17 / 22
1章
第16話 VS小竜
しおりを挟む
睨み合う俺と小竜。ジリジリと足元を動かし、相手の隙を窺う。小竜も同じなのだろう。体の大きさが少し大きなこちらを警戒してすぐに手を出してくる気配はない。
(コイツハアツイノヲダス。キヲツケル)
火を吹くのは学習済みだ。アレ? どこで知ったんだっけか? いやいや、そんな事は後回しだ。集中しなければ殺られる。この弱肉強食の世界。明日は自分が腹に収められる番かもしれないのだ。
“腹”という点が引っかかり、また思考が横道に逸れそうになるのを振り払う。何とか目の前の相手に集中する――その時だ。相手が動いた。
「ギャァウ!」
こちらの思考が鈍った隙をついたように小竜の牙が迫る。これをサイドステップで慌てて躱し、そのまま横っ腹に爪を突き立てる。
だが、小竜も飛び込んだ勢いを活かして尻尾を使いこちらの爪を弾く。そのままお互いに再度距離をとる。
ニ度目の睨み合い。先に動いた方が殺られる――なんてのは、達人同士の戦いの話だ。これは弱肉強食の野生の戦い。生き汚い方が生きる。強い方が生きる。弱い方が死ぬ。そう、動け。確実に致命傷を食らわせればいいのだ。
牙に力を込め、ガチガチと打ち鳴らす。刃状になった牙は俺の意志を汲み取るように輝きを増す。輝きに呼応するように鋭さを帯びていく。
こちらの動きを警戒するように小竜は身構える。
「ガァウルルァ!」
次はこちらから動く。まずは牽制の右。爪を立て、小竜へ右上から左下に削ぐように振り下ろす。俺の撫で付けを小竜はバックステップで躱す。
しかし、そんなものは予想済みだ。
そのまま振り下ろした爪と後ろ足に力を込め、身体を捻りながら飛びかかる。そして、限界まで研ぎ澄ました左刃をその首筋へとお見舞いする。
グゥ。カテェ。
竜の鱗は伊達じゃなかった。刃はギシギシという音を立てながら、予想よりも食い込まなかった。首を飛ばすつもりで放った一撃は首の半ばで止まる。
突然の痛みに小竜はもがき、暴れる。牙は位置の関係でこちらの体には届かない。いや、正確には首に深く刺さる牙のせいで届かせることができない。代わりに前足についた鋭い爪を振るう。攻撃のつもりじゃない。どうにかして振りほどこうとしてるのだ。
必死に動き、引っ掻く。
クッ……俺は肉が抉られる痛みで顔を勝手に顰める。しかし、分厚い毛皮に覆われた俺に決定打を与える事はできない。
小竜が足掻いている間にも、俺は牙をズブズブと前に進める。確実に小竜へ死が近づいていく。あと少しで首が切断され、地面に落ちるだろう。
だが……
コォォォォ――
――小竜の口から細かく火花が散り、周辺の空気が歪んでいく。
コイツ!? 最期に火を吹いて道連れにする気か!? 逃げるか!? いや、ここはっ――
俺は地についている脚に思いっきり力を入れる。食い込む牙にも更に斬撃性を乗せるよう力を込める。
小竜の口から、見るからに熱量を乗せた光が見えた。
ボトッ
――だが、その炎は放たれる事はなかった。こちらの牙が相手の首を叩き落としたのだ。そのまま、慌てて横に飛び距離を取る。
次の瞬間、小竜の頭が落ちた首から炎が吹き上がった。その体は炎を撒き散らしながら俺が飛んだ方とは逆に倒れこむ。距離をとる前に後ろ足で蹴りを入れておいたおかげだ。
パチパチと音を立て近くの草むらに火がつくが、水分を多く含むこの辺の草木は火が簡単に燃え移る事はなかった。
少しの間草木が弾ける音と炎の熱が周囲を焦がしたあと、こんがり焼けた小竜の丸焼きが姿を現わした。
(コイツハアツイノヲダス。キヲツケル)
火を吹くのは学習済みだ。アレ? どこで知ったんだっけか? いやいや、そんな事は後回しだ。集中しなければ殺られる。この弱肉強食の世界。明日は自分が腹に収められる番かもしれないのだ。
“腹”という点が引っかかり、また思考が横道に逸れそうになるのを振り払う。何とか目の前の相手に集中する――その時だ。相手が動いた。
「ギャァウ!」
