10 / 32
第1章 転移~小鬼族対戦編
第8話 スリングさんは冗談がお好き。
しおりを挟む
「シュン。起きて」
「ふぇ? お兄さん誰!? 私の部屋で何してるの!?」
見覚えのないイケメンお兄さんが、私の部屋で私を起こすとか、どういうシチュエーション!?
いや、あれ?
待て、見覚え……あるぞ?
「シュンは朝が弱いの? 僕だよ。シル」
あ。そうだった、訳の解らない世界に来たんだった。
頭を押さえてる私を見ながら、シルは苦笑している。
「もう朝の見廻りは終わったから、今日は夕方まで付き合えるよ。ひとまず朝御飯にしようか。用意が出来たら、昨日ご飯を食べたとこまで出てきてね」
それだけ言って、シルは部屋を後にする。
外の様子を見てみると、太陽は真上近くに昇っていた。
日本でいうところの10時~11時くらいだろうか。
きっとシルの事だから、乙女の部屋に勝手に入るのを躊躇って、この時間まで待ってくれたか、単純に疲れている事に気を遣ってくれたのかもしれない。
私は手早く、水瓶の水を桶に入れて顔だけ洗って部屋を出た。
「シル、おはよう。ごめんね、疲れてたみたいで寝坊しちゃった」
「いいんだよ。シュンも昨日は大変な目にあったしね、本当はもう少し寝かせてあげたかったんだけど、スリングさんに呼ばれていてね、シュンも一緒に来てほしいって言うんだ」
シルは手に持ったお皿を置きながら笑顔を向けてくる。
「スリングさんが? どうしたのかな? 昨日お話した時には特にそんな話はしてなかったよね?」
席に着くと玉子の香ばしい香りがしている。
朝食は、目玉焼きとサラダ、それに兎のお肉を薄くスライスして焼いたものだった。
お肉からは香草の香りがすることから、ハーブ焼きの様な感じかな?
パンが欲しくなる。
「わぁ、今日のご飯も美味しい」
「お気に召して頂けた様で光栄です」
シルはそう言って、ニッコリ笑ってくれる。
朝食をとった後、スリング雑貨店へと向かう。
「よう、シュン嬢。よく来たな」
スリングさんはニカッと笑って手を振ってくれた。
「スリングさん。おはようございます。私の事を呼んでたって聞いたんですが、どうしたんですか?」
「おう。シルから聞いたんだが、何でも嬢ちゃんは、これから闘いの訓練をするんだろ? 闘うにも、武器防具は必要だろってんで、必要そうなもんを見繕ってるから、好きなもんを持ってきな」
スリングさんが、後ろの木箱から、色々なものを出してくれる。
「え? あの、でも私お金とか持ってないし……」
「なに、心配すんな! お代はシルから貰ってるからよ。余った分の代金は残しとくから、装備を新調するなり、道具を揃えるなりで、また用意するからよ」
バッとシルの方を見ると、目を逸らされた。
「シル! 命を助けてもらって、色々お世話にもなって、ここまでしてもらえないよ!」
シルは苦笑しながら、頬を掻いている。
「シュン。良いんだよ。昨日も言ったけど、僕は君が強くなる為の手助けがしたいんだ。それに、助けた命だからって言うと恩着せがましくなっちゃうけど、シュンに死なれたくないからね。その為の準備はしないと、過去の英雄や長耳族の誇りに胸を張れなくなってしまう」
シルは困ったような笑顔でそう言った。
「でも!」
「嬢ちゃん。ここは大人しく好意に甘えときな。子供は甘えるもんだし、シルも意外と頑固だから引かねぇと思うぞ。それに俺としては買ってってもらった方が得だしな」
スリングさんはニヤニヤと笑いながら、私の頭をポンポン撫でた。
「うー。わかりました。じゃあお代に関しては、後々シルに返します」
「別に返さなくてもいいよ」
シルはそう言うけど、お金の貸し借りはダメだってお母さんからも言われている。
