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1章
第13話 寄生生活――え?
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はい! みなさまこんにちは!
本日も始まりました!
キリュウ君と行く、名湯百選のお時間です!
本日ご紹介するのは、なんと自然に溢れた場所となっております!
見渡す限りの大自然!
緑溢れる山々! 木々からはマイナスイオンやフィトンチッドが満ち満ちているかのようです!
この独特な匂い!
いやぁ、人間の頃はとても癒される香りでしたねー!
あ、そろそろお時間ですね!
それではスタジオにお返ししまーす!
はい、いつもの茶番ですね。
というか、今茶番とかやってる場合じゃない。
このままじゃ――死ぬ。
とりあえず、状況を整理しよう。
まず、小竜が岩竜に追いかけられてからだ――
*****
視界が激しく揺れる。
小竜が衝撃で弾き飛ぶ。
紙切れのように粉砕された木片が辺りに散らばる。
岩竜の尻尾が辺りの木を破砕したからだ。
小竜は既にかなりの傷を負っている。
もはや逃げることもままならない。
俺もMPが1しか残っていない。
え? ステータスを見ずにわかるのかって? だって数えてたからな。
んなこたぁ今どうでもいいんだよ。
問題は目の前に迫る重量級の岩の塊だ。正確には岩竜だ。
あと数秒もすれば、小竜は簡単に挽肉にされてしまうだろう。
俺自身は大きさを考えれば死なない……と思う。
だが、問題は小竜が死んだ後だ。
予測が正しければ、小竜を殺した後、岩竜が小竜を喰らうということはない。
そうなると俺は寄生先を失うだけだ。
何度もいうが、俺は現在この弱肉強食世界の最下層だ。
寄生先を失うことは、即ち死活問題となる。
しかし、これ以上【思考操作】は使えない。
否。使ったとしてもどうしようもないだろう。
もはや眼前に迫るのは岩竜の巨大な尻尾だ。
万事休す。
こういう時、漫画なんかだと助けが入るのだろう。
しかし、そんなのは所詮ご都合主義の楽観思考だ。
――ブツンっと視覚が途切れ、自分の肉体へと感覚が戻された。
*****
さて、そんなこんなで挽肉と化した小竜。
やはりというか、予想通りというか、岩竜は食べずに放置し、去っていった。
そして俺は血と肉片の海を掻き分けて外に出たわけだ。
初めてのおつかいならぬ、初めての外界だ。
外の世界は、とても蒼かった。
ガガーリンじゃないが、この世界は美しい世界だ。
こんな状況じゃなければ、少し感動しているところだったろう。
しかし現実は残酷だ。
何がかって? 最初の茶番でも言っただろ。
周りは森で自然溢れている。
美しく、青々と実った木々からは濃厚なフィトンチッドが出ている。
このフィトンチッド。これが厄介だ。
フィトンチッドには殺菌。殺虫作用がある。
今の俺がどういう生命体かわかるか? 虫だよ!
それもダニやノミに近い生物だ。
フィトンチッドは天敵ともいえる。
現にステータスを見ると俺の体力は徐々にだが、確実に削られている。
これはまずい。
今世最大のピンチだ。小竜の消化液以来のピンチだ。
強敵に倒されるとかじゃない。樹木に殺される。
なんとも情けない最期だ。死んでも死に切れない。
とにかくこのままではまずい。
移動してどうにかして、『寄生』しなければ。
どうしてこうなった。くそっ!
とりあえず、足に力を入れて跳ぶ。
予想していたよりも、かなりの跳躍をみせる。
おぉ。姿からして跳べる生命体だとは思ったが、これは予想以上だ。
おそらく、5mは跳んでいる。
ピョンピョコ跳びはねて移動している俺はあるものが目に入る。
あれは――
俺は目に入ったものに向かって一目散に跳んだ。
『寄生』発動!
そして、取り付いてすぐに寄生を発動する。
種族説明の通りなら、外部に取り付いた状態でも『寄生』が発動可能なはずだ。
ステータスを確認する。
【キリュウ ライト】
【種族:稀生虫】【宿主】刃牙虎
【LV:3】
【HP:17/120】
【MP:2/24】
【所持スキル】
寄生LV:4、感覚共有、思考操作、酸無効、猛毒耐性LV:3、腐蝕耐性LV:10、精神腐蝕耐性LV:1
【レンタルスキル】
刃牙LV:6、氷結耐性LV:4
【称号】
転生者
本日も始まりました!
