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8,さばいばると異世界

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 話がようやくまとまったようです。



 ◆ ◆ ◆



「さて。ではお嬢さん方には俺達の世界にお越しになって頂くことになるわけだが……その前に」
「その前に?」
「その前にー?」
「とりあえず、お嬢さん方は出掛ける準備ぐらいしたいだろ? カバン1個分くらいは持っていけるから、必要なもん適当にぶっこんでくれ」
「ええ、いきなりだなあ……今から?」
「今から。なるべく急ぎたい。早ければ早いほどいい」
「うん、わかったよー! 急いで準備してくるね!」
「三奈ちゃん、いらないものは持っていっちゃだめだよ。普通のお出掛けじゃないから、遊び道具とかはいらないからね」
「そっ、それくらいわかってるよーだ!」
「分かってるのかな……。まあ、確かに。現在進行形で事が進んでる感じだもんね」
「ああ、そういうことだ。慌てなくてもいいが、できる限り急いでくれると、こっちっとしては助かる」
「当日に帰宅、ってやっぱり難しい感じなの?」
「それができればベストだけどな。わからん。向こうの状況による。場合によっては、二、三日かかるかもしれん」
「うーん。外泊になるなら、お父さんとお母さんに言っとかないと。タイミングよく明日から4連休だから、学校へ連絡しないでも済んだのは良かったけど。4日で済ませられそう? ていうか、4日間以内には帰りたいんだけど」
「おう。大丈夫だ。スケジュールとしては一日で済むような内容だからな。不測の事態さえ起こらなければ、長くても二日程度で帰れるはずだ」
「ちょっと。やめて。フラグが立ちそうだから、そういう定番な台詞言わないでくれる?」
「あ? 定番? フラグ?」
「……はあ。わかんないなら、いいよ。ようするに、私が言いたいのは、悪そうなジンクスは極力しないでってこと」
「ふむ。よくわからんが、了解した」
「頼むわ」
「さて。お嬢さん方が準備している間に、俺のほうも色々とやっとくことがある。移界術式の再起動準備しないといけねえし、ご両親に暗示、いや、話を通しとかねえといかん」

「暗示? 今、暗示って言った?」

「言ってねえ。言ってねえから。うん。聞き間違いだ。よって、今から少し別行動することになる。三奈ちゃんとお姉さんは、用意が出来たら、俺が最初に現れた場所に来てほしい。場所は、三奈ちゃんが──」
「うんと~、まずは飲み物と~、それから食べ物と~……はあーい~! 私のこと、呼んだ~?」
「いや、うん、呼んでないヨ。そのまま楽しく準備してくれてていいカラ」
「ほえ?」
「……ふむ。さすがにオジさんも、学習したみたいね」
「まあな……。場所は、ここから少し離れたそこそこ広い川の側、その内側を埋め立てて均して作られた、命知らずな何かの競技用コート……て、分かるか?」
「あー。大丈夫。分かるわ。サッカーゴールとか、オープンなゴルフ場とか、ゲートボール用の線と棒とか立ててあるところでしょ? ジークリートさんの想像通り。あそこ、川の水がいっぱいになると、漬かるのよねえ……」
「やっぱりか……。だよなあ。あそこ、もっと土盛った方がいいんじゃねえか?」

「ダメよ。あそこは川の中なんだから。そんなことしたら川の容量が減るじゃない。そのリスク込みで作ってるんだから、大人しく漬かっててもらわないと困るわ」

「お、おう……ずいぶんとリスキーなことしてる奴もいるんだなあ……まあそんなことはどうでもいいんだが、そこが最適ポイントだったみたいで、移界術式の陣を設置してるんだが」
「ちょっと。そっちの方もリスキーなことしてんじゃない」
「俺の方は不可抗力だ。そんで大雨さえ降らなければセーフだ。そこへ来てもらいたい」
「わかったわ。準備できたら、三奈ちゃんと一緒に、そっちに向かう」
「おう。……まあ、なんだ。ありがとな」
「どういたしまして」



「じゃあ、お父さん、お母さん。ちょっとオジさんと出掛けてくるから」
「いってきまあーす!」
「あらあら。気をつけてね二人とも。でも夜のフライトって、なんだかロマンチックよねえ」
「いいなあ。窓から見る夜景、きれいだろうなあ」
「は? 夜のフライト……?」

「夜行列車、じゃなくて夜行飛行機でいくんでしょう? 無人島サバイバル合宿」

「はい? ……無人島?」
「さばいばる?」
「落ち葉を拾って焚き火を作ったり、木切れで家を造ったり、海にもぐって、捕ったおー!、とか言って魚捕まえたりするのよね。楽しそうねえ」
「ははは。元気な事だなあ。気をつけていくんだぞー。叔父さんに迷惑かけない様にな」
「叔父さんは仕事柄、サバイバルのエキスパートなんですって! 災害とか何かの時には役に立ちそうだし、しっかり勉強してきてね~」
「ふふ……。行ってきます」



「あっ、オジさん、いたー! ふおお~、何か地面にいっぱい書いてあるよ、おねーちゃん! 光ってるー! あれ、魔法陣かな!? すごーい! 生魔法陣だー!」
「お、来たか。準備できて──いで冷たっ」
「ちょっと、オジさん。もうちょっとマシな理由、つけられなかったの? なんで無人島サバイバル生活なのよ」
「いてて……ペットボトルで殴るなよ……ふにゃけた容器でも当たればそこそこ痛いんだぜ……いいじゃねえか。連絡がつかない理由になるだろ」
「それはそうだけど。なんでサバイバル……」
「したことないのか」
「あるわけないでしょ」
「そうか。ならせっかくだし、ついでに経験──」
「しない。私、虫嫌いだし」
「おねーちゃん、虫、嫌いだよねー。バッタさんでも固まってるよね。クリクリってお目々して、かわいいのに」
「どこが? どこがかわいいの? あの複眼の。あのちょっとでも触ったら取れそうな関節とか、薄い腹とか、う、やめよう。やめて。この話は終わり」
「ふ……そうか。完璧そうなお姉さんにも弱点はあるんだな」
「……何ニヤって笑ってんの。気色悪いわね。また殴られたいの」
「遠慮しとくわ。それでは。準備はいいかなー?」
「おー!!」
「……はーい」
「いい返事だ! 元気が良くてよろしい。一人テンション低めな子がいるけど、お兄さんは気にしないぜ! それじゃあ円の真ん中まで来てくれ」
「はあーい! わあ、すごーい! 何書いてあるのかわかんないけど、きれー! ふわって光ってるー」
「そうだね、何書いてあるのかさっぱり分からないけど」
「うちにきてくれたら、何が書いてあるのか分かるようになるぜ」
「だめえー!」
「ちょ、三奈ちゃん、急にしがみつかないで! こけるから! はいはい、行かないから。じゃあ、ジークリートさん。よろしくお願いするから。しっかり守ってよ?」
「おうよ、まかせとけ! じゃあ、いっくぞー。準備はいいかなー?」
「いいよー!」
「いつでもどうぞ」

「ほんじゃまあ、世界を救いにいくとしますか! ……agrmva、gvdgaiera、eofgsjkmg、jerwrbmcx、xnu……」

「ふおおお! 光がいっぱいでお外が見えなくなったー!」
「おお。すごい。本当に魔導師だったんだねえ」


「fdzd! ……え? ちょ、マジか。お姉さん、まだ疑ってたの!? どんだけ俺怪しまれてんの!」
「だってもんのすごく怪しくてうさんくさかったんだもの。それは仕方のないことだわ」
「さいですか!」
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