お父さんが金銭感覚にズボラな部分があるから、余計にそういうことはしっかりする様に言われてきた。
シルが受け取らないって言っても、この世界でお金が手に入ったらしっかり返そう。
「それで? 嬢ちゃん。どうするんだ?」
スリングさんは目の前に幾つか武器や防具を置いてくれている。
防具に関しては、昨日セフィさんに見繕ってもらった服で大丈夫だそうなので、武器を選ばせてもらった。
鞭と小型の弓、それと。
「あの、スリングさん? これって……」
「あん? それか? それはこの辺に生えてる木の中で、加工すると伸び縮みする性質があるもんがあるんだが、ソイツを使ったもんだ。面白いだろ? 弓程殺傷能力があるもんじゃないが、弓が使えない時なんかには役に立ったりするもんだ」
私が手にしていたのは、パチンコ。
所謂、スリングショットだ。
スリングさんがこれを売るって冗談でしかない。
結局、私は鞭、弓、スリングショットを頂いた。
「嬢ちゃん、近接用のもんが一個もないが、それでいいのか?」
「はい。私は元々力が強いわけでもないですし、近付かれたら負けちゃいますから」
正直な話をすると、昨日のゴブリンがダガーを振るった事への恐怖から、刀剣類に関しては、怖い。
しかし、そんな事は関係なく、スリングさんから一つのナイフを渡される。
「頼りないが、護身用に持っとけ。サービスで付けてやるよ」
お礼を言って受け取ったが、私はこれを使うことが出来るんだろうか。
遠距離武器に偏ったのも、動物の命を奪うという事に忌避感を持ったのもある。
お父さんとのサバイバル訓練で野性動物を狩ったり、捌いたりした事はあるけど、闘って命を奪うという経験があるわけじゃない。
こんな調子でやっていけるのだろうか。
その後、スリングさんから、必要そうな薬などを幾つか購入し、雑貨店を後にする。
「じゃあ、まずは、怪我しない為にも、シュンの運動神経を見ておこうか」
ということで、村を降りて、少し開けた所までシルが連れていってくれることになった。
当然、私は降りる時にも酔った。
「ふぇ? お兄さん誰!? 私の部屋で何してるの!?」
見覚えのないイケメンお兄さんが、私の部屋で私を起こすとか、どういうシチュエーション!?
いや、あれ?
待て、見覚え……あるぞ?
「シュンは朝が弱いの? 僕だよ。シル」
あ。そうだった、訳の解らない世界に来たんだった。
頭を押さえてる私を見ながら、シルは苦笑している。
「もう朝の見廻りは終わったから、今日は夕方まで付き合えるよ。ひとまず朝御飯にしようか。用意が出来たら、昨日ご飯を食べたとこまで出てきてね」
それだけ言って、シルは部屋を後にする。
外の様子を見てみると、太陽は真上近くに昇っていた。
日本でいうところの10時~11時くらいだろうか。
きっとシルの事だから、乙女の部屋に勝手に入るのを躊躇って、この時間まで待ってくれたか、単純に疲れている事に気を遣ってくれたのかもしれない。
私は手早く、水瓶の水を桶に入れて顔だけ洗って部屋を出た。
「シル、おはよう。ごめんね、疲れてたみたいで寝坊しちゃった」
「いいんだよ。シュンも昨日は大変な目にあったしね、本当はもう少し寝かせてあげたかったんだけど、スリングさんに呼ばれていてね、シュンも一緒に来てほしいって言うんだ」
シルは手に持ったお皿を置きながら笑顔を向けてくる。
「スリングさんが? どうしたのかな? 昨日お話した時には特にそんな話はしてなかったよね?」
席に着くと玉子の香ばしい香りがしている。
朝食は、目玉焼きとサラダ、それに兎のお肉を薄くスライスして焼いたものだった。
お肉からは香草の香りがすることから、ハーブ焼きの様な感じかな?
