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第1章

第7話 君死にたまふことなかれ。

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 さて、迷宮経営二日目。
 今日は雨が降っている。
 こう雨が降ってると、冒険者も中々宿から出てこない。

 困った。
 退屈だ。

 いっそ、始まりの街に魔物でも放ってみようかとか思っていたら、来ました。
 本日の刺客。
 お客様が。

 番傘を差した男女が二人。
 和服を着た長髪の男性と数歩後ろを歩く女性。
 こっちの世界にも和服ってあるんだね。
 しかし雨が降ってる事もあって、暗い雰囲気だわー。

「お前さん。本当に行くんですか?」

「あぁ。お館様の命に従い、この銘刀五月雨を振るい、この新たな迷宮、魔物共の魔窟を殲滅せねばならぬ」

「しかし、一人で行くなど無茶で御座います! 私は……私は!」

「言うな! それでも某は行かねば成らぬ。主と決めた方が命じた事は、字の如く、命を賭して挑まねば成らぬ」

 おいおいおーい。
 店の前で時代劇なのかラブストーリーなのかわからんが、止めてくれー。
 いや、客も居ないし、別にいいんだけど、茶番は退屈なんだよー。

 その後も、こちらの気持ちなどお構い無しで盛り上がるお二人さん。
 ここで魔物でも放ってやろうかなこいつら。
 あ、茶番終わったっぽい?

「あい、済まぬが、最近出来た迷宮というのは、此処で間違いないか?」

「はい。こちらで間違い御座いません。入場料は銅貨1枚となっております」

 秘技『営業スマイル』

「ふむ。これで良いか?」

「はい。確かに銅貨1枚頂戴しました。それではお気をつけて。いってらっしゃいませ」

 侍の様なお兄さんは、そのまま機能を失った落とし穴1号、2号を通り過ぎ、迷宮の入り口を潜った。
 1号、2号よ。
 安らかに眠れ。
 これからは道となって頑張れ。

 さて、と。
 俺は水晶玉を手元に取りだし、洞窟内を写し出す。
 提灯を持ったお兄さんが進んでいる。
 さて、どうなるかな?
 楽しませてくれるといいんだけど。

 お、最初の魔物が出た。
 大鼠ビッグラットだ。
 まぁ、最初だからと入り口付近には大した魔物は配置していない。
 果敢に飛びかかった大鼠だったが、あっさりとお兄さんに両断された。
 ドンマイ。

 その後も大鼠ビッグラット大百足ビッグセンチピード大芋虫ビッグキャタピラー大蝙蝠ラージバッド(何故こいつだけラージなのかは知らん)と、所謂弱小魔物が襲い掛かるも、スパスパと切り捨てられていく。
 うーん、ちょっと難易度上げるかー?
 初見殺しばかりだと飽きそうだからって王道過ぎたなぁ。
 お兄さんは別れ道に差し掛かった。
 少し迷った上で、左へと足を向けた。
 歩き、進むお兄さん。


















 はい、死んだ。
 それはもうアッサリと死んだ。
 三つに裂けたお兄さん。








 今起きたことを教えようか?
 三叉蛇トライデントスネークにパックリイカれた。
 首が三つに別れた蛇なんだけど、これが中々強目な魔物なんですよ。
 頭と両腕をかっぷりイカれた後にそのまま、3枚に下ろされて(正確には引きちぎられて、だけど)食われました。

 その後、お姉さんがいつまで経っても帰らないから、お兄さんの引き裂かれた着物を入り口に転移させたら、大号泣して去っていった。
 うむ、あまり面白くなかったなぁ。
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