パラサイト~レッツ異世界寄生ライフ~

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1章

第16話 VS小竜

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 睨み合う俺と小竜。ジリジリと足元を動かし、相手の隙を窺う。小竜も同じなのだろう。体の大きさが少し大きなこちらを警戒してすぐに手を出してくる気配はない。

(コイツハアツイノヲダス。キヲツケル)

 火を吹くのは学習済みだ。アレ? どこで知ったんだっけか? いやいや、そんな事は後回しだ。集中しなければ殺られる。この弱肉強食の世界。明日は自分が腹に収められる番かもしれないのだ。
 “腹”という点が引っかかり、また思考が横道に逸れそうになるのを振り払う。何とか目の前の相手に集中する――その時だ。相手が動いた。

「ギャァウ!」

 こちらの思考が鈍った隙をついたように小竜の牙が迫る。これをサイドステップで慌てて躱し、そのまま横っ腹に爪を突き立てる。
 だが、小竜も飛び込んだ勢いを活かして尻尾を使いこちらの爪を弾く。そのままお互いに再度距離をとる。

 ニ度目の睨み合い。先に動いた方が殺られる――なんてのは、達人同士の戦いの話だ。これは弱肉強食の野生の戦い。生き汚い方が生きる。強い方が生きる。弱い方が死ぬ。そう、動け。確実に致命傷を食らわせればいいのだ。

 牙に力を込め、ガチガチと打ち鳴らす。刃状になった牙は俺の意志を汲み取るように輝きを増す。輝きに呼応するように鋭さを帯びていく。
 こちらの動きを警戒するように小竜は身構える。

「ガァウルルァ!」

 次はこちらから動く。まずは牽制の右。爪を立て、小竜へ右上から左下に削ぐように振り下ろす。俺の撫で付けを小竜はバックステップで躱す。
 しかし、そんなものは予想済みだ。
 そのまま振り下ろした爪と後ろ足に力を込め、身体を捻りながら飛びかかる。そして、限界まで研ぎ澄ました左刃をその首筋へとお見舞いする。

 グゥ。カテェ。

 竜の鱗は伊達じゃなかった。刃はギシギシという音を立てながら、予想よりも食い込まなかった。首を飛ばすつもりで放った一撃は首の半ばで止まる。
 突然の痛みに小竜はもがき、暴れる。牙は位置の関係でこちらの体には届かない。いや、正確には首に深く刺さる牙のせいで届かせることができない。代わりに前足についた鋭い爪を振るう。攻撃のつもりじゃない。どうにかして振りほどこうとしてるのだ。
 必死に動き、引っ掻く。
 クッ……俺は肉が抉られる痛みで顔を勝手に顰める。しかし、分厚い毛皮に覆われた俺に決定打を与える事はできない。
 小竜が足掻いている間にも、俺は牙をズブズブと前に進める。確実に小竜へ死が近づいていく。あと少しで首が切断され、地面に落ちるだろう。
 だが……

 コォォォォ――

 ――小竜の口から細かく火花が散り、周辺の空気が歪んでいく。
 コイツ!? 最期に火を吹いて道連れにする気か!? 逃げるか!? いや、ここはっ――

 俺は地についている脚に思いっきり力を入れる。食い込む牙にも更に斬撃性を乗せるよう力を込める。
 小竜の口から、見るからに熱量を乗せた光が見えた。

 ボトッ

 ――だが、その炎は放たれる事はなかった。こちらの牙が相手の首を叩き落としたのだ。そのまま、慌てて横に飛び距離を取る。
 次の瞬間、小竜の頭が落ちた首から炎が吹き上がった。その体は炎を撒き散らしながら俺が飛んだ方とは逆に倒れこむ。距離をとる前に後ろ足で蹴りを入れておいたおかげだ。
 パチパチと音を立て近くの草むらに火がつくが、水分を多く含むこの辺の草木は火が簡単に燃え移る事はなかった。
 少しの間草木が弾ける音と炎の熱が周囲を焦がしたあと、こんがり焼けた小竜の丸焼きが姿を現わした。
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