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第2章

第5話 盗賊――シルフェルスside

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「誰!?」「!? シュンどうしたの!? お前! 何者だ!? シュンを離せ!」

 シュンの叫び声が聞こえて飛び起きた。
 男がシュンの腕を掴み、押さえている。

 盗賊か⁉
 この距離で、気配を感じなかった所をみると、恐らく無音や認識困難、もしかすると、隠蔽のスキルまで持っているのかもしれない。

「何するの!? 離しンングッ!?」

「少し黙ってな!」

 男はシュンの口を押さえて、腹を殴り付けた。

「子供に乱暴をするな! 何が目的だ!」

 僕は手元の弓矢に矢を番えながら、叫んだ。

「おっと! それを下ろしな? この可愛い嬢ちゃんに当たるぜ?」

 男は気絶したシュンを盾にして、下卑た笑いを浮かべながらそんな事を言い放った。

「くっ! 目的は何だ? 金か?」

 男を刺激しない様に、弓を下ろしながら、改めて問う。

「そうだな。金は勿論頂くが、この嬢ちゃんは珍しい髪の色をしてるからな。奴隷商にでも売りゃ金になるだろ」

 ヒヒッと男は喉を鳴らしながら嗤い、シュンの髪の毛をベロリと舐めた。

「キサマッ! ッ⁉」

 思わず弓を上げると、男はシュンに隠れるように身を動かす。

「兄ちゃんアブねぇなぁ? 嬢ちゃんを殺す気か?」

 男はケヒヒッと嗤いながら、楽しそうに目を細めている。

「外道め! 人族の英雄は立派だと聞いていたのに、キサマには恥というものがないのか!」

 目の前の男への嫌悪感と苛立ちから、言葉を荒げてしまうのを止められない。

「そんなもんで飯が食えるなら、世の中オレ達みたいな輩は出てこねぇんだよ。兄ちゃん」

 男は少し鼻元に筋を浮かべ、口を歪めながら言う。

「ケッ! 胸糞悪くなっちまった! 命は取らずにおいてやろうと思ったが――おい! テメェラ! この兄ちゃんを殺っちまいな!」

 男が声をかけると、林の中から20人程の男達が現れる。

「オレはお頭の所に、この嬢ちゃんを連れてく。あとはテメェラに任せたからな。金目のモンちょろまかすんじゃねぇぞ⁉」

「へいっ! もちろんでさぁ!」

 男がシュンを抱え、林の中に消えていく。

「待て!」

 弓を構えるが、男はうまくシュンを盾にして、闇の中に消えていった。

「クソッ!――それで? 僕の相手はあなた方がするというわけですか?」

 周りをゾロゾロと男達が囲み出した。
 早く追いかけないといけないのに――面倒な。

「兄ちゃんからは金目のモン貰わねぇといけねぇからなぁ。それに、最近はお頭の命令で殺れてねぇんだよ。おかげでこっちは欲求不満気味でな。兄ちゃんにゃ気の毒だとは思うが、金と命を置いてってくれや」

 周りの男達は、短剣や直剣、大剣など、様々な武器を構えている。
 全員に共通しているのは、下卑た笑いをクヒヒッとあげている事だ。

「僕としては、大人しくあの子を返して頂きたいだけなんですが……聞いていただけないですか?」

 男達はキョトンとした顔で周りの仲間と顔を見合わせている。

「ダッハハハハハ! 兄ちゃん面白ェな! オレタチがそれで、『はい、そうですか、じゃあお返しします』とでも言うと思ったのかァ⁉」

 次の瞬間、全員揃って大爆笑している。
 まぁ、そうだろうね。

「兄ちゃん、いいから金を置いててててててて!」

 口を開いた男の足には、矢が二本刺さっている。

「ハァ……分かりました。あなた方にアジトの位置を聞き出して、彼女を迎えに行きます」

 僕は改めて弓を構え、二人の男の腕と足を貫く。

「テメェ! よくもやりやがったな!」

 一番近くにいた、短剣の男が迫る。

「グェッ⁉」

 至近距離から風弾を腹に撃ち込む。
 風の塊を飛ばす初期の魔法だけど、使い手次第では、岩も砕ける。
 当然手加減はしておいた。

 直剣の男は剣を受け流して、拳を食らわせた。
 大剣の男には風刃を使って、身体中を斬り裂いた。

 この男達は、シュンを連れていった男よりも格段に腕前が落ちる。
 統率も連携も、まともに取れていない。
 これならば、小鬼の王に率いられた小鬼族の方が連携だけは上手かった。

 一人、また一人と倒していき、残りは一人だ。

「ヒッ! ま、待ってくれ兄ちゃん! 連れの女の子は返す! 返すから! だから、止めてくれ!」

 男は、尻餅をついて、後退りながら、武器を棄てた。

「ありがとうございます。分かっていただけて良かったです」

 盗賊とはいえ、人の子ならば、ちゃんと分かってくれるはずだ。

「あぁ。オイラ達のアジトはあっち――

 男の指差す方を向く。

 だよ!」

 男の袖口から鉄杭が飛んできた。
 僕は首を反らし、鉄杭を躱す。
 そのまま、反射的に手に持っていた、直剣の峰で男の顔面を殴った。

 しまった。

 最後の一人を気絶させてしまった……
 起こすにも、全員完全にノびてしまっている。

 シュンが危ないのにッ!
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