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どうしてだにゃん……。
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翌朝、エルレインのベッドには、ベッドの持ち主であるエルレインと、全裸の男がいた。
目を覚ましたエルレイン。流石の彼女も、これには驚いて悲鳴をあげた。
「きゃああああああっ! だだだ、だれ、誰なんです!? 私になにを……!?」
その声を聞いて目を覚ました男は、眠たそうに目をこすりながらも、起き上がる。
「……ご主人! 俺です! ルークです! ご主人のために人間になりました! 俺と結婚しましょう!」
突然現れた全裸の男。その正体は、エルレインの愛猫・ルークだった。
願いが叶ったルークは大はしゃぎ。
その場で主人に結婚を申し込んだ。
エルレインは、自分を溺愛している。
だから、人間になったことも、結婚できることも、エルレインは喜んでくれる。
ルークは、そう信じて疑わなかった。
しかし、現実は非情なもので。
「えっ……。嫌です」
「えっ……? どうしてですご主人! 俺のこと大好きじゃないですか! あっ、本当にルークなのか疑ってるんですね! なら……!」
ルークは、愛猫の自分でないと知りえない話をたくさんした。
その間に、全裸でいるなと毛布を巻きつけられたりしつつも、とにかく話した。
自分がルークだと、信じて欲しくて。
いくつもの話を披露すれば、エルレインは目の前の男がルークだと信じた。
ルークを溺愛していたエルレイン。
愛猫でなければ知るはずのないエピソードが、たくさんあるのだ。
「……本当に、ルークなのですね」
「ご主人……! そうです! ルークです! ご主人、俺と結婚しましょう!」
「嫌です。猫に戻ってください」
「ルークですよ!?」
「猫に戻ってください」
「うええん……」
せっかく人間になれたのに、これである。
あまりのショックに、ルークはぐすぐすと泣き始めた。
そこに響く、ノックの音。
「エル。朝早くにごめん。昨日のこと、ちゃんと話したくて」
名乗りはしなかったが、ラキリオの声だ。
昨日の昼間に婚約解消を申し出た男である。
今更なんの用だというのか。
いつもならどうぞと返すところだが、エルレインは迷った。
だって、自分の部屋には全裸の男――毛布で肌を隠しているが、全裸である――がいるのだから。
返事に困っていると、
「エル? あんなことを言った直後に押しかけるなんて、困らせてしまったかな」
とラキリオ。
エルレインは、確かに困っている。
ラキリオが思っているのとは、違う方向に。
「ごめん。どうしても君と話したいんだ。開けるよ」
そう言って、ラキリオは扉を開けてしまった。
ラキリオの視界に飛び込んだのは、毛布を巻かれた見知らぬ男と、ベッドに乗ったままの婚約者。
「えっ……」
ラキリオの表情が、凍った。
目を覚ましたエルレイン。流石の彼女も、これには驚いて悲鳴をあげた。
「きゃああああああっ! だだだ、だれ、誰なんです!? 私になにを……!?」
その声を聞いて目を覚ました男は、眠たそうに目をこすりながらも、起き上がる。
「……ご主人! 俺です! ルークです! ご主人のために人間になりました! 俺と結婚しましょう!」
突然現れた全裸の男。その正体は、エルレインの愛猫・ルークだった。
願いが叶ったルークは大はしゃぎ。
その場で主人に結婚を申し込んだ。
エルレインは、自分を溺愛している。
だから、人間になったことも、結婚できることも、エルレインは喜んでくれる。
ルークは、そう信じて疑わなかった。
しかし、現実は非情なもので。
「えっ……。嫌です」
「えっ……? どうしてですご主人! 俺のこと大好きじゃないですか! あっ、本当にルークなのか疑ってるんですね! なら……!」
ルークは、愛猫の自分でないと知りえない話をたくさんした。
その間に、全裸でいるなと毛布を巻きつけられたりしつつも、とにかく話した。
自分がルークだと、信じて欲しくて。
いくつもの話を披露すれば、エルレインは目の前の男がルークだと信じた。
ルークを溺愛していたエルレイン。
愛猫でなければ知るはずのないエピソードが、たくさんあるのだ。
「……本当に、ルークなのですね」
「ご主人……! そうです! ルークです! ご主人、俺と結婚しましょう!」
「嫌です。猫に戻ってください」
「ルークですよ!?」
「猫に戻ってください」
「うええん……」
せっかく人間になれたのに、これである。
あまりのショックに、ルークはぐすぐすと泣き始めた。
そこに響く、ノックの音。
「エル。朝早くにごめん。昨日のこと、ちゃんと話したくて」
名乗りはしなかったが、ラキリオの声だ。
昨日の昼間に婚約解消を申し出た男である。
今更なんの用だというのか。
いつもならどうぞと返すところだが、エルレインは迷った。
だって、自分の部屋には全裸の男――毛布で肌を隠しているが、全裸である――がいるのだから。
返事に困っていると、
「エル? あんなことを言った直後に押しかけるなんて、困らせてしまったかな」
とラキリオ。
エルレインは、確かに困っている。
ラキリオが思っているのとは、違う方向に。
「ごめん。どうしても君と話したいんだ。開けるよ」
そう言って、ラキリオは扉を開けてしまった。
ラキリオの視界に飛び込んだのは、毛布を巻かれた見知らぬ男と、ベッドに乗ったままの婚約者。
「えっ……」
ラキリオの表情が、凍った。
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