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第2章

第2話 旅立ち。

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 翌日、朝から旅支度を整え、簡単な革のバッグを肩からかけて、シルと一緒におうちを出る。
 結構長くお邪魔していたから、少し名残惜しい。
 まぁ帰ってくるんだけどね。

 そのまま村を降りる。

「ちと古いもんもあるが、ある程度の夜営道具は入れておいたぜ。食糧は出来るだけ保存が効くもんにしておいたが、最悪そこらで狩って調達してくれ。まぁ途中に立ち寄る村なんかで補充出来るだろうから、あんまり心配はしてねぇがな」

「シュン様、シルフェルス様。旦那様がご迷惑をおかけして申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。こちらは謁見用の正装と、シュン様にご用意した普段着となります」

 スリングさんとセフィさんがそれぞれ革袋を渡してくれる。
 シルと私で分けて持つ。
 念の為、食糧と金銭については、二人で分けた。

「スリングさん、セフィさん。ありがとうございます! セフィさんは普段着まで用意してもらって」

 私はスリングさんとセフィさんに頭を下げる。

「いえ、シュン様。可愛い女の子はお洒落をしないといけません! 女の子は常に身嗜みを整えておかなければ、素敵な殿方を射止める事は出来ませんよ? それに、シュン様は愛らしいので、いつも可愛くあってほしいというのが、セフィのお願いでございます」

 そう言ってセフィさんはウィンクをしてきた。
 セフィさんもお茶目で可愛いと私は思うよ。

「それじゃあ、くれぐれも王様に粗相のない様にな。あくまで任務でもあるから、あんまり寄り道すんじゃねぇぞ?」

「解ってますよ、族長。子供扱いするのは止めてください」

 セフィさんとスーちゃんが別れのハグ(セフィさんが頬擦りしてるだけ)を私の頭の上でしてる中、シルとオジサマはそんなやり取りをしていた。

「それじゃあ、いってきまーす! あ、オジサマ! ゴブ太郎達の事、よろしくお願いしますねぇー!」

「おう。あいつらも最近は言葉を少しずつ覚えてるし、大丈夫だろうよ」

 小鬼族については、オジサマに任せて置いていく事にしてる。
 そもそも、あんなに沢山連れていけないし、人族の村や街に連れていけない。
 見送りの皆に手を振って、私とシルは村を後にした。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 村を出て半日。
 やっと私とシルは大森林の出口に来ていた。
 太陽の光が眩しい。
 よく考えると、私森の外に出るのって初めてな気がする。
 あ、いや、ちょっと出たよ。小鬼の王の時に。

 でもあの時とは少し違う。
 大森林の東はレシット山脈に面していて、岩場に近かった。
 それに対して、こちら、西側は、様子が違った。

 見渡す限りの大草原。
 森の中とは違って、心地良い風が頬を撫でる。

「さ、シュン。日が昇っている間に、一番近い村まで行きたいから、少しだけ急ごう」

「うん! 一番近いとこってどんなとこなの?」

 私は、風に流されて少し乱れた髪の毛を直しながら、聞いてみた。

「うーん。特にどんなって聞かれると困ってしまうね。普通の村だよ? 特産品は小麦だね」

「そっか。今日はそこに泊まるの?」

「そうだね。そこからは、更に西に向かいながら徐々に北西に向かうと王都に着くよ。途中の街にも寄るけど、どうしても夜営が必要になると思うから、あまり最初から飛ばさずに行こう」

「わかった! じゃあ行こっか! スーちゃんはここね。」

 スーちゃんは胸元から出てきて、胸ポケットの中に収まる。
 頭だけピョコンと出していて、可愛い。

 シルと無理がない程度に駆ける。

 スーちゃんは森から初めて出たからか、周りをキョロキョロしながら、時折「キュ?」って鳴き声をあげてる。
 そんな私も久し振りの森以外の景色についつい目移りしてしまう。
 といっても、草原が続くだけで、大きな変化はないんだけど。

 そう思ってると、前方に草原が途切れている部分がある。

「あ、シュン。街道に出たよ。ここからは、道に沿って進めば、王都に着くよ」

 どうやら、ウィスタリア王国と南の諸国とを繋ぐ街道に出たらしい。
 ここを真っ直ぐ南に行くと、南方連合という、複数の国が折り重なった国に着くらしい。
 逆に進むと、緩く蛇行しながら、ウィスタリア王国内を進み、王都へと着くらしい。
 あくまで、聞いた話なので、詳細な地理までは解らない。

 街道に立ち、んーっと伸びをする。
 慣れたとはいえ、やっぱり木の上や草の中を歩くより、砂利道でも道を歩く方がストレスを感じない。

 そこから進む速度は少し落とし、シルと他愛ない話をしながら、進む。

 あ、畑がある。
 森にある野菜やハーブの畑じゃなく、小麦の畑みたいだ。
 そういえば、時々行商や農家の様な人ともすれ違う様になってきた。
 大体牛で荷車を引いてたり、馬に荷車を引いてるから予想だけど。

「シル。この感じだと、村まではあと少し?」

「そうだね。あ、ほら、見えてきたよ」

 シルの言葉に前方を見ると、農村というのはこういうのだろうって村が見えてきた。
 木材を使った簡素な建物、住民が全て顔見知りの様な雰囲気、元気よく走り回る子供達。
 村の中に入った私達の傍を木の棒を持った少年を先頭に数人の子供が駆けていった。

 この世界に来て、初めて人族を沢山目にするが、大体は金髪か茶髪だ。瞳の色は碧か茶。
 私の黒髪、黒眼が目立つのか、余所者が珍しいのか、遠巻きにこちらを見ながら、こそこそと話をしている人がちらほら目に入る。

「ほら、シュン。今日はこの村で宿を取るよ。着いてきて」

 居心地の悪さを感じながら、私はシルの後を着いていく。
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