保 倫
ファンタジー
「ロザリンド・メイア、お前との婚約を破棄する!」 私、ロザリンド・メイアは、クルス王太子に婚約破棄を宣告されました。 「商人の娘など、元々余の妃に相応しくないのだ!」 あーそうですね。 私だって王太子と婚約なんてしたくありませんわ。 本当は、お父様のように商売がしたいのです。 ですから婚約破棄は望むところですが、何故に婚約破棄できるのでしょう。 王太子から婚約破棄すれば、銀貨3万枚の支払いが発生します。 そんなお金、無いはずなのに。  

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

処理中です...