こちらの思考が鈍った隙をついたように小竜の牙が迫る。これをサイドステップで慌てて躱し、そのまま横っ腹に爪を突き立てる。
だが、小竜も飛び込んだ勢いを活かして尻尾を使いこちらの爪を弾く。そのままお互いに再度距離をとる。
ニ度目の睨み合い。先に動いた方が殺られる――なんてのは、達人同士の戦いの話だ。これは弱肉強食の野生の戦い。生き汚い方が生きる。強い方が生きる。弱い方が死ぬ。そう、動け。確実に致命傷を食らわせればいいのだ。
牙に力を込め、ガチガチと打ち鳴らす。刃状になった牙は俺の意志を汲み取るように輝きを増す。輝きに呼応するように鋭さを帯びていく。
こちらの動きを警戒するように小竜は身構える。
「ガァウルルァ!」
次はこちらから動く。まずは牽制の右。爪を立て、小竜へ右上から左下に削ぐように振り下ろす。俺の撫で付けを小竜はバックステップで躱す。
しかし、そんなものは予想済みだ。
そのまま振り下ろした爪と後ろ足に力を込め、身体を捻りながら飛びかかる。そして、限界まで研ぎ澄ました左刃をその首筋へとお見舞いする。
グゥ。カテェ。
竜の鱗は伊達じゃなかった。刃はギシギシという音を立てながら、予想よりも食い込まなかった。首を飛ばすつもりで放った一撃は首の半ばで止まる。
突然の痛みに小竜はもがき、暴れる。牙は位置の関係でこちらの体には届かない。いや、正確には首に深く刺さる牙のせいで届かせることができない。代わりに前足についた鋭い爪を振るう。攻撃のつもりじゃない。どうにかして振りほどこうとしてるのだ。
必死に動き、引っ掻く。
クッ……俺は肉が抉られる痛みで顔を勝手に顰める。しかし、分厚い毛皮に覆われた俺に決定打を与える事はできない。
小竜が足掻いている間にも、俺は牙をズブズブと前に進める。確実に小竜へ死が近づいていく。あと少しで首が切断され、地面に落ちるだろう。
だが……
コォォォォ――
――小竜の口から細かく火花が散り、周辺の空気が歪んでいく。
コイツ!? 最期に火を吹いて道連れにする気か!? 逃げるか!? いや、ここはっ――
俺は地についている脚に思いっきり力を入れる。食い込む牙にも更に斬撃性を乗せるよう力を込める。
小竜の口から、見るからに熱量を乗せた光が見えた。
ボトッ
――だが、その炎は放たれる事はなかった。こちらの牙が相手の首を叩き落としたのだ。そのまま、慌てて横に飛び距離を取る。
次の瞬間、小竜の頭が落ちた首から炎が吹き上がった。その体は炎を撒き散らしながら俺が飛んだ方とは逆に倒れこむ。距離をとる前に後ろ足で蹴りを入れておいたおかげだ。
パチパチと音を立て近くの草むらに火がつくが、水分を多く含むこの辺の草木は火が簡単に燃え移る事はなかった。
少しの間草木が弾ける音と炎の熱が周囲を焦がしたあと、こんがり焼けた小竜の丸焼きが姿を現わした。
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。

転生しようとしたら魔族に邪魔されて加護が受けられませんでした。おかげで魔力がありません。
ライゼノ
ファンタジー
事故により死んだ俺は女神に転生の話を持ちかけられる。女神の加護により高い身体能力と魔力を得られるはずであったが、魔族の襲撃により加護を受けることなく転生してしまう。転生をした俺は後に気づく。魔力が使えて当たり前の世界で、俺は魔力を全く持たずに生まれてしまったことを。魔法に満ち溢れた世界で、魔力を持たない俺はこの世界で生き残ることはできるのか。どのように他者に負けぬ『強さ』を手に入れるのか。
師弟編の感想頂けると凄く嬉しいです!
最新話は小説家になろうにて公開しております。
https://ncode.syosetu.com/n2519ft/
よろしければこちらも見ていただけると非常に嬉しいです!
応援よろしくお願いします!
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる