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1章
第12話 寄生生活18日目
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【キリュウ ライト】
【種族:稀生虫】【宿主】小竜
【LV:3】
【HP:120】
【MP:6/24】
【所持スキル】
寄生LV:4、感覚共有、思考操作、酸無効、猛毒耐性LV:1、腐蝕耐性LV:10、精神腐蝕耐性LV:1
【レンタルスキル】
竜鱗LV:1、火炎耐性LV:2
【称号】
転生者
さて、あれから二日。今の俺のステータスがこれだ。
俺は【思考操作】を色々試してみていた。
どうやら最初の推測はほぼ正しかった。
そして、新しく判ったこととしては、より単純な命令ほど通りやすいってことだ。
例えば――
『戦え』『逃げろ』『走れ』
――こういう単純な命令はほぼ確実に通る。
うん。そして今の状況なんだけど……
あ、やっべ。『避けろ』!
今俺の目の前には、全身を無骨な岩に覆われた亀の姿に似た大きな竜がいる。
正確には小竜の目の前には、だが。
その身体には所々苔が生えていて、尻尾は先端に丸く大きな岩がついている。
まるで鉄球がついた鎖分銅。いや、そんな可愛いものじゃない、モーニングスターだ。いやいや、鉄球のついたクレーン車と呼ぶべきか。
某ハンティングゲームにこんなヤツがいた気がする。
遠心力を利用して威力を増したその尻尾が、地面を激しく抉る。
小竜はかろうじて重く激しい一撃を避ける。
現在、寄生している小竜はこの大きく硬い竜に襲われていた。
正確には、俺が逆鱗に触れたのだが……
あれは少し前のことだ――
*****
『壊せ』
小竜は目の前の小さな岩石を破壊する。
『溶かせ』
小竜は目の前の岩石に火を吹き、溶かす。
うむうむ。
判ってきたぞ。
どうやら、単調で単純な命令ほど聞いてくれるらしい。
そろそろ休憩しないと、MPがヤバいな。
最後に一回だけやるか。
『砕け』
小竜は目の前の苔むした岩を強靭な前脚で砕こうと振り抜く。
ガキンッ
お? 硬くね?
小竜は命令を遂行しようと何度も何度も爪を立てる。
そして――
んん? 今この岩揺れなかったか?
ズズズッと音を立てるかのように岩が迫り上がる。
そして、全身を現した。
巨大な竜だ。
どうやら、攻撃をしていたのは、この竜の背中だったらしい。
そして、眠りを妨げられたことによって、大変お怒りである。
うぉぉお!? 『逃げろ』!
*****
そんなこんなで今俺は小竜に指示を出しつつ、この竜から逃げている。
しかし、どうしても体格の差。つまりは大きさの差は直接的に逃げる速度に直結する。
小竜は視点から見るに、2m前後。
対して、この竜は少なく見積もっても、10mはある。
小回りや速度は明らかに小竜が上ではあるが、リーチの差がある。
鈍重に見えるこの大きな竜からは、どうしても一歩進む距離の関係で逃げ切れない。
くっ! 『右』だ!
小竜は右に大きく跳ぶ。
岩竜の右前脚から繰り出される踏み潰しを避ける。
体重を乗せた一撃はそれだけで、大地に大きな足跡を残している。
ヤバいな……そろそろMPが尽きる……
だいぶ気分が悪くなってきた。
数日の試行で解ったが、初日に意識を失ったのはどうやら魔力切れで起こる現象らしい。
最初は高揚感で気づかなかったが、魔力が減ってくると体調が悪くなってくるのでわかるようになってきた。
うぅむ……どうしたもんかな。
このまま小竜が殺られても、俺が殺られるわけじゃないから問題はない。
と、思うんだけどーー
俺は小竜の視界の端に映る岩竜を見る。
――多分あいつ……草食っぽいんだよなぁ……
草食だった場合、単純に小竜が殺されるだけ。俺は寄生先を失うだけになる。
そうなると、ただの殺られ損だ。
となれば、どうなるか判らない以上、逃げるしかない。
ん? なんで草食と思うかって?