キリュウ君と行く、名湯百選のお時間です!
本日ご紹介するのは、なんと自然に溢れた場所となっております!
見渡す限りの大自然!
緑溢れる山々! 木々からはマイナスイオンやフィトンチッドが満ち満ちているかのようです!
この独特な匂い!
いやぁ、人間の頃はとても癒される香りでしたねー!
あ、そろそろお時間ですね!
それではスタジオにお返ししまーす!
はい、いつもの茶番ですね。
というか、今茶番とかやってる場合じゃない。
このままじゃ――死ぬ。
とりあえず、状況を整理しよう。
まず、小竜が岩竜に追いかけられてからだ――
*****
視界が激しく揺れる。
小竜が衝撃で弾き飛ぶ。
紙切れのように粉砕された木片が辺りに散らばる。
岩竜の尻尾が辺りの木を破砕したからだ。
小竜は既にかなりの傷を負っている。
もはや逃げることもままならない。
俺もMPが1しか残っていない。
え? ステータスを見ずにわかるのかって? だって数えてたからな。
んなこたぁ今どうでもいいんだよ。
問題は目の前に迫る重量級の岩の塊だ。正確には岩竜だ。
あと数秒もすれば、小竜は簡単に挽肉にされてしまうだろう。
俺自身は大きさを考えれば死なない……と思う。
だが、問題は小竜が死んだ後だ。
予測が正しければ、小竜を殺した後、岩竜が小竜を喰らうということはない。
そうなると俺は寄生先を失うだけだ。
何度もいうが、俺は現在この弱肉強食世界の最下層だ。
寄生先を失うことは、即ち死活問題となる。
しかし、これ以上【思考操作】は使えない。
否。使ったとしてもどうしようもないだろう。
もはや眼前に迫るのは岩竜の巨大な尻尾だ。
万事休す。
こういう時、漫画なんかだと助けが入るのだろう。
しかし、そんなのは所詮ご都合主義の楽観思考だ。
――ブツンっと視覚が途切れ、自分の肉体へと感覚が戻された。
*****
さて、そんなこんなで挽肉と化した小竜。
やはりというか、予想通りというか、岩竜は食べずに放置し、去っていった。
そして俺は血と肉片の海を掻き分けて外に出たわけだ。
初めてのおつかいならぬ、初めての外界だ。
外の世界は、とても蒼かった。
ガガーリンじゃないが、この世界は美しい世界だ。
こんな状況じゃなければ、少し感動しているところだったろう。
しかし現実は残酷だ。
何がかって? 最初の茶番でも言っただろ。
周りは森で自然溢れている。
美しく、青々と実った木々からは濃厚なフィトンチッドが出ている。
このフィトンチッド。これが厄介だ。
フィトンチッドには殺菌。殺虫作用がある。
今の俺がどういう生命体かわかるか? 虫だよ!
それもダニやノミに近い生物だ。
フィトンチッドは天敵ともいえる。
現にステータスを見ると俺の体力は徐々にだが、確実に削られている。
これはまずい。
今世最大のピンチだ。小竜の消化液以来のピンチだ。
強敵に倒されるとかじゃない。樹木に殺される。
なんとも情けない最期だ。死んでも死に切れない。
とにかくこのままではまずい。
移動してどうにかして、『寄生』しなければ。
どうしてこうなった。くそっ!
とりあえず、足に力を入れて跳ぶ。
予想していたよりも、かなりの跳躍をみせる。
おぉ。姿からして跳べる生命体だとは思ったが、これは予想以上だ。
おそらく、5mは跳んでいる。
ピョンピョコ跳びはねて移動している俺はあるものが目に入る。
あれは――
俺は目に入ったものに向かって一目散に跳んだ。
『寄生』発動!
そして、取り付いてすぐに寄生を発動する。
種族説明の通りなら、外部に取り付いた状態でも『寄生』が発動可能なはずだ。
ステータスを確認する。
【キリュウ ライト】
【種族:稀生虫】【宿主】刃牙虎
【LV:3】
【HP:17/120】
【MP:2/24】
【所持スキル】
寄生LV:4、感覚共有、思考操作、酸無効、猛毒耐性LV:3、腐蝕耐性LV:10、精神腐蝕耐性LV:1
【レンタルスキル】
刃牙LV:6、氷結耐性LV:4
【称号】
転生者
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