パラサイト~レッツ異世界寄生ライフ~

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1章

第15話 壊れスキル

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 よし、迷っていても仕方ない。男は度胸。こういう時の思い切りが大事だ。
 ……しかし、慎重にいくのも大事。作戦名はいのちだいじに。とりあえず、明らかにぶっ壊れてる【精神侵食】。こっちは後回しにしよう。そこ、チキンとか言うな。

『寄生同調』発動!

 日和った俺はひとまず寄生同調から発動させる。

 ――うあっ!? なにこれきしょい。

 頭の中をめまぐるしく色々な思考が入り混じってくる。同時に体の感覚が変わる。さっきまでは感じなかった冷気を皮膚に感じ、空腹を腹が訴える。久しぶりに感じる四肢の筋肉や骨の感覚に違和感を覚える。
 メシ……メシガクイタイ。ニクダ。ニクヲトロウ。

 ノッソリと起き上がる体。寒さで軽く鈍くなった体を動かす。なんだか体ガ重イ。自身ノ体ハコンナニ体重ガアッタダロウカ。今までどうやって体を動かしていただろうか。いや、体が覚えている。俺がうごかさなくても勝手に動く。それでも俺の意思も反映されて四肢は動く。
 巣穴を歩く。道は覚えていない? いや、覚エテル。コッチダ。外ニ出レバニクがあるはずだ。とりあえずこの腹の虫を抑えなければ。虫? 何かを忘れてイルヨウナ。イヤ、些細な事だロウ。

 そのまま俺は巣穴から外に出た。外は太陽が高くのぼっている。毛皮が少し鬱陶しく思う程度にムワッとした熱を感じる。だがそこまで不快な感じはしない。

 体の感覚にもかなり慣れてキタ。慣レル? オカシナコトヲ、オレハズットコノ体デ生キテキタジャナイカ。
 近くにある木に飛び移り、そのまま木をスルスルと登る。木から木に飛び移り、獲物ヲ探ス。出来レバアノ小サメナ竜ガイイ。手頃ナ大キサダ。兎ヤ狸モウマイ。アレ? 俺ッて兎や狸とか食ったことあったっけ?
 まぁいいや。ひとまず飯だ。腹が減っては戦は出来ぬ。しかし、腹を満たすためには戦は必要とは厳しい世の中だ。働きたくない。ん? 俺って働く必要あったっけ? いや、何を言ッテルンダ。今マデモ狩ッテキタジャナイカ。

 今日ハ本当ニ変ダナ。オ、イイ所ニ兎ガイル。目の前には白い毛皮に包まれて鼻をひくひく鳴らしながら地面の草をモシャモシャしてる兎がいた。
 俺は気配を消し、極力音を立てずに兎の頭上に移動する。兎は耳をピクピクさせながらキョロキョロしている。

「ピィ!?」

 兎の頭上から鋭い爪を浴びせかける。直前に兎は音に気づいたらしく動いた。だが、遅い。逃げようとした背中に鋭い爪痕が走り、血飛沫が飛ぶ。アァ……ウマソウダ。
 空腹ニ耐エラレズ、ソノママ貪ル。ウマイウマイ。ウマい……けど、やっぱり火を通して塩でもした方が美味いよなぁ……
 火? アレ? ヒッテナンダッケ?

 *

 フゥ。小腹ハ満タサレタナ。兎の脚肉を残った骨からしゃぶり取り、骨を転がす。そして、噛み砕いてからノソッと起き上がった。
 次はもう少し喰イゴタエノアルヤツガ喰イタイナ。獲物を探し、もう少し森を歩くことにした。
 歩き始めて少しすると、一つの岩が目に入る。アレハ……アレハダメダ。カタイシデカイ。ソレニ肉モカタイ。デカイ竜ジャナクテ小サイヤツガイイ。
 フイッとすぐに興味を無くし歩く。オッ、コノ果実ハマァマァイケルヤツダ。地面に転がっている黄色い実を囓る。ウマイ。
 ――ガサッ

 すぐに音のする方に視線を移す。果実を囓る俺の目の前に草むらから姿を現わした、小さめな竜がいた。小型の肉食恐竜を思わせるビジュアルで、翼はない。しかしイメージされる恐竜とは違い、その身体にはビッシリと鱗がある。鱗の大きさ自体は蛇なんかの爬虫類に比べて一つ一つが大きく、それは鈍色に重くるしく光っている。
 体の大きさとしては、1m60cm程。オレヨリ小サイ。手頃ナサイズダ。
 相手もこっちに気づいたらしく、牙を剥き鼻に皺を入れて威嚇している。イイダロウ。ヤッテヤルヨ。
 オレハ四肢ニ力ヲ込メテ、刃状ノ牙ヲ研ギ澄マス。
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