口だよ。戦闘が始まってから見てる限り、ヤツは牙を使っての攻撃はしてきていない。
加えて、時折映る歯は犬歯がなく、すり鉢状になった平坦な歯ばかりだった。
前世の知識だが、肉を食べる必要がない生物は性質上草を磨り潰せるように歯が尖っておらず、潰すことに特化している。
前世の知識通りなら、ヤツは草食ということになるわけだ。
ぐぅ……どうしたもんかな……
【種族:稀生虫】【宿主】小竜
【LV:3】
【HP:120】
【MP:6/24】
【所持スキル】
寄生LV:4、感覚共有、思考操作、酸無効、猛毒耐性LV:1、腐蝕耐性LV:10、精神腐蝕耐性LV:1
【レンタルスキル】
竜鱗LV:1、火炎耐性LV:2
【称号】
転生者
さて、あれから二日。今の俺のステータスがこれだ。
俺は【思考操作】を色々試してみていた。
どうやら最初の推測はほぼ正しかった。
そして、新しく判ったこととしては、より単純な命令ほど通りやすいってことだ。
例えば――
『戦え』『逃げろ』『走れ』
――こういう単純な命令はほぼ確実に通る。
うん。そして今の状況なんだけど……
あ、やっべ。『避けろ』!
今俺の目の前には、全身を無骨な岩に覆われた亀の姿に似た大きな竜がいる。
正確には小竜の目の前には、だが。
その身体には所々苔が生えていて、尻尾は先端に丸く大きな岩がついている。
まるで鉄球がついた鎖分銅。いや、そんな可愛いものじゃない、モーニングスターだ。いやいや、鉄球のついたクレーン車と呼ぶべきか。
某ハンティングゲームにこんなヤツがいた気がする。
遠心力を利用して威力を増したその尻尾が、地面を激しく抉る。
小竜はかろうじて重く激しい一撃を避ける。
現在、寄生している小竜はこの大きく硬い竜に襲われていた。
正確には、俺が逆鱗に触れたのだが……
あれは少し前のことだ――
*****
『壊せ』
小竜は目の前の小さな岩石を破壊する。
『溶かせ』
小竜は目の前の岩石に火を吹き、溶かす。
うむうむ。
判ってきたぞ。
どうやら、単調で単純な命令ほど聞いてくれるらしい。
そろそろ休憩しないと、MPがヤバいな。
最後に一回だけやるか。
『砕け』
小竜は目の前の苔むした岩を強靭な前脚で砕こうと振り抜く。
ガキンッ
お? 硬くね?
小竜は命令を遂行しようと何度も何度も爪を立てる。
そして――
んん? 今この岩揺れなかったか?
ズズズッと音を立てるかのように岩が迫り上がる。
そして、全身を現した。
巨大な竜だ。
どうやら、攻撃をしていたのは、この竜の背中だったらしい。
そして、眠りを妨げられたことによって、大変お怒りである。
うぉぉお!? 『逃げろ』!
*****
そんなこんなで今俺は小竜に指示を出しつつ、この竜から逃げている。
しかし、どうしても体格の差。つまりは大きさの差は直接的に逃げる速度に直結する。
小竜は視点から見るに、2m前後。
対して、この竜は少なく見積もっても、10mはある。
小回りや速度は明らかに小竜が上ではあるが、リーチの差がある。
鈍重に見えるこの大きな竜からは、どうしても一歩進む距離の関係で逃げ切れない。
くっ! 『右』だ!
小竜は右に大きく跳ぶ。
岩竜の右前脚から繰り出される踏み潰しを避ける。
体重を乗せた一撃はそれだけで、大地に大きな足跡を残している。
ヤバいな……そろそろMPが尽きる……
だいぶ気分が悪くなってきた。
数日の試行で解ったが、初日に意識を失ったのはどうやら魔力切れで起こる現象らしい。
最初は高揚感で気づかなかったが、魔力が減ってくると体調が悪くなってくるのでわかるようになってきた。
うぅむ……どうしたもんかな。
このまま小竜が殺られても、俺が殺られるわけじゃないから問題はない。
と、思うんだけどーー
俺は小竜の視界の端に映る岩竜を見る。
――多分あいつ……草食っぽいんだよなぁ……
草食だった場合、単純に小竜が殺されるだけ。俺は寄生先を失うだけになる。
そうなると、ただの殺られ損だ。
となれば、どうなるか判らない以上、逃げるしかない。
ん? なんで草食と思うかって?
口だよ。戦闘が始まってから見てる限り、ヤツは牙を使っての攻撃はしてきていない。
加えて、時折映る歯は犬歯がなく、すり鉢状になった平坦な歯ばかりだった。
前世の知識だが、肉を食べる必要がない生物は性質上草を磨り潰せるように歯が尖っておらず、潰すことに特化している。
前世の知識通りなら、ヤツは草食ということになるわけだ。
ぐぅ……どうしたもんかな……
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