パンが欲しくなる。
「わぁ、今日のご飯も美味しい」
「お気に召して頂けた様で光栄です」
シルはそう言って、ニッコリ笑ってくれる。
朝食をとった後、スリング雑貨店へと向かう。
「よう、シュン嬢。よく来たな」
スリングさんはニカッと笑って手を振ってくれた。
「スリングさん。おはようございます。私の事を呼んでたって聞いたんですが、どうしたんですか?」
「おう。シルから聞いたんだが、何でも嬢ちゃんは、これから闘いの訓練をするんだろ? 闘うにも、武器防具は必要だろってんで、必要そうなもんを見繕ってるから、好きなもんを持ってきな」
スリングさんが、後ろの木箱から、色々なものを出してくれる。
「え? あの、でも私お金とか持ってないし……」
「なに、心配すんな! お代はシルから貰ってるからよ。余った分の代金は残しとくから、装備を新調するなり、道具を揃えるなりで、また用意するからよ」
バッとシルの方を見ると、目を逸らされた。
「シル! 命を助けてもらって、色々お世話にもなって、ここまでしてもらえないよ!」
シルは苦笑しながら、頬を掻いている。
「シュン。良いんだよ。昨日も言ったけど、僕は君が強くなる為の手助けがしたいんだ。それに、助けた命だからって言うと恩着せがましくなっちゃうけど、シュンに死なれたくないからね。その為の準備はしないと、過去の英雄や長耳族の誇りに胸を張れなくなってしまう」
シルは困ったような笑顔でそう言った。
「でも!」
「嬢ちゃん。ここは大人しく好意に甘えときな。子供は甘えるもんだし、シルも意外と頑固だから引かねぇと思うぞ。それに俺としては買ってってもらった方が得だしな」
スリングさんはニヤニヤと笑いながら、私の頭をポンポン撫でた。
「うー。わかりました。じゃあお代に関しては、後々シルに返します」
「別に返さなくてもいいよ」
シルはそう言うけど、お金の貸し借りはダメだってお母さんからも言われている。
お父さんが金銭感覚にズボラな部分があるから、余計にそういうことはしっかりする様に言われてきた。
シルが受け取らないって言っても、この世界でお金が手に入ったらしっかり返そう。
「それで? 嬢ちゃん。どうするんだ?」
スリングさんは目の前に幾つか武器や防具を置いてくれている。
防具に関しては、昨日セフィさんに見繕ってもらった服で大丈夫だそうなので、武器を選ばせてもらった。
鞭と小型の弓、それと。
「あの、スリングさん? これって……」
「あん? それか? それはこの辺に生えてる木の中で、加工すると伸び縮みする性質があるもんがあるんだが、ソイツを使ったもんだ。面白いだろ? 弓程殺傷能力があるもんじゃないが、弓が使えない時なんかには役に立ったりするもんだ」
私が手にしていたのは、パチンコ。
所謂、スリングショットだ。
スリングさんがこれを売るって冗談でしかない。
結局、私は鞭、弓、スリングショットを頂いた。
「嬢ちゃん、近接用のもんが一個もないが、それでいいのか?」
「はい。私は元々力が強いわけでもないですし、近付かれたら負けちゃいますから」
正直な話をすると、昨日のゴブリンがダガーを振るった事への恐怖から、刀剣類に関しては、怖い。
しかし、そんな事は関係なく、スリングさんから一つのナイフを渡される。
「頼りないが、護身用に持っとけ。サービスで付けてやるよ」
お礼を言って受け取ったが、私はこれを使うことが出来るんだろうか。
遠距離武器に偏ったのも、動物の命を奪うという事に忌避感を持ったのもある。
お父さんとのサバイバル訓練で野性動物を狩ったり、捌いたりした事はあるけど、闘って命を奪うという経験があるわけじゃない。
こんな調子でやっていけるのだろうか。
その後、スリングさんから、必要そうな薬などを幾つか購入し、雑貨店を後にする。
「じゃあ、まずは、怪我しない為にも、シュンの運動神経を見ておこうか」
ということで、村を降りて、少し開けた所までシルが連れていってくれることになった。
当然、私は降りる時にも酔